ダーク・ファンタジー小説

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やよいの過去屋
日時: 2024/03/15 16:16
名前: とーりょ (ID: kWgD5bK.)
参照: https://www.kakiko.info/bbs_talk/read.cgi?no=26431お知らせ用掲示板

[あらすじ]
ちょっぴり大阪弁のやよいは、戦争で死亡した幽霊のカラスが店長のお店『過去屋』で
バイトすることになった。

過去は消えない、戻れない、変えられない。
そんな過去があったから今があるって、誰もそんなことは思わない。




[登場人物]
花倉はなくら やよい(人間)
過去が見える少女。

■カラス/ノアール(幽霊)
戦争で死亡したカラス。

■山田(人間)
人を殺したことがある女性警察官。



【目次】

■「お客さんは警察官」#01 >>1-
Prologue.>>1
Episode.01「忘れたい過去」>>2-3
Episode.02「僕は幽霊」>>4
Episode.03「家族は優しい」>>5-6
Episode.04「あの事」>>7
Episode.05「素敵な理由」>>8-9

[掲示板も利用してます]
感想などお聞かせください!まだまだ半人前なのでよろしくお願い致します…
この掲示板では、ちょっとしたミニストーリー『やよいの日常屋』も投稿していますので
よければチェックをよろしくお願い致します…!※参照のURLからお願いします。

Re: やよいの過去屋 ( No.5 )
日時: 2024/02/11 16:22
名前: とーりょ (ID: J0KoWDkF)

そしてなぜか今、ノアールがあたしの家にいる…。


あたしの住んでいる家には家族4人が住んでいて、父と母、そして兄がいる。
本当はもう一人、長男がいるのだが高校生でグレてそれ以来 会っていない。
家族全員の電話番号も消されて、おそらくあちらも電話番号を変えている。
今、どこにいるのかも分からないが成人済みなので心配はいらないであろう…。


ノアールは家族全員と一緒に食事することになった。
お母さんが得意料理とするから揚げをみんなで囲んで『いただきます』をした。

そして最初に喋り出したのは兄だった。
「でも、やよいが友達連れて来るなんて幼稚園の頃 以来じゃね?」
兄はご飯を食べながら、ペチャクチャと喋っていた。

だがノアールは遠慮しているのか、箸すら持とうとしなかった。
そんなノアールに、母は「いいのよ、食べて!」と箸を持たせた。
ノアールは慣れない様子で箸を持ち、から揚げをつかもうとしたが……

箸が思うようにならず、から揚げがテーブルにコロンと落ちてしまった。
そのから揚げを兄が箸でつかんで食べて、ノアールに『ヒヒー!』と笑顔で笑った。
「母さん、俺が小さい頃に使ってたフォーク、なかったっけ?」

そうするとお父さんが食器棚からフォークの束を取り出した。

その時、あたしは思ってしまった。
『こんなに暖かい家族なのに、なぜ長男が出て行ってしまったのか』…と。
だがその話は絶対にあたしの口から出せるような台詞じゃなかった。


食事が終わり、あたしはお風呂に入ろうとしていた。
すると、兄とノアールが一緒にテレビゲームをしていた。

「おりゃおりゃおりゃ~~!!」
「手加減くらいしてよ~!」
「年下だからって…、いやぁーだねっ!」

ノアールも兄のおかげでこの家には馴染めてしまっていた。
…けど、多分ノアールの方が大分 年上だろうけど。

Re: やよいの過去屋 ( No.6 )
日時: 2024/02/24 18:24
名前: とーりょ (ID: J0KoWDkF)

「…はぁ?!ノアールがこの家に住むことになったぁ?!」
つい叫んでしまった、けれど流石にあたしもビックリした。
お風呂から出て来たらいきなり、そう兄から言われたからだ。

「コラ、ご近所さんに迷惑だ。」
こんな時に限ってお父さんは冷静になる。

「だ、だってさぁ!!」
するとお母さんが鼻水を垂らしながら泣き出した。
「っうう…、あのれぇ、っぅう、この子…、両親に捨てられたんだってぇ?
 やよぃいっ!なんれ、早く言ってくれはぁかったのぉ!!っぅうう…」

うわー。あのカラス絶対にお母さんに上手いこと演技しやがったなー。

兄の後ろにはノアールがいて、兄のズボンを甘えるように片手で握っていた。
あたしは少しイライラしながらノアールをあたしの部屋に引っ張り、連れて行った。
あたしはドアをドン!と閉めてノアールをじーっと細い目で見た。

「…『家に住みたい』ってノアールが言い出したん?」
あたしがノアールにそう聞くと、ノアールは目を逸らした。

「…でも、親がいないってのは本当だろ。」
…まぁ、確かに。

「……へぇー?兄が気に入ったんや。」
そう言うとノアールの様子は一瞬で変わり、顔が真っ赤になっていた。
パーカーのポケットに手を突っ込み、目がぐるぐる泳いでいた。


「ち、違う! だ・か・ら、僕がこの家に住めば花倉はなくらもバイトが成功しやすいだろうし…、
それに…」
ノアールは少し肩を下ろして大きく息を吸ってまた喋り出した。

「……それになんとなく、僕は君に似た誰かと いつか会ったことがあるような気がした…。
花倉はなくらの少し大阪弁な喋り方…、」
ノアールは手をギュッと握っていた。

「分かぁとるって、ノアールの過去、いつか見てあげる。」
そうして騒がしい夜が過ぎていった。





「ほら、もう7時。僕は先に行ってるから。」
あたしはノアールに起こされ、むーっと起きた。
あたしは目をこすりながら着替えて、階段を降りてリビングに行った。

リビングにはもうみんな揃っており、朝ごはんはパン一枚と牛乳だった。
いつもとは変わらないご飯だったが…、いつもと変わっていることはノアールがいることだ。

「ご馳走様でした。」
お皿をキッチンにおいて、部屋に戻りリュックサックを背負った。


「あれ、出かけんの?」
兄がひょこっと顔を出してあたしに聞いた。

「ノアールと約束してる用事があるんや。」
「へぇー、…なぁ、あいつって何歳いくつなんだ?」

確かにノアールは見た目は子供だが、戦争の時代のカラスだ。
幽霊だとしても、多分800歳くらいじゃないのか…?
でも流石に『ノアールは幽霊だから年齢なんて分からない』と本当の事を言えない。

「ノアール待たせてん、悪いけどまた今度な。」
そう言ってあたしは靴を履いて、鏡で身だしなみを整えた。
外で待っているノアールに「早く」と言われて少し駆け足で「ごめん」と言った。

これからあたし達が行く場所は────
『交番』である。

Re: やよいの過去屋 ( No.7 )
日時: 2024/02/25 10:38
名前: とーりょ (ID: J0KoWDkF)

これからあたし達が行く交番には、この前 依頼を受けた『山田』さんがいる。
あたしは昔、よく迷子になり毎回その交番に行っていたので交番までの道のりは把握していた。


「…ずっと花倉はなくらに聞きたいことがあった。」

えぇ?今?今そんな深刻な話する??

いきなりノアールが喋り出したので、お互い立ち止まってしまった。
ノアールは黒い目を光らせ、じっとやよいを見ていた。

「なんで、花倉は微妙な大阪弁っぽい喋り方なんだ…?」
「…え??そんな事なん?」
あたしはてっきり、『あの事』を聞かれたのかと思った。
…いや、ノアールには『あの事』をまだ言ってないし、知られてはない。大丈夫だ。

「…お前にとっては『そんな事』かもしれないが、あまりにも不自然すぎる。
お前は産まれも育ちも石川県、両親だって石川県産まれだ。昨日も今日も、家族の中で
お前みたいな特殊な喋り方をする奴はいなかった。なぜ、お前だけ…?」

…確かにそうだった。いつかはノアールにはバレてしまうかもしれない…。
ノアールは鋭い…鋭すぎる。
それをあたしは笑いながらごまかした。

「…うーん、なんでやろうなぁ!あたしも分からんわぁ!!ははは…」
あたしはノアールに遊ばれている気がして、あたしからもノアールに質問した。

「…ほな、あたしからも質問しせてもらう。
 どうやってお客さんから過去を消すつもりなん…、?」
これは本当に気になっていた。あたしにそんな力はない。
過去が見られたのもマグレだ。

するとノアールは不気味な笑い方で笑った。

「ッククク…、
 んなの、できるわけねぇーだろ。」
…え?コイツなんかの漫画かアニメに影響されてるのか…??

「…花倉はただ過去を見れるだけでも優秀なんだ。」
「うん!それは知ってる!!」
するとノアールは少し嫌な顔をしながらまた喋り出した。

「…だから、見えた過去についてお客に話す。…相談的な感じ。
 そうすればお客は花倉を信用するだろうから、そこで過去を消さない方向に話を進めればいい。」

…あれ、?なんかこれって……詐欺!!
「…ほないけど、契約書の『過去、取り消しますか?』はどうなん?これや詐欺やで?!」
あたしは冷や汗をかいていた。

「安心しろ。あれはただのゴミ。契約書なんかじゃない、普通は何かの誓いを交わす時には
証明する印鑑が必要だ。」

…ノアールはズル賢い。

Re: やよいの過去屋 ( No.8 )
日時: 2024/03/12 17:42
名前: とーりょ (ID: /30Ji5nR)

そして、あたし達は交番についたのであった。

あたしとノアールは、大きな交番の入口からそーっと入り、「すみませぇ~ん…」と弱々しい声で
交番へ入った。すると、交番には若い男性がビクッとしてあたし達と目が合った。
ただ一人、Tシャツを着た若い男性がいただけで、山田さんのいる気配はなかった。

「…やあ、何か用事かい?僕、今日用事があるから今から帰る予定なんだよね…。
用事なら早めに済ませたいんだけどー…」

あたしはノアールの方を見ても、目すら合わせてくれなかったので慌てた。
山田さんが交番にいなかった場合の事はノープランだったからだ。

「ぅ、あああの……、、」
何も考えず喋り出したのをノアールは察して「コンビニと間違えました」と冷静に言った。
流石にコンビニと交番は間違えないだろうと思いながら、その場をすぐに去ろうと入口まで
ノアールと横並びになって歩いた。
と、その時ノアールはスッと後ろを振り向いて、若い男性の目を睨んだ。
その睨むノアールの目は恐ろしかった。

「…あの、伝えておいてほしいんですけど。」
ノアールは目を逸らすことなく男を睨みながらそう言った。

男は足を一歩ゆっくり前に出し、右ポケットに手をつっこんだ。
するとノアールは男の目を強く見続けながら前へ一歩ずつ歩いた。
「『そんなことして楽しいのか?』って、伝えてほしいんですよ。」

あたしは訳がわからないまま、ノアールと男の距離が近づくだけだった。
「…誰に伝えておけばいい?」
その瞬間、男は右ポケットでずっと握っていたであろうカッターナイフをノアールの首に突きつけた。
あたしはビックリして、カッターナイフの先を見ていただけだった。

ノアールは全く顔色も変えず、喋り続けるだけだった。
「…さぁ?君が一番分かってるようで分かりきってない人じゃないかな。」

男はノアールの話を聞いて、カッターナイフの刃をのばした。
ノアールの首から血が流れはじめた。

「素敵な応えをありがとう。」
そう言いながら男はカッターナイフを強く握った。

その時。


あたしの手から血が流れはじめた。
気付けばあたしは男の目の前にいて、ノアールに突きつけたカッターナイフの刃の部分を
手で握っていた。この時は流石にノアールもビックリした顔であたしを見てきた。
その時にやっとノアールとあたしは目が合い、ほんの少しの間に不思議な空気が流れた。

あたしは両手で刃をおさえ、血が流れていたが絶対に離さなかった。


なぜなら、あたしにこの手を離す理由が無かったから、それが理由だ。

Re: やよいの過去屋 ( No.9 )
日時: 2024/03/15 16:13
名前: とーりょ (ID: kWgD5bK.)

男は、あたしの手から血が流れているのを見て大笑いした。

「ははは!お前は、どうせ今『自分はどうなってもいいから助けなきゃ』とか、
そんな気持ち悪い気持ちを持って助けようとしたんだろ?だが今、お前は血が流れている!!」

そう言って男は上を向いて大きく口を開けて笑った。
確かに、もうあたしの手は感覚がわからなくなっていた。けれどなぜか『痛い』。
…ていうか、なんでこんな事になっているんだろう?ノアールが男を怒らせたのがはじまり?
じゃあ、なんでノアールは男を怒らせた?

そんなことを考えていると、外から足音が聞こえてきた。
交番の入口は大きく開いており、前を通りすぎただけでも、大声を出せばきっと気付いてくれる。
あたしはノアールの方を見た。


ノアールの手は震えていた。


「おい!!そこの男!!!!そんなことをして何も良いことはないでしょう!!!
いますぐ離れなさい。」

急に大きな女性の声が聞こえた。
なんと、あたしが聞いた足音は山田さんの足音だったのだ。
山田さんは、交番の異変に気付いたのか、男に全く気付かれることなく駆けつけてくれていたのだろう。

だが、男が離れる気配がなかったので山田さんはすぐに銃を取り出し、取り出した瞬間─

男の髪がスパッと少しきれてしまった。
なんと、山田さんの撃った弾が男の髪に当たり、よく漫画で見るようなかっこいいシーンのように
なったのだった。男はビックリして、自分のきれた髪をしゃがんで手でかき集めて、男はまるでいま
止まったかのように体がピクリとも動かなかった。

山田さんは、あたしの肩を叩いて「遅くなってごめん、もう大丈夫」とつぶやいてノアールの方へ
行き、ノアールの手を握った。

「君の行動に間違ったことは一つもないと私は思う。…状況はなんとなく分かっているから、説明は
しなくてもいいよ。よく頑張ったね。」
そう優しく微笑んで、ノアールの手を離そうとした時、ノアールは山田さんの腕を掴んだ。

「…違う。頑張ったのは僕じゃない、花倉はなくらだから。」
そう言ってノアールは山田さんの腕をはなした。



あたしは、ふと男から言われた言葉を思い出した。
「『自分はどうなってもいいから助けなきゃ』とか、そんな気持ち悪い気持ちを持って助けようとしたんだろ」
そう言われたっけ。

男は山田さんに、手に手錠をかけられ、パトカーまでゆっくり歩いていた。
男の表情はもう死んでいるような顔で、下を向いていた。

「まってくれへんかな。」
つい、あたしは男の近くまで走ってしまっていた。

そして男と目が合い、あたしは少し息切れしていたが息を整わせて、スーッと大きく息を吸った。
「あたし、思ってるで。『自分はどうなってもいいから助けなきゃ』って思ってる。
…いや、『自分はどうなってもいい』までは流石に言い切れんわなぁ、怖い。…でも、『助けなきゃ』って
気持ちが一番大切だとあたしは思う。」

これがあたしの『こたえ』だ。


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