二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

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レイトン教授と死炎の妖言 —悲哀の章—
日時: 2010/01/03 19:53
名前: キョウ ◆K17zrcUAbw (ID: JFNl/3aH)
参照: http://layton.g-takumi.com/novel_detail.php?bbs_id=1632

ちょっとでも覗いて行こうと思ったその思考に感謝♪
さて、ごあいさつが遅れてしまいましたね。レイトンをこよなく愛しているくせに劇場に行けそうにないキョウと申します。以後お見知り置きを……。
こんなバカに付き合って下さる、お優しいお心のまま下に行って下さるとありがたいです!
その前にいくつかの注意を——

※注意※
・ネット上のマナーは勿論のこと、カキコの使用上注意も守って下さい。
・宣伝はOKですが、スレ主は見に行けない場合があります。ご了承くださいませ。
・誤字&脱字が多いと思います。見つけ次第訂正中です。
・更新不定期です。作者が飽きなければ更新し続けますが…
・もしかしたら微量なグロ表現があると思いますが、いきすぎないよう注意致しますので、そこんとこは見逃して下さい;

*この小説は長編故、全ニ構成から成っています。
【レイトン教授と死炎の妖言】
壱巻 —悲哀の章—
弐巻 —狂喜の章—


以降の注意事項をクリアした方はどうぞお進みを〜♪
(お進みしてくださった方は神様ですッ!)

—神様(お客様)—
※現在4名様〜
慧智瑠 様 水仙 様 レッド 様(先輩) ピクミン様

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Re: レイトン教授と死炎の妖言 —悲哀の章— ( No.1 )
日時: 2009/12/31 21:54
名前: キョウ ◆K17zrcUAbw (ID: JFNl/3aH)

—序夜 悲哀の陰—

 母さん——。
 少年は母親の胸へと飛び込んだ。暖かく、優しい、母の温もり。思わず瞼を閉じてしまいたくなるくらい心地良い。やんわりとした愛情が彼を包み込んだ。
 ぬくぬくと頬をスリ寄せた少年の頭に、白く細い手が廻される。
 甘い匂いが鼻腔をくすぐった。そうか、今日のおやつはクッキーなんだね?
期待に胸を膨らませ、そう顔を上げた瞬間、彼は凍りついた。
 春風のような暖かな空気が音を立てて崩れる。変わりに流れて来たのは、鋭く、悪寒を含んだ極寒の冷気。それは彼の背中を撫で、ピリピリとした緊張を運んだ。
 呼吸が乱れる。喉に何かが突っかかり、まともに息が出来ない。濃色の不安がじんわりと広がる。頬を引きつらせたまま、振り向いた母の手に握られた“モノ”を凝視した。

 包丁……——?

 ——ごめんなさい、シエン……。

 母の手が勢い良く振り下ろされる。
 全てがスローモーションとなった。
 外から漏れる警報、三時を知らせる鐘。刃物に絡みついた風が、不気味な音を鳴らしながら耳を刺激する。
 鋭利に尖った刃が、目の前に迫る。母の口が微かに動いた。

 ——嫌だ、死にたくない……!!


 刹那、凄まじい爆風が静けさを破り、室内を占領した。あっと息を飲む間に、灼熱の熱風が二人を包み込む。




 けたたましい倒壊の悲鳴が、午後の空をつんざいた……————

Re: レイトン教授と死炎の妖言 —悲哀の章— ( No.2 )
日時: 2009/12/31 21:56
名前: キョウ ◆K17zrcUAbw (ID: JFNl/3aH)

—第一夜 苦悶—

*一

 午後 三時04分
 突然の爆音がロンドン中を震え上がらせた。地鳴りにも似た騒音が英国全土を駆け回り、空を黒く染める。振動は地震に成り変わり、震度四弱を纏いながら地を揺らす。近代の家屋は地震対策が成されていたので大した被害は受けなかったが、建築完成後は一大デパートになるはずだった工場現場が数秒にして藻屑と化してしまった。
 幸い、地震は長期休暇の最中に起きたので、工場現場には人影が無かった。
 しかし、爆発による被害は想像を絶するものだった。今のところ、火事や倒壊、爆風に呑まれたなどによる負傷者は数人、死者は二桁にまで上った。
 事件から半日経った今でも焼死体は見つかり、スコットランドヤードを悩ませている。

 爆発の根元となった『トリエザード家』からは焼け焦げた死体が二人分発見されており、現在身元を確認中。
 現時点ではトリエザード家長男の『アレイ・トリエザード君』と、『ロータス・トリエザード婦人』、『ゲイ・トリエザード氏』の行方が分からなくなっており、捜索中とのこと。
 また、トリエザード家の家族以外にも行方不明者は多数いるという。双方共、警察は全力で捜索にあたると述べている。

 トリエザード家は住宅街のほぼ真ん中に位置し、爆発は近辺の家屋へ大被害を与えた。
 原因と犯人は未だ不明。スコットランドヤードは近辺の住人に声を駆け回っている様子。
 “十年前”の爆発にも似た今回の事件。最近多発している『連続殺人事件』を抱えながら、警察は十分な態様が出来るのか。今後の動きが気になる——。


 そう締めくくられたこの出来事は『大量被害爆破事件』として大々的に報じられた。当然、僕が手に持つロンドンタイムズの表紙一面を飾っている。
 運良く爆発から数キロ離れたこの地には、大した被害も無く、文字通り震度四弱の地震で収まった。
 何とも怖い世の中になったものだ。噂では、この爆発は人の手によって行われた、なんて薄気味悪い話も出ている。
 人間の邪心は恐ろしい。僕はその事を誰よりも実感しているつもりだ。
 実際に数多くの難事件を目の当たりにしてくると、被害者の心理や、犯人の意図が見えてくる……と僕の師匠は言っていた。
 詳しくは分からないが、確かにその通りだと思う。三年間共に事件を解決に導くに従って、僕自身、人の心境が見え隠れするようになってきた。
 これは幾分か立派な英国紳士に近づいたと取って良いのだろうか。答えはイエス。すでに僕はそう解釈することにしている。
 誰がなんと言おうと、ルーク・トライトンは華麗な英国少年さ。

 一人胸を張る僕に気付いた人間は何人いただろうか。そりゃそうだ。歩いて行く人を一人一人確認してては日暮れてしまう。歩行人全員が暇人なんてことはまず有り得ないのだから。

 だが、みんな知らない。僕の行き先が、かの有名な名探偵『エルシャール・レイトン』先生の研究室だとは。

Re: レイトン教授と死炎の妖言 —悲哀の章— ( No.3 )
日時: 2010/01/01 19:04
名前: キョウ ◆K17zrcUAbw (ID: JFNl/3aH)

*二

 大学生の間を縫って進み、やっとのことで研究室の前へ到着した。別にいつもの事だから動じない。
 レイトン先生のトレードマークが描かれたドアを数回ノックしたが、いくら待っても応答が無い。どうしたのだろうか。留守? 少し道を戻り、壁掛け時計を見上げれば、まだ午前中。やはり昼食抜きで来たのが間違いだったのだろうか。もう一度研究室を訪ねたがやはり無人。だが、先生は確かにこの校内にいるはずだ。
 引き返すのを惜しんだ僕は、顔見知りの生徒に尋ねようと踵を返した。
 その時、どこからか聞き慣れた声を耳にした。

「ルーク? こんな所で何をしているんだい?」

 ゆっくりと首を巡らすと、そこに長身の陰があった。
 黒いマントに黒いズボン。必須アイテムのシルクハットを頭に載せた、紳士的な風貌の男。見間違うはずがない。彼こそがレイトン先生だ。

「あぁ、すまないね、ルーク。少し用事が出来て、席を外していたんだよ」

 先生は柔らかな物腰のままドアを開け、どうぞと僕を促した。遠慮せずに礼儀正しくお邪魔する僕。英国少年としては当然なのだ。


「先生、この事件はご存知ですか?」

 そう言って僕は例の事件を表にした新聞を渡した。先生は「どれどれ」と受け取ると、一面を眺め始めた。

「あぁ。悲しい事件だね、まさか“あの出来事”と比べられるとは……」

 先生の表情が苦痛に歪む。そう、あの出来事。沢山の死者を出した十年前の爆破事件。その悲劇により、レイトン先生は最愛の恋人を亡くしてしまった。さらに、あの事件の真相を知っている僕達には、重く圧し掛かる鉛。出来れば、あんな事故は二度と起きてほしくなかった。

「スコットランドヤードも、さぞ大変だろうね。毎日のように多発する殺人事件だけでも苦しいのに、まさか爆破事件が起きてしまうなんて」

「ですよね。チェルミー警部達から荷が下りるのはまだまだ先のようです」

 がっしりとした体格のチェルミー警部が目に隈を造り、げっそりと痩せこけている様子を浮かべ、危うく吹き出しそうになった。
 レイトン先生はチェルミー警部の名を耳にした途端、あっと声をあげ、何やら思い出したように封筒を掲げた。

「実はルーク、そのチェルミー警部から依頼が届いているんだ」

「えぇ!?」

 まさかあの敏腕、かつ傲慢な警部から直々に申し出が来るとは……本当にげっそりとお疲れ気味なのだろうか。
 思った言葉を口に出して訊くと、先生はやんわりと口元を緩め、少し違うと否定した。

「確かにこの一件と関係あるが、そのままの意味ではない。実はまだ報道されてないようだが、今回の爆破事件で唯一現場に死を免れた少年がいるらしいんだ」

「? それは当然じゃないですか? ほら、負傷者は数人って——」

「いや、彼の場合、現場——根元であるトリエザード家から発見されたらしいんだ」

 僕は思わず声を漏らし、凄い……と感嘆した。地震を起こす大爆発のさなか、生き残った人物がいるという事だ。奇跡でも無ければ到底不可能であろう。

「ルークのいう通り、これは奇跡に匹敵するだろうね。だが爆風に巻き込まれて、思い切り煙を吸い込んでしまったらしい。さらには体の大半を火傷。衰弱死してしまうのも時間の問題だ」

 少年は倒壊してもなお原型を留めていた木片に守られるように発見されたという。そして少年に折り重なった形で見つかった焼死体は、おそらく母親のロータス婦人。彼が助かったのは婦人が身代わりになって被害を少なく出来たからだと思う。
 少年の家族は全員行方不明、または焼死。病院に運ばれたまま意識不明の重体だというが、そのまま逝かせてあげた方が良いのかもしれない。

「それで、依頼の内容は何なのですか?」

 ここまで長話になって申し訳ないが、未だに依頼の目的を告げられてはいない。まさか少年の悲劇だけで終わらせるわけではあるまいな?

「ふむ。それなんだが——」

 先生はそのまま黙りこくってしまった。どうやら僕に話すべきか考えているようだ。

「先生! ここまできてそれはありませんよ!」

「……確かに……」

 仕方ない、とでもいうように息をついてから、ようやく口を開いてくれた。

「病院に運ばれた後、少年はすぐに治療を施された。だが、彼の体躯はまるで——」



 『悪魔』

 その言葉は僕の胸に深く沈んだ。


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