ダーク・ファンタジー小説

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鏡姫
日時: 2018/03/11 15:53
名前: 紫乃 (ID: z1wKO93N)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel1/index.cgi?mode=past&no=33062

おはようございます、こんにちは、こんばんは!

紫乃というものです。

昔々、大昔(といっても5年ほど前)にコメディ・ライト小説(旧)の方で華憐として執筆しておりました。
久々に今度はダーク・ファンタジーを書いてみようと思い舞い戻ってまいりました。
5年間で何が成長したのかはよくわかりませんが、小説を楽しんでいただけると幸いです。
過去の作品URLも参照部分に掲載しておきますのでよろしければお読みください♪

【あらすじ】
ランデル王国ーーそれは世界で最古の王国。
その国では代々最初に生まれた男子が国を治めるしきたりであったが、とうとう女子しか生まれず長年の討論の末にランデル王国の歴史で初めての女王が誕生することが決定した。
次期女王の名はソフィア・ヴァン・ランデル。
現在16歳であり、18歳の誕生日と同時に即位することになっている。
そんな彼女の婚約者は王国内で最も権威のある貴族の長男、ルドルフ・レイ・マクリア侯爵だ。
彼は彼女の2歳年下で14歳ではあるが、稀に見る天才と称され王立学園でもトップの成績を修め飛び級をしたのち、大学に通う。
そして彼は卒業し、いよいよ彼女の女王デビューの準備が始まろうとしていた。
全ては順風満帆のように見える。
しかし、そうではないことを次期女王は感じていたーー。

【登場人物】
ソフィア・ヴァン・ランデル
:次期女王。まっすぐな黒髪にアメジスト色の瞳が印象的な美少女。王家の秘密を抱える。
ルドルフ・レイ・マクリア
:ソフィアより2歳年下の天才。ソフィアの婚約者であり、彼女に心底惚れ込んでいる。
アベル
:ソフィアの執事
マーガレット
:ソフィアの侍女長
メンデル
:ルドルフの執事
ウィズ
:平民から奴隷の身に転落したソフィアと同じ容姿の女の子。主人を殺し、その息子に命を追われる。
主人
:ウィズの所有者。彼女に殺される。
ノーター
:主人の息子。貴族だったが平民となる。父を殺したウィズを探す。

【目次】
第1話 >>1
第2話 >>2
第3話 >>3
第4話 >>5
第5話 >>6
第6話 >>7

【過去作品】
恋桜 【Cherry Love】

Re: 鏡姫 ( No.1 )
日時: 2018/03/06 00:31
名前: 紫乃 (ID: z1wKO93N)
参照: https://kakuyomu.jp/works/1177354054885314547/episodes/1177354054885314669

第1話 赤扉の部屋

 ーーなんて彼女は変わっているんだろう。

これが初めて彼女と会話した時の僕の率直な感想だった。

昔から天才だと持て囃されて育った僕は高飛車になるどころか人間に嫌気すら覚えていた。

「そのうちに大物になるから今のうちに取り入っておこう」という卑しい考えが丸見えの者ばかりが僕を取り巻いていた。

そんな折、僕が6歳になる頃、父から次期女王と結婚せよとの命令が下った。

王家からの命令なため拒否できるわけではないことを僕はよくわかっていたし、貴族としての地位を確固たるものにするためにも重要なステップであることも認識していた。

それに現在の地位及び年齢からいっても僕に結婚の打診がくることは時間の問題であることもわかっていた。

しかし、乗り気ではなかった。

パーティーで出会う令嬢たちを見ていれば貴族の女がどのようなものか知っていたからだ。

いや、結論から言えば知っているつもりだった、が正しいのだが。

 そういうわけで、嫌々ながらも持ち前のポーカーフェイスで城へ行き、初めて彼女と対面することになった。

初めて至近距離で見た彼女は大変に美しく儚い様子だった。

腰まで伸ばされたまっすぐな黒髪に大きなアメジストを埋め込んだような瞳。

薄い桜色の口紅がよく似合う、まさに天界から召されたような女神のような人だった。

これから年を重ねるごとにさらに美しくなることは容易に想像がついた。

学園の級友たちが王女を見るたびに色めき立っていた理由をこの時初めて理解した。

彼女はあまり社交的ではないのか、滅多なことではパーティーで姿を表さない。

そんなところもまた男たちのロマンを掻き立てるのか非常に好感の高いお姫様だった。

暫く僕が彼女の美貌に見惚れていると、父が少し2人で話しなさいと言って部屋を出ていった。

2人を静寂が包んだ。

 「あなた、もしかして緊張しているの?」

ふふふと花のように笑いながら口に手を当てた彼女は腰掛けていたソファから立ち上がり僕の前まで歩み出た。

僕が反射的に立ち上がると思ったより彼女が近くまで来ていたことに気づき赤面した。

 「あら、可愛い。私の未来のお婿様?私のことはソフィとお呼びになって。あなたのことはなんと・・・」

 「ルーと。ルーとお呼びになってください。そのほうが言い易いでしょうから」

 「わかったわ、ルー。それでは早速あなたにお見せしたいものがありますの」

こっちへ来てと彼女に呼ばれ連れていかれた場所には扉が2つあった。

片方は赤色で片方は緑色で塗りつぶされた立派な扉だった。

赤色の方は開けちゃダメよ、と彼女は言って緑色の扉を開けた。

扉の先には壁中が絵画で埋め尽くされた豪華な部屋があった。

 「ここは・・・?」

 「絵画の間よ。世界中から集めた絵を飾っているの。ほら、これを見て」

彼女が指を指したその先には何やらおどろおどろしい絵が描かれていた。

とても7歳の少女が好むような絵とは到底思えなかった。

 「これはね、戦争を表しているの。今の戦争ではない遠い未来の戦争。この作者の方曰くね、これは銃というそうよ。1秒間に何発もこの銃から弾丸という弾が出てきて人を殺すそうなの」

 「それはとても物騒ですね」

 「ええ、そう。とても物騒。でも未来ではこのような戦争が起こるのかもしれないわ。そう思うとお父様に買ってもらわずにはいられなくて」

このような武器が出てきた際に心構えとかできるかもしれないでしょう?とウィンクをする彼女に僕は心底驚いた。

他の令嬢であれば今の年頃であればお人形やドレス、アクセサリーを欲しがるだろう。

しかし、彼女は絵画を欲しがるという。

しかもペガサスや天使が描かれているわけでもない、戦争の絵を。

もっと彼女のことを知りたい。

そして僕のこともわかってほしい。

そう感じた瞬間に僕は完全に彼女に恋をした。



 この日以来、僕は彼女に似合う男になれるようにひたすら努力を積み重ねた。

必死に勉学を極め、本来15歳で終了予定の学園をわずか12歳で卒業。

その後はパーティーでの社交マナーを学びつつ、各国の国際情勢に関する研究のために大学に通った。

そうして2年が経ち、いよいよ大学も卒業することになった。

 「ルドルフ様、今日もとても麗しいですわね」

 「私たちよりお先にご卒業なさるなんて」

 「とても寂しくなりますわ」

大学の関係者でもないのに権力を使って大学の卒業式にまで足を運んで来たご令嬢たちにため息をつきながらも笑顔で軽く遇らうと、僕はひたすらにソフィを探した。

次期女王である彼女の周りには非常にたくさんのSPがいるのでわかりやすい。

しかし、このような場所にはお忍びで来ることが多いため、庶民のような格好をしてなるべくSPにもSPとはわからないような格好をさせることが多い。

そのためいつも探すのに一苦労するのだ。

 「見つけた」

僕が後ろから抱きしめると、彼女は一瞬びくりと肩を震わせたが、すぐに僕の腕に手を当てて「ルー、おめでとう」と言った。

 「本当にソフィは変装がうまいね。いつも3分はかかるよ」

 「3分で偽装がバレてしまうなんて私もまだまだね」

彼女はいつものようにふふふと笑った。

長い年月が僕たちの間から敬語を取り去った。

 「でも、僕しかいつも気づいていないからいいんだよ」

 「それもそうね」

彼女は僕の腕を解いてくるりとこちらを振り返った。

 「改めて言うわ。卒業おめでとう。私の未来の夫がこれだけ素晴らしいならこの国も安泰ね」

 彼女があまりにも僕の目をまっすぐに見るものだからまた赤面してしまった。

あの頃は僕の方が見上げなければならないほどあった身長もいまでは同じくらいになっていた。

 「ありがとう。これからももっと頑張るよ。君に似合う男になるために」

 「そこで王になるためにと言わないところがあなたらしいわ」

 「王や権力など僕にとってはどうでもいい。君さえいればいい」

 「またそんなことを言って」

彼女が笑って誤魔化そうとするものだから手の甲にキスを落とした。

 「忠誠のキスだよ。僕は君に嘘はつかない」

 「ええ、そうね。よく知っているわ。あら、もう時間じゃない?主席のスピーチ、楽しみにしているわ」

 彼女はそう言って僕から離れていった。

僕は名残惜しく感じながらも卒業生が並んでいる場所へと向かった。

 スピーチを終えると歓声が上がった。

その中に彼女の笑顔も見えて僕は満足した。

そして卒業式パーティーでは彼女が王女として会場を訪れた。

卒業生皆がソフィに見惚れているのには気に喰わなかったが彼女がこの場にいるのは公の仕事のためであると言い聞かせて我慢をした。



 その夜、僕は城に個人的に招かれた。

王族と僕の家族だけでの個人的な卒業祝いのパーティーのためだ。

僕は早めに支度を整え、婚約者である彼女をエスコートしようと彼女の部屋の前で待っていた。

侍女からは既に支度は済んでいるためもう時期部屋から出てくるだろうと話を聞いていたため、なかなか出てこない彼女が心配になった。

そこで僕は扉をノックしてみたが返事がない。

いよいよ心配になり、部屋に入ることにした。

部屋の中は真っ暗だった。

しかし1箇所だけ光が漏れている場所があった。

そこは例の絵画の間の隣にある赤い扉の部屋だった。

入ってはいけないと言われてから入ろうともしなかったし、彼女が話題に出すこともなかったためその部屋のこと自体を忘れていた。

 「ソフィ?」

僕が声をかけながら部屋の方に近づくと急に扉が開いて眩い光が目に飛び込んできたかと思うと次の瞬間には真っ暗になった。

どうやら扉が閉じたようだった。

暗闇の中、赤い扉の前にソフィが立っていた。

 「ソフィ、良かった。君がなかなか部屋から出てこないから勝手に部屋に入ってしまったよ」

 「そ、そう」

 「それでこの部屋で何してたの?」

そう問いかけた瞬間、彼女はびくりと肩を揺らしたように見えた。

まだ暗闇に慣れておらずそう見えただけかもしれない。

 「いえ、特に何も。最終チェックをしていたの」

 「そんな堅苦しいパーティーじゃないんだから気にしなくていいのに」

 「あなたのご両親がいらっしゃるのに、そんなわけにはいかないわ」

 「両親を気にかけてくれてありがとう。さ、行こうか」

僕が恭しく彼女に腕を差し出すと彼女は吹き出しながら恭しく腕に手を回した。

そして歩き出した僕たち。

部屋を出る際に僕は一瞬だけ赤い扉の方角を見た。

ここからは死角でちょうど見えないその扉の方を。

とても嫌な予感がしたがソフィが僕の名前を呼ぶのでそんなことも忘れて広間へと向かったのだった。

ーーー

初めまして。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
初投稿なため、温かい目で見守っていただけると助かります。
また、同じものをカクヨムさんでも投稿しております。
リンク先から飛べますのでぜひ良かったらそちらの方もフォローしてください!

Re: 鏡姫 ( No.2 )
日時: 2018/03/06 10:41
名前: 紫乃 (ID: z1wKO93N)
参照: https://kakuyomu.jp/works/1177354054885314547/episodes/1177354054885314669

第2話 似ていて非なる月光の君

 ぎらりと鉛が鈍く光る。

ーー私はこの光を知っている。剣が月光に反射した時の光だ。

 「そんなに怯えなくてもすぐに楽になれるさ。なあ、そうだろう?」

少年は剣の刃を愛おしそうに撫でて笑みを浮かべる。

猟奇的な笑みだ。

心臓までも凍りそうな、そんな笑み。

 「やめて、お願い。殺さないで」

私は必死に懇願する。

月明かりのせいで逆光となりよく見えない、けれどよく見知ったその顔を見上げながら。

 「さあ、どうかな」

彼は思い切り剣を振り上げ、私は目を瞑る。

ーーとうとう終わってしまうのね。

そう思った瞬間に真っ白な光が辺りを包んだ。

次の瞬間には侍女が私のベッドの前に立っている姿が目に飛び込んできた。

 「・・・ま?姫様?おはようございます。ご機嫌はいかがでしょうか?大変うなされていたようでしたので・・・」

 「おはよう。ごめんなさい。少し悪夢を見ていたのだけれど、もう大丈夫よ」

 「左様ですか。朝食のご用意ができております。お支度を致しましょう」

侍女がテキパキと身の回りの支度を手伝ってくれる。

 「昨日、ルドルフは気分を害していなかったかしら」

 「ルドルフ様ですか?昨夜は大変楽しんでおられたご様子でしたが・・・?」

 「そう、ならいいの」

私は鏡に向かいながら自分を見つめる。

アメジストの瞳が見つめ返している。

侍女が化粧を軽く施してくれたので鏡に向かって微笑んでみた。

侍女達は「今日も大変麗しゅうございます」と褒めてくれるが私には蔑むような冷徹な笑みにしか見えなかった。

ーーだんだん私の中での恐怖が増している。

最早認めざる終えないほどに恐怖が私を侵食していた。

父上と話をしなければ、と思い私の1番の執事であるアベルに無理を承知で謁見の時間を作ってもらった。

 見上げるほどの立派な扉の前に立ち、名前が呼び上げられる。

扉には王冠とそれを守る獅子の絵が掘られており金で縁取られていた。

王家の紋章だ。

改めて紋章に見入っていると、「入れ」という厳かな声が聞こえた。

扉がゆっくりと開く。

 「ソフィアです。お時間を作っていただきありがとうございます」

 「娘よ、そう固くなるな。今は私とお前しかおらぬ。それで今日はどうしたのだ」

 「はい、父上。実は私の中で恐怖が高まっておりまして、このままではあと2年で私が敵を倒すどころか持ち堪えることさえ難しいやもしれぬと・・・」

 「ふむ。ルドルフのせいだな?」

 「・・・はい」

私は少し俯いたまま答えた。

 「あいつはお前に興味を示さんと思ったがゆえに早いうちにお前の婚約者に据えたというのに。予想に反してお前を心底愛しておる。それがお前を苦しめているのだな・・・」

 「申し訳ございません」

 「いや、これは私の早とちりのせいでもある。私が寧ろ謝らなければならない。さて、どうするかな。ルドルフに伝えるのが1番早いのだが、彼はまだ正式な王族ではないし」

 「それはいけません!彼は天才と称されてはいますが、まだ14歳の身。あまりにも荷が重すぎます!」

私が感情のままに声を荒げると王は高らかに笑った。

 「ははは。それを言うなればお前もまだ16歳ではないか。この国での成人は18歳。まだ16歳のお前にこのような運命を押し付けることになるとはな」

 「それは・・・」

 「しかし、こればかりは私の手には負えんのだ。この国の安寧は王族によって保たれているわけではないからな」

王は顎を手で撫でながら思案する。

 「少し私にも考えさせてくれ。何か良い案が思いつけばまたお前をここに呼ぼう。少しだけの我慢だ。耐えてくれるかな、娘よ」

 「はい。ありがとうございます」

 「よし、では下がれ」

私は淑女の礼をとり、王の間を後にした。



 タンタンタンと聞き覚えのある足音が廊下から聞こえてくる。

それと同時に侍女の慌てた声が聞こえる。

 「いけませぬ。姫は只今休憩中でございまして何人たりとも部屋に入れるなとのご命令が」

「きっとそのご命令は僕には適用されないよ。ねえ、そうでしょう?」

ルドルフがバンッと扉を勢いよく開けながら笑顔で入ってきた。

私は思わず口をつけていた紅茶を溢しそうになったがなんとか持ち堪えた。

私の瞳に一瞬映ったであろう恐怖の色に彼が気づいていなければいいのだが。

 「ルドルフ」

 「ソフィに会いたくて研究所との契約を早めに切り終えてきたんだ」

「はい、これ」と言いながら渡されたのは城下町で今人気と噂のマカロンというお菓子だ。

 「まあ、これは・・・長い行列ができていて買うのが大変と聞いていたのに」

 「ソフィのためなら大貴族だって並ぶのさ」

ルドルフの後ろに控える執事メンデルが「契約の間に私が並んだのですけれどね」と小言を言っていたのは聞かなかったことにしよう。

 「申し訳ございません、姫様。ご命令を遂行できず」

侍女たちが揃いも揃って申し訳なさそうにする。

 「ルドルフがこういう感じなのは皆もよく知っているでしょ。だからそんなに気にしなくてもいいのよ。さあ、気にせず皆下がって。お茶菓子の時間よ」

パンパンと手を叩くと、一斉に侍女たちが部屋を出てすぐに紅茶とお茶菓子を用意して現れた。

先ほどまで飲んでいた紅茶は取り上げられ、すぐに温かいものへと取り替えられた。

 「勿体無いから飲むのに・・・」

 「いいえ、姫様には常に美味しいものを提供したいのです。勿体無いとおっしゃるのであればこれらは厨房で皆で美味しくいただきますわ」

侍女の長であるマーガレットがウィンクをしながら言うものだから思わず吹き出してしまった。

 「うまいこと言うものね。ふふふ。ぜひ皆で楽しんでちょうだいな」

私も仕返しにとウィンクをすると侍女の間からキャッという歓声が上がったかと思えばすぐにマーガレットの睨みが飛んできたようで一瞬で静かになった。

 「それでは私たちはこれにて失礼いたします。お二人でごゆるりとお楽しみくださいませ」

 「ああ、マーガレットありがとう」

ルドルフが手をひらひらとさせながらマーガレットを見送るとすぐに私の隣へと移動した。

 「ソフィ。会いたかった」

彼はそう言いながら私の手の甲に口付ける。

私は彼を見ようと顔をあげると、ちょうど彼の顔が太陽の光で逆光になっておりあまり見えなかった。

その光景が今朝の夢とあまりにも似ていたためすぐに目を逸らしてしまい、手も引いてしまった。

 「ソフィ?どうした?」

 「ごめんなさい。今日は体調が優れなくて・・・」

 「ああ、さっき侍女たちも言ってたね。病気かな」

ルドルフは心配そうに私の顔を覗き込む。

その時に視線が交わったがその瞬間に彼が私を愛していることを痛いほど再認識した。

ーーこのままではまずいわ。彼に話してしまおうか。

一瞬の心の弱さが赤い扉の方へと視線をやってしまった。

 「ソフィ。昨夜から何か変だよ。あの扉の向こうには何があるんだ?」

私の視線を追ってその先に何があるのか気づいたのだろう。

彼は立ち上がり扉の方へと近づいていく。

もう誤魔化せない。

ーー今朝父上と話したことはなんだったのだろう?

自嘲しながら私は諦めて彼に話をすることにした、代々王族にのみ伝えられてきた真実を。


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