ダーク・ファンタジー小説
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- 赤色の瞳
- 日時: 2018/11/10 20:57
- 名前: 青りんご (ID: o4cexdZf)
——傷だらけの服を身にまとった老人は剣を両手に持って漆黒の竜とにらみ合っている
人の死体がたくさん転がり、その老人以外に人の姿は見えない。空はなぜか紫色に染まっており、遠くの方では雷の音が聞こえる。
にらみ合っている光景はゾウとアリが並んでいるようなもので、体の大きさはもちろん力のほうでも老人が勝っているとは思えない。
その老人は目を閉じ、心を落ち着けた。
目を開けた刹那、老人は勢いよく一歩を踏み出し漆黒の竜に向かって走っていく。風のように走る。声をあげ、老人とは思えないほどのスピードで竜に突っ込んでいく。老人は剣を構え竜を切る——はずだった。
老人の体はいとも簡単に弾き飛ばされる。
何が起きたのかわからない。竜は微動だにせずそこにいるだけだが、老人は不可視の攻撃に圧倒される。
傷だらけの服がさらに汚れ、破れ、千切れる。
勢いよく体中を擦りながら、後ろの方へ転がっていく。だが吹き飛ばされてもまだ老人は立ち上がった。
竜は格の違いを見せつけ、老人を見下している。しかし竜の表情が少し乱れた。
老人は覚悟を決める。
剣を地面に置き、注射針と漆黒の液体を取り出した。注射針を自分の腕に刺し、黒い液体を自分の体の中に注入する。すると老人は苦しい表情になり、頭を抱えてわめきだす。目を見開き、体中に力を入れ何かと必死に戦う。そして落ち着いたかと思うと、今度は勢いよく地面に倒れる。
しばらくしてゆくっりと起き上がる。
竜はその顔を見た時、目を見開く。
——その老人の瞳は赤色に染まっていた
- Re: 赤色の瞳 ( No.4 )
- 日時: 2017/12/16 10:54
- 名前: 青りんご (ID: o4cexdZf)
俺とヤマトは一時間ぐらい話し続けて、仲良くなれたような気がしていた。俺は人と話すのが苦手だが、ヤマトは人と話すことに慣れているらしく終始話が途切れることがなかった。
「ヤマト君って人と話すの上手いね」
「そうかな。でも今までそんなこと言われたことないけどね」
微笑をもらしながらそう言う。
俺の場合は友達を作ろうと思っても共通の話題がある人としか仲良くなれないが、彼のコミュニケーション能力なら誰もが彼とまた話したくなるような魔法にかけられる。
「でも話すのがうまいのは羨ましいなあ。俺はどっちかっていうと話すのは苦手だからさ」
「誰にでも欠点はあるからね」
微笑みながらそう言った。
「そういえばヤマト君って暇な時は何してるの?」
ヤマトとの接し方に少し慣れた俺は自分から話題を切り出す。
「僕はそうだな……最近はカラオケによく行ってるかな。ユウリ君は何してるの?」
「俺はひたすらマジックの研究かな。まだ最近やり始めたばっかだけど」
そう言ったが実際は一年以上前からマジックを研究している。期待に応えれるか不安だったのでやり始めたばっかの設定にしておいた。
「マッジクはあんまり知らないんだよね。今度教えてもらってもいいかな?」
「うん! いいよ」
マニアックな趣味に興味を持ってもらい、たまらなく嬉しい気持ちになった。
「俺もヤマトのカラオケ聞いてみたいな。俺は歌得意じゃないけど」
「いいよ。でもあんま期待しないでね。点数は取れても歌声には自信がないからさ」
お互いの趣味を見せ合う約束をして、二人の間の距離が縮まったのを実感できた。
「話変わるけど少し相談にのってもらえるかな?」
顔が真剣な表情になり、楽しい話ではないことを感じ取る。
「うん。俺でいいっていうなら」
「ユウリ君にしか頼めないからちょうどよかった」
膝の前で手を組み、俺の顔を見る。
「今僕たちのグループはグループとは言いながら個人個人が孤立して行動してるよね。取り残された集まりだから仕方のないことだけどさ。でも同じグループになってしまった以上は現実から目を逸らすんじゃなくて現実に立ち向かっていく方がいいと思うんだよ。だから時間をかけてでもいいからグループの中で交流をして仲良くなる努力をした方がいいと思うんだけどユウリ君はどう思う?」
ヤマトの瞳に俺の顔が映り、目と目を互いに見つめている。
「俺も同じ意見だよ。一生共に過ごすんだから楽しいと思える一生にしたい」
強く、固く、男らしく、誰にも捻じ曲げられることのない自分の意志をヤマトに示した。
「じゃあ決まりだね」
互いの気持ちを確認した後、二人で作戦を考える。
「よし、じゃあまずは——」
部屋を出て目的の人物はすぐ目の前にいた。
「——ねぇ、どこにくの? 私も一緒に行ってもいい?」
肩まで伸びている長い黒髪に美貌を持ち合わせている少女はもう一人の少女に優しく、明るい口調で話しかけている。だがそんな彼女の奮闘は——、
もう一人の少女は無言で逃げるようにその場を去り、少女が一人取り残される。取り残された彼女は下を向き、深いため息をつく。
そんな彼女を見て胸が苦しくなった俺たちは彼女に歩み寄る。彼女は振り向き、美しい黒髪が揺れる。
「やあ。僕たちも君の手伝いをさせてもらっていいかな?」
ヤマトが笑顔を浮かべながらそう言い、俺たち三人の話し合いが始まった。
- Re: 赤色の瞳 ( No.5 )
- 日時: 2017/12/16 10:53
- 名前: 青りんご (ID: o4cexdZf)
長く伸ばした黒髪が特徴的な少女——ミサキとは案の定打ち明けることができた。ミサキもグループ内で交流をした方がいいと思っており、そのこともあってもう一人の少女に話しかけていたという。だがミサキに対しての対応が冷たく、会話らしい会話をしたことがないらしい。そしてもう一人、問題の少年がいた。ヤマトとミサキはこの三日間彼の姿を一度も見たことがないらしい。俺は部屋に戻ってきたとき偶然鉢合わせたことがあった。その時俺はこんな機会はないと思い自己紹介をしようとしたら俺を突き飛ばし廊下の方へ行ってしまった。どこに行っているのか知らないが自分の部屋にいることは少ないと思う。そんな二人と交流をするのは至難の業だ。
「その不良みたいな子は私最初のグループ決めの時しか見たことないよ」
ミサキは手を口につけそう言った。
「僕も同じだよ。前部屋をノックしてみたけど出てこなかったし」
ヤマトの度胸のある行動に驚きながら話を続ける。
「俺は話しかけてみたたんだけどどけって言われて話ができなかった」
「その子ってその後どこに行ったか分かる?」
「いやごめん、見てなかったからわからない」
「そっか、でもどこかに行ったっていう情報がわかったからその収穫だけで充分成果があったと思うよ。でもどこに行ったのかがわかれば少しは変わるかな」
「そうだね。まず彼の趣味とか特技とかがわかれば多少話ができるかもしれないね」
三人に増えた俺たちのグループは心強く、なんだってできるような気がした。
「やっぱりこの二人と仲良くなるには時間が必要になるよね」
「まあそうなるよね」
俺は苦笑しながらミサキの発言に同情した。
「でも俺はできる限りのことはしてみるよ。時間がかかるにしても早いにこしたことはないし」
「うん、私も頑張ってみる。もう一人じゃないし心強い味方がいるから」
「僕も力になれるかわからないけど頑張ってみるよ」
コミュ力の高いヤマトがそんなことを言っては俺はどうすればいいのか。そんなヤマトに俺は——、
「頼りにしてるぜ、先輩」
肩をたたいてそう言った。
「いつからユウリ君の先輩になったのかな」
少し笑みを浮かべながらそう言った。
「人と話すことに関してはヤマトの方が上に決まってるじゃん。でもマジックに関しては俺が先輩だからな」
「はいはい、そうだね」
砕けた雰囲気になり、みんなの顔に笑顔が浮かんでいた。
「ユウリ君ってマジック得意なの? 今度私に見せてくれるかな」
ミサキは俺の発言に食いつき興味津々に俺の顔を見てくる。
「おう、いいよ。難易度の高い技を練習してくるわ」
「楽しみにしてるからねユウリ君」
満面の笑みで俺にそういう。
少しハードルを上げすぎたかもしれないが、その方が気が抜けなくていいかもしれない。
「ミサキは休みの日とか何してるの?」
俺はまたしても初めての人との会話の鉄板ネタをぶつける。
「私は毎週土曜日に水泳に行ってるよ。あとショッピングモールの服屋見たり、カラオケ行ったりしてるかな」
「奇遇だね。僕もカラオケは毎週行ってるよ」
「ヤマト君もカラオケよく行くんだね。どこのカラオケに行ってる? あとどんな曲が——」
盛り上がるカラオケの話に俺は口を挟むことができず無言で話を聞き続けた。
- Re: 赤色の瞳 ( No.6 )
- 日時: 2017/12/17 14:57
- 名前: 青りんご (ID: o4cexdZf)
カラオケの話が一段落し、俺も加わり再び作戦を考え始めた。
「みんなで一緒に遊べるものとかないかな?」
「いきなり遊ぶのはちょっと早いんじゃない?」
「そうかもね。まずはお互いのことを知ることから始めた方がいいと思うよ」
それぞれの意見をぶつけ合い作戦会議が円滑に進んだ。
「女の子の方は私がなんとかしてみるよ。あんま大人数で押しかけてもかえって逆効果だし」
「そうだね、まずミサキとあの子が話せるようになってから俺たちが話した方がいいかな」
「うん、じゃあ僕たちは男性の方を頑張ってみるよ」
ヤマトはそう言ったものの不良の少年と一筋縄では仲良くなれるとは思えない。それをヤマトならどうにかしてくれるのだろうか。そこらへんはまだ未知数だった。
こんな感じで話し合いが終わり、ぞれぞれの部屋に戻った。俺は不安になりながらも仲良くなれるように最善を尽くす——、
「——僕はヤマトって言うんだ。君の名前は?」
「——あ、その服かわいいね。どこで買ったの?」
「——おはよう。朝ごはん一緒に食べない?」
「…………」
ヤマトたちと作戦を考えてから四日間、俺たちの懸命な努力と結果はまったく釣り合わない。名前だけはなんとか聞き出すことができて、多少なり成果があった。
——髪が逆立って不良にしか見えない少年の名前はアキラ。
——茶色の髪を後ろで結び、小柄な少女の名前はレイナ。
訓練開始まであと一日。多くの人はこの最初の六日間は遊び尽くして過ごし、この最後の日に訓練に必要なもののを急いで準備している。なのでこの日は廊下を歩いていてもあまり人を見かけることがなかった。なかには準備をほったらかして遊んでいる人もいた。
最後の一日も同じくアキラとレイナに積極的に話しかけ、距離を縮めれるように努めた。
「レイナちゃん、おはよう」
笑顔を浮かべ元気にあいさつをする。
「……お、おは……よぅ」
わずかながらレイナの声が聞こえた。
その後レイナは少し顔を赤らめ、すぐに自分の部屋に戻ってしまう。そんな可愛らしい行動を見せ、ミサキは少しだけ彼女との距離が縮まった気がした。
ドアをたたき部屋からの返事を待つ。
手汗がにじみ出て、返事があるまでの間緊張が続いた。今すぐにでもこの場を立ち去りたかったがもう後戻りはできない。
俺の心臓の鼓動だけが聞こえる。
返事はなく、アキラはどこかに行っているのだろう。
少し落ち込んだがだすぐに気持ちを切り替える。
「ヤマト君、アキラ君部屋にいないみたい」
「そっか……今日も無理そうだね」
残念そうな顔をしながらヤマトはそう言った。
「でも、もう明日から訓練始まっちゃうなあ。どうすればいいかな?」
「——でも仲良くなるにはいいチャンスじゃないかな?」
「えっ……」
ヤマトの考えがわからず思わず声を出してしまう。
「一緒に同じことをすれば話す機会も増えるし、何よりチームでやることだと協力しないとできないこともある。だから強制的にみんなでやらされる方が今の状況だとレイナとアキラと交流することができるんじゃないかなと思ってさ」
しばらく沈黙が続き、
「先輩すげーな。頭もいいんだね」
「そんなことないと思うけど。あと時々先輩呼ばわりされるんだね」
「ああ、コミュ力と頭の良さはヤマトの方が上じゃん。でもマジックに関しては——」
「はいはい、そうですね」
お決まりのパターンでいこうと思ったが、ヤマトの妨害により言葉が途切れてしまう。
「最後まで言わせろよ!」
俺はツッコミを入れつつ、部屋に戻り明日に向けて準備をした。
- Re: 赤色の瞳 ( No.7 )
- 日時: 2017/12/21 18:18
- 名前: 青りんご (ID: o4cexdZf)
明日の準備を終え、俺は部屋でひたすらマジックの研究をしていると——、
「ユウリ君、入ってもいいかな?」
ドアが叩かれ俺は返事をしてドアを開ける。
ドアの向こうにはミサキが姿があった。
少し驚いたが部屋の中に入れベットに二人で座った。
「何やってたの?」
俺の顔をのぞき込んでそう尋ねた。
目と目が合い、俺は少し顔を赤らめる。
肩まで届いた黒髪と可愛らしい顔立ちはモデルをやっていてもおかしくないほど美しく、少し見とれてしまう。
「あ、さっきまでマジックの研究してた」
我に返りそう返事を返す。
「今見せてもらうことってできるかな?」
「あ、いいよ。じゃあちょっとドアの方向いてて。準備するから」
「うん、わかった」
そういいミサキはドアの方を向く。
俺はコップと水とコインを用意する。何をするかというと水の入ったコップにコインを貫通させるマジックだ。友達に見せてもかなり盛り上がり、嬉しかった記憶がある。
「準備できたからいいよ」
そう言うとミサキは振り向いた。
俺はマジックを女子に見せるのは初めてでかなり緊張している。だがミサキの期待を裏切るわけにはいかない。
深呼吸をし、成功して盛り上がる未来を想像する。
「それではまずコップに水を入れます」
水の入ったペットボトルを持ちコップに注ぐ。いつもと違いペットボトルが重く感じる。
手が震えながらも水を入れ終える。
「そしてここに一枚のコインがあります。今からこのコインをこの水の入ったコップの中にいれたいと思います。一瞬の出来事なのでよーく見ててくださいね。……じゃあいきます」
ミサキは真剣に俺の行動を見つめている。その興味の示し具合に嬉しさを感じつつ、コインを貫通させる——、
「——おおー! すごいユウリ君!」
歓声と拍手が聞こえ俺は安心する。
「今のどうやってやったの? えっ! どうなったの今?」
ミサキは驚き、かなり動揺しているよう。マジックは驚いてもらってこそやりがいのある娯楽なので、その趣旨に沿った反応をしてもらいとても満足している。
俺はミサキの新鮮な反応に思わず吹き出してしまう。
「ちょっと笑わないでよ」
明るく言い返す。
「いや、ごめん。反応があまりに面白くて」
笑ったままそう言う。
そういえば最近あまり笑うことがなかった気がする。それもそのはず。両親が死に一人取り残された俺は両親の死を認められず、ずっと自分と戦ってきた。その状態からなんとか立ち直り、それからすぐに訓練所に連れていかれ今に至る。
久しぶりに幸せを感じた瞬間であった。
「ま、まあ俺は超能力者だからな。こんぐらい余裕余裕」
「超能力なんかこの世界にないでしょ。でもすごかったよ」
笑顔でこちらを見てくる。
改めてそう言われると恥ずかしくなり視線をそらす。
ミサキの方を一瞥する。
ミサキは俺の方ではなく俺の机にある写真を見ていた。
それは俺たちの家族写真だった。
そこには祖父の姿もあり誰も欠けていない状態で、全員が写っている唯一の写真だった。これは俺にとって一番大事な形見であり、両親と祖父の顔を見ることができる唯一の手段である。
写真に写っている両親と祖父の姿が消える。そして——、
俺が一人写った写真が三人に増えていた。
- Re: 赤色の瞳 ( No.8 )
- 日時: 2017/12/24 11:22
- 名前: 青りんご (ID: o4cexdZf)
ミサキとの交流も終わり、時間が過ぎとうとう訓練が始まる日になっていた。
俺は訓練の準備はとっくに終わっていて、俺は何の焦りもなくこの日を迎えた。
時刻は六時。朝日が少しだけ見え涼やかで気持ちのいい朝だ。訓練は七時から始まるので、この一時間の間に食事や身支度を済ませなければならない。
学校に行っていた頃を思い出す。
俺は学校は嫌いな方だったが休まずには行っていた。友達はそれなりにいてよく遊んだりしていた。だが——、
メガソフィアが現れ学校に行けず、しかも俺は家族を失った。
それから友達とは会えず、安否は不明だった。ここの訓練所に友達はいなく、ほかのところにいると信じている。
そして、みんなの話し声を聞きわかったことが一つあった。
それはメガソフィアの被害が自分の関係者に及んだのはごくまれな例らしい。「お父さん」とか「お母さん」といった単語をよく耳にしたのが理由だ。
そして最初のグループ決めの時、俺たち五人以外はすぐに五人グループを作っていた。たぶんグループからハブられないようにこの時より前から奪い合いが始まっていたのだ。これは友達がいてこそできることだ。そこから友達を失っていないことがわかる。
その事実を知りさらに俺は孤立してしまった気がした——。
だがそんな俺でも今は達と呼べる存在がいる。友達もいなくて家族もいない。そんな俺に再び友と呼べる存在が現れたのだ。嬉しくもありもう失いたくないという責任や不安を感じていた。
俺は訓練所の制服を着て、部屋を出る。
「おはよう、ユウリ君。昨日はよく眠れたかな?」
そこには丸い眼鏡をかけて笑顔で迎えてくれている少年が立っていた。そして——、
「おはよう、ユウリ君。今日から訓練がんばろうね」
長い黒髪を揺らして、俺の顔を笑顔で見つめてくる美しい少女が立っている。
「——おはよう。ミサキ、ヤマト」
幸せを感じながら俺も挨拶を返す。
そして辺りを見渡す。
ミサキとヤマトも俺と同じデザインの服を着ていてよく似合っていた。
やはりレイナとアキラの姿はなくまだ課題は残されている。
「じゃあ、ユウリ君、ヤマト君。ご飯食べに行こ」
「うん、そうだね」
「おう、訓練もあるしここでエネルギーを蓄えて、エネルギー切れにならないようにしないとな」
笑顔で二人は俺に返事を送る。
「でも、訓練ってかなりきついらしいよね」
「そうらしいね。僕も調べたけどけっこうハードなメニューだった」
そんな言葉を聞いたが、俺はそこそこスポーツはできる方だ。
大丈夫だ、と心の中で唱える。
「ユウリ君は訓練について何か聞いたりした?」
「あ、いや何にも聞いてないや。でも俺は大丈夫だ。体を動かすのは嫌いではないし、なんていったって俺はマジックができるからな」
「マジックと訓練って関係ないよね……」
「でも、ユウリ君のマジックすごかったよ。もうなにがどうなったのかわからなかったよ」
話がだいぶ脱線したがここからミサキが少し天然なことがわかる。
さっきみたいに余裕ぶっていた俺だが、訓練を受け絶望し再び俺の前に大きな壁が立ちふさがる。