二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
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- 戦国BASARA短編集!アンケート実施中…
- 日時: 2010/07/18 15:38
- 名前: るりぃ (ID: dbcsZi07)
- 参照: http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%88%A6%E5%9B%BDBASARA
- 初めまして(いや、こんにちは?)!るりぃと申します! 
 このスレは私の思いつきなどを詰め込む場所です!
 リクエストがあればその小説を書きます。
 たまに私が抱えてる連載の番外編なんかも混じっているので。
 番外編を見る際には、連載を読んでからにしてくださいね!(←誰が見るか)
 一応、BASARAを知らない方にも楽しく読んでいただけるように書いてありますが、ねんの為にウィキ先生の検索結果を乗せておきます。
 【注意事項・・・のようなもの】
 ・駄文
 ・時代背景無視
 ・キャラ崩れの可能性大
 ・英語が無理
 ・・・以上を踏まえたうえでどうぞ!
 ・・・・・・・・・・目次・・・・・・・・・・・
 ・ターフへお祝いの小説(台詞ばっか) >>1
 ・だって君が好きだから(学園BASARA・伊達政宗) >>2
 ・ターフリク♪『元親兄と妹ちゃんの一日』(学バサ) >>7
 ・小ネタ >>10 >>31 >>88 >>89 >>90 >>91 >>103 >>130 >>132 >>133
 ・ターフリク♪『紅蒼の仁義なき戦い』(学バサ)>>16
 ・るりぃリク♪『突撃!恋の夕ご飯!〜夕飯はもう少し〜』(ターフから) >>28
 ・(何故かは分からんが)ギャグマンガ日和パロ
 内容は「名探偵うさみちゃん」(葱から) >>33
 ・戦国BASARAで勘違い乙女ゲーム(笑) >>42 >>47 >>54
 ・愛が殺せと叫ぶから >>75 >>77
 ・アンケート >>82
 ・小説鑑定の結果 >>85
 ・リレー小説番外編 >>94
 ・ずっと 傍に >>109 >>110 >>111 >>114
 ・ありがとう ごめんね >>112 >>113 >>115
 ・引き合う運命 >>116 >>118
 ・君の見すぎで目を悪くしました >>117
 ・雨音がやんだ >>121
 ・嗚呼 なんてすばらしき日 >>123
 ・名前 >>124
 ・愛が殺せと叫ぶから-警鐘- >>125 >>126 >>127
 ・お前ら正座しろ >>128
 ・最初で最後 >>134
 ・愛姫リク♪『楽しい結婚生活』 >>137
 ・魔王より恐ろしい >>138
 ・鑑定結果 >>140
 ・怪談 目次 >>141
 ・怪談 お断り >>142
 ・怪談 零 嗚呼、なんと綺麗な血 『賞美の弔い』 >>143
 ・怪談 壱 魅つめるほどに美しく 『魅惑の代償』 >>144
 ・怪談 弐 そして残るは残骸の跡 『地獄金魚』 >>145
 ・怪談 参 生きたい…… 『捕われた魂』 >>146
 ・怪談 肆 冷たい涙と体温に本当だと実感した 『涙色の紅』 >>147
 ・(長政先生のHRの時間) >>148
 ・『私の日常パロ』 >>151
 ・「総大将は女子高生!」番外編 主人公さん&作者さん質問攻めバトン >>153
 ・『崖の○のポ○ョの替え歌』 >>154
 ・『突発的に書きたくなった何か』 >>156
 ・『ドキドキアニマルパラダイス』>>157
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- Re: リクエスト可!戦国BASARA短編集! ( No.123 )
- 日時: 2010/06/01 16:20
- 名前: るりぃ (ID: W/.Oe74D)
- 参照: http://アフォ小説家?
- 『嗚呼 なんてすばらしき日』 
 水曜日、前田と真田が昼休みに訪ねて来ることは恒例となっていた。
 「そう言えば、先生って独身だよね?」
 弁当をあらかた食べ終えた前田が俺に言う。
 何かと思えば前田は自分の左手の薬指を差し、ゆびわ、と口にした。
 「ああ、独身だ。」
 「寂しくないの?」
 そこへ新発売だという菓子に夢中になっている真田が口を挟んだ。
 「慶次殿失礼ですぞ。伊達先生が結婚出来ないのはなにかしら理由があってのことでしょうに、それを…」
 「テメェの方が失礼だ。」
 「でもさ、先生だって身を焦がすような恋の一つや二つあったんでしょ?」
 何故現在進行形ではないのかが疑問だが、目を輝かせ聞いてくる前田に、話してやろうという気になる。
 「では少し、昔話でもしてやろうか。それこそ、身を焦がすような恋というものだったんだぜ?」
 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
 アイツと俺は幼なじみだった。
 将来は結婚しようね、などと他愛のない約束もしたが、小学生の時にアイツが引っ越して、それきりになっていた。
 再会したのは親元を離れて、地方の大学に通っていたころだ。
 アイツが柄の悪い輩に絡まれていたところを偶然俺が助けたんだ。
 アイツもまた近くの女子大に通っていた。
 運命を感じたな。
 それはアイツも同じだったらしく、それから俺たちは交際を始めた。
 お互い初めての相手だった。
 アイツと居ると何もかもが輝いて見えた。
 青い空も、いつもの通学路も、アイツが居れば美しかった。
 もちろん、一番美しいのはアイツだったが。
 結婚しよう、と、付き合って二年目の記念日に俺はプロポーズをした。
 二人ともまだ学生だから、今すぐにとは言わない、でも俺が卒業したら、君と一緒に暮らしたい。
 そう言って指輪を渡した。
 情けない程に安物の指輪だったが、アイツは消え入りそうな声ではい、と言い、指輪を薬指に嵌めて泣きながら笑った。
 幸せだった。
 俺はきっとこのために生まれて来たのだろう、と思ったよ。
 それから、卒業までの一年と少し、俺は教員試験の為に必死に勉強し、その合間、アルバイトに励んだ。
 アイツとの生活の為に頑張ったよ。
 アイツと会う時間は減っていったが、たった一年我慢すれば良いだけだ。
 アイツもわかっていたからな。
 しかし、今になってみればもっと、アイツと一緒に過ごしていれば良かったと思う。
 もう、遅いが。
 ある日、久しぶりにアイツに会うと、アイツは随分とやつれていた。体調が悪く、学校も休みがちだと言う。
 大丈夫かと訊ねると、大丈夫よと笑顔を見せる。
 でもそれは弱々しい、笑顔だった。
 とりあえず喫茶店にでも入ろうと歩きだすと、急にアイツが倒れた。
 俺は柄にもなく取り乱してしまい、ただアイツの名を叫んでいた。
 親切な人が救急車を呼んでくれてアイツは病院へ運ばれた。
 結局入院することになり、アイツの両親が北海道から出て来た。
 そこでアイツが不治の病であることを知った。
 もう長くはないと。
 それからは病院へ毎日通った。
 少しでもアイツの側に居たかったからだ。
 彼女はちゃんと勉強してる?
 とか春になったら一緒に暮らせるね、どんなおうちがいい?
 とかそんなことばかり話した。
 俺はそのたびに笑って、そうだなあ、最初は安いアパートだけど、いつか庭付きの一軒家を買うから、お前の好きな犬も飼えるし、子供だって 沢山、などと応えていた。
 本当は二人ともわかっていたんだ。そんな日は永遠に来ないことを。
 それでも、幸せな未来を、夢見ていた。
 よく覚えているよ。アイツが死んだのは丁度、教員採用試験の合格通知が届いた日だった。
 清々しい程に晴れていて、小鳥が陽気にさえずっていた。
 そのような日に、何故、アイツだけが死ななければならないのかわからなかった。
 不思議と涙は出なかったが、俺は全てにおいて無気力になっていった。
 もう、自分の人生どうでも良いと、そう思った。
 アイツの元へ行きたかった。
 それでもそうしなかったのは、アイツとの約束があったからだ。
 教師になると話した時、アイツは素敵な先生になってね、政宗ならなれるよ、と言ってくれた。些細なことだが、自分を信じてくれていたアイツのことを裏切れないと思った。
 アイツのために生きていこうと思った。
 だから俺は結婚はしない。
 生涯、愛する女性はただ一人だからだ。
 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
 話し終え、彼らに目をやると、二人とも号泣していた。
 机の引き出しからボックスティッシュを取り出し、前田に投げてやる。
 二人はそれで涙を拭い、鼻水をかみながら、感動したとか見直したとか聞き取り辛い声で言っていた。
 まあ、今喋ったことは全て作り話なんだけどな。
- Re: リクエスト可!戦国BASARA短編集! ( No.124 )
- 日時: 2010/05/25 17:12
- 名前: るりぃ (ID: F/ANFiDr)
- 参照: http://アフォ小説家?
- 『名前』 
 「アニキって呼ぶのやめねえ?」
 とアニキに言われた。
 なんで?と聞き返すと、元親は苦笑して
 「だって俺、お前のアニキじゃねえだろ。」
 といった。でも私は納得いかなかった。
 「でもみんなアニキって呼んでるでしょ?」
 校内外、年上年下問わず、屈強な男たちがよく、アニキアニキ言ってるのを見かける。
 「俺はあいつらのアニキだからいいんだよ。でもお前は違うだろ。友達だろーが。」
 友達。
 なんという恥ずかしき言葉。
 そういったことを真面目に考えるのは自分のガラじゃないんだよね。
 どう考えても。
 「なんつーか、お前からアニキっつわれると、壁を感じるっつーか。」
 そう言われて私はため息をつきながら
 「……じゃあ、なんて呼べばいいの。」
 といった。すると元親は笑いながら
 「んなの、元親でいんだよ。友達なんだからよ」
 こういった。
 「ありがとう」
 『名前』
 (「………元親」)(「おう、何だ?愛嘉。」)
- Re: リクエスト可!戦国BASARA短編集! ( No.125 )
- 日時: 2010/05/25 17:29
- 名前: るりぃ (ID: F/ANFiDr)
- 参照: http://アフォ小説家?
- 『愛が殺せと叫ぶから』上 
 目を開くと、必ず血の海にいる。
 腰のあたりまで、私はそれに浸かっていて。
 肘に力を入れて、ねっとりとした物を滴らせながら掌を赤から取り出す。
 掌は、当たり前のように拳銃を握っていた。
 警報が鳴る。
 聴いてるのは耳じゃない。
 私の中で、狂ったように鳴り響く警鐘は、心臓から喉を通り舌をかきわけて声となった。
 叫んでも。
 叫んでも止まらない警報を。
 止めるのはいつも、一発の銃声。
 力を無くした身体を、血の海に沈め。
 自らの喉に向けて放った拳銃を思って、私はゆっくり瞳を閉じる。
 どうして。
 どうして私は、あの時貴方を撃てなかったのに。
 今こうして、夢の中で自分を撃ち続けるのだろう。
 愛が殺せと叫ぶから
 -警鐘-
 「…朝…か。」
 私が刑事を辞めてから、何度目の朝だろう。
 そんな風にぼんやり考えるのが日課になった。
 佐助という名の殺人鬼を追っていた昔の私は、彼本人から殺人を犯した動機は私を愛しているからだと告げられ、しかも彼を取り逃がした。
 佐助は…「逃げる気はない。君に殺されたい」…。
 そう、言ったのに。
 一緒に急行した仲間も佐助に殺され、それも全て私のせいかと思うと、刑事を続ける気になんてなれなかった。
 事実としては、私が佐助に殺人を勧めたわけでも頼んだわけでもないから、私のせいということにはならないのだろうが、それは理屈に過ぎない。
 事実、仲間は殺され、私は佐助を撃てなかった。
 刑事を辞めたのには、もう一つ考えがあったからでもある。
 彼は、私の心に残りたくて殺人を犯したと言った。
 私が刑事だから、犯罪なんて手段を選んだのだ。
 だから、私が刑事でなくなれば何か変わるかも知れないと思った。
 彼の言葉を信じるなら、だけど。
 「…全ての幕開けは君だから、幕を引くのは、君しかいない…。」
 あの日、彼が残した言葉を呟く。
 私しか、終わらせることは出来なかった。
 それなのに私は、終わりを選ばなかった。
 その答えはまだ見つからないが、私はそれを悔いている。
 だから…あんな夢を見るのかも知れない。
 「あぁ…やめやめ!」
 過去を振り払うように私は首をぶんぶんと横に振ると、ベッドを軋ませて床に降りた。
 どんなに辛くても、生きている限りは前に進まなきゃならない。
 再就職する気分にはまだなれなかったが、家に閉じこもっていては滅入るだけなので毎日欠かさず外に出るようにはしていた。
 いつものように身支度を整えて…と言ってもTシャツにジーンズだが…財布とケータイだけ持って玄関を出る。
 朝というよりは昼に近いマンション前の公園は、ちらほらとベンチにサラリーマンやらホームレスが居るだけで、遊具で遊ぶ子供もいなかった。
 外に出ても、別に行く当てが在るわけではない。
 私は公園を横目に、ゆったりとした足取りで駅の方に向かった。
 駅の裏側の、小さいが雰囲気のいい喫茶店が目当てだ。
 そういえば、学生の頃からだろうか。
 いろんな喫茶店に行っては、勉強したりぼんやりしたりして時間を過ごすのが好きになったのは。
 警備会社にでも転職する気でいたが、案外喫茶店なんかで働くのもいいかもしれない、と少し笑った。
 駅に向かう途中で、左手に建設中のマンションが目に留まった。
 作業中なのか、壁に沿うように組まれた足場をカンカンと歩く音と、やたら延びのいい掛け声が聞こえる。
 ここにもマンションが建つのか、と何気なく見上げると、太陽の光を遮って黒いものが急速に近付いてきた。
 一瞬、訳が分からなくて。
 気が付くと私は誰かの腕に引かれ道に倒れ込んでいた。
 耳をつんざく金属音がして、その余韻が消える頃やっと上の方から作業員が騒ぐ声が聞こえる。
 「…危ないところでしたね。」
 耳元でするその声に瞑っていた目を開いて、さっきまで自分が立っていたところを見ると、そこには厚さ十五センチはある鉄骨があった。
 あんなのが直撃したら即死である。
 「……当たればよかった…。」
- Re: リクエスト可!戦国BASARA短編集! ( No.126 )
- 日時: 2010/05/25 17:30
- 名前: るりぃ (ID: F/ANFiDr)
- 参照: http://アフォ小説家?
- 『愛が殺せと叫ぶから』中 
 私が小さくそう呟くと彼は驚いたように聞き返してきた。
 「え?」
 「あ、いえ。助けてくれて有り難う。」
 思わず呟いた一言に、私は自分でも驚いて。
 慌てて彼に礼を言うと立ち上がった。
 私の後を追うように立った彼は黒のスーツに身を包んだビジネスマン風の服装で、黒縁の眼鏡をかけていた。
 私を助けるときに放り出したであろう皮の鞄を拾い上げ、砂を払う。
 「ご無事で何よりでした。あんな物が当たれば即死だ。」
 「ええ…。」
 私は彼の言葉にやわらかく微笑んで返すと、彼も微笑み返し、口を開いた。
 「しかし、こんな鉄骨がそう簡単に落ちるはずはないんですがね。…何か心当たりでも?」
 探るような視線に私が首を横に振ると、彼は表情を和ませて「そうですか。」とだけ言った。
 その後責任者が降りてきて謝罪を受けたが、別に怪我をしたわけでもどこが汚れた訳でもないので、それで事を済ませた。
 本当なら警察に連絡するなりした方がいいのだろうが、鉄骨が落ちたのは彼らのせいでないことは解っていたから。
 そう、これが初めてじゃないのだ。
 ここまであからさまなのは確かに初めてだったが、ここ数日、私は誰かに命を狙われている。
 それが解っていて手を打たないのも、毎日外出するのも、理由はあの言葉に集約されるのだと思う。
 『当たればよかった。』
 私は、死にたがっている。
 「お茶でも、いかがですか?」
 工事現場の人間と話が終わった後、ビジネスマンがそう言った。
 少し驚いたが、相手は命の恩人だ。
 断るわけにはいかない。
 頷くと、彼は駅の裏の、私がよく足を運ぶ喫茶店へ入った。
 そして、知っていたかのように私の一番気に入っている席を勧める。
 もちろん、偶然に過ぎないのだけど。
 挽きたてのコーヒーの香りと、出窓から射すやわらかな陽に心を和ませながら正面を見ると、彼は視線に気付いて優しく笑った。
 そういえば、名前も聞いてなかったと思い立ち、口を開く。
 「あの…もし差し支えなければ名刺をいただけませんか?」
 「え?」
 彼は、私の言葉にきょとんとした表情を向けたかと思うと、すぐにくつくつと喉を鳴らして笑った。
 何か可笑しいことでも言っただろうかと怪訝に首を傾げる私に顔を近付けにやりと口を歪める。
 「まだ気付かない?俺様だよ、俺様。」
 「………ッ!佐…ッ!」
 『佐助』と叫ぼうとした私の口を素早く押さえて、彼は人差し指を立てると楽しそうに笑いを堪えた。
 雰囲気があまりに違うので気付かなかったが、目の前の男はかつて殺人鬼として名を馳せ、私を今の生活に追いやった張本人に間違いない。
 「ちょっとー、でかい声出されちゃ困るよ。俺様一応指名手配犯なんだから。ね?」
 「…殺人鬼からストーカーに転身したわけ…?」
 「んー、まあそんなとこかな?」
 口を押さえる手をひっぺがして睨みつけると、佐助は肩をすくめてきつい視線を誤魔化した。
 そしてすぐに伝票を取り立ち上がる。
 「俺様のことが知りたきゃ、ついて来なよ。」
 「…行くと思うの?」
 未だ睨みつけたまま私が問うと、彼は伝票をひらひらさせながら自信たっぷりに笑った。
 「まあね。君には幕を引く仕事が残ってるから。」
- Re: リクエスト可!戦国BASARA短編集! ( No.127 )
- 日時: 2010/05/25 17:30
- 名前: るりぃ (ID: F/ANFiDr)
- 参照: http://アフォ小説家?
- 『愛が殺せと叫ぶから』下 
 佐助の部屋は、駅前の高層マンションの一室だった。
 今まで最高二階までしか住んだことのない私には、十五階に住む彼の気分など理解できないが、こんな理由で訪れるのでなければ「すごい!」とはしゃいでしまいそうな部屋ではあった。
 人殺しというのはこんなにも儲かるのだろうか。
 そんなことをぼんやりと考えていると佐助が声を掛けてきた。
 「適当に座っててよ。コーヒーでいい?」
 「要らない。」
 リビングの中央でぶっきらぼうに放った私に苦笑いを浮かべると、佐助はネクタイを緩めながら奥の部屋に入っていった。
 結局、彼の言うとおりここまでついてきてしまった。
 幕を引くため、と言っても今度は簡単にはいかない。
 もう私は、彼を殺せる立場にないのだから。
 それに。
 それに少しだけ。
 彼を知りたいと思う自分も居た。
 何故殺せなかったか。
 何故死にたいのか。
 全ての答えを明かしてくれそうで。
 「…知っちゃいけない気もするけど。」
 誰もいないリビングに立ちっぱなしも落ち着かないので、高級そうな皮の張られたソファに腰掛けたところで奥の部屋から佐助が戻ってきた。
 さっきの黒髪黒スーツの姿からは打って変わって、いつか見た橙の髪に開襟シャツにジーンズというラフな格好をしている。
 「変装してたのね。」
 「一応立派に指名手配されてるしね。ちょっといじるだけで案外気付かれないよ。君で実証済み。」
 くすくす笑いながら、私の前のソファに腰掛けて足を組む。
 にこりと笑うその顔は、いつかの血塗れのそれとはどことなく違う気がした。
 「ずっと此処に住んでるの?」
 「君が居る街に居たくて。君が警察辞めてからも、ずっと見てたよ?」
 「立派にストーカーね。」
 「はは、手厳しいな。」
 睨んでやったのに、佐助は何だか嬉しそうだった。
 効果がないのが癪で私は彼から顔を背けた。
 「まあ、特別な事情もあって、見てたんだけど。」
 「特別な事情?」
 聞き返すのと同時に見た佐助の顔は、さっきの優しいとは違っていた。
 冷たさの映る瞳は窓の外を見ている。
 「最近、狙われてたろ。ほら、さっきの鉄骨みたいなの、初めてじゃないよね?」
 「どうせ見てたんでしょ?聞く必要ないじゃない。」
 「あれは、俺のせいなんだ。」
 「え…?」
 こちらに瞳を向けた佐助は、本当に済まなそうな顔をして少し笑った。
 その瞳は、本気で私を心配しているように見える。
 「君を好きになって。君に人生捧げようって思って。生まれてからずっと世話になってた裏組織を抜けた。もちろん、裏切るんだからそれなりのリスクはあったけど、君には代えられなかった。」
 成程、佐助はやっぱり裏社会の人間だったのだ。
 素性が知れないはずである。
 佐助は足を組み替えて、私から視線を外し、ガラスで出来たテーブルに視線を落とす。
 「刺客が来てる内は良かったんだ。俺様に敵う奴なんかいないし。でも、あいつらも馬鹿じゃない。『女を救いたいなら戻ってこい。』って言ってきてさ。」
 「それで、鉄骨?」
 「…ああ。まあ、俺様が居る限り君を死なせたりしないけどね。」
 テーブルから私に戻した瞳は、いつもの優しいものだった。
 さっきの冷たさは、もうどこにも見えない。
 佐助はゆっくり指を動かすと、腫れ物に触るようにそっと私の手に重ねる。
 「…でも、君は死にたいのかな。だったら俺と死ぬ?」
 いきなり心中を持ちかけられた私は、驚いて勢いよく佐助の手を振り払うと体ごとそっぽを向いた。
 「まさか!死にたくなんて無いわ!」
 「…じゃあ、護っていいんだ?」
 「え…。」
 振り向く前に、後ろから抱きしめられる。
 一瞬はね退けようとしたが、ぎゅっと込められた力に、気が付けば腕は力を失していた。
 「君が世界から居なくなるなんて耐えられない。だから、俺が護る。いいだろ?それで。」
 サイレンが、鳴る。
 胸の奥で、危険だと叫ぶ。
 このままでは、溺れて、もがいても、帰れなくなるって。
 私は震える声を出す。
 「どうして、ここまでするの?」
 「そんなの、決まってるでしょうが。」
 胸の奥で、危険だと叫ぶ。
 警報が。
 「君が好きだから。」
 高鳴る警鐘は、喉を割って声になる前に、貴方の唇で、塞がれた。
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