ダーク・ファンタジー小説
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- 新撰組を見たのは
 - 日時: 2018/09/25 21:04
 - 名前: にゃあこ (ID: s00TEuml)
 この時代には珍しい短い髪の少女がいた。彼女は三雲沙恵、ある日死が近い
母は彼女に地図と手紙を持たせその場所で働きなさいと言ってこの世を去った。
彼女は母から渡された物をヒントにその場所へと向かった。
その途中は彼女は宿で襲われる。そこを数人の男たちが救った。
出会い、池田屋編 >>01-07
- Re: 新撰組を見たのは ( No.3 )
 - 日時: 2018/09/24 11:44
 - 名前: にゃあこ (ID: s00TEuml)
 朝、起きてすぐバケツに水を汲み廊下の水拭きを始める。
長い廊下を一直線に拭いていく。
拭き終わったらすぐに別の場所の掃除へと急いだ。
その慌ただしい足音が聞こえたのか数人の隊士が顔を覗かせる。
「なんだぁ?今日は大晦日だったか?」
「原田さん、永倉さん…すみません驚かせて」
原田左之助と永倉新八は近くの廊下を見て驚いた。
ピカピカの廊下、沙恵が掃除したのだろう。
「凄いな…」
「お、そういえば今日は近藤さんに全員召集を掛けられてたな」
****
夜、近藤勇、沖田総司、永倉新八、藤堂平助らは物陰に隠れ問題の池田屋を見ていた。
池田屋の前にいたのは一人の男、彼に声を掛けたのは浪人に扮した山崎烝だ。
「あの今晩、泊めさせてほしいのですが」
山崎が男に泊めさせてほしいというと男は首を振る。
「残念だがもう部屋がないんだ。他を当たってくれ」
「そうですか分かりました」
山崎は少し先を歩き近藤たちの方を見た。アイコンタクトを取る。
彼が過ぎ去った後に来た男たちは池田屋に入っていく。さっきとは矛盾している。
「よし、全員突撃するぞ!沙恵ちゃん、少し頼まれてくれないか?」
「何ですか?」
「別の場所へ行った土方たちにこのことを伝えてくれ。頼まれてくれるか?」
近藤の問いに沙恵は頷く。
「任せてください!できることはちゃんとやりますから!では行ってきます!」
沙恵が走っていった後、近藤隊は池田屋に乗り込んだ。
「御用改めである!歯向かう者は容赦なく斬り捨てるぞ!」
全員が刀を抜く。上から降りてきた男たちと乱闘になった。
その中で沖田と藤堂は二階へ駆けあがる。
- Re: 新撰組を見たのは ( No.4 )
 - 日時: 2018/09/24 12:33
 - 名前: にゃあこ (ID: s00TEuml)
 「土方さん!」
走りながら沙恵は土方歳三を呼び止めた。
「沙恵?なんでお前がここに…」
「近藤さんたちが今、池田屋に乗り込みました!敵がいるのは池田屋です!」
沙恵の言葉を聞き土方隊は池田屋へと向かった。
池田屋・二階。
階段を上がり近くの襖から中を覗く。二人の男がその部屋に集まっている。襖を開け
沖田と藤堂はその男と対峙した。一人は大柄、もう一人は赤い瞳をしている。
「新撰組だ。御用改めである。大人しく此方へ来い」
「待て、我らには戦う理由がない」
大柄な男が刀を抜いた沖田と藤堂にそう言った。
「そうは言っても俺たちにはあるんだよ!」
「あ、オイ!」
沖田が声を出す。大柄な男に小柄な平助は斬りかかる。その刀を男は掴んだ。
「捕まえると言っているが隙だらけだな」
赤い目の男が刀を抜いていた。
沖田は後退しながら交戦する。
大柄な男は平助の額を殴る。額の鉢巻が割れ、平助が倒れた。彼の額からは血が流れる。
沖田もまた追い込まれ気味だった。
「どうした?太刀筋がぶれてるぞ」
男の言葉に耳を貸さず沖田は咳き込む。その度に吐血していた。
池田屋・外。
土方隊が到着し、すぐに目についたのは怪我を負った隊士だ。
沙恵は怪我人の手当てを行う。
「…!あれって」
沙恵が指差した方向からは提灯の光と人影が歩いていた。
「会津藩、だな」
原田が呟く。土方はやってきた藩士たちに話を付けに行く。
「ここは新撰組がやる。命が惜しければ来るな」
「何を!!これは会津藩の仕事、お前らこそ立ち去れ!」
「今は御用改め中だ!邪魔をするな!」
そう言って会津藩を追い払った。
「土方さん俺たちは裏へ回る」
原田左之助らは池田屋の裏側へ回り込んだ。
「私、中に行って怪我人を手当てしてきます!それぐらいしか私にはできないので」
そう言って先に沙恵は中へと入っていく。その後を土方たちは追う。
- Re: 新撰組を見たのは ( No.5 )
 - 日時: 2018/09/24 21:16
 - 名前: にゃあこ (ID: s00TEuml)
 裏側に回った原田左之助は槍を構え銃を持った男と対峙していた。
「オイオイ少しズルくねえか?」
「何がだ?何処もズルいところなんて」
原田は男の銃を指差した。槍と銃。
「飛び道具なんてよ」
「戦いにズルいも卑怯も無い。当たり前のことだろ。こんなことでズルいなんて言ってたら
奇襲も卑怯になるぜ」
男が原田に向けて発砲する。槍を回し銃弾を弾いた。
剣術だけでなく槍術も扱う。槍を薙ぎ払い男がそれを躱す。
原田の槍の扱いはかなり良い。剣術よりも彼は槍術に長けているのかもしれないと
思ってしまうほどだ。原田左之助は槍の名手である。
「中々良い腕してるねぇ名前ぐらい聞いてやるよ」
「原田左之助、十番隊組長だ」
銃で槍を弾き男は屋根の上に飛び乗り原田を見下ろす。
彼に背を向け何処かへ消えていった。
「あ、オイ!」「原田さん!!」
短い髪を揺らし沙恵は息を整えながら彼のことを呼んだ。
「沙恵!?」
「皆、もう集まってますよ。帰りましょう」
沙恵は微笑む。日が昇り始めた頃、新撰組は帰還する。
沙恵は平助と沖田の世話を担当していた。平助の額には包帯が巻かれた。
「沖田のほうは大丈夫なのか?」
「うん、薬も飲ませたし安静にさせてます。平助君も怪我が治るまでは大人しくしておくこと。
後、無理もしちゃダメだからね?」
沙恵はそう念を押した。前に新撰組で働いていた光重も怪我をした隊士には沙恵のように
念を押していた。
「ホント、似てるよな…」
沙恵は大分新撰組での生活に慣れてきた。
「どうだ沙恵ちゃん。この仕事とか生活には慣れたか?」
近藤は沙恵のほうを見た。
「はい、おかげさまですっかり」
「そういえば一部聞いたぞ沙恵ちゃん」
そう言ったのは永倉だった。
永倉「怪我が治るまでは大人しくしておくこと。後、無理もしちゃダメだからね、ってな」
沖田「同じこと俺も言われたぞ。新撰組の姐御さん?」
沙恵「あ、姐御!?ち、ちょっと!!」
カァッと沙恵の顔が真っ赤になる。それを見て沖田たちは笑った。
沖田の冗談だったらしい。
- Re: 新撰組を見たのは ( No.6 )
 - 日時: 2018/09/24 21:32
 - 名前: にゃあこ (ID: s00TEuml)
 「永倉さん、原田さん、二人ともここで飲んでるんですか?」
酒を飲んでいた二人に沙恵は話しかけた。二人は沙恵の方を向いた。
光重の面影が沙恵と重なる。
原田「おぉ沙恵ちゃんか。危うく光重さんって言いそうになったぜ」
永倉「そういえば沙恵ちゃんは俺たちが知ってる光重さんとは違う光重さんを知ってるんだったな。
教えてくれよ、娘としてさ。酒の肴にしてえんだよ」
二人の間に座り月を見つめながら話した。
沙恵「私の母もここにいるときとあまり変わりませんよ。自慢してました、あたしは
坊主警察で働く姐御なんだぞって、沙恵が大きくなったら坊主たちから結婚相手を
選ぶんだってなんか意気込んでました。なんか頼もしい人で…ほら手紙で母がここで私を
働かせてやれって書いてたでしょう?それには私も驚いたんですよ。母に髪を切れば
可愛くなるなんてそそのかされて」
原田「沙恵ちゃん。アンタ、本当に光重さんソックリだ。光重さんを見てる感じだ」
原田は沙恵の頭に手を乗せた。
- Re: 新撰組を見たのは ( No.7 )
 - 日時: 2018/09/25 21:02
 - 名前: にゃあこ (ID: s00TEuml)
 「お、いたいた。沙恵ちゃん良い物が届いてるぜ」
大きな箱を持って原田は部屋に入って来た。彼以外にも平助や土方たちも集まってくる。
「母の…ですか…」
箱を開けると一番上には手紙と浅葱色の羽織などが入っていた。その羽織は新撰組である
彼らの服と同じだ。
平助「あー!!俺たちのと同じ!!」
沖田「光重さん、保管してたんだな」
永倉「なんか怖いな…」
羽織を手に取り沙恵は袖を通し一周くるりと回った。
『坊主集団のこと頼んだわよ沙恵。次はアンタが姐御にならないとね! 光重』
その手紙を読み沙恵は微笑んだ。
****
夜、布団を敷き眠りに付こうとした沙恵。彼女の耳にカサカサと何かが動く音がする。
沙恵は身構える、周りが真っ暗なこともあって不気味だった。
戸が開き数人の赤い目の男たちが斬りかかってくる。正気ではない、訳が分からないことを
ブツブツと呟いている。
「何事だ!沙恵!」
戸が開き刀を持った土方が息を切らし男たちを斬り捨てた。
あまりの出来事に沙恵は息を呑む。
「どうしたんですか、土方さ…って何だこれ!?」
平助も現場を見て驚いた。沙恵の目に微かな光が映り込む。
赤い結晶体だ。
「これ…もしかするとこれを飲み込んだから…」
「これが?…一応これは俺が預かっておく。ここじゃ眠れないだろうから…」
「あ、俺の部屋使えよ沙恵!」
平助は沙恵の手を掴む。土方は溜息を吐き頷いた。沙恵は「ありがとうございます」と土方に
礼を言って平助についていった。
「そういえばさ沙恵の父さんってどんな人なんだ?沙恵の母さんがあの光重さんってことは
知ってるけどあの人の相手って俺たち全員知らないんだよなぁ」
「私のお父さんか…あまり会うことは無かったけど優しい人だよ。お母さんは気が強い感じだけど
お父さんは温厚だったかな」
「へぇ、じゃあそろそろ寝ようぜ。おやすみ沙恵」
「うん、お休み」
二人は眠りにつき朝、目を覚ました。

