ダーク・ファンタジー小説

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最後の林檎が落ちるとき
日時: 2017/08/08 22:25
名前: ゆぅ (ID: MHTXF2/b)

はじめまして、ゆぅと申します。

ダークは初めてなんですけど、駄作になってしまうと思いますがどうか見て頂けたら嬉しいです!
コメントお待ちしています!



【登場人物】

@白石 芽以 しらいし めい
ヒロイン。
高校生のときに壮絶ないじめに遭い、復讐を決める。

@黒川 夏樹 くろかわ なつき
主人公。
芽以と同じクラスの男子生徒。無口でクール。


【目次】
#01 すべてがはじまる 01〜

Re: 最後の林檎が落ちるとき ( No.5 )
日時: 2017/08/23 23:07
名前: ゆぅ (ID: cdCu00PP)

七海結花の言っていたことは嘘ではなかったように思えた。

次の日から、七海結花は頻繁に話しかけてくるようになった。

教室へ入ると、いつものようの冷たい視線。
だがいつもと違ったのは、ニコニコしながら近づいてくる七海結花がいたことだった。

「おはよう!白石さん!」

七海結花はそう言って微笑んだ。
その瞬間、クラス中がざわついた。

「ちょ、結花?」

七海結花と仲の良い木崎茜は不安そうに言った。
もちろん、工藤絵里たちの表情を伺いながら。

「あたし、見て見ぬふりはやめるんだ」

七海結花はそう言って微笑んだ。
木崎茜は青ざめた表情で工藤絵里を見た。
工藤絵里は腕を組み、つまらなそうに彼女を見ている。

「結花、あんたそれでいいのね?」

工藤絵里が静かに言った。

「やめとけって、シラミ庇ってもいいことなんてないぜ」

広瀬陽介が言った。

「いいよ、そんなの。あなたたちと話しても楽しくないし」

七海結花はそう言って工藤絵里を見た。
工藤絵里は鼻で笑い飛ばす。

「あっそう。まあいいけど。さよなら」

工藤絵里はそう言うと教室の窓の淵に座り足を組んだ。

彼女の言った「さよなら」には、何が強い恐怖を感じた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

それから、芽以の生活は大きく変わった。
七海結花という友達ができたのだ。

結花は明るく、とても優しかった。
彼女といることでいじめられることはかなり少なくなった。

昼休みを1人で過ごすことがなくなり、帰り道が楽しくなった。

案の定、結花は木崎茜とは話さなくなった。
それどころか、クラス中を敵に回したのだ。

「結花、本当にいいの?」

ある日の放課後、彼女に聞いてみた。
だが結花は、いつものように微笑みながら言った。

「何が?私は芽以ちゃんと仲良くしてるのが楽しいんだよ。心配いらないって」

結花の笑顔を見て、芽以は不思議と笑みが零れた。
彼女と過ごす毎日は楽しかった。

だが、そんな日はそう長く続かなかった。



ある日のことだ。
朝登校すると、標的が結花に変わっていた。

黒板には『七海結花はおじさんと援交中』などと書かれ、机やノートには以前芽以にしていたような悪戯がされていたのだ。

結花はそれを見て、初めは驚いた表情を浮かべていたがすぐに真顔でカバンを置くと、ノートやペンなどを片付け、1人で黒板を消し始めた。

それを見て芽以も黒板を一緒に消し始める。

「友達ごっこ、いつまで続けるのー?結花」

教室の後ろで、工藤絵里が言った。

「てか、机きたなーい」

工藤絵里の隣で、高宮綾が微笑んだ。
隣では鈴木ありさも同様に微笑んでいる。

「つーか、七海援交ってまじかよ!」

竹田創太は、結花を茶化すようにして言った。
クラス中が笑っている。
その中には、木崎茜の姿もあった。

結花はその姿を見て、表情を変えることなく自分の席に戻った。

「ねえ、なんとか言いなさいよ」

鈴木ありさは結花の席まで来て言った。
島崎直也はヘラヘラと笑いながら言った。

「清楚なふりして、きもいんだなー、七海って」

そう言うと、結花はため息をついた。

「なにか文句?」と工藤絵里。

結花は工藤絵里の方を見て言う。

「毎朝こんなことして、あなたたち早起きご苦労だなって思って。私の為にどうもありがとう」

結花はそう言って鼻で笑い飛ばした。

「は?あんた今なんて言った?」

高宮綾が不満そうに言った。
結花は高宮綾を見ていう。

「聞こえなかった?私の為に毎日ご苦労様って言ったの。私は、あなたたちみたいに暇じゃないし、こんなことするほど人間腐ってない」

結花はそう言うと、木崎茜を見て続ける。

「友達?あんたたちみんな1人じゃ何もできないから集団になって強くなった気になってるだけでしょ。あなたもね」

木崎茜は俯く。

「おい、おまえさ、調子に乗ってんじゃねえぞ?」

竹田創太はそう言って結花を見る。

「あなたも。机を移動させたりノートに落書きしてる暇があったら勉強したら?クラス順位1番下なんだから」

「は?!なんだと!おい七海!」

「気安く名前呼ばないで。…白石さんが、あんたたちに何したって言うの?自分が強いって、そう思いたいだけでしょ?あんたたちは。ここにいる全員そう。1人になるのが怖いから、誰かを標的にして自分が上に立っている気分になってる。私だってあんたたちにいじめられるのが怖くて白石さんのこと、今まで助けられなかった。けど白石さんと仲良くなってわかった。あんたたちみたいな奴らといるのは時間の無駄なんだって」

「なによ、それ」

高宮綾は不満そうに呟いた。

「ほら、何も言えない」

結花はそう言って高宮綾を見つめた。
高宮綾は結花から視線を逸らす。

「文句があるなら言い返したら。いつもみたいに」

結花はそう言って教室を見渡した。
誰も反論する者はいなかった。

工藤絵里は腕を組み、結花を見つめていた。

Re: 最後の林檎が落ちるとき ( No.6 )
日時: 2017/08/27 23:29
名前: ゆぅ (ID: cdCu00PP)

たまに思う時がある。

もしあたしの父親が殺人犯じゃなかったら、と。

そんなことを考えたところで、何が変わるわけではない。
それでも、考えてしまうのだ。

もしそうだったら、高校生のときイジメになどあわなかったのではないか、いや、あわなかったに違いない。

事実、高校1年の時は友達がいた。
父親の事件が露呈していなければその後もずっと楽しい生活を続けられたのではないか。

そう思ってならないのだ。

あたしにはいろんな可能性があった。
こんな人生のはずじゃなかった。

母親とは仲良くショッピングしたり、友達と遊んだり、恋人とデートをしたり、楽しいことがたくさんあったはずなのに。

父親が殺人犯、ということだけで人生が180度変わってしまった。

こんな日の当たらない場所で生きるはずじゃなかった。

あたしが生まれた時、世界は輝いていた。
それなのに、いつの間にか視界が真っ暗になった。

これがあたしの人生だ。

















携帯が鳴った。
まただ。
相手は警察だ。



ーーーーーーーーーーーーーーーーー


ある時、結花は学校に来なくなった。

LINEを送っても返事はない。

『しね』『ぶす』『ビッチ』
たくさんの悪口が書かれた机や椅子、教科書はそのままで、結花の姿はない。

「七海さん、来なくなっちゃったね?」

高宮綾はそう言って芽以を見た。

「どうしたのかな?あんな大口叩いてたくせに」

鈴木ありさはそう言うと結花の席に腰を下ろした。

彼女たちが話し始めると、教室はいつものように静まり返る。

「ありさたちがいじめるからだろ」

広瀬陽介は楽しそうにありさを見て言った。

「えーあたしたちー?」とありさ。

彼女たちの笑顔が今日はやけにはなにつく。

「ね、茜?」

工藤絵里は微笑みながら木崎茜を見た。

「あーんなビッチとさっさとお別れして良かったわね」

言われ、木崎茜は怯えた表示で俯いた。

情けない。

こんな状況でも、自分が何も出来ないことに腹が立つ。
結花は守ってくれた。
いつでも優しい笑顔で、芽以をたのしませてくれた。
それなのに。

芽以は思い切り机を叩き立ち上がった。

「…なに?結花みたいな演説でもする?」

高宮綾はそう言って芽以を見る。

芽以は高宮綾を見つめた。

「なによ、気持ち悪い」

「…ごめんなさい」

口に出てしまった。

「は?なにそれ?いじめないで〜ってことかな?」

鈴木ありさは馬鹿にするように言った。
クラス中が笑う。

「ごめんなさい…ごめんなさい…」

彼女たちに謝っているのではない。
結花に謝っているのだ。

今日も結花に送ったメッセージに既読はつかない。

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

家に帰ると、鍵が開いていた。
今日母は仕事で朝まで来ないと言っていたが戸締りを忘れたのだろうか。

靴を脱ぎ、家に入るとリビングは電気がついていた。

不審な表情をうかべ、芽以は恐る恐るリビングを覗いた。

リビングと繋がっているキッチンの方に足が見える。
椅子に座っているのか?

一体誰が…。

芽以はゆっくりと歩き出し、キッチンを覗いた。

そこには、前に来ていた母の新しい男の姿があった。

なぜ来ているのか。

「なに、してるんですか」

芽以がそう言うと、男は微笑んだ。

「あ、芽以ちゃん!待ってたよ」

男はそう言うと芽以の前まで歩いてきた。

「なんの用ですか?知ってると思いますけど母は今日仕事ですよ」

芽以がそう言うと、男は微笑み芽以に視線を合わせて言った。

「知ってるよ。だから来たんだもん」

言われ、芽以は「え?」と少し驚いた表情で彼を見た。

「今日は芽以ちゃんに会いたくてさ。だから帰ってくるの待ち伏せしてた」

「私を?私に何の用ですか?」

芽以はそう言って自分の部屋に行き、カバンを下ろすとベッドに腰をかけた。

男は芽以についてくる。
そして勝手にベッドに腰を下ろす。

「提案があってね」

「提案?なんですか」

「俺芽以ちゃんともっと仲良くなりたい。だから俺と遊ぼうよ」

言われ、芽以は「は?」と言ってからため息をつく。

「どうして私が名前も知らないあなたと仲良くならなきゃいけないの?私なんか味方につけなくても、母はあなたのこと相当気に入ってるから安心してください」

「俺は青田祐一。これでいい?」

「そういう問題じゃありませんから」

「仁美さんは確かに綺麗だよ。優しいし、俺もとっても大好きなんだけどー、俺まだ24だよ?」

青田はそう言って芽以を見る。

「自分で母を選んだんでしょ。別に年齢なんて関係ないと思うし」

「でしょ!年齢は関係ない。だから俺と仲良くしようよ」

「嫌です」

「冷たいな。芽以ちゃんだってもう18でしょ?たった6歳しか変わらない」

「だからどうしたの?私は仲良くする気なんてないから」

芽以がそう言うと、青田はより微笑んだ。

「じゃあ仲良くしなくてもいい。バイトしない?」

「バイト?一体なんの?」

「やっぱり。急に食いついた。芽以ちゃん、この家出たいんだろ?そのためには金がいる」

「なんでそんなこと…」

「見てればわかるよ。だからどうかな」

「だから、なんのバイトですか?それ次第です」

「変なものじゃないさ。1回5万でどう?」

青田はそう言って右手の三本指を芽以に見せた。

「1回って?なにを?」

「俺とヤろうよ。1回5万」

「は?やるわけないでしょ、そんなこと」

芽以はそう言って立ち上がる。
だが、青田は芽以の腕を引っ張り、芽以はそのままベッドに倒れた。

青田は芽以の上に馬乗りになって言う。

「悪くない話だろ?別にそんなおじさんじゃないし、俺」

「…離して。母親の男とヤる理由なんかない」

「いいの?一生この家で」

言われ、芽以はハッとした。
そんなのは嫌だ。
いいわけがない。

「あー、もしかして処女?だから嫌なの?」

「残念ながらそんなピュアな体じゃない」

「それは好都合。なら良いだろ、初めてじゃないし。君の人生はこんな狭い家の中に閉じ込められて終わるものだって言うなら、今すぐ俺から逃げればいい。こんな生活から抜け出して、太陽を拝みたいならどうすればいいか、わかるだろ?」

青田に言われ、芽以は言葉を失った。

何も反論できない。
その通りだ。

「俺なら君を救ってあげられる」

青田はそう言って芽以にキスをした。
芽以は抵抗することなく、何度と唇を重ねた。

青田の口は耳へ行き、首へ行き、ゆっくりと芽以の制服のボタンを開ける。

すべて開けると、芽以の胸にもキスをする。
青田はブラジャーを外し、シャツをベッドに下に投げると、右手で胸を鷲掴み、口で左側を弄る。

こんなの、初めてじゃない。
いいんだ、これで。

芽以はゆっくりと両腕を青田の背中に回し、2人は何度も何度も、強くキスをした。

Re: 最後の林檎が落ちるとき ( No.7 )
日時: 2017/09/23 20:29
名前: ゆぅ (ID: cdCu00PP)

ある日、結花の家を訪ねてみた。
チャイムを鳴らすと、はい、と声が聞こえたが結花の声ではないようだ。

「あ、あの…。私、結花さんと同じクラスの白石と申します。えっと…結花さん、いらっしゃいますでしょうか」

『ああ。結花は今寝ていると思うのでお引き取り頂けますか』

「寝てるって、その、寝込んでるんですか」

『…とにかく、帰ってください』

女性の声はそう言うとスイッチを切った。
芽以は落胆の表情を浮かべ、結花の家を離れた。

結花とはもう二度と会えないのだろうか。

芽以は通りかかった海辺のコンクリートに腰を下ろし、オレンジ色に染まった海を眺めながら思った。

その時、見覚えのある男を見かけた。
男は、海辺を走ってきて芽以の近くにあった荷物からタオルをとり汗を拭く。

男は芽以に気づき、芽以は目をそらした。
彼は同じクラスだ。
いじめてはこないが、1匹狼のように誰かと群れず、いつもなにを考えているかわからない。

「…あんた、何してんの?そんなところで」

男は、芽以の四段ほど下の階段に腰を下ろした。
芽以は驚いた表情で答えた。

「…いや、特には」

「ふーん。今から自殺でもしそうな顔してるけど?」

「…そうしちゃった方が、楽なんでしょうね。きっと」

「あっそ。まあどうでもいいけど。死ぬなら俺が帰ってからにしてよね」

「…そうします」

芽以はそう言って小さく笑みを浮かべた。
男は芽以の方を見た。

「…なんですか?」と芽以。

「いや、あんたの笑った顔、初めて見たから」

言われ、芽以は表情を元に戻した。
男はふふっと微笑む。

「私も、黒川くんの笑った顔、初めて見た」

芽以がそう言うと、黒川は驚いたように言った。

「こりゃびっくり。あんた俺の名前知ってたんだ」

「そりゃ知ってるよ、一応…。黒川夏樹くん、でしょ?」

「正解正解」

「あなたこそ、私の存在知ってたんだ」

「あんだけクラス中にいじめられてりゃ嫌でも知るよ」

「…いつもクラスにいないのに?」

彼はよく授業をさぼる。
たまに現れて、たまにいなくなる。

「ああ、別に興味ねーし。あんな連中」

黒川夏樹はそう言ってタオルで頭を掻き毟った。

「黒川くんは、私のこと軽蔑しないの」

芽以がそう言うと、黒川夏樹は微笑んだ。

「別に。どうでもいいし。それに、殺人犯はお前じゃなくて、お前の親父だろ?それもう別人だろ。工藤たちがなんであんなに騒ぐのか俺には理解できないね」

同じことを、結花にも言われた。
殺人犯はあなたではない、と。
芽以は結花のことを思い出し、俯いた。

「…結花も、同じこと言ってくれてた。お父さんとあなたは違うって」

芽以がそう言うと、黒川夏樹は「結花?ああ、七海」と相槌をうつ。

「…そう。さっき家に行ってみたけれど、会えなかった。私のせいで結花は学校に来れなくなったのに、私は何もしてあげられない。きっと私のこと恨んでる」

「お前さ、自分のこと何だと思ってんの?」

「え?」

「別に、七海が来なくなったのはお前のせいじゃねえだろ。工藤たちが、つーかクラス中があいつを標的にして嫌がらせしたからだろ?ましてや木崎まで七海を裏切ったりしてさ。別にお前のせいじゃねえよ。お前1人の力で七海がどうこうなるなんて、自意識過剰。俺は七海のことなんて何も知らねーけど、誰も味方のいなかったお前の味方になったんだ。お前以外の全員を敵に回してまでもな。そんな奴がお前のこと恨んだりとか、そんなこと思うと思うかよ」

言われ、芽以は黙り込んでいた。
驚いた。
黒川がこんなにも人をちゃんと見ていたことに。

Re: 最後の林檎が落ちるとき ( No.8 )
日時: 2017/11/12 23:03
名前: ゆぅ (ID: cdCu00PP)





2017.05.06

『事件があったアパートは現在封鎖されており、警察は犯人の特定を急いでいます』


ニュースで女性キャスターが言った。
映像には、アパートに群がる人がたくさん映っていた。


『非常に残忍な事件ですね。犯人は知り合いなんでしょうか?』

『そうですね、この手の事件は…』


テレビの中で出演者たちが勝手に討論をはじめている。


くだらない、そう思いテレビを消した。



しばらくあのアパートには誰も住まない。
誰も近寄らない。
近づくとすれば、バカな野次馬や探偵気取りの人間、あるいは犯人だけだ。

犯人は現場に戻ってくるというがあれは本当なのだろうか。

だとすればその犯人は馬鹿だ。










私は絶対にそんなヘマはしない。






芽以はベッドに腰掛け、頭を掻き毟った。







ーーーーーーーーーーーーーーーー

高校を卒業してからは家を出て、小さな病院で受付の仕事をしていた。

だが5年ほど経った頃、父のことが病院にばれてしまい居づらくなって辞めた。

それから2年間、バイトで食いつないでいる毎日だ。

あれから母とは会っていない。
今どこでなにをしているのかもわからない。
そもそも生きているのか、たまに気になる時がある。
だが連絡先も知らなければ住んでいる場所もわからない。
前住んでいた家に行ってみたことがあるが、既に引き払われていた。
母と会う手段はもう、偶然しか残されていないのである。

Re: 最後の林檎が落ちるとき ( No.9 )
日時: 2017/11/13 14:06
名前: ゆぅ (ID: cdCu00PP)


携帯が鳴った。
またあの九条とかいう刑事からだ。

芽以はため息をつくとすぐに電話に出た。


「…はい」

『あ、警視庁の九条です。白石さんですよね?』

「わかっててかけたんじゃないんですか?」

芽以は呆れたように答えた。

『あ〜すみせん。一応確認で。』

九条はヘラヘラ答えた。

「で、今回は何の御用でしょうか」

『またお話を伺えたらと思いましてね』

「だと思いました。またあの連続殺人事件の話ですか?」

『さすが勘がいい』

「どこに行けばいいんですか」

『1時に駅前のカフェはどうでしょう』

「わかりました」

芽以はそれだけ言うと電話を切った。

九条からの呼び出しは初めてじゃない。
これで3回目だ。






「もしもし?また九条さんに呼び出された。たぶん青柳さんも一緒」

芽以は電話をかけて言った。

「…わかった。うん。了解」

芽以はそう言って電話を切った。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「すいませんね、また呼び出しちゃいまして」

カフェに行くと、九条がいた。
隣には青柳の姿もある。

九条は30代くらいの男で、青柳は20代前半のまだまだ新人と思われる見た目の女。
確か、九条亮輔と青柳薫。


「いえ、手短にお願いします」


2人の用件に大体見当はついていた。
最近ここらで起こっている連続殺人事件のことだ。
この間ニュースで見たあの事件もまた、連続殺人の1つだった。


「白石さん、本当に犯人に心当たりはないですか?」


青柳が必死に問いかけてきた。
芽以は真顔で答える。


「すいませんけど何も」

「そうですか…」

すると九条が言う。


「白石さん、どうしてそんなに普通な態度でいられるんです?」

「どういう意味ですか?」

「高校の時のクラスメイトがもう5人も亡くなったんですよ。何も思うことはないんですか」

「…九条さんって、わたしの過去もどうせ調べてるんじゃないですか?」

「どういうことです?」

「わたしの高校時代のこと、知ってますよね」

そう言うと、九条と青柳は顔を見合わせた。
九条が静かに話し出す。

「…いじめに、遭っていたようですね」

「はい、そうです。あのクラス全体に。いじめられていた原因もきっと知っているんでしょ?そりゃ真顔にもなりますよ。だって、殺された5人に何の思い入れもないどころか、むしろ恨んでますから」

芽以は淡々と言った。

「恨んでるって、そんなこと言って、疑われるとか思わないんですか?」

九条は少し微笑んで言った。
芽以は少し微笑む。

「わたしが言わなくても疑ってるんでしょう?お2人は」

「いえ、そういうわけでは…」

青柳は言葉を濁した。

「いいんです。疑う材料がわたしには沢山ですから」

「僕たちは、白石さんを疑っているわけではないんです。…いえ、正確には、白石さんだけを疑っているわけではありません。殺された5人に関わる、すべての人間を疑っています」

九条が言った。


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