ダーク・ファンタジー小説

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桜印の鳥
日時: 2020/04/13 21:02
名前: ミカン (ID: lQjP23yG)

こんにちは、ミカンです。

昔ここで別名で小説を書いていましたが、現実の忙しさに追われ途中で終わってしまいました笑
最近は家にいることが多くなったので、心機一転も兼ねて一小説を書こうと思います。

即興でかつ現実でまた忙しくなったら更新遅気味or終わっちゃうかもしれませんが……

それでもよろしいという心優しい方は、どうぞよろしくお願いします*´∀`)ノ♪



第1話 >>1-6

登場人物紹介 >>6

Re: 桜印の鳥 ( No.2 )
日時: 2020/04/10 10:45
名前: ミカン (ID: lQjP23yG)

「辻本くん!」
「耕輝!」

銀◯の沖○総○みたいな髪型に、千○雄○みたいな、けれどそれよりはシャープだけど可愛いらしい瞳をもつこの少年は早紀の幼馴染、"辻本耕輝"。クラスは隣だが、休み時間になるとこうして早紀の教室に来ては宿題や居眠りのチェックを欠かさずやる。母親のようにみえるこの行動は、彼の日課の1つなのだ。

「「耕輝!」じゃねーよ早紀。またお前、さっきの時間爆睡してたろ」
「うげ!なんでそれを……」
「なんでって…この教室に来た時、お前を囲んでる女子達の会話を聞いてりゃ一目瞭然だろ。…それより崎下」
「なーにー?色男」

"崎下"と呼ばれた早紀の友人らしき女性に、耕輝は間髪入れずに持っていた教科書で頭叩きする。

「俺は色男じゃねぇよ。それよりなんだ?誰が青白い顔してコイツの愚痴ほざいてるって?」

崎下に頭叩きした教科書で、今度は早紀の頭をポンポン叩く。

「あーら事実じゃないの?私の他にも何人か見かけた女子いたけど…」
「それは安藤じゃないか?アイツ、俺に声似てることを良い事に、最近俺のモノマネ始めたらしいからな」
「ゲッ…なんでよりによってアイツなのよ…声以外どこも似てないじゃない……」
「俺に聞くなよ…それより、だ」

教科書を持っていた逆の手で、耕輝は早紀の頭を鷲掴みにし、ぐるりとこちらに向けた後、彼は顔を近づける。

「…お前、何の夢見てたんだ」
「…ふぇ!?」
「夢だよ、夢。…お前まだ寝ぼけてんのか」
「あぁごめん。…なんだか今日は寝覚めが悪くて」
「寝覚め?」
「うん。…最近さ、変な夢見るんだよね。それでどーも眠るのも怖くて」
「…それってさ、もしかして、お前が"チカ"って呼ばれてる…とか?」
「あぁ、うんそうだけど。…って耕輝、なんでそれ知っ———」

早紀が何か言いかけたその時、チャイムが盛大に鳴り響き、先生が教室に入ってくる。

「あぁほら時間だよ辻本君!早く教室戻らないと」
「あーっそうだな。じゃあ早紀、また放課後にな」
「えっあっうん。またね……」

耕輝が手を振って反射的に振り返したが、早紀の頭はそれどころじゃない。
「にしても毎回毎回よく懲りないよねーあの色男も。」という友人の呟きも上の空に、早紀は窓際の席ならではの特権である景色を見ることに行動を移し、「ボーッとしてるから」という理由で、授業開始10分で先生に怒られるのだった。



夕方、下駄箱で靴を取り換えていると階段を駆け下りて耕輝が近づいてくる。

「早紀!一緒に帰ろうぜ」
「あ——うん。いいよ」

時刻は5時半。冬に近づいてきたからか、日が落ちるのが早くなり、公園で遊んでた子供達がゾロゾロと帰り始める。
2人を引っ張るように伸びていた長い影が、どことなく不穏な空気を抱かせていた。

「…ねぇ耕輝、さっきの話なんだけど」

Re: 桜印の鳥 ( No.3 )
日時: 2020/04/11 17:45
名前: ミカン (ID: lQjP23yG)

「話?」
「うん。…"血塗れ仮面"について」

"血塗れ仮面"———。最近、巷で話題になっている殺人鬼のこと。早紀達の住む櫻木町から電車で5駅分先のA市で、突如男女問わず高校生を斬り殺していく連続殺人犯としてニュースで話題になっていた。目撃者によると、血塗れ仮面は日付が変わる1時間前を中心に、1人で帰宅している彼らを襲っているらしい。特徴は全身黒ずくめに覆われており、毎回狐、狸、猫等、動物の仮面をして現れる。血塗れ仮面の由来はその仮面に加え、襲われた被害者の殆どは惨殺されているといっても過言ではない致死量で発見されるから、恐らく犯行直後は全身血塗れだろうという、SNSの一投稿者の意見からきている。一部では毎回動物の仮面で現れるなら、動物愛護の者なんじゃないかという噂も飛び交っているが、真偽の程は定かではない。

「…でも今度の襲われた被害者は、軽傷で済んだんでしょ」
「"表上"はな。ホントかどうかは知らねぇが、今度の被害者はその町を牛耳ってる議員の娘さんだって噂だぜ」
「議員の?それじゃもしかして…」
「あぁ、自分の娘が名も知れぬ殺人鬼に重傷を負わされたって皆が知ったら、"あそこの家は自分の子供ですら守れない軽薄なお宅だ"…って、名誉に傷がつくとでも思ったんじゃねぇの。だから、表上は襲われたといっても軽傷で済んだことにした。…丁度、議員選挙も近いことだしな」
「…それにしても、どうして高校生ばかり狙うのかな。そりゃ深夜に帰宅する方もどうかと思うけど……」
「さぁな。いずれにしても、それが"本当の殺人鬼なのか否か"。…それで状況は大分変わると思うが」
「えっ…じゃあ耕輝はもしかして、"奴ら"の仕業だって言いたいの?」
「一応な。…でもまだそうだと決まったわけじゃねぇよ。"そうかもしれない"っていう可能性を言ったまでだ」
「でも、もしそうだとしたら…必ず"奴ら"はこの町に来るでしょ、そしたら…」
「そしたら、その時は倒せばいい。…今までだってそうしてきた。…違うか?」
「そうだけど…でも最近変な夢を見るの。もしかしたらそれと関係してるかも……」

耕輝はそこで、それまで流暢に語っていた口を閉ざしてしまった。
早紀は耕輝の一変した態度に気づいたのか、思い出したように今の今まで気になってたことを口にする。

「あのね耕輝、さっきの———」
「あら早紀ちゃん」

振り返ると耕輝と早紀とは違う制服の、フワフワな髪型をした耕輝と同じ可愛らしい、けれどどことなく儚い感じの目をした頼りになりそうな女子高生が歩いてきた。

「あっ、こんばんは。"夏未さん"」
「こんばんは。また耕輝と帰ってたの早紀ちゃん。相変わらず仲良しね、羨ましいわ」
「姉貴……」

彼女の名は"辻本夏未"。耕輝の2つ年上の姉である。
いかにもこれから起こり得る事件を吹き飛ばしそうな、愛嬌ある笑みを浮かべながら話しかける実の姉を前に、耕輝の顔は段々と曇り始める。

「あら、どうしたのかな耕輝。そんな怪訝そうな顔して。…私何かお邪魔だったかしら」
「別に…ただ今日は、何時もより帰りが早いなと思ってよ」
「急に下校時間が早くなったのよ、ホラ、最近物騒な事件も多いことだし?」
「そうかい。…俺はてっきり、今日返された成績が思った以上に悪くて、憂さ晴らしする為に早退したのかと思ったよ」
「口の聞き方もそこまでにしときなさい。耕輝…あなた最近、私に対しての態度が少しおかしいわよ」
「別にいつも通りだよ。…遅れた反抗期とでも思ってくれればそれでいい」
「普通反抗期の人間は、自分で反抗期だなんて言わないと思うけど。…まぁいいわ、夕飯の準備手伝うから、私先に帰ってるわね、遅くなるとお母さんに悪いから」

「じゃあね早紀ちゃん」とヒラヒラと手を振り、夏未は足早に帰っていった。

「…いいの耕輝。夏未さん、耕輝と一緒に帰りたかったんじゃ…」
「いいんだよ、こうして無駄に変な態度とってれば、姉貴は早々に引き上げるから」
「どうして?夏未さんと喧嘩でもしてるの?」
「喧嘩っていうか、うーん、そうだな……」

自身の頭を掻いて困惑そうな顔としたかと思うと、早紀の頭を優しく撫でてにこやかに彼は笑った。

「なんでもないよ。それより早く帰ろうぜ、血塗れ仮面に遭遇でもしたら大変だ」
「あっうん。……そうだね」

その笑みはどこか悲しそうだった。



翌日。1枚の新聞を手に男子高生が早紀のクラスに勢いよく入ってくる。

「おい!大変だ!うちの2年の女子が血塗れ仮面に襲われたらしいぞ……!」

Re: 桜印の鳥 ( No.4 )
日時: 2020/04/12 13:46
名前: ミカン (ID: lQjP23yG)

※少々グロ表現あります。ご注意下さい。


「えっ嘘でしょ……」
「遂にこの町にも……」
「そんな、まさか……」

様々な声が飛び交う中、1人の女子生徒が誰よりも声を荒らげる。

「ねぇ!その子、その後どうなったの!?」
「えっあっあぁ……」

その生徒の圧に押され、第一報を告げた男子生徒は戸惑いながらも答える。
話によると、襲われた女子生徒は瀕死の重傷を負いながら病院に運ばれ、現在も意識不明だという。
発見された当初は見るに堪えたい状態であり、治療にあたった殆どの医師が揃って「もしこれで息を吹き返したら奇跡」と発言した程である。

「……そんな、まさかあの子が……」
「あの子って、もしかして梨華の知り合い、だったの……?」

梨華と呼ばれた女性は震えながらも一度深呼吸をし、少なくとも近くにいた人達には聞こえるくらいの小さな声で「そうよ」と答える。

「あの子はうちの吹奏楽部の後輩なの。何時もは一緒に帰ってたんだけど、昨日は居残り練習したいって言ってて。…私は用事があったから、一足先に帰ってたの」
「そうだったんだ……」

梨華の側にいた女性は彼女の背中を静かに撫で、目が溢れんばかりの涙でいっぱいになっているのに気づきそっとハンカチを手渡す。

「…ねぇ紫音、今日私の部活が終わるまで一緒にいて。一緒に帰ろう?私怖くて、もう……」
「分かった。分かったから。とりあえず落ち着いて、ね?もうすぐ授業始まるよ?」
「うん、分かった……ありがとう、紫音」

「梨華大丈夫?」周りの生徒達が一斉に彼女らを取り囲む。
その様子を、早紀は顎に手をあてながらなんとも言い知れぬ表情で見つめていた———……



夜9時過ぎ。部活を終え、校門まで駆け足で来たものの、紫音と呼んでいた友人らしき女性はそこにいなかった。

「紫音ー!紫音ー!…どこいったのよ、一緒に帰ろうってあれほど言ったのに」

仕方なく今にも泣きそうな涙を必死に抑え、梨華は駆け足で自宅まで帰ろうとする。
その時、背筋に今まで感じたことのない恐怖が走った。
すぐさま振り向くも、そこには何もない。誰もいない。風が冷たく吹くだけで辺り一面、虫の1匹すらそこにはいなかった。

「…しっ紫音……?いるの……?」

彼女は一歩後ずさる。しかし、そこに彼女の友人がいるのではないかという、確信も何もない考えで頭がいっぱいになり、不安と恐怖を抱えながら、彼女は何故か体育館裏に向かう。
時刻は9時10分。もう生徒はおろか、先生すらいないのではないだろうか。
体育館裏まで来た彼女は辺りをキョロキョロ見回す。

「紫音ー、いるのー?」

ふと、上を見た刹那、身の毛もよだつ恐怖と絶望が彼女を襲う。

「しっ紫音……!!」

そこには両手首を縄で縛られ、頭から滴る血で地面が水たまりのようになり、片足をもぎ取られ文字通り全身血塗れになった"彼女の友人"が宙にぶら下がっていた。
傍らには、白い能面のような仮面を被り鉈を片手にこちらを見つめている"奴"が、聞こえるか聞こえないかぐらいの細々とした声で何事かを呟いていた。

「あっ…いやっ…やっ……」

あまりの怖さに全身が棒のように硬直し、動きたくても動けない状況に彼女は追い込まれる。
それを合図に、仮面を被ったそいつはジリジリと一歩、また一歩と彼女に向かって歩みだす。

「………っ…はっ……」

もう声が出ない。逃げ出すことすらままならない。
彼女は大粒の涙を流し、歩み寄るそいつを見つめることしか出来ない。

「…やめっ………て……」

諦めて流れるように膝が崩れ落ち、そいつの意のままに自らの運命を受け入れようとした。
その時。そいつと彼女の間を意図的な何かが空を切った。

「こんばんは。血塗れ仮面さん」

Re: 桜印の鳥 ( No.5 )
日時: 2020/04/14 11:52
名前: ミカン (ID: lQjP23yG)

その少女は、後ろ姿だけでも凛とした印象だった。
黒ずくめの合羽のような衣装に纏われたその存在に、梨華の頭には一瞬、ここは死後の世界かという考えがよぎった。
自分の前に立ちはだかる悪魔のようなその姿に、彼女は何が何だか分からなかった。

「…あぁ、ごめんなさい。いきなり挨拶なんて、不躾ですよね」

しかし、声の主は少女ではない。女性のようなお淑やかさに、幼い少年のようなあどけなさを思わせる。
(えっ何この人…人間…?でも声は、この人からじゃない……じゃあ一体誰が……)と、梨華が自問自答する刹那、その疑問は直ぐに払拭される。

「あなたですよね、高校生連続殺人犯の犯人は。あまりにも特徴的な犯人像だったので、今回は直ぐに分かりましたよ」

いつの間にそこにいたのだろう。梨華の側にもう1人、今度は少年が立っていた。
声の主がその人だと気づき梨華は視線を向ける。同時に、その少年も梨華の方にチラッと視線を向けたかと思うと不敵な笑みを浮かべる。
どこか不穏な、底知れぬ表情を浮かべていた。
もっと近くで見たいとも思ったが、生憎顔はかろうじて見えるものの、少女と同じく全身が黒ずくめの合羽のような服装を身に纏っており、しかもフードで顔も覆われていた為、少年ということ以外、特徴が掴めなかった。
ふと、彼女の前に立ちはだかっている少女を見ると、彼女はそこで"あること"に気づく。

(…あれ?この人どこかで……)

少年が1歩前に出る。1歩、また1歩と。そうして少女の傍らにまで近づき、少年は"血塗れ仮面"と呼んでいたその人に向けてゆっくりと、真っ直ぐに指差す。

「最初は分かりませんでしたよ。A市で起こっている連続殺人は、"本当にただの殺人"だと思っていました。実際何人か病院送りになった後そのままお還りになった方もいますし、未だに重傷を負っている方もいる。…けど"ある人"が襲われたことをきっかけに、それが"ただの殺人"ではないと気づいたんです」

少年は指差していた利き手を下ろし、ゆっくりと歩み始める。

「隣町の女子高生、覚えてますか?そうです、議員の娘さんです。今でも心肺停止の状態みたいなんですけどね。その町を牛耳るぐらいお偉い方の娘さんですし、実は彼女、"吹奏楽の大会"でも個人的にちょっと名の知れた方でしてね?だから簡単に調べられたんです。…そしたら直ぐに分かりましたよ、被害にあわれた方は皆"他校の吹奏楽部の方"だって」

少年は、血塗れ仮面の顔近くまで来る。

「この推測が正しければ、間違いなく貴方には、"あれ"が刻まれているはずなんですけどね。…さぁ見せて下さい。見せてくれさえすれば、あとはこちらで丁重に扱わせていただきますから」

先程から少年が何を言っているのか梨華には分からない。
少年が話している間、血塗れ仮面は勿論、隣にいる少女も決して動こうとしない。

「あれ、答えてくれないんですか。…おかしいなー、"深夜の時間帯"、"共通点をもつ被害者"、そして今日のような"残忍な殺し方"。あとは体の何処かにある"あれ"さえ見つければ、完璧なんですけどねー……。そうでしょう?…"桜印の狂乱者"」

何かの合図なのか、利き手で指をならした瞬間、入れ替わるように銀色の刃を揺らめかせながら、少女が躊躇いもなく斬りかかる。

「…ガッ、ハァ、ウオアアアァァァァ………!!!」

鉈で受け止めながら、血塗れ仮面は雄叫びを上げる。しかし、受け止めるはずの刃も少女も既にそこにはいない。

「こっちよ、化け物」

言うが早いか、少女は血塗れ仮面の背後に回り、人間とは思えぬ速さで心の臓に突き刺す。
大量の吐血と獣のような喘ぎを見せ、血塗れ仮面はうつ伏せに倒れ息絶えた。

「…えっ……何今の……。死んだ………の……?」

一部始終を見た梨華は今にも吐きそうな感覚に襲われながら、現実を受け止めようとしていた。

「死んだよ。まぁ正確に言えば"人間に戻った"と言った方が正しいかな」

少年は中腰になり、血塗れ仮面の仮面を剥ぎ取り、衣服をも脱がせ始める。上半身を全て脱ぎ終えたところで「やっぱり……」と静かに呟いた。

「腰の辺りに桜印がついている。それにこの顔、名の知れた大会に出場してる貴方なら、きっと分かると思うけど……」

血塗れ仮面の髪を引っ張り上げ、梨華の方に向ける。彼女は一瞬身震いしたが、顔を見て直ぐに驚きの表情を見せた。

「…この人、大会直後に声かけてきてくれた……!」
「やっぱり知り合いだったか。桜印のついた"被害者"は自分と共通点のやつばかりを狙うんだ。それが後天的な特技に関してもな。今回はお友達が被害にあったから、少々計算狂いだったが……」
「…えっ……な、に……?桜印って。あなた達一体…」

梨華が問い質そうとしたその時、背後に感じる絶妙な声色に、存在を引っ張れる。

「……よ」
「えっ……」

Re: 桜印の鳥 ( No.6 )
日時: 2020/04/14 11:56
名前: ミカン (ID: lQjP23yG)

「今ここで見たことは他言無用なのよ。…でも貴方が見ている以上、他に誰が見ているか分からないから、貴方を今ここで、殺さないと……」
「えっ……」

彼女が何を言っているのか、梨華は理解できなかった。彼女を見上げたま動けない梨華を、彼女は有無を言わさずまだ納めていない刀で斬りかかろうとする。
梨華の顔面ギリギリのところで、少年が彼女の行いを喰い止めた。

「はーい、そこまで。…おい早紀、理性と本能の境目が分からない状態での単独行動は危険だって、何時も言ってるだろ」

少女は無表情のまま何も言わない。しかし少年の言葉を理解したのか、梨華の顔面から刀を離すと、手際よく鞘に納める。

(…私、今、助かった……の……?)

頭の中が混乱状態で未だに現状を整理できないでいた梨華に、少年は優しく肩を叩く。

「…まぁそういうわけだから、申し訳ないけど君の記憶を消させてもらうね。大丈夫。この騒動に巻き込まれる前の記憶に戻すだけで、君を殺すことはないし、お友達は、生き返れないけど、事故死ってことにして、こちらできちんと処理しておくから……」
「……えっ、待って、私……!」

無我夢中で抵抗するも、謎の光と共に、梨華は、もとい、少女の意識はそこで途切れた。
しかしこれが物語の始まりに過ぎないことを2人はまだ、知る由もなかった———……















いかがでしたか?これで第1話は終わりです。
本当は5回に纏めたかったんですけど、こちらの都合により、6回まで跨いでしまいました……(汗)
初っ端から分かりにくい表現ばかりで申し訳ありません。ここで、本編の中心を担う登場人物達と、簡単な用語を紹介したいと思います。
(出てきてない人はその場かぎりの人物か、物語の中心的人物ではないと思ってて下さい、なお辻本夏未さんは後から書きます)



辻本耕輝つじもとこうき
・櫻木中学3年A組。15歳。本作の主人公の1人。
・12歳の時に櫻木町に越してくる。早紀とはアパートの階が同じ。
・頭の回転が早く、基本的に温和な性格。
・桜印のついた化け物の目的と過程を調べている。
・左手の中指に金色の指輪を嵌めており、戦闘時の早紀を自分の思うがままに操る(普段は制服等のポケットにしまっている)。

西野早紀にしのさき
・櫻木中学3年B組。15歳。本作の主人公の1人。
・幼い頃の記憶が全くない。父親とふたり暮らし。
・喧嘩っ早く敵が多いが、何故か友達に恵まれる。
・日本刀は家に代々伝わるもの(とされている)。
・桜印の化け物を斬り殺す役目を担っており、戦闘時は赤い瞳になる。理性が効かない為、耕輝の指示がなければ誰彼構わず殺してしまう。
・耕輝に想いを寄せているが、中々素直になれずにいる。

【桜印】とは?
青い瞳に体の何処かに桜の痣がついている化け物。自分の関わりのある人物を容赦なく斬り殺す。
基本無口か時々狂ったような雄叫びを上げる。心臓を貫く以外、どんなに傷を負っても時間が経てば自然治癒する。
何処から来たのか、はたまた何故そうなったのか、上記の情報以外不明。
※耕輝達は親しみを込めて「狂い桜」と呼んでいる。


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