ダーク・ファンタジー小説
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- WARM RAIN
- 日時: 2018/10/29 10:06
- 名前: 元希 (ID: wsTJH6tA)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=12279
WARM RAIN (暖かい雨)
「やめてくれ。誰か助けてくれ」
人生は逆戻りは出来ないものだ。
一度過ぎ去った時間は戻らない。
ならどうする?
未来は決まっている。
そう、変えることは出来ない。
今までそれを受け止めて来た。
「貴方は貴方。私は私」
「地獄を楽しめ。天国など存在しない」
「北川、お前はクズだよ」
- Re: WARM RAIN ( No.1 )
- 日時: 2018/06/15 17:39
- 名前: 元希 (ID: dDmkWF1L)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=12279
第壱話 【悲劇からの】
警告音が町中に響き渡る。
「助けて」少年は叫んだ。だが、誰も振り返らない。
「助けて」もう一度叫んだ。だが、誰も足を止めない。
少年は膝をついた。
「大丈夫か?」銃を持った男性が声を掛けた。「おっと。すまない。銃が怖いかな」男性は銃をしまった。
「大丈夫かしら、この子。親は何処かしら」銃を持った女性が、男性に話しかけている。銃を持っているのは、この二人だけだ。
「この人混みじゃ、分からんな。君?お母さんかお父さんは何処かな?」分からない。知らない。
「そうか。分かった。僕がこの子を避難所に連れて行く。ポイント0195でまた落ち合おう」男性が言った。「行こうか」少年は「うん」と言った。
男性は、少年の手を引いて、その場から立ち去った。
「本当に彼は…」女性は過ぎ去って行く男性の後ろ姿を見つめていた。
「君は防衛省が極秘に立ち上げた諜報部隊は知っているか?」高木校長は俺に尋ねた。そんなもの知っているはずがない。
「君は防衛大学の成績は“ゴミ以下”だ。とっとと退学させたいが…大臣の命令でな」なんだそれ?おかしくないか?
「まぁ、その部隊に、お前を入隊させるから。そのつもりでいろ」高木校長は立ち上がり、ドアノブに手をかけた。
「お前は…必ず死ぬからな」そう言い残して出て行った。
部屋の静けさが俺の怒りを逆なでする。
俺は机を拳で殴った。ふざけるな。何がゴミ以下だ。何が必ず死ぬんだ。
俺はどうしたらいいんだ。
いつの間にか痺れている右手を見つめていた。
- Re: WARM RAIN ( No.2 )
- 日時: 2018/06/20 13:00
- 名前: 元希 (ID: dDmkWF1L)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=12279
第弐話 【残酷な現実】
クソもう無理か。
「たらたらしてんじゃねぇぞ北川!」教官は怒鳴る。
無理だ。俺には無理だ。もう辞めたい。
「北川!ちょっとこい」教官は俺を呼ぶ。震える足を手で押さえながら、向かった。
「テメェ、やる気あんのか?あん?ふざけんなよ」教官は俺の胸ぐらを掴んだ。
「さっさと出て行け!この野郎」
「嫌です」右頬に衝撃が来る。
「嫌とか嫌じゃないとかそういう問題じゃねぇんだよ」腹にも衝撃が来る。痛い。膝まついた。
「お前なんか死ねばいいんだよ」教官の顔を見上げる。殺気だった顔が急に和らいだ。
「さっさと死ねよな。君は生きている価値はないから」微笑みながら立ち去った。
何処だろう。ベットから起き上がる。
あぁ、そうか。俺はZSに入隊したんだった。
俺は溜息を吐く。悪い夢を見てしまった。
『さっさと死ねよな。君は生きている価値はないから』そうだよな。生きている価値なんかないよな。俺なんか。俺なんか。
俺はまた瞼を閉じた。
「今から制圧訓練を開始します」今日から訓練か。昨日、入隊したばっかなのにな。俺は溜息を吐いた。すると鋭く、嫌になるような目線を向けられる。
「お前さ、溜息なんかすんなよ。場の空気しらけるだろ」そんなこと、こっちがしったこっちゃねーよ。
「お前本当に何なの?調子に乗んなよ。あん?」ウザい。ウザすぎるな。
「すいません」俺は謝った。俺に謝らせるのが目的だろ?
すると舌打ちをされた。
「おい、鑑。新入りにそんなにガミガミ言うなよ。嫌われるぜ」そうか、鑑って言うのか。
「すいません。川下さん」鑑さんは深々と謝った。
「では、訓練内容を説明し…」言葉を打ち消すように、部屋全体に警告音が鳴り響く。
《緊急連絡。緊急連絡。危険度3。滋賀県、彦根市に緊急避難命令。作戦内容0347。繰り返します。作戦内容0347》
顔に傷だらけの男が入ってくる。
「おい、北川」顔に傷だらけの男が入ってくる。
「お前は自分の部屋で待機しろ。まだ訓練をしていない奴は出すことは出来ないからな」
「分かりました」一体何なんだ?この部隊は。作戦って何だ。
俺は部屋から出た。
この部隊は、一体何で作られたんだ。緊急避難命令?地震か?どうして極秘諜報部隊が出ていくんだ。
『君は防衛省が極秘に立ち上げた諜報部隊は知っているか?』防衛省は何でこんな部隊を立ち上げたんだ?しかも極秘で。クソ!政府は何を隠しているんだ。
俺は右手を強く握り締めた。
《連絡します。ZERO部隊が帰還しました。繰り返します。ZERO部隊が帰還しました》アナウンスがなると静かだった廊下が一気にうるさくなる。
俺は頭も布団で覆う。だけど、うるさい。
「たしか、鑑が死んだんだろ?」鑑?鏡って、まさか。
俺はすぐさま部屋を出る。
俺は外に出る。ヘリのプロペラの音と、警告音が聞こえる。
俺は辺りを見渡した。制服が血だらけの人が多い。どうしてだ?
「鑑!どうしてだ」川下さんの声が聞こえる。俺は走った。息が切れながらでも走った。
そこには瞳孔が開いた鑑さんの姿があった。
医療班が鑑さんを運ぶ。それについてゆく服が血で赤く染まった人。
何を隠しているんだ。
この組織は一体何なんだ。
俺は立ち尽くした。何も考えられない。
「ねぇ?あなたが北川さんね」俺は声が聞こえた方向に視線を移した。
- Re: WARM RAIN ( No.3 )
- 日時: 2018/06/15 23:38
- 名前: 元希 (ID: dDmkWF1L)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=12279
第参話 【夢は捨てろ】
「鑑さんは死んだ。だからあなたには次から作戦に参加してもらう」何を言っているんだ?作戦って、何なんだよ。
「私は高梁って言います」そう言うと彼女は俺の横を過ぎ去った。
俺は振り返り、彼女の後ろ姿を見つめた。
全員が、死んでしまった者を悔み、悲しんでいる。
食堂で空いている席。今まで使われていた部屋。
遺族に遺体を渡す瞬間はとても悲しい。
「鑑 雄二さんは交通事故で亡くなってしまいました」警官が鑑の母親に説明する。そういえば鑑の父親は一年前に死んだんだっけな。
鑑の母親は「そうですか…」と言って、「犯人はもちろん捕まってますよね?」
「えっと…いえ、まだ見つかっておりません」そうだよな。俺たちは、極秘部隊。何で死んだかも完全黙秘だもんな。
母親の目に俺たちはどう映っているんだろう。
俺たちは一礼をして、立ち去った。
「川下さんは鑑さんが死んだ事をどう思います?」帰りの車の中でさっきの警官に聞かれた。
「島垣さん。そんな事聞かないでください」すると「すいません」と謝られた。
車内の静けさが俺と鑑の記憶を呼び出す。
二〇十五年 五月三日。
「え?新入りが来るだって?」俺はもう一度聞いてしまった。
「あのさぁー何回も言わせないでよね。鑑 雄二っていう名前の子が来るんだって」鑑か、どんな奴なんだ。
「ありがとうな長谷川。教えてくれて」
彼女は慌てて「お礼なんかいいから」と言い残して食堂から出て行った。
「鑑 雄二です。よろしくお願いします」彼は発表が苦手なのだろうか。手が震えている。
「年は十八です」は?今なんて言った。
「あのさぁ長谷川。今、十八って聞こえたよな」
「えっ?聞こえたけど」
「若すぎないか。十八でこの部隊は危険すぎる」
「あなただって二十歳じゃない。みんな若いのよ」長谷川はそう言うと、机を人差し指で叩き出した。暇な時の癖だな。
「えっと、俺は西原と言う。お前に言える事は“夢は捨てろ”だ」西原さん。それ、俺にも言ったな。一体どういう意味だ。
「これだけだ。解散」西原さんは部屋を出た。
「無理だな。俺には夢があるんだ」鑑の方からそう聞こえた。夢って何だろう。
鑑。夢って何なんだ。俺に教えてくれよ。
車の窓から見える世界。それは、酷く悲しいものだな。
- Re: WARM RAIN ( No.4 )
- 日時: 2018/06/20 13:10
- 名前: 元希 (ID: dDmkWF1L)
第四話 【人殺しを】
「川下さん。これを」ZSに戻ったら、医療班のスタッフが俺の所に来た。
「川下さんの遺体に付いていた腕時計です。生前にあなたに渡してほしいと言われていたので」俺に?何でた。
左腕に付ける。針がゆっくりとゆっくりと動く。
そして、スタッフが部屋を出て行った。
「鑑。俺はお前の分まで、時を刻むさ」
「あなたには、夢ってあるの?」彼女は俺に尋ねた。
「あります」誰にだってある。あるはずだ。
「だったら、その夢を捨てなさい」え?何だって。
「どうしてです。高梁さん」
「北川さん。当たり前です。夢を持っていたら、悲しむだけです」彼女は淡々とそう言って、「では、訓練を始めましょう。今日は防衛訓練です」
夢を持つ事が駄目な事なのか。
「A地点からB地点にテロリストがいるのでC地点とD地点を防衛します」彼女はまた淡々と言った。まるでロボットのように感情が無い。
《ミッションスタート》のアナウンスが流れ、訓練が始まった。
ただの個室がVRによってビルに囲まれ、道路の上に立つ。
銃の音が聞こえる。いつ撃たれるか分からない緊張感。
銃(ベレッタM92)を握る手は汗で濡れていた。
すると、アサルトライフルを持っている人がこちらに近づいてくる事が分かる。
《奴らはテロリスト。全員殺してしまいなさい》彼女の声が無線機越しに聞こえた。
テロリストだと?一体何なんだ。
奴らは撃ってくる。ヤバイ。俺も撃たないと。
頭に衝撃が来る。そして、普通の部屋に戻った。
「あなた。人を殺せないんだったら何で入ったの?」彼女のキツイ目線が俺に向けられる。俺は入りたくって入ったわけじゃないんだよ。
《緊急連絡。緊急連絡。危険度3。長崎県全体に緊急避難命令。作戦内容03567。繰り返します。作戦内容は03567》
何なんだよ。人なんか殺したくないよ。
《ベルフィード。着陸します。直ちに準備をして下さい》ヘリから見える世界はまるで地獄だ。
ヘリは着陸した。勢いよく、外に足を踏み出した。
銃声や爆発音が嫌でも耳に入る。
「ZERO部隊、行くぞ!作戦どうりに。お前らの命は首相の物だ」顔が傷だらけの男が叫んだ。
「北川!お前、足は引っ張るなよ」俺はその問いに「はい」と答えた。
「地点D0534に“レッド”と思われる者が現れたそうです」
「分かった。Zはそこに行け。北川、お前もそこに行け」皆は嫌そうな顔をした。
駄目だ。呼吸が荒い。クソ!
赤い服を着ている者たちは、俺たちに向かって銃弾を放つ。
だが、こちらも撃たないと死ぬ。だから撃つ。でも、殺したくない。
一人が頭を撃たれ、倒れる。例えテロリストだとしても、俺は殺せない。
「北川!撃て!」クソ!何なんだよ。殺したくない。殺したくない。
「北川!」奴らの一人が、俺に銃口を向ける。俺は引き金を引いた。
そして、胸に当たり、奴は倒れ、もがき。苦しみ。そして動きが止まった。これが人を殺すというものなのか。
俺は倒れた。