ダーク・ファンタジー小説

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DIARY
日時: 2017/10/22 20:42
名前: 己鳥 (ID: nHgoSIOj)  

己鳥なとりです 頑張ります!


 父ウィリスが隠していた日記を見つけたマイク•レッドボーン。 「Veronica's Diary(ヴェロニカの日記)」を読んでしまったため、殺人鬼であり吸血鬼の「ヴェロニカ」に追われる羽目に……
 

Re: DIARY ( No.5 )
日時: 2017/10/26 20:19
名前: 己鳥  (ID: nHgoSIOj)  

 [ 2 ]





 吸血鬼の中には、変身能力を持つ
者がいる。
 それは、レイモンドだ。

 ヴェロニカの見た目は、23歳の
ままである。
 吸血鬼は、肉を食べることで老化
を止めることができる。レイモンド
もヴェロニカとほぼ同じ年であり、
老化を止めたのも、ほぼ同時期。

 元のレイモンドの顔の方が好きよ。
今の、おっさん姿も格好良いけれど…
 元の方が、私は好き。

 レイモンドが顔を変えている理由。
それは、私もよく知らない。
 彼は「人間社会に溶け込みたいから」
なんて言うけれど、指名手配されて
いることを私は知っている。奴らに。
 名前は偽名だったから、逃げて
いられる。 
 今回は私たちを狙ってくるなんて。
ゆっくりしていられないわ。
 
 ヴェロニカは、廃墟となった洋館
で1人、レイモンドの帰りを待っていた。





 マイクは不思議な感覚の中にいた。

 世界が大きくゆがみ、フラッシュ
バックのように様々な情景が断片的
に映し出される。

 血まみれのレイモンド。

 腕のないヴェロニカ。

 父さんと食事をするヴェロニカ。

 母さんと話すヴェロニカ。

 洋館に入って行く父さんと母さん。

 何かを叫ぶヴェロニカ。

 日記を持つ父さん。

 美しい女性の石像。

 
 何かが繋がりそうで、繋がらなかった。

Re: DIARY ( No.6 )
日時: 2017/10/28 19:41
名前: 己鳥 (ID: nHgoSIOj)  


 [ 3 ]





 ひどい頭痛でマイクは目を覚ました。

 意識がもうろうとする中、追い討ち
をかける様に「雑音」が彼を襲う。
 その雑音が「雨」と「雷」の音
だと気づくのに、そう長くはかから
なかった。
 マイクはゆっくりと起き上がる。

 不思議な夢を見た。
 内容は思い出せなかったが、
「不思議」という気持ちだけが
残っている。そんなことを思いながら、
マイクはあたりを見渡した。
 

 「は?」


 マイクが寝ていた場所。
 そこは、父ウィリスの部屋では
なかった。まったく違う………


 「なんで」


 硬い床。  冷たい壁。
 なにより、ここがどこなのか
わかる、決定的な物がマイクの目
の前にあった。

 鉄格子。

 まるで牢獄みたいじゃないか!
 鉄格子を握り締め、叫んだ。


 「誰かー! 誰かいないのか!
 助けてくれー! 誰かー!
 ここら出してくれよー!!!
 …誰か……助けて…………」


 段々と声が出なくなり、やがて
 鉄格子から手が離れた。

 返事は返って来ない。ただ不気味
な風の音が聞こえるだけだった。

 
 マイクの頭に、嫌な言葉が浮かぶ。

 誘拐。  監禁。  殺人。
 
 死ぬ。 このまま出ることができ
ないと、俺は死んでしまう。
 餓死するのか? 殺されるのか?
 
 
 死。死。死。死。死。死。死。

 
 死、というものを初めて考えた。
 これが、何かのゲームであって
欲しい。ドッキリや罰ゲームで
あって欲しい。

 絶望したマイクに1人の女が声を
かける。女は「熊」のお面をつけて
いた。


 「あのぅ。お腹はすいていますか?」

 「うわぁ!」


 突然話しかけられ、驚くマイク。
 いつもなら可愛い熊のお面だが、
今回ばかりは、恐怖としか思わなかった。
 それ以上に怖かったことは、この
硬い床の上を物音一つたてず歩いて
きていることだ。



 「誰だお前。ここら出せ」


 不気味なぐらい明るく女は喋る。

 
 「お腹はすいていますか?」

 

Re: DIARY ( No.7 )
日時: 2017/10/30 19:55
名前: 己鳥 (ID: nHgoSIOj)  



 もし、この可笑しなお面をつけた
女の行動の意味がわかる人がいるの
なら、どうか俺に教えて欲しい。

そして、ここから出して欲しい。



 「お腹はすいていますか?」に
対して、俺はまだ何も言っていない。

 なのに………。

 誰か助けてくれ…。
 そう思うマイクの前には、アツアツ
のスープとカリカリのパン。そして
水が置かれていた。
 
 質問の意図がわからず、唖然として
いたマイクをおいて、女は走って
行った。かと思うと、食事の置かれた
トレイを持って、すぐに戻って来た。
まだ食事に手をつけていない。
 その様子をじっと見ていた女は
残念そうに言った。


 「食べないんですかー?」

 「当たり前だ。毒が入っている
 だろう。俺はわかってる」

 「でも…。朝と昼、何も食べて
 ないですよね? お腹すかないん
 ですか?」

 「は?」


 なんで。 なんでこいつ、食べて
ないことを知ってんだ! 朝は食べて
ないが……。昼も? それが本当
だったら、俺はどれだけ寝ていたんだ。

 女は続けて話す。


 「それに。毒なんて入ってないで
 すよ!今、わざわざ毒で殺すと
 思ってるんですか?殺そうと思えば
 いつでも殺せますよ。でも……」


 女は熊のお面をとる。
 俺と同じ年か? マイクには同
年代に感じられた。


 「……私はあなたを殺せないです。
 殺すのは、あなたのお父さんですよ。
 そう、言われてますから…」


 燃えるように赤い目。白い肌には
そばかすが。長い金髪をポニーテール
にした、彼女はニコリと笑う。
 言った言葉と正反対の笑顔をみせた。

 
 「…誰を。誰を殺すって」

 「ウィリス・レッドボーン。
 あなたのお父さんですよね?」


 意味がわからない。誰かから、
恨みで買っていたのか? 別に金持ち
でもない。目的は、何なんだ!


 「言われてるって、誰にだよ。
 なんで俺が監禁され! 父さんが 
 殺されるんだ!!!」


 女は少し顔を赤らめ、鉄格子を
つかみ、マイクの顔の近くまで寄る。
 そして、うっとりしながら言った。


 「誰って…ヴェロニカ様ですよ!!
 あの人を騙した奴を殺すんです!
 嗚呼…ヴェロニカ様。憎き男の
 子どもに食事を与えようとする
 なんて、優しいお方…」


 ヴェロニカ。その名前を聞いて
やっと目がさめた。
 あれは、夢なんかじゃない。
嘘じゃなかったのか。日記を読んだ
んだ。ヴェロニカを見た。
 父さんとヴェロニカ。なんで父さん
は隠していたんだ。殺されるような
ことをしたのか?
 女の目が変わった。

 ブツブツと何かを呟くと、ゆっくり
歩いていく。


 「お、おい!どこに行くんだよ!
 本当に父さんを殺すのか!」
 



 女は足を止めず、闇に消えた。

 

 


 女は階段を上がり、部屋の扉を
ノックした。


 「ヴェロニカ様。戻りました」

 「入っていいわよ」


 中から声が聞こえると、静かに
扉を開けた。部屋には、美しい女性
が、真っ赤なドレスを着て窓を眺めて
いた。


 「ジェシカ。ウィリスの子どもは
 どう?怯えていたかしら。うふふ。
 あの子のおかげで、蘇ることができた
 のだから、感謝しないといけないわ」

 「本当にあの子どもが、ヴェロニカ
 様を蘇らせたのですか?どうやって
 です?」


 ジェシカは熊のお面を机に置く。
 ヴェロニカは振り返り、微笑んだ。
 ジェシカは、彼女の美しさに思わず
目を伏せてしまった。


 「日記。私の日記よ」


 ジェシカはびっくりして聞いた。


 「日記なんかで、封印されていた
 者が蘇るのですか!?」

 「ええ。私の親友が日記に呪いを
 つけたの。<持ち主以外が日記を
 開くかぎり、持ち主は死なない>
 なんてものをね。あの子は日記を
 開いた。だから、わたしたちがここ
 にいるのよ」


 


 マイク!無事でいてくれ!

父さんが絶対に助けてやる!
 
 今度こそ、ぶっ殺してやる。

 待っていろ。ヴェロニカ。



 ウィリスは、雨が降っているの
にもかかわらず傘をささずに走った。

 隠れた、洋館を目指して。


 
 

Re: DIARY ( No.8 )
日時: 2017/11/01 17:09
名前: 己鳥  (ID: nHgoSIOj)  



  
 [ 4 ]







 鍵がかかっていない扉を開けると、

少し胸騒ぎがした。


 絶対に鍵をかけるよう、何度も
 
言っていたのに。



 「マーイク。帰ったぞー」


 人気がない。いないのか?
いや、そんなはずはない。

 何かあれば、連絡があるから。


 「マイク?どこにいるんだ?」


 呼びかけるが、返事がない。
部屋にいるのかもしれないな。



 ウィリスは階段を上がり、マイク
の部屋に行く。扉をノックするが、
反応はなかった。
 仕方なく、ドアを開ける。

 そこには、いつもどうりの家具が
置いてあるだけ。
 

 「どこにいるんだ」


 マイクの部屋をでると、あること
に気がついた。


 自分の部屋のドアが少し開いて
いる。
 ウィリスは不思議に思いながら、
息子がいることを願ってドアを開けた。


 「マイク?」


 部屋の中は 真っ赤だった。


 「あ、ああ……」


 嘘だろう。最悪だ…。

 日記が、机の上に。マイクは読んで
しまったのか。
 ウィリスは震える手で日記を
持つと、壁に書かれた文字を見た。

 ヴェロニカ、一度愛した女。

 彼女は死ぬまで、私の事を許さ
ないだろう。 自分がした事を後悔
した事はない。

 ただ、私の仕事をするだけだ。




 吸血鬼はこの世にいてはならない。



 ウィリスは、持つべき物をもって
家をでた。

 壁の文字。
 「You traitor」

 裏切り者。


 「殺してやるわ。この裏切り者。
 私を…コケにしてくれたわね。
 順番に殺すわ。……愛する者から」


 昔の記憶だ。
 壁には、懐かしい言葉が書いてあった。


 

ウィリスは、昔殺し合った洋館に
向かって、走っていた。




 一方、その頃マイクは…

 「うま」


 マイクはスープを一口飲んでいった。

 あまりの空腹感にたえられなかった。
 それにしても美味しい。いやいや、
ここから出る事を諦めたわけじゃない。


 食べつつ、考えている。ちゃんとな。

 父さんとヴェロニカの関係が気に
なるが、今は出る事だけを考えよう。


 ああ…


 「助けてくれー」

 

Re: DIARY ( No.9 )
日時: 2017/11/17 19:43
名前: 己鳥 (ID: nHgoSIOj)  




 [ 5 ]














 「やぁ、少年」






 「おや?驚かないのかい?」


 いや、驚きでいっぱいだ。足音を
たてずに歩ける奴がいすぎだ。


 「誰だ」


 青いメッシユがはいった短い黒髪。
大きな丸メガネ。耳には、「十字架」の
ピアス。不思議な女は笑いながら言った。


 「誰だ、と聞かれて何を言えば君が
 満足するのか、私にはわからないよ。
 聞きたいのは名前か?それとも、
 職業?自己紹介はどうも苦手でね。
 申し訳ない」


 笑って続ける。


 「君。人に質問をする時は、答え
 やすく、明白にしないといけないよ。
 さて……」

 「質問を」


 この女のペースにのせられてしまい
そうで、マイクは怖かった。
 どうして、ここにいる?何で……。


 「どうしてここに?か。いい質問だが
 答えてしまうと面白くない。
 ノーコメントということで……次の
 質問を頼む」

 「まだ、何も言ってな…」

 「いいやしたさ。ついさっきな。
 自分のこともわからないのかい?
 はやく質問を」

 「は、はぁ…」

 「じゃあ、名ま…」


 女はドスンと座り込んで、あぐらに
なった。


 「ユウ・ミシロだ。質問しなくても
 いいぞ。日本人さ。ちなみに医者だよ」

 「驚いたかい?」


 ユウ・ミシロ。話している途中に
いきなりしゃべるのをやめてほしい。
 それに、やけにムカツク話し方だ。
 ユウ・ミシロは、慌てたように腕時計
を見て、立ち上がる。


 「おっと。時間がかかりすぎたな。
 君にヒントをあげるよ、マイク君」

 「!なんで、名ま…」


 ミシロは、順番に指を立てて言った。


 「ここから出たいなら、私の言う事を
 よく聞くんだ」

 「1.ここにルールは無い。常識に
 とらわれるな。

 2.イカれた奴は1人だけだ。こいつ
 はできるだけ避けろ。

 3.動け。行動しろ。

 わかったかい?それじゃあ、私は
 もう行くよ」

 「あぁ、後私のことは誰にも言わない
 で欲しい。特に人間にはな。それと…」

 「?」

 「敬語を使いたまえ」


 呆然としたマイクをおいて彼女は
暗闇に消えていった。











 常識にとらわれるな。
 イカれた奴を避けろ。
 動け。


 「動け。行動するんだマイク。
 ここから出るぞ」


 マイクはグルグルと辺りを歩く。


 「ユウ・ミシロ。何で俺にヒント
 なんかを…」

 鉄格子を見つめる。


 「常識に、とらわれるな………」

 「行動しないと」


 マイクは、鉄格子をグッと掴み、
 「横」に動かした。


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