ダーク・ファンタジー小説
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- 庭園の主
- 日時: 2021/05/01 17:23
- 名前: 望女 (ID: Ryt8vfyf)
私、レイアジーラ ナイングは、宮廷の庭園の主人をしている。
いきなりで全く申し訳ないけれど、今から始まるのは、私のささやかな仕事の物語だ。
《ご挨拶》こんにちは。あるいははじめまして。
望女です。のぞめと読みます。
読んでいただきありがとうございます!
あなたが楽しんで読めるよう、頑張りま
す。
舞台:とある王国の宮廷の庭園
主人公:レイアジーラ ナイング
名目上は庭の世話係の侍女だが、庭の管
理全般を行っている
「レター、周りをしっかり見張っているのよ」
あの方は確か王の妃の一人だったはず…。あ、カリシア様か。そんな彼女がどうして侍女のレターだけ連れて庭園へ?植物の観賞が趣味とは聞いていない。
私はそっと木の陰に隠れた。
カリシア様は、えらくこそこそと歩く。
…絶対ろくなことじゃない。
私は息をひそめた。
- Re: 庭園の主 ( No.3 )
- 日時: 2021/05/03 10:59
- 名前: 望女 (ID: Ryt8vfyf)
その夜。この庭園は昼間は警備ゆるゆるだが、さすがに夜になると衛兵の警備が付く。
そんな訳で、私は衛兵に警備を任せてある場所へ向かった。
「こんばんはー」
「ああ。…いらっしゃい」
何だその沈黙は。ここは王宮の図書院。ぼんやりした顔で振り返ったのは、リシューレという割とイケメンで長身の男。
私が王宮に入ってから知り合った。こうやって頼る事はよくある。付き合ってはいない。
「カリシア様の生まれた地方って知ってますよね」
いきなり話題を出しても変に勘繰ったりしない所が頼れる。
「確か、山の方の、カイロト町でしたね」
「今ちょっとカリシア様が怪しくてね。あの辺で色々埋めたりする呪いって知ってますか?」
「んー…、今日は厳しいですね。また早めに連絡します。くれぐれもちゃんと寝るんですよ」
何故かいつも心配される。ありがたいが。
私は窓を開け、壁を伝って降りた。曲芸みたいだが、この方が早い。
掘り返すのは明日にしよう。
- Re: 庭園の主 ( No.4 )
- 日時: 2021/05/04 11:22
- 名前: 望女 (ID: Ryt8vfyf)
翌朝。今日は昨日の深夜から雨だ。掘り返した。…………おい………おいおい!
「っ………!っは……?んな……あ…」
訳の分からないリアクションばかりで申し訳ない。クールダウンクールダウン。
何が起こったか。昨日カリシア様が埋めた恐らく扇子らしきものから、何かが増殖していた。布の繊維……が、植物の如く八方に広がっている…!
…うえっ、きもっ。朝食べたものがリバースしたらどうしよう。生理的に無理。
たぶん、あまり不用意に触るものじゃない。これ、呪い通り越して呪いだろうが…!
とりあえずそこから離れて、最初の髪飾りの所に向かい、そこも掘り返した。
「Oh……」
本日二度目の衝撃。長靴に泥がはねた。髪飾りがどろどろに溶けている。え?これ木製ですよ。木って溶けるんですか?しかも。
………何か土赤くね?赤というより紅という感じだが。赤土じゃなかったはず。血、だろうな。
髪飾りと扇子は、あまり触りたくなかったが回収して、庭園の管理小屋に置いた。
とりあえずの一段落はついた感じだが、ここからは解決編だ……。これ以上静観している訳にはいかない。やれやれ。不思議な話だこと。
- Re: 庭園の主 ( No.5 )
- 日時: 2021/05/06 07:07
- 名前: 望女 (ID: Ryt8vfyf)
カイロト町にはある呪いがある。一週間ごとに土に自分のものを埋め、四つ埋めて一ヶ月で完成する。雨が降ると呪いが定着するため、一ヶ月の間に雨が降らなければならない。山地ゆえ、土に関係のある呪いが多いのだろうか。
この呪いの目的は、その場所に自分の印を付けること。次に生まれるときはここに生まれたいとか、その地を支配したいとか、特定の呪いの下地にするとか、色々ある。
ただ、途中で掘り返してしまうと効力は無くなるので、カリシア様の目論見は失敗した事になる。
しかも、一ヶ月で完成するので、そもそも効力も弱い。逆に、試しに使えるし、初心者がやっても失敗は少ない。
「だから、今回は良かったんですよ。下手に掘り返したせいで呪いの対象があなたになったり、こじれたりすることもあるんですから!」
リシューレ、何かすごい怒ってる…。いや、リスクは分かったから。ありがたいんだけど。
今私達は庭園の管理小屋で話している。まだ雨は降っているが、ずいぶん収まってきた。リシューレは調べて分かった事をちょうど教えに来た所だった。タイミング良いなあ。
「ありがとう。今からカリシア様に話しかける方法を考えますので。わざわざごめんなさいね」
「いいんです。あなたのお役に立てて良かったです」
笑顔が眩しい…。リシューレは戻っていった。
カリシア様に話しかけるには…。どうしよっかな。
- Re: 庭園の主 ( No.6 )
- 日時: 2021/05/12 07:09
- 名前: 望女 (ID: Ryt8vfyf)
「カリシア王妃様。私はレイアジーラ ナイングという者でございます。少々お話が」
私だって敬語ぐらい使えますから。
じゃなくて。まずはカリシア様の所の侍女と仲良くなった。この子自体良い子だったし、私の控えめー地味とも言うーな顔が効を奏したのかもしれない。で、そこから情報を得て、カリシア様が一人になるタイミングを狙った。
驚かせないようひっそりと近づき、落ち着いた声を心掛けて声をかけた。
「何でしょう?」
綺麗な声だ。透き通るような、よく響く声。細い身体。涼しげな目もとの整った顔。白い肌。王妃になるために生まれてきたんじゃないだろうか。
「どうなさったの?」
いけないいけない。つい見とれてしまっていた。
しっかし、こんな優しげな方が呪いを…ねえ。
「カリシア王妃様。私はレイアジーラ ナイングという者でございます。少々お話が」
最初の場面に戻る。
「カリシア王妃様、先日から、宮廷の庭園で呪いをなさっていませんか」
私は変に取り繕うとぼろが出るタイプだ。
カリシア様は口に人差し指を当てて首をかしげた。
「何の事かしら?」
嘘をついている様には見えないが…。でも息をするように嘘をつく人もいるし…。
ただ、これだけは言わせてほしい。そんなの私が聞きたいわ。
- Re: 庭園の主 ( No.7 )
- 日時: 2021/05/23 14:38
- 名前: 望女 (ID: ZyN2DGA0)
カリシア様が違うなら、私が幻覚を見た説、カリシア様が操られていた説、カリシア様がど忘れしている説、実は別人説、が浮上してくる。
「申し訳ございませんでした。実は私はこの庭園付きの侍女にございます。もし何か気付かれた事がございましたら、私か、リシューレ フロープスにお伝えくださいませ。では、失礼致します」
私はなるたけ丁寧に歩いた。むつかしい……。つか、緊張したわー。はあ……はあ……!過呼吸!
カリシア様が優しい方で、マジよかった。人によったら、濡れ衣着せやがって、つって処刑すらしようとする人いるもん。
ごめんね、リシューレ。巻き込んじゃった。てへぺろ♪
さてさてさあて。カリシア様だけに任せるわけにはもちろんいかない。考察はあとでしよう。探らなきゃ見えないもんもあるでしょうよ。
カリシア様が嘘をついていないなら、この件には黒幕がいるはず…。王宮なんてアホほど人いるからなー。ある程度絞らないとな。
聞き込み開始!
まずは……ううん……、よし、カリシア様の宮じゃない所の侍女のお友達のとこ行くか。
レッツゴー♪