ダーク・ファンタジー小説

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いつだって私達は。
日時: 2023/11/26 11:10
名前: のゆり (ID: 7NQZ9fev)
プロフ: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=13818

20××年東京都、港区。とある高級マンションに、4人の成人女性が暮らしていた。…おそらく、20代程度なのだろう。

明鏡めいきょう家4姉妹。

美女の多い港区でも、一目置かれる程のルックス。
長女・麗奈れいな 白髪ロングにサファイアの様な瞳の持ち主。
次女・瑠璃歌るりか 青髪ウルフの引きこもりゲーマー。
三女・百合菜ゆりな 水色髪の三つ編みポニー、清楚な雰囲気である。
四女・結花ゆいか 白と青髪のくりくりの目が印象的。
一件普通の美人姉妹に思えるが、彼女らには誰にも言えない秘密があった。
___風俗嬢、アイドル彼氏、サイコキラー、ネット依存。



それは誰にでもある隠し事。ただ、彼女達は別に隠していたい訳では無い。
「無いと心が満たされない、生きていけない」のだ。

つまらない日常の中で己の快感を探す彼女らには、どんな結末が待ち構えているのだろう。



  「いつだって私達は。」始動___

 第1章 「甘い月光」 >>2-4
 第2章 「死神の呼び声」>>5-8
 第3章 「夜に染まれ」 >>9-13
 第4章 「哀の戯れ」 >>14-15

 別館で他小説も執筆中の為、超低浮上

    2023.10.30 観覧者70人!
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Re: いつだって私達は。 ( No.11 )
日時: 2023/11/05 06:44
名前: のゆり (ID: 7NQZ9fev)

 「何で」
 ______『夏樹瀬なつきせ 栞凪かんな
 私が1番嫌いで、1番会いたくなかった人の名前。
 スマホに映し出されたその5文字を睨みながら、昔の事を思いだす。



 ~2年前~

 今日も小さなライブ会場で、私の推しは歌っている。
 私以外のお客さんは居なくて、それでも海和は歌っている。
 「愛してるよ」
 息を切らしてそう告げる彼に、胸の鼓動が早くなる。
 「わっ私も…!愛してる!」
 まだ貢いだ額が少ない頃の私。
 自分しか居ないから、自分だけに愛を伝えていると思うと、やっぱりキュンとする。

 「かんなもー!海和様ぁ~♡」
 突然、知らない女の声が聞こえる。
 「フッ…栞凪かい?相変わらず騒がしいね」
 え?どういう事?今まで私、欠かさずライブに行ってたのに。誰とも会わなかったのに。
 恐ろしい程の嫉妬と憎悪が、体中に込み上げる。
 「あれ?君も海和様のファン?」
 栞凪という人物が、私の事を覗き込んで来た。
 地雷系ファッションに身を包んだ、いかにもな女の子だった。
 「そうだけど…」
 海和のファンが自分だけだと思いたくて、推しの顔を窺う。
 「ハハッ、実はね。百合菜に伝えていなかったけど、路上ライブをしたんだ」
 「そーそー!かんなね~?そこでガチ恋したの~!」
 「初耳だよ」

 うふふ、あはは。
 私の知らない所で、推しがガチ恋客を作った…?
 あり得ない、あり得ない!
 私が海和の知らない事なんて、無かったのに!何で!何で⁈
 私はこんなに愛してるのに、貢いでるのに何でよ!

 「栞凪ちゃんだっけ、私は百合菜。海和の1号客だよ」
 「マジかー!かんな2番目だったの~?」
 無理無理無理無理無理無理!!
 私の海和なんだけど。1番の古参は私なんだけど?

 脳内が栞凪という人物を拒絶しているけれど、私は麗奈お姉ちゃんみたいに態度には出さない!
 平常心、平常心よ、百合菜。
 「えへへ、海和にもファンが増えて良かったねぇ」
 推しに嫌われるよりも、嫌いな人と遊ぶ方がマシだよ!
 「あぁ、百合菜と栞凪、2人共可愛いから照れちゃうな」
 海和。私の方が可愛いよ。この子、絶対すっぴんヤバいって。
 「え~?私そんな可愛くないよ~?」
 そうだね。私の方が可愛いよ。私を見て。

 「じゃあ、そろそろ歌おうかな」
 「ヒューヒュー!海和様Love you~!」
 「……」

 それからずっと、私の目に栞凪が居るだけで、私から海和を奪っていった。
 だから、心の底から、私は栞凪が嫌いだ。

 続く

Re: いつだって私達は。 ( No.12 )
日時: 2023/11/08 19:15
名前: のゆり (ID: 7NQZ9fev)


 『百合菜~!海和様、ドラマに出るんだって!最近すごいよね~♡』
 腹立つなぁ、栞凪。私は海和と付き合ってるんだから知ってて当たり前だし。
 『うん。私も海和から聞いたよ。楽しみだね」
 前デートした時に聞いたんだっけ。その日以来会ってないな。体の関係も途絶えてる。

 「海和、会いたいな」
 仕事中にもそんな事ばっかり考えて、全然頭が回らないので早退した。
 『今会える?』
 海和のスケジュールは把握しているので、多分大丈夫だろう。
 したいな、海和と。
 合鍵を握り締めて誰もいない事を確認して、マネージャーのフリをして部屋に入る。

 「海和!会いたくて、来ちゃった」
 乙女のようなこの甘いセリフは、私に良く似合う。
 部屋をキョロキョロ見渡す。早く、海和来ないかな。
 「あれ?」
 おかしいな、海和が来ない。いつもすぐ来るのに。
 急な仕事?家族の私用?嫌、全部把握してる筈。
 不安になったので一応付けていたGPSのアプリを開く。
 「海…和?」

 『ホテル』
 勿論、ビジネスじゃない、ラブの方の。
 一気に崩れ落ちて、涙を流す。
 あの愛の言葉も、アイドルとしての嘘だったのかもしれない。
 海和にとって、古参も新参も変わり無かったのかもしれない。
 考えるにつれて、精神が擦り減っていく気がした。
 海和、海和、海和。

 その夜は、割とすぐ眠った。


 翌日、[相手は?]という疑問が脳裏に浮かび、海和がよく話す人の事を思い出す。
 マネ…は男性だったし、他の関係者とあまり接点はない。
 ファン?ファンの誰かと…?私と付き合ってるのに…?
 じゃあファンの中で1番よく聞く名前は…










 「栞凪」
 さっとスマホを手に取り、『夏樹瀬栞凪』の欄に触れる。
 違う、海和は栞凪にそんな欲求____ッ!
 『ねぇ栞凪』
 『あ、百合菜!どーしたの?』
 『昨日、海和と何かあった?』
 『えっ』
 返信が途絶える。
 『海和様と…デート、しちゃった!』
 嘘、嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘!
 『それって、大人の関係アリ?』
 『…そう、かも?』
 『そっ……か、ごめんね、言いづらい事聞いて』
 『いーよいーよ!丁度、誰かに言いたかったし?』
 『ありがと、そういう時はいつでも頼って?』
 『ありがとー!百合菜大好き!』

 「なら、良かった」
 私はスマホを握って、大好きな海和の夜に、染まる事にした。

 続く

Re: いつだって私達は。 ( No.13 )
日時: 2023/11/12 20:43
名前: のゆり (ID: 7NQZ9fev)


 「待っててね、海和」
 SNSアプリを開く。
 名称が変わって慣れないけど、1番便利なので使う事にした。
 星の数程あるアカウントの数々。
 その中の、ちょっと有名な人にメッセージを送る。
 「海和、私は結構…重いよ」
 ニヤっと口角を上げた私、今までと違う可愛い私。













 『海和、実は私と交際してるんです。
  私はずっと海和のファンで、ずっと海和の彼女でした。
  でも、それだけでも駄目なのに、私以外の女とラ〇ホテルに行ってたみたいなんですよね。
  証拠としてGPSのスクショと、相手女性とのメッセージのスクショを載せときます』

 これは、私が暴露系のSNSアカウントに送ったメッセージ。
 私は被害者だから、海和にもどん底に堕ちる感覚を味わってもらう。
 悲しみを感じるのが私だけなんて、私が可哀想じゃない?
 海和の罪の重さを、たぁんと味わってもらおう。
 海和だけが悪い訳じゃないし、同罪の栞凪にも仕返しだね。
 ずっと嫌いだった栞凪に、こんなにも素敵な体験をさせるなんて。

 ピコン

 〔海和、一般女性と交際・浮気、クズアイドルの真相〕

 「本当、よく言うなぁ」
 海和に批判が殺到し、現在進行形で炎上中だ。
 ネットの意見に目を通すのは楽しくて、絶望した海和の顔を想像しただけで気持ち良い。
 栞凪との連絡も途絶えて、私の理想とする人間関係を完成させた。

 あんなに推して推して推しまくっていた海和がこんなにも地獄を見ているなんて。
 今はもう冷めた海和への愛。
 今さら体の関係を持とうとか馬鹿みたい。海和、私の事全然知らないのね。
 ワンタップで完全に関係をブロックできて良かった。

 今も、海和は栞凪とホテルにいるかもしれない。
 でももう私には海和への愛も栞凪への嫉妬も何も無いから気にしない。
 今まで貢いだ額は数えきれないけれど、これからは自分のお金は自分の為に使おう。
 1人で生きられる人間になろう。
 そう考えた私は、平凡な社会人として生きることを誓った。

 終わり

 第3章「夜に染まれ」end
 第4章「哀の戯れ」 順次更新

< 第4章について>
 第4章ですが、大人表現はありませんが、
 不快すぎる表現(人を拒絶、外見を馬鹿にする)が含まれるかもしれません。
 ご注意ください。
 では、また4章1話で。

Re: いつだって私達は。 ( No.14 )
日時: 2023/11/20 06:26
名前: のゆり (ID: 7NQZ9fev)

 第4章・明鏡結花「哀の戯れ」

 〔今日は原宿でいちごクレープ食べたよ!おいしかった♡〕
 他にも何やらハッシュタグがたくさん付いていて、写真はというと投稿主が顔の横にクレープを並べてよくわからない顔をしている。
 そんな写真を広い部屋で1人、流し見する女性がいた。
 「きっしょ、何がおいしかった♡だよ、加工しすぎて原型も残ってない笑、キモ」
 容赦ない言葉を投げかける、ネット依存の女性。

 何でもできるでしょ、ネットがあれば。
 ベッドの中で小さな液晶を弄る。その目に光は無くて、ただただスマホと1対1の状況。
 「うわ、この人めっちゃこの女優に嫉妬してる、重い人間はブスだよ」
 クククとニヤつく私。私のお姉ちゃん達はみんな美人なので、顔には自信がある。
 単に人嫌いなのもあるけど、SNSを見てるとみんなキモくて笑えてくる。
 「ぶっさ。こいつ絶対マスク美人だったよね。鼻でかいし唇が太い」

 こんな外見でも生きていく事のできる現代社会に感謝してよ。
 私が天皇だったら、ブスは産まれてきた事を謝罪して、土下座させるからね。
 はぁ、何かブスばっか見てたら頭痛くなってきた。
 「ゲームでもしよっかな」
 ゲームといっても、瑠璃歌お姉ちゃんがやってるようなガチの奴じゃなくて、スマホゲー。
 今のイベントがすごく好みだから、頑張ってランキング上位に入れるようにしてる。









 「…飽きた」
 ずっと画面を叩いていたけれど、飽きた。
 スマホの電池も3%で、そろそろ充電しないといけないかな。
 カチャンとコードに差して、スマホを手から離すと、体中がだるくなった。
 「やっぱ私、スマホ・ネット依存だな…」
 めまいがするので薬を飲んで、しばらく寝てしまおう。
 スマホが無いと回復しないけど、起きた頃には充電は終わっていると思うし。


 あぁ、スマホ触りたいな。
 またあの光を浴びて、たくさんの事を調べたい。

 私、知ってるんだ。
 麗奈が風俗やってる事も、
 瑠璃歌がサイコキラー…なのは隠してないか。
 百合菜がアイドルと付き合ってる事も。
 怖いよね、ネットって。
 麗奈が日記を投稿する事によって、多少違うとはいえ顔を出している。
 自分が何も言わなくとも、周りの人がバラす事もある。
 だから、私に特定された。

 私がネットをやめる理由がどこにあるの?
 今までお姉ちゃん達と比べられて疎外された私が、仕返ししない訳ないでしょ。
 残念だけど私のスマホで、死んでよね。お姉ちゃん達?

 続く

Re: いつだって私達は。 ( No.15 )
日時: 2023/11/25 14:13
名前: のゆり (ID: 7NQZ9fev)


 私は今まで、お姉ちゃん達と比べられては見捨てられてきた。
 顔はすごく可愛い。それは自覚しているけど、
 麗奈お姉ちゃんのような綺麗な目や女性らしい体つきはしていない。
 瑠璃歌お姉ちゃんのような儚い声や綺麗な指先は持っていない。
 百合菜お姉ちゃんのような長くて綺麗な髪や優しい目つきはしていない。
 私唯一の特徴、大きい目も瑠璃歌お姉ちゃんと百合菜お姉ちゃんの目のハーフのような物だ。

 すべてにおいてお姉ちゃん達の二番煎じで、特有の物を持っていない。
 良く言えばいいとこどりで、悪く言えば個性が無いという事。
 それで取り残された私は、私を肯定してくれる場所ネットに溺れた。
 自分はまだ良い方だと思えるから。自分の下が居て安堵できるから。
 私のどうしようもない承認欲求を、誰かが満たしてくれるから。

 _____お姉ちゃん達に復讐が出来るから。

 「………」
 目が覚めた。体中がだるい。
 簡易本棚にあるスマホを手に取り、コンセントを抜く。
 画面を開いてしまえば、もう電池が尽きるまで離さない。
 可能な限り、自身の欲を満たして、誰かを貶す。
 やめられないし、やめて良い事は無い。だからこんなに体をボロボロにしながらも続けている。
 辛いし苦しいけど楽しい。
 一時的に自分が偉くなれると嬉しくて、やっぱりやめるのは無理だ。


 ピコン


 使っているチャットツールに通知が来る。
 『木槌山愛子』
 あぁ、麗奈を潰すために手を組んだブスの子か。やたら胸のデカいデブね。
 『ゆったん〜!私ぃ、超ダイエットしてぇ、痩せてるのに巨乳な女子になれたよぉ♡』
 あっそ。多少胸は小さくなっただろうけど、風俗で働けるならいいんじゃない。
 『お疲れ。お店特定してるから、すぐ面接いけるようにしてよ』
 『おっけぇい♡』
 麗奈の方は大丈夫そうか。

 次は瑠璃歌だけど、いつ外に出るかわからないから、ニート男に頼んで正解かな。
 で、百合菜か。
 『夏樹瀬栞凪』
 『栞凪、どう?海和となら、いい関係を築けそう?』
 しばらく経って、返信が来た。
 『そーだね!2年前からずっと百合菜とは仲良しだけど』
 『百合菜と海和って人の距離が近い分、かんなも海和を誘惑できるし』
 栞凪は演技が上手だから、信頼できる気がする。
 『ありがと、百合菜をよろしく』
 完璧だ。私の思うままに姉が翻弄される。
 「楽しみだなぁ」
 思わず漏れたその声は私が貶した誰よりもキモかった。

 続く


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