ダーク・ファンタジー小説

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WARM RAIN
日時: 2018/10/29 10:06
名前: 元希 (ID: wsTJH6tA)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=12279

WARM RAIN (暖かい雨)
「やめてくれ。誰か助けてくれ」
人生は逆戻りは出来ないものだ。
一度過ぎ去った時間は戻らない。
ならどうする?
未来は決まっている。
そう、変えることは出来ない。
今までそれを受け止めて来た。
「貴方は貴方。私は私」
「地獄を楽しめ。天国など存在しない」
「北川、お前はクズだよ」


















Re: WARM RAIN ( No.5 )
日時: 2018/06/17 11:48
名前: 元希 (ID: dDmkWF1L)

第伍話 【母を失った少女】


あれ?ここは。
見た事がない天井を見つめる。薬品の匂いがする。
もしかして、医療病棟か。
「北川を辞めさせて下さい」え?
「あいつが気を失ったせいでこちらは大変な目にあったんですよ」あぁ、そうか。俺はたしか人を殺したんだった。
「まぁまぁ、たしかにそうしたいと思う。でもな、橋本さん。それは、無理なんだよ」
「どうしてです?」
「彼には、ある細胞が見つかった。彼には“例の奴”が使えるはずなんだ」
「だったら、あれを使えばいいじゃないですか。何故、早く使わないんです?」
「あれは危険すぎるんだ。彼を廃人にさせてしまうかもしれない。分かってくれ」
「それと、防衛大臣の命令だからだ」
「何なんですか。だったら私が、あの役立たずを殺します。人を殺せない…」
「橋本!!」男は怒鳴る。「君はまだ若い。十九だろう。彼も若い。まだ十八だ。僕たち大人は君達に夢を捨てさせた。君は、介護福祉士という夢があった。この戦いが終われば、君は夢に向かって進めるはずだ。でも、彼にアレを使ったら、一生、自分が生きているのかすら分からなくなる。十八でだ。分かってくれるか」
「私だって、明日、死んでしまうかもしれないんです」
「すまない、本当にすまない。僕たちを許してくれるか」男は尋ねた。
「無理です。一生許しませんから」彼女はそう言って部屋を出た。
「すまない。君達にこんな事をさせてしまって」男はそう言った。


何なのアレ。腹立つ。
『すまない、本当にすまない。僕たちを許してくれるか』許すはずがないでしょ。私から人生を奪ったくせに。
あの頃にした決断は、正しくなかったのね。


二年前。二〇十五年八月十三日。
「お母さん!」私は一生懸命叫んだ。
《緊急避難命令が発令されました。直ちにお近くの避難所へ、避難して下さい》
「お母さん!お願い。立ってよ」どうして、頭から血を流しているの?
《緊急避難命令。残り五分で避難を完了して下さい》
お母さんをおいては行けない。絶対に。


《避難ゲートは封鎖致しました》え?嘘でしょ。
すると、爆発音が聞こえた。どうして?地震じゃないの?そして、銃声の音も聞こえた。怖い。怖い。
「お母さん。お願い、私を助けて。早く立ってよ」もう冷たい母の肌を一生懸命に揺さぶる。
「避難をしていない者がいます。どうします?」前から声が聞こえた。見てみると、銃を握っている。
「えっと、女です。はい。多分、十八歳くらいかと」まさか、私を殺すの?それとも…
「分かりました。はい」すると、銃をこちらに向けながら近づいていく。
「やめて、近づかないで」私は壁に背中を貼り付けながら立ち上がった。
「決めるんだ。今ここで死ぬか。俺のところへ来るか」男はまだこちらに銃を向けている。どうしたらいいの?私は、お母さん。ねぇ、答えてよ。
『貴方は絶対にこの世界が平和になるまで死んだら駄目』お母さんは、どうしてそんな事を言ったの?ずっと平和だったのに。
「分かりました。貴方の所へ行きます」これでいいんだよね。私は絶対に生きるから。例え、どんな事があったとしても、この国がこの世界が真の平和になるまで。それまであの世で待ってて。
私は瞳孔が開いた、母の目を見つめた。
「いい決断だ。私の名前は川下と言う」


緊急連絡のアナウンスで一気に現実に戻された。
素早くヘリに乗り込む。いつ終わるんだろう。この戦いは。事実を知らない人たちは、この国が平和だと思い込んでいる。
「橋本。今回もテロリストの奇襲だ。死ぬなよ」
「死ねませんから」私は言った。
「そりゃ、この川下 創も安心だな」


ヘリから降りると、アナウンスが鳴っている。
《避難ゲートは封鎖致しました》
「橋本。A地点からD地点まで、人がいないか確認してきてくれ」川下さんはキツイ目線をぶつけてくる。
「分かりました」私はこの場を離れた。


「お母さん」声が聞こえる。女の声だ。ゆっくりと近づく。
「お母さん!」学校の制服を着ている子が、横たわっている女性を揺さぶっている。私は震える手で無線機で、川下さんに連絡をした。
〈どうした?橋本〉
「一人、女を見つけました」
〈何歳ぐらいだ〉
「多分、十六歳から十八歳くらいかと」
〈分かった。その子に聞くんだ。死ぬか、俺たちのところへ来るか〉
「どうして!避難所へ連れて行ったらいいじゃないですか」彼女はずっとこちらを見ている。不安な顔でずっと。
〈駄目だ。この事は絶対に知られてはいけない事なんだ〉
「分かりました」無線機を切り、銃をしまい、ゆっくりと近づく。
彼女の鋭い視線を受ける。
「決めて。ここで死ぬか、私の所へ来るか」「殺して」え?
「殺して!もう私は死にたいの」どうして?死ぬ事が怖くないの。
「早く殺してよ!」彼女の目から涙が流れている。
私は銃口を頭に向ける。楽に殺してあげたい。
発砲音が私の耳に響く。いつまでも、ずっと。


Re: WARM RAIN ( No.6 )
日時: 2018/06/17 11:24
名前: 元希 (ID: dDmkWF1L)

第六話 【愛情とは何か】


「お母さん。止めて」私は叫んだ。どうして殴るの?痛いよ。
「お前なんか死ねばいいんだよ」


五歳のときから、私は日頃から暴力を振るわれていた。
「助けて」この一言は言えなかった。楽になるはずなのに。
やっぱり大好きなお母さんの所にいたい。
「お前なんか施設でもあの世でも行けばいいんだよ」行きたくない。やめてよ。
私は優しいお母さんが好きだ。殴られた後は、お母さんはとても優しく接してくれる。
毎日、毎日、顔色を伺いながらの生活はもう疲れた。


私は中学一年生になった。
「くさっ」廊下で人とすれ違うたびに言われる。
学校に行きたくない。でも、家に居たら殴られる。
もう嫌だ。気持ちが悪い。
家では殴られ、学校では悪口を言われ、いじめられる。
お願い、誰か助けて。


大きな地震が来た。
《緊急避難命令が発令されました。速やかに避難してください》
私は家を出た。お母さんは家にはいない。
たしか、避難場所は、たしかこっち。私は走った。
すると、お母さんらしき人が倒れているのを見つけた。
「お母さん?」私は近づいた。
そこには、倒れている母親がいた。
「お母さん」
《避難ゲートは、封鎖致しました》
じゃ、私達は。どうしたらいいの。
すると、女性の声が聞こえた。
「どうして!避難所へ連れて行ったらいいじゃないですか」 銃を持っている女性が叫んでいる。
「分かりました」銃をしまった女性が近づいてくる。
「決めて。ここで死ぬか、私の所へ来るか」『死ね。お前なんか死ねばいいんだよ。この悪魔。私を不幸にさせやがって』
「殺して」女性はびっくりしている。「殺して!もう私は死にたいの」私は泣き叫んだ。私はもう、お母さんを不幸にさせたくない。
「早く殺してよ!」
女性は私の頭に銃を向けた。
ありがとう。お母さん。そして、生まれてきてごめんなさい。
そして、私は解放された。この世界から。

Re: WARM RAIN ( No.7 )
日時: 2018/06/19 17:05
名前: 元希 (ID: dDmkWF1L)

第七話 【地獄に生まれて】


レッド。俺たちはこいつらの正体が分からない。
帰りのヘリで俺は聞いた。
「橋本。奴らの正体は何だと思う?中国の軍事用ヘリを使い、軍隊を殺している。絶対に中国が絡んでいる。そう思わないか」橋本はずっと一点を見つめている。
「おい!橋本」
「どうした川下?何かあったのか」
「織田さん。俺は、俺たちはずっと戦っています。正体が分からない奴らを相手に、殺された仲間もいます」どうしようもない怒りをぶつけた。
「分かっている!だからこそ俺たちがやらなくてはならない。日本国民を被害に合わせないために」「嘘つき」橋本が言った。
「橋本。なんて言った?」
「嘘をつかないで下さい。秘密保持だとか何とか言って、国民を殺しているくせに」
「橋本!!テメェふざけんなよ。秘密保持も国民を守るためだ。その為には仕方がない!」「織田さん!」
「何ですかそれ。罪のない人を殺す事を正当化しているだけじゃないですか」
橋本、お前の気持ちは分かる。
「織田さん。俺たちはどうすればいいんですか」
その答えは返っては来なかった。


「織田?大丈夫か。任務終わりだろ。倒れるぞ」
「大丈夫だ」俺は毎日、射撃訓練をしている。いつものルーティンは崩せない。
一発、また一発と反動が返ってくる。
『何ですかそれ。罪のない人を殺す事を正当化しているだけじゃないですか』黙れよ。お前に何が分かるんだよ。
「北川についてどう思う?」
「役立たずは早くここから消えてほしい」
「織田、言い過ぎだぞ。でも、まぁそのとうりだよな」彼はそう言って笑った。
「裕也。何で笑ってんだよ」
「いや、だってさ、人を一人殺したぐらいで気絶するんだぜ」裕也はもう笑ってはいなかった。
「確かにそうだな」
一発、一発の反動を受け止める。俺たちが異常なのか。


「君が北川君か。俺は裕也。よろしくな」差し伸ばされた右手をしっかりと握る。
「俺は君に言わなくてはいけない事があるんだ」
「まぁ、席に座ってくれ」
俺は彼の前の椅子に座った。
「それで、相談なんだけど」少し間を置いて、言った。
「君は、部隊を移動する事になったんだ」







Re: WARM RAIN ( No.8 )
日時: 2018/06/19 07:59
名前: 元希 (ID: dDmkWF1L)

第八話 【記憶を誤魔化しながら】

「橋本さん。川岸 美嘉さんについてですが…」医療班のスタッフが私を呼んだ。
「川岸さんは、夢さんがあなたに殺された所を見ていたらしいんです」
そう。ならどうするの?殺すの?
「なので一度、川岸さんに合って顔をよく見てもらって、あと、事実確認をして欲しいのです」
「実は、虐待があったのではないかと思うのですが…」え?
「実は夢さんの身体中にアザがあちこちに有って。火傷の跡が頸に合ったり。私達は、虐待だと思うのです」
「分かった。案内して」私は自分の右手を強く握りしめていた。


「あなたが、夢を殺した。大切な大切な娘を…」まるで悪魔でも見るような目付きで私を見る。
「すいません。それについては後日に説明させていただきます」
「私はずっとこんな刑務所みたいな所で監禁されてるのよ!さっさと家に帰らせてよ」
「川岸 夢さんについてですけど、体にあざや火傷の跡があったんですけど」
「はぁ?自分でやったんじゃないの?」彼女はタバコをくわえ、火をつけた。
「夢さんの火傷の跡は、頸にあります。それは、タバコを当てた跡がある事から、貴方ではないですか?」彼女の目付きが変わった。殺気だった目を向けられた。
「貴方達は、私を監禁しておいて、次は虐待を疑っているの?分かった、やりましたよ。私が殴ったり、蹴ったり、タバコを当てたりしましたよ。これで満足でしょ。早く帰らせてよ」部屋中にタバコの煙が充満する。
「すいません。秘密保持の為、家には帰れないんですよ」織田さんが説明をした。
「いい加減にしてよ。この人殺し。まさか、殺した事を隠蔽しようとしているの?私は絶対に警察に言うから。『私の娘を殺したテロリストを逮捕して』って言うから」
「テロリスト…ですか」織田さんが言った。
「当たり前でしょ。物騒な武器を持ち歩いて、何だったっけ。秘密なんちゃらの為に娘を殺したんだから。十分犯罪者よ」確かに正論だ。彼女の言うとうり、私は夢さんを殺した。秘密保持という、理由だけで。
「彼女を部屋に戻して」
「ふざけるんじゃないわよ。絶対に警察に言うから」彼女を二人掛かりで部屋から出した。
「私達はどうして戦っているんです?何のために」
「俺たちが真実を知る事は難しい。首相や防衛大臣に利用されているだけの…」織田さんは苦しそうな顔をしていた。
「戦いの苦しみは当事者にしか分からない。そうだろう?」私は「そうです」と言った。
「涙を拭きな」あれ?涙が出てる。私は急いで拭いた。
「明日からの訓練や任務に引きずるなよ。他人の人生に同情をし過ぎて自分を見失うな。そんな奴は邪魔なだけだ」私は謝った。
「だから、今日はゆっくり休め」織田さんは部屋を出た。


「STEALTHになぜ、彼を入隊させるの?」
食堂で川下さんと一緒にお昼ごはんを食べている。
「高梁。その理由は俺には分からないんだ。大臣からの命令でな」どうして?彼は役には立たない。それは、大臣も把握しているはず。
「でも、川下さん。なぜ大臣は彼にこだわるんです?」
「それは、それも分からない。謎の人物だな。北川って」確かに、彼には謎が多い。
「俺も“謎多き男”になりたいな」川下さんが?どうだろう。
「このカレー。めちゃくちゃ美味いよな」
「ご馳走様です」
「なぁー俺の事、どう思ってる?」
「普通です」嘘は付いていない。
私は部屋から出た。















Re: WARM RAIN ( No.9 )
日時: 2018/06/19 13:33
名前: 元希 (ID: dDmkWF1L)

第九話 【繰り返えされる思い】

私はどうしたらいいんだろう。
どうしても夢を殴ってしまう。
毎回、夢がうずくまり、それを見て、私は自己嫌悪をしてしまう。
私は一体、どうしたらいいの。気付いたら殴ってしまっている自分に絶望する。


十三年前。二〇〇四年 五月六日。
「子供?降ろせ。それが無理なら別れよう」付き合っていた彼は私に告げた。
私は答えに悩んだ。
「何黙ってんだよ!」彼は私の顔を蹴った。
「ごめんな…さい」
「さっさと決めろや、この後、友達と飲みがあるんだよ」冷たく言い放った。いつもこうだ。彼は気に入らない事があるとすぐに暴力を振るう。でも、私はそんな彼が好きだ。
「降ろす」
「いや、もう別れよう」彼は私の目の前から消えた。


「何!妊娠しただと!」父親が私に近づいてくる。
「やめて!お父さん。やめてあげて」母親が叫ぶ。
「ろくに勉強も出来んくせにお前って奴は」私の髪を引っ張り、お腹を膝で蹴った。苦しい。私はうずくまった。
「ねぇ、うるさいんだけど」階段から妹が降りてくる。
「ごめんなさいね。ちょっとお姉ちゃんが…」妹は呆れた顔をした。「また?」
父親は私の背中を蹴った。
「お前なんか俺の子供じゃない。とっとと荷物をまとめて出て行け」
「お前なんか死んでしまえ」父親は私にそう言った。


「お前なんか死んでしまえ」私は親にされて、苦しい思いをした事と同じ事をしてしまっている。
『優香は賢い子だな。今度、外食に行こう』妹は優秀で、成績も高くて。
『先生に褒められていて、私も嬉しかったわ』親も妹の事しか頭に無い。
私は一生懸命、褒められる為に勉強を沢山した。でも、全然覚えられなかった。
父親の満足そうな顔を見たかった。みんなで笑いたかった。『優香は賢いのに』このひと言が私をずっと苦しめた。


私はナンパして付き合った彼の家に住んでいた。
「え?妊娠したの」私は彼に打ち明けた。
「それって俺の子か?お前、風俗で働いてんだろ」彼は大学生でバイトもしておらず、親の仕送りで生活をしているが、私の分のお金が足らないので、風俗で働いていた。
「でも、お腹の子に罪はないよね。産もうよ」そうだよね。分かった。
私は産む事を決意した。


「もう離婚しよう」彼の言葉に私は絶望した。
「やっぱりさ、遊びで付き合った女の子どもを育てるのは無理だわ」彼はめんどくさそうな顔をした。
「分かった」私の腕の中で眠っているこの子は一体、何処で生きたらいいんだろう。
それから私は外で時間を過ごし、夜になったら、橋の下に娘を置いて、仕事をする毎日だった。


橋の下に戻った時、いつもは泣いている夢が、泣いていなかった。
「夢?」私は娘の名前を呼んだ。
「貴方がお母さんですか?」そこに立っていたのは、スーツを着て、娘を抱っこしていた男性だった。
「お母さん。こんな時間にこんな小さい子を橋の下に置いて何処に行っていたんですか!」男性は怒鳴った。
「仕事に行っていて」男性はしばらく考えている素ぶりをした。
「私の家に来ませんか?」え?どうして。
「あっ、安心してください。妻と子供が家にいますから」男性は笑った。










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