ダーク・ファンタジー小説
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- 帝国幻想
- 日時: 2021/12/10 20:18
- 名前: 朧月 (ID: fpEl6qfM)
初めまして、朧月と申します。
グダグダとクソ長い小説を投稿させていただきます、よろしくお願いいたします。
これは、一応二次創作ではありませんが、あちらこちらの小説を参考にさせていただいてるので、似たようなシーンや、被り等があるかもしれません。ご了承ください。
追記:雑談掲示板にこの小説の感想スレ立てました。良かったら是非。
- Re: 帝国幻想 ( No.4 )
- 日時: 2021/11/06 06:38
- 名前: 朧月 (ID: fpEl6qfM)
第2章 130話~診療~ sid.ソロ
いろいろあってメンタルはボロックソですが文字は書きます。
しんどいね。
―――――――――――――――
『今、何人目だ。』
「……23。」
私は淡々と、記憶上の事実を述べる。診療所の壁の影から、黒く溶け出したクロムが出て来て、私にそう、尋ねた。
今はもう、時刻としては正午を過ぎている。一日二食の軍人生活が長いせいか、空腹は感じなかった。
しばらくずっと、私は自分の順が回って来るのを待っている。
私は、囚われていた人々に比べれば、ほんの切り傷程度で、怪我も軽い。しかし、一応怪我人ではあるので、こうして一番最後という番で、診療の時を待っていた。
誰もいなくても構いはしないが、暇になるのは事実だ。頬の血も、大分前に乾いてしまった。
それを見計らってか、クロムは私の話し相手をしていた。
「……こうも何もないと、余計なことが頭を過る。」
『気持ちはわかるぞ。』
ふと、自らの右手を眺める。
幼い頃、物心もつく前に失われたその手は、今は機械仕掛の義手となって、多くの人々の命を奪っている。人から生を失わせ、人に死を強制している。
果たして私は、そんな彼らの命の重さを背負えているだろうか。いくら軍人になるしかなかったとはいえ、それに甘えて命を軽々しく考えていないだろうか。
いつも、私はそう、自分自身に問いただす。
人を殺すということは、その人の分まで未来を生きるということだ。軽率に死んではならない。そして、自らもいつかは殺されるという覚悟を持つこと。
私はそう、思っている。
案外人間というのは、とても脆弱で、消えやすい。こんな剣一本で、相手の息の根を止められるくらいには。
それにも関わらず、人々はすぐに対立し、争いを始める。
確かに、人々の思いが一つに纏まることなど、滅多に起こらない。故に意見が分かれ、対峙してしまう。それは、仕方のないことだ。そんなのは、分かっている。
だからこそ、私はいつも自分自身に問い続けている。
「人の命の重さを、きちんと分かっているか?」
『……少なくとも、お主が軽々しく見ていることは、無いだろうな。』
「そうか、ありがとう。」
―――――――――――――――
次で新キャラ出します。
次回「ソロと、診療所の【医者】。」
- Re: 帝国幻想 ( No.5 )
- 日時: 2021/11/07 12:10
- 名前: 朧月 (ID: fpEl6qfM)
第2章 131話~医者~ sid.ソロ
うえーい。新キャラだぜ。
つか、朝ごはん食べるのめんどい。
―――――――――――――――
「次の方ー。」
「失礼します。」
しばらくクロムと話していれば、いつの間にか自分の番が回ってきていた。彼は再び影の中に沈み、私は何事も無かったかのように、中へと入っていく。
扉を開ければふわっと薬品の匂いが鼻を通り抜け、いつかリオートに治療をしてもらった時のことを思い出した。
「こちらへどうぞ。」
「はい。」
西宮が懇切丁寧に兵士へ話していた医師は、さらさらとした群青の髪に碧い瞳をした、整った顔の青年だった。
彼は慣れた様子で私を椅子に座らせ、診察をしていく。
水のようにひんやりと、そしてなめらかに、優しい彼の手は、白い陶器の如く麗しかった。私もよく女に間違えられるが、似たような人間がこの町に二人もいるとは。
「……貴方、左肘んとこぶつけたでしょ。あと、右手が義手。」
「よく、分かったな。」
彼は、少し私に触れただけでそう言った。
確かに右腕は義肢で、左肘を戦っている最中にぶつけた記憶もある。大して問題は無かったから放置していたが、あれは鬼人が割った床の破片が飛んできたんだったか。
特に痛みを感じなかったはずの怪我にまで、彼は気が付いた。何年もやっていれば、自ずと分かるようになるものなのだろうか。
そんなことを考えながら、私は黙って治療を施される。
アルコールの匂いがする手巾で左頬の血を拭かれ、さらにそこを消毒液で殺菌された。少しだけ、ピリッとした痛みが走る。
かれこれ、軍人になってもう10年目だ。8の時に士官学校に入り、12で卒業してそのまま入隊。戦い続けて、14年となる。
それだけ長いこと〝死〟と隣り合わせで居たからか、今では少しの痛みでは動じなくなってしまった。そしてそれ以上に、ちょっとした傷による痛覚を、だんだんと感じなくなってきている。
このままでは、うっかり失血死しそうだ。
そんな縁起でもないことを脳内で考えて、消して、再び彼の手元に目を落とす。手当はもうほとんど終わっていて、やはり私は軽傷だったと再確認した。
ふと、彼が作業を止めて言った。
「
――――僕はね、【水苗病】なんだ。」
「……え?」
―――――――――――――――
さて、意味のわっかんない病名が出てきましたね。ええそうです、奇病です。
それにしても、作者は直近に仕込んだ伏線をどう回収するんでしょうね(他人事)。
夜「この馬鹿作者。」
あい、すんません。ちゃんと回収はしますんで待っててください。
あと、マジェスティナ王国編終わったら、一回章を区切ろうと思います。このまま二章で、他の国まで突入しようとしてたら松永に怒られたのでそうします、はい。
それでは、次回予告。
次回「ソロと、【水苗】病の医者。」
- Re: 帝国幻想 ( No.6 )
- 日時: 2021/11/11 19:38
- 名前: 朧月 (ID: wXGYBxg0)
第2章 132話~水苗~ sid.ソロ
あー精神やみそ。
そしてアナログ原稿のノートがそろそろ終わってまう!こないだ6冊目入ったばっかやのに!
―――――――――――――――
『水苗病』
またの名を、【水に寄生する植物】(ウォーター・プランツ)。その名の通り、世界中のありとあらゆる水分に寄生する植物であり、人間が寄生されると、寿命が半分に削られるという。
その名を前に聞いたのは、もう20年も前の昔の文献の中だ。とっくに絶滅したと思っていたのに。
【水苗病】は、患者の寿命が半分に縮むが、他人から見れば特に害のない平和な病気だ。もっとも、かかった本人には体臭が水の匂いになったり、髪や瞳が蒼くなったり、特殊なものが見えたりと面倒なことも多いようだが。しかし、他人に病が感染るのは、患者が死んで体からウォーター・プランツの花が咲き、その花粉を吸ってしまった時だけだ。逆に言えば、花粉さえ吸わなければそうそう感染することはない。
「僕ね、【水苗病】なんだ。幼い頃、確か5つの時かな?当時一緒に遊んでた子が見舞いに行ってた彼女の母親が病持ちだったらしくてね。うっかり吸ってしまって、余命は残り48年だって。医者から告げられた。だから、いつか彼女の病を治すために自分も医者になってからもう、9年。治療法は見つかっていない。彼女の父親も、もともと持病で寿命が短かったのか、もう死んでしまったよ。
こんな話、貴方にしたところで何になるっていうんだろうね。吐き出したかったのかな、誰かに聞いてほしかったのかな。精神科医じゃないから、分かんないや。」
彼はそう言って、左手で目元を覆った。そして静かに、咽び泣いた。
その姿は、酷く悲しかった。
世の中にある人々というのは、きっと誰しも何かを背負っている。それは大きいかもしれないし、小さいかもしれない。プレッシャーだったり、罪悪感、罪、憤りかもしれない。けれど皆一様に、何かを背負って生きているのだ。
そういう内の一人が、彼や私なのだと思う。
きっと彼は、この町の誰にも言い出せなかった。子供は不安になんてさせられないから、余計言える訳も無かった。
けれど私なら、私なら構わない。
確実にこの国の人間ではないし、声の低さから成人した男だということも分かる。
知らないし、口が固そうで、大人。だからこそ彼は、こんな心の内を吐露したのだろう。
それはとても自分勝手な考えかもしれないが、私にそれを突き返すことは出来なかった。きっと彼は、ここで吐き出さないと壊れてしまう。そんな様子の人間を払いのける程、私は無情にはなれなかった。
「ねぇ、貴方。名前は?」
「ソロ・ヴェルガノーツ、しがない軍の中佐です。」
「……そうか。僕は、アクアス・ダーガット。【水苗病】が大嫌いな、町医者だよ。」
人の心の内側には、内側で返さなければならない。〝レオン・ヴェルツ〟なんて言う外側ではなくて、本当の名前で――――。
―――――――――――――――
くっら。我ながらくっら。
次回「クロムとエアリーの、【雑話】。」
- Re: 帝国幻想 ( No.7 )
- 日時: 2021/11/22 19:16
- 名前: 朧月 (ID: fpEl6qfM)
第2章 133話~雑話~ sid.クロム
報告。
彼氏ができました。そして振り回されまくってます。悔しい。
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「狼さん。少し、いいかしら?」
『……かまわん。』
診察を終えたエアリー嬢が、我の潜んでいた影に話しかけてきた。やはり精霊人というのは、魔力に敏感だ。
我は首から上だけを、暗く日の当たっていない壁から出し、少女に目線を合わせた。彼女は三つ編みにした長い銀髪を、ふわりと揺らす。
「狼さんって、ソロさんの契約魔獣でしょ?クロムっていう名前の。」
『……あァ。』
「私ね、本当はエアリーじゃなくてエアリアルって言うの。一族世襲制の名前、風精エアリアル。」
言いたいことは、分かった。
きっと彼女は、エルフの中でも強い力を持つ一族の当主か何かなのだろう。そしてのその力の源は、月の泉で殺した風の精・エアリアル。
エルフは人間よりも聡明で長寿であるから階級制度など無いと思っていたが、案外そうでもなかったようだ。
「お友達も、結婚相手も、皆自由なの。けれど、この名前がすごく重みになってる。たくさんの期待を寄せられて、うれしいはずなのに。」
あァ、この少女もか。
我はそう、思った。
昔、我にも大切な人というのが居た。恋人とかそういう関係ではなく、一蓮托生(一蓮托生)の相棒。何年もの間、共に連れ添っていたが、彼女は〝勇者〟という重圧に耐えきれずに、海へ身を投げてしまった。決して我の前から居なくなることは無いと、約束を交わした筈だったが。
きっとこの少女も、彼女のように重いプレッシャーを背負っている。今はまだそこまで苦ではないだろうが、放っておけば精神を病んでしまうだろう。
そんな彼女に我ができることは、唯ひたすらに話を聞くことだ。
たったそれだけのことで、心というのは癒すことができる。
「すごく丁寧にお話を聞いてくださっているけど、あなたもどこかの上流階級だったりするのかしら?」
『上流階級ではないが……そうだな。
――――かつて、〝魔物たちの王だった物〟、とでも言っておこうか。』
―――――――――――――――
ついにクロムの素性が判明。
果たしてこれを〝雑話〟と呼んでいいのか……(汗)
次回「ようやく人身売買事件が終幕へ。
ガートとアラは【迎人】」
- Re: 帝国幻想 ( No.8 )
- 日時: 2021/11/23 00:16
- 名前: 朧月 (ID: fpEl6qfM)
第2章 134話~迎人~ sid.ソロ
この小説終わる気がしない。
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「レオンさーん!!」
「おい、何してたんだよ!」
私が諸々の事後処理を終え、着々とこの地の出発を思慮していると。
遠くから、バタバタとガートとアラが走って来ているのが見えた。彼らは酷く慌てた様子で、少し安堵したような表情で、肩を上下させる。
「もう、どこ行ってたの!?」
「ふつうに怖かったわ!」
「いくらレオンさんが強いからって……流石に長時間居なくなるときは言ってよ。」
「あァ、すまん。」
どうやら私は、失態を犯してしまったらしい。
本部時代の癖でつい、夕食時までに戻ればいいと思っていたが違ったようだ。本来は夕食だけでなく、昼食時も戻らなくてはならないのだが、私は軍の中では中の上程度の扱いだったため、朝夕を通してこき使い倒されており、昼飯の時にいないことも多々あった。
それゆえ、昼に戻らず6時の夕餉には合わせる、という日々を繰り返していたのだが。
ガートとアラは、中々に息が切れているようだった。その様子だと、もしかしたら町中を走り回って探していたのかもしれない。
「でも、無事でよかったぁ……」
「すまん、心配をかけた。」
「まったくだわ……。」
『お主、連絡していなかったのか。』
クロムに、『そんな抜けているところもあるのだな。』と笑われた。
私自身も多くはチェックしているのだが、どうしても習慣として体に刻み込まれたものに関しては、色々と抜けてしまうのだ。
「次からは、ちゃんと言えよ。」
「本当に!!肝冷えるから!」
「あァ、分かった。」
『良い友よのう……。』
いつかもクロムに言われたセリフだな、と思いつつ、半泣きのガートと呆れたアラの手を握る。
『友人は大切にしておけよ。』
「心得ている。」
―――――――――――――――
クロムおじいちゃん、再来。
クロムはまじでおじいちゃん(5000歳越え)。
次回「さてさて、事件も解決。いよいよ【出町】」