ダーク・ファンタジー小説

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

ユリカント・セカイ
日時: 2025/03/24 19:21
名前: みぃみぃ。・しのこもち。・謎の女剣士 (ID: 74hicH8q)
参照: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no

※諸事情により、みぃみぃ。としのこもち。二人での合作になります

こんにちは、みぃみぃ。と、しのこもち。です。
ユリカント・セカイは、合作小説です。
みぃみぃ。→しのこもち。の順で書きます。


一気読み用 >>1-
第一話 >>1 あの時までは…。
第二話 >>2 ダイキライ
第三話 >>3 幸福と不幸
第四話 >>4 情けと出会い
第五話 >>5 初恋
第六話 >>6 好きな人、嫌いな自分
第七話 >>7 不思議
第八話 >>8 散ってゆく
第九話 >>9 もう一度
第十話 >>10 答え
第十一話 >>11 ずっと、このまま
第十二話 >>12 変わる日常
第十三話 >>11 結ばれるはずだった人と、結ばれないはずだった私

Re: あの時までは…。 ( No.1 )
日時: 2023/12/02 13:12
名前: みぃみぃ。 (ID: t7GemDmG)
参照: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no

【第一話】あの時までは…。

時は六年前、2017年の4月15日のことだった。

私は、流華るかっていうの。苗字はたちばな
私は今日から、与那野よなの東小学校に入学するんだっ!
「おねーちゃん!この小学校、きれいですてきだね!」
「そうだね!まあ流愛の方がきれいですてきだよ!」
「おねえちゃん、ありがとっ!」
この可愛い子は、流愛るあっていう可愛い私のふたごの妹なんだ!
「さあ二人とも、行くわよ!」
これはママ。すっごく可愛くて、自慢のママなんだ!
「あれ、パパは?」
「ああ、なんか水を買いに行ったわ。先に買っとけば良いのに…。」
「もうパパったらぁ!」
流愛とママが笑いながら言う。
「さあ、今度こそ行くわよっ!遅刻しちゃう。」
「「うん!」」

与那野東小学校の、体育館に着いた。
「すっごい!広ーい!」
「こら、流華。静かにしなさい。」
「はーい、ごめんなさーい。」
「流華は素直でいい子ねえ。」
「えへへ!」
ママ、だーいすき。
「…じゃあ、頑張ってね!あそこに係の人がいるでしょ。だから、そこに行きなさい。」
「はーい」
「…おねえちゃんっお願いっ」
流愛はこう見えて恥ずかしがり屋。まあ私もだけど…っていうか私の方がだけどっ
「わ、分かった…あ、あの、す、すみません…」
「あ、与那野小の入学式に来た子だね。じゃあ、案内するから着いてきて。」
「「は、はいぃっ」」
私たちは体育館の奥の方にどんどん入っていく。
「おねえちゃん、まだ…?」
「る、流愛…私もまだわかんない…だって来たことないもん」
「あ、もうちょっとで着くから安心して。」
「「あ、は、はいっ」」
ふうううううっドキドキするっ
「着いたよ。名前を教えて?」
「え、あ、は、はい、わ、私はっ…」
「あはは。落ち着いて。」
「え、あ、はい、た、橘、流華、ですっ」
「わ、私は、橘、る、流愛、です」
「流華ちゃんと流愛ちゃんだね。僕は望月もちづき 大我たいが。ここの小学校の、先生だよ。望月先生って呼んでね。」
「は、はい、望月先生っ」
「わ、分かりました、望月先生っ」
「…じゃあ。ここに並んでね。」
「「は、はいっ」」
ふうっ疲れた…まあどうにかなったしいいでしょ!

10分後。
「さあ、新たに与那野小学校に入学してくる、新一年生の入場です!大きな拍手でお迎えください!」
「さあ、みんな、行くよ。」
望月先生が言った。
私たちが体育館のステージに上がった時。
そこにいたのは、ママ、パパ、他の人のママ、パパ、親戚、兄弟…だけじゃなかった。
与那野小学校の六年生もいた…。
すごい…
見惚れている時だった。
大きな音楽が流れ出し、六年生が踊り出した。
すごく綺麗…すごい…私たちもこんな風になるの…?
「すげー!!」「やば…」「すごい…」
そんな言葉が飛び交った。
そうして無事に入学式は終わった。

15分後。
「名前を教えてください。」
六年生のおねえさんが言った。
「流華、流愛、いいなさい。」
「た、橘、流華、ですっ」
「た、橘、る、流愛、ですっ」
「橘流華さんと橘流愛さんね。じゃあ、1-2ね。あの先生に着いていってね。あ、この名札も持って行ってね。」
「あ、は、はい、ありがとう、ございますっ」
「ありがとうございます。じゃあ流華、流愛、行くわよ。」
「「うんっ!」」

1-2にて。
「こんにちは。1-2担任の、秋月あきづき 歩美あゆみです。これからよろしくお願いします!」
「よろしくお願いしますっ!」
わあ、ここが学校…すごい!
「じゃあ、まず一分間、隣の人と話してみましょう。よーい、スタート!」
と、隣の人…この人か…
「こんにちは。私は白石しらいし ゆき!雪って呼んでね!」
「あ、わ、私は、橘 流華っ!よろしくねっ!私は、流華って呼んで、!」
「流華!よろしくね!」
「ゆ、雪っ!よろしくねっ!」
「うん!よろしくー!」
その時、タイマーが鳴った。
「はーい、終了。仲良くなれたかな?仲良くなれた人、手を挙げてください!」
「はーい!」
「わあ、たくさんいますね。良かったです。それでは今日は帰ります。明日からまた学校が始まります!頑張りましょう!」
「はーい!」

帰り道にて。
「流華、流愛、友達できた?」
「「うん!」」
「わあ、良かったね!友達のこと、教えてくれない?」
「うん!流愛はねえ、木村きむら 凛子りんこちゃんと仲良くなったー!」
「私は、白石 雪ちゃんと仲良くなったっ!」
「そうなんだ。良かったね!」
はあ、良かった、やって行けそう!
友達ってこんなにすぐできるんだ…!
幸せで、笑顔いっぱい溢れる家族…のはずだった。
そう、あの時までは…。

Re: ユリカント・セカイ ( No.2 )
日時: 2023/12/14 17:10
名前: しのこもち。 (ID: anYeesDx)


 - 2.ダイキライ -

「流華、一緒に帰ろう!」
 あれから6年が経った今、私は晴れて中学生になった。
 雪ちゃんとは小学校の時からクラスもほとんど一緒で、今となっては大切な親友と言える関係にまでなった。
「………うん」
 雪ちゃんは本当にいい友達だ。本当にいい友達、なのだけれど…。

『どこが流華です、だよ』
『流愛ちゃん可哀想』

 ‪”‬‪橘 流華”‬
 私はこの名前が嫌いだ。大嫌いだ。
 お母さんだけは唯一、私の名前を認めてくれる。でもそれ以外の人はみんな、私の名前を快く思っていない。
 だから私は今でも雪ちゃんに名前を呼ばれると、どうしても嫌悪感を抱いてしまうのだ。

٭•。❁。.*・゚ .゚・*.❁。.*・٭•。٭•。❁。.*・゚ 

「今日の宿題は『自分の名前の由来』についての作文にしようと思います。両親の方に自分の名前の由来を聞いてきて、作文にまとめてくるように」

 あれは確か小学5年生の時だった。入学式の時に案内してもらったあの望月先生は当時、小学1年生の学年主任だったそうで、この時のクラスの担任も確かあの先生だった。

「明日クラスの中で発表するから、真面目に書くんだぞー」

 入学式の頃とは違い、少し厳しい印象を持ち始めた先生の威圧的な声が教室に響いた。私はこの日、自分の名前の由来を聞くという宿題が出たので、家に帰った後母に自分の名前の由来を聞いた。

「お母さん、私の名前の由来って何…?」
「ん?流華の名前の由来かぁ…」

 お母さんは首を傾げた後、私を真っ直ぐに見据えながらこう言った。

「‪流華の‪”‬‪華”が、華やかな子に育ってほしい、流愛の‪”‬‪愛”が、みんなに愛されるような子に育ってほしいって‬意味なんだよ‬‬」

 ‪”‬華やかな流華‪”
 母から名前の由来を聞いた当時の私は、この名前を気に入っていた。‬

「へぇ。じゃあ流愛は愛される子だから、この名前は流愛にぴったりだね!」
 すると、いつの間にか私の後ろにいた流愛が顔を出して自慢げにそう言った。

「私も……流華って名前好きだな」
 私も思わずそう呟いた。そんな私の言葉を聞き逃さなかった流愛は、何を思ったのか突然馬鹿にしたような笑みを浮かべた。

「何言ってるの、お姉ちゃん。お姉ちゃんは地味なんだから、そんな名前似合うわけないじゃん」

 見下したような流愛の目つき、笑み、声。その全てが、まるでお母さんが一生懸命考えてくれた自分の名前を侮辱されているような気がして、私は悲しみと同時に怒りを覚えた。

「……なんで、そんなこと言うの…?」
「えー、何。お姉ちゃんったら自分の名前が似合わなすぎて流愛に嫉妬してるの?」
「別にっ…!そういうわけじゃない」
「じゃあ何?あっ、もしかして自分が地味すぎて情けなくなっちゃったの?お姉ちゃんったら可哀想ー」
「ちょっと、流愛。そんなこと言うのはやめなさい」
「えー。だって流愛は事実を言ってるだけだし?それの何がいけないわけ?」

 流愛の言う通りだった。華やかな名前とは正反対の、地味な自分。それが事実なのが悔しくて、悲しくて。私は何も言い返せなかった。

「……とりあえず、2人ともこれが宿題なんでしょ?今はほら、早く部屋に戻って宿題しなさい」

 母は不満そうな流愛と俯く私の肩を優しく叩いて、その場をあとにした。
 私たちは母が去った後、黙ったままお互い自分の部屋に戻った。


『じゃあ流愛は愛される子だから、この名前は流愛にぴったりだね!』
 宿題をしていると、そんな流愛の嬉しそうな声が頭の中で響いた気がした。

 素直に羨ましかった。堂々と自分の名前を自分のものだと、胸を張って言えるような流愛が。
 私も名前の通り、華やかな人間になりたかった。流愛のように、みんなに愛されるような人間になりたかった。

 “私はお母さんが一生懸命考えてくれたこの名前の通り、華やかな人になりたいです。”

 私は原稿にそう書いた後、すぐに消しゴムでその文字を消した。この名前に、どうにかしてもっとましな理由を付け加えなければ。そう焦る私の頭とは反対に、鉛筆を握る手はいつまでたっても動かなかった。

٭•。❁。.*・゚ .゚・*.❁。.*・٭•。٭•。❁。.*・゚ 

「………なので私もお父さんがつけてくれたこの流愛という名前のように、みんなに愛されるような存在になりたいなと思いました」

 翌日。流愛の発表が終わったと同時に、教室中に拍手が沸き起こった。

「もう流愛ちゃんは十分愛される子だよ」
「そんなことないよぉ」
「恥ずかしがってるとこも可愛い!」
「さすが橘さんだよな。両親のことも考えて愛される子になりたいって言う人、中々いないし」

 -ズキッ。
 苗字ですら流愛と一緒なのは嫌だと思うほど、次々に送られる流愛への絶賛の嵐が羨ましく思えた。それと同時に、手には大量の汗が吹き出してくる。

「じゃあ先生はちょっと職員室に行ってくるから、次はもう一人の方の橘から発表続けといてなー」
 そう言い残して、望月先生は教室をあとにした。
 名前を呼ばれ、私は椅子を引いて立ち上がった。床と椅子の足がこすれ合う音が、突然静まり返った教室に響く。その音が余計私の不安と緊張を煽ってくる。

「………わ、私の名前、は橘 流華です。この‪”‬‪流華”‬という名前には、華やかな子に育ってほしいという、お母さんの大切な想いが……込められている、そうです」

 人前で話すのが本当にダメな私は、周りに視線を向けられるだけで体がすぐにガクガクと震えてしまう。
 私は情けなく震える手を押さえながら、声だけは震えないようにゆっくりと口を開いた。

「お母さんがつけてくれた、この‪”‬‪流華”という、名前‬の意味を私、は初めて、知り…ますますこの名前がっ…好きになり、ました」

 私が作文をたどたどしく読んでいると、突然クラスメイトの男の子が口を挟んだ。

「華やかな名前のくせに、全然似合ってないよなー」
 -ドクッ。
 その瞬間、心臓が大きく鳴った気がした。
「だよね。お姉ちゃん地味なくせに華やかな名前だ、とか気取ってて意味分かんない」

 すると今まで黙っていた流愛も口を開き、クラスの中は次々と騒がしくなった。

「流華って流愛に似てるしね」
「流愛ちゃん可哀想、名前お揃いなの」
「どこが流華です、だよ」

 次々に向けられる私への悪意と流愛への同情の声が、私の胸に次から次へと深く突き刺さった。

 どうせ私は流愛みたいに、名前通り愛される子にはなれない。そんな現実を突きつけるかのように、クラス中のざわめきは落ち着くことを知らなかった。
 それから先生が教室に戻ってくるまで、私は名前のことをからかわれ続けた。

٭•。❁。.*・゚ .゚・*.❁。.*・٭•。٭•。❁。.*・゚ 

 昔は大好きだったこの名前が、私はあの時から大嫌いになった。今も‪”‬‪るか”という言葉を聞くだけで、体が強ばってしまう。‬

「……ただいま」
「あっ。‪”‬‪華やか”‬なお姉ちゃん、おかえり」
 家に帰ってきた瞬間、流愛がスマホを見て笑いながらそう言ってきた。
 私はその言葉が聞こえていないふりをして、黙って自分の部屋に戻った。

『流愛はね、将来お父さんみたいになるんだ…!』
 流愛はもともと、こんな嫌味を言ってくるような子ではなかった。昔はいつもお父さん、お父さんと言っているような、優しい子だった。

 でも流愛は………お父さんが死んでから変わってしまった。
 お父さんは、私たちが幼い頃に交通事故で亡くなった。その時にお父さんをひいた犯人は、今もまだ捕まっていないそうだ。

 本当に突然のことでその時の記憶はあまり思い出せないが、確かに覚えているのは流愛が葬式の時に大泣きして騒ぎになったことだった。

 騒ぎになるくらい大泣きした流愛は、それくらいお父さんのことが大好きだったのだろう。小さい頃の私はどちらかというとお母さんっ子で、流愛はお父さんっ子という感じだった。
 
 私には分からないけれど、流愛はきっとお父さんが死んでからずっとそれがショックだったのだろう。だから私へのあたりも、徐々に強くなっていった。

 昔は大好きだった。流愛も自分の名前も。でも今はこの名前を見るのでさえ嫌だと思うほど大嫌いだ。‪”‬‪流華”と‬‪”流愛‬‪”。妹と名前ですら比較されているようで、私はどうしてもこの名前を好きになれなかった。‬

 きっとこれからも、この名前を好きになれる日は二度と来ないのだろう。
 

Re: ユリカント・セカイ ( No.3 )
日時: 2023/12/28 16:07
名前: みぃみぃ。 (ID: t7GemDmG)
参照: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no

【第三話 幸福と不幸】
「今日の一時間目は部活を決めるぞー。それまでに考えておくように。」
朝の会の時。
私のクラスの担任の、鈴木すずき 諭吉ゆきち先生が言った。
「そうだった、部活!!どうしよ!!」
「俺サッカー部入る〜」
「私は吹奏楽部!!」
みんなの言葉が飛び交った。
「はい、静かに!」
鈴木先生が言った。
「はい、これで朝の会を終わります。礼!」
「ありがとうございましたー」

朝の会が終わると、私は真っ先に雪ちゃんの席に駆けつけた。
「雪ちゃんは、さ。部活、何に入るの?」
「私?私は、そうだねえ…バスケ好きだし、バスケ部入ろうかな〜って思ってる。流華ちゃんはどうするの?」
…うっ、流華…華やか、じゃなくて、地味、なのに…
ううっ…。
分かりきってる、のに…。
私の心に深く傷がついた気がする。
時々、あるのだ。
1ヶ月に一、二回くらい…
“流華”と聞いたら、精神崩壊しそうになる時が。
「流華、どした?」
「あ、え、あ、ごめんっ!わ、私は…決まってないんだよね…。私もバスケ部入ろうかな…。」
「おお!いいじゃんいいじゃん!!一緒にやろ〜!!」
「うん、!じゃあ私も、バスケ部入るっ!」
その後の休み時間の間も、クラス中部活の話で盛り上がっていた。
でも、私の心にある傷は戻らなかった。


一時間目の初め。
「…じゃあ、部活を決める。アンケートを配るから、それに答えてな。」
アンケートには、第一希望と第二希望を書く場所があった。
私は第一希望にはバスケ部と書いたのだが。
第二希望、どうしよう。
絵描くの好きっちゃ好きだし、美術部にしよっかな。
美術部、っと…。
これでいいか…。
「書いた人から前に出してください。明日には決まるからな。しっかり考えるように。」
「「「はーい」」」
私はとりあえずアンケートを出した。
「…よし、これで全員出したな。じゃあ、今からは自習だ。そのあとミニテストをするから、しっかり復習しておくように。範囲は教科書125ページから132ページの間。先生は職員室でこれを集計しているからな。何かあったら職員室に来い。いいな?」
「「「はーい!」」」
はあ、自習、か…
嫌な予感がする。
まあいいや…。ドリルでもするか。
私が引き出しからドリルを出した時。
「うっわ、流華のやつ、“華やか”な子なのに、ドリルとかしてやがるwまじウケる〜w」
「それな!?まじ“華やか”要素どこにもないよな、この真面目野郎!」
「え、もしかして、流華の“華”って、華やかって意味なの!?全くあってないじゃん!」
「そうそう!信じられないよね!」
「まじで流華さあ〜お姉ちゃんなのにダメダメじゃん!流愛ちゃん、可哀想〜」
「凛子ちゃんの言う通り!流愛がお姉ちゃんなってあげようかなぁ?」
「それがいい!」
「地味流華!地味流華!」
ああ…
予想通り。
でも、クラスの中心的存在の凛子さんに言われたのが一番辛かった。
ついにはコールまで始まってしまった。
もうやだ…
「ちょっと、あんたたち!」
…雪ちゃん。
「あんたらはさ、本気マジで弱いんだね!いい度胸してるわw流華ちゃんの気持ちになってみろ!みーんなから悪口言われてさ、ついにはコールまでやられてさ。されたら嫌じゃないわけ?」
「雪、ちゃん…」
「流華は黙ってたら〜?」
流愛が言う。
「お前もだよ、流愛!お前も加害者だ!」
「はあ?なんで私が加害者になるわけ?」
「そうそう、意味分かんないよね〜!雪、馬鹿馬鹿!あと雪に言わせた流華、最低最低!存在価値ない!」
「…うっ」
私は思わず涙を流した。
「はあ、もうっ!お前らは黙っとけ!流華ちゃん、先生のところいくよ!」
「え、あ、うん…」
「ふっ、流華、雪にしか頼れないのかな?惨めだな〜w」
「それな!」
そうやって、私が教室を出るまで、ずっと悪口を言われ続けたのがとても悲しかった。


そのあと先生から長い長い説教をみんなが受けていた。
私は副担任の柿野かきの 梨沙りさ先生に、状況を話していた。




…その後のことはあまりよく覚えていない。
いつの間にか説教が終わって、いつの間にか給食も食べ終わっていて…。
いつの間にか家に着いていた。
どうやって、誰と帰ったのか、とか、全く覚えていなかった。
本当に、“いつの間にか”だった。
でも、とてつもなく、長かった。
不思議な、日だった。
それと同時に、最悪な、日だった。





次の日の朝。
私は学校を休んだ。
…昨日のことがあるから、だ。
流華には、
「あんなことだけで休むんだね〜w弱〜w」
と、悪口を言われたけど。
…学校で昨日のようなことを言われるのは、散々だった。
…それよりは、マシだ。

お母さんにその事を話すと、休んでもいいよ、と言ってくれた。
それだけが私の救いだった。



学校は、地獄のような場所だ。
学校に行って、良かった、って思える事。

それは、雪ちゃんと、話せること。

ただ、それだけ。



でも、




それは、私の心を支えてくれていた。



長い、でも幸せな時間だった。
お母さんは愚痴を嫌な顔一つせず聞いてくれた。
私が何か言ったら、その通りにしてくれた。

でも。

「ただいまー」

流愛の不機嫌そうな声が聞こえた。

「流華。これ、先生に渡せって言われたんだけど。」
「あ、うん…」
「は?ありがとうの一言もないわけ?重かったんですけどー?もういい。勝手にすれば?」
あーあ。
もうどうでもいいや。
私は流愛から渡されたとりあえず封筒を開けた。
…手紙。
手紙が入っている。
みんな、書いてくれている。
…見たくなかった。
悪口が書いてあるに違いない。
でも、読まないわけにはいかないよね。
失礼、だし…
そこには、予想もしていなかったことがたくさん書いてあった。
「昨日はごめんね。」
「大丈夫だった?昨日は本当にごめんなさい。」
「昨日は色々な人につられてしまって色々言ってしまってごめん。」
「流愛ちゃんが言ったからといってつられてしまったのが悪かったです。本当にごめんなさい。」
凛子さんからも、言われた。
でも私はゾッとした。
流愛は、とんでもないことを書いているのではないだろうか…?
「流華のバカ」
一文目、こう書いてあった。
やっぱり。
「なんで私が加害者になるわけ?お前のせいだよ。責任とれ!」
あーあ。もう、やだ。
「バカ!タヒね!ボケ!アホ!クソ!」
最後には、こんなことまで書いてあった。
私はその手紙をぐちゃぐちゃにして、ゴミ箱に捨てた。
最後は、雪ちゃん。
「流華ちゃんへ。
 昨日、流華ちゃんがとても苦しかったこと、私が一番知っていると思います。
 私の行動が、流華ちゃんを助けることができていたらうれしいです。
 そして。部活は私と同じバスケ部でしたよ!
 流華ちゃんと一緒に部活ができるのが、嬉しいです。
 雪より。」

私は、いつの間にか涙を流していた。
今までで一番嬉しい手紙だった。
どんな手紙よりも、一番。




でも。
この先には地獄が待っていた──。


Page:1 2 3



小説をトップへ上げる
題名 *必須


名前 *必須


作家プロフィールURL (登録はこちら


パスワード *必須
(記事編集時に使用)

本文(最大 7000 文字まで)*必須

現在、0文字入力(半角/全角/スペースも1文字にカウントします)


名前とパスワードを記憶する
※記憶したものと異なるPCを使用した際には、名前とパスワードは呼び出しされません。