二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

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学園アリス —記憶の在処—
日時: 2010/11/24 17:20
名前: 時計屋 (ID: klLmhm9D)

はじめまして。
時計屋と言う者です。

学園アリスの小説をちょこちょこ読んでいて、書きたくなりました。

よろしくお願いします。






オリキャラ

 木錠李麻(きじょうりお)
  年齢 11歳
  性格 人見知り
  アリス 言霊のアリス
  備考 五歳の時、親にZに売られ、それ以来レオの元で育つ。人間自体が好きでなく、近しい人としか関わらない。レオと蜜柑と彼方に懐いている。
 
 彼方(かなた)
  年齢 12歳 
  性格 冷静沈着
  アリス 創造のアリス
  備考 生まれて直ぐ捨てられ、ボスに拾われる。
その為、似たような境遇の李麻と共にいる。レオのことは、好きではないが信頼している。

 国元日下(くにもとくさか)
  年齢 15歳
  性格 お気楽
  アリス 光のアリス
  備考 李麻・彼方・蜜柑の兄役であり、リーダー。面倒見もよく信頼されている。


(その他色々増えるかもしれません。)

それでは、スタートです。

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Re: 学園アリス —記憶の在処— ( No.63 )
日時: 2010/12/18 16:14
名前: 時計屋 (ID: klLmhm9D)

前回、前々回と番外編を書きましたが、今回は本編に入りたいと思います。
ここからが佳境と言いますか、場面ががらりと変わると言いますか、本作品中の謎(?)を少しずつ明らかにしていきたいと思います。
それでは、どうぞ・・・・。


第十七話 —少女の祈り—

貴方が望むなら どんな唄でも唄いましょう
貴方が願うなら 犠牲など厭いません

世界を変えてくれたから
道を照らしてくれたから
こんなにも幸せになれたの

私の世界は貴方で 貴方が私の全て

だから 貴方は幸でいて
だから 貴方は笑っていて
そのためなら 何だってするから 何だって耐えてみせるから

いままで ありがとう

ごめんなさい・・・・・・・


銃声は小さいながらも、確かに響いた。
蜜柑は来る衝撃と痛みのため、目を閉じ待ち受けたが予想される衝撃も痛みも来ない。
恐る恐る目を開け玲生を見ようとしたが、目の前に立ちふさがる李麻の影に遮られアリス学園の制服しか見えない。黒い服であるはずのそれには、赤いシミが広がっているのが分かった。

「李・・・・・・・・麻・・・・・・・・・?」

声を掛けると李麻は振り向き、微笑んだまま体勢を崩し蜜柑の腕の中に倒れ込んだ。胸元からは背の制服と同じように赤い液体が浸食している。玲生を見ると、信じられないというように目を見開き、拳銃を持つ手が微かに震えている。
生暖かい液体に蜜柑の手が触れ、それが李麻の血だと分かるのに時間は掛からなかった。

「李・・・麻・・・・。李麻!!!李麻!!!!!!」
「れい・・・・・・な・・・・・・・・?」

蜜柑の呼びかけに李麻の瞼が力なく開き、優しい声が途絶え途絶えに紡がれる。不思議そうな顔からは、苦痛など感じられない。

「李麻!!どうして・・・・うちなんか、庇ったんや!!!」
「・・・・・・。」
「玲生ががゆうてたやろ!!!うちはもう李麻が知る零那やない!!!!それなのに・・・・・どうして・・・・・・。」

蜜柑の手を包みながら微笑む李麻に蜜柑は握る力を強め、繋ぎとめようと言葉を掛ける。

「知って・・・・・いた・・・・から・・・・・。」
「えっ・・・・・・・。」

微笑みつつも悲しげな李麻は、息を吐きながら少しずつ言葉を紡ぐ。それは、大切な人への言葉のように温かさと慈しみが込められていた。

「れい・・・・・な・・・・・ううん・・・・みかん・・・・・が・・・こうなる・・・・・こと・・・・を知っていた・・・・・・から・・・・・。蜜柑が・・・・・傷つく・・・のは・・・・見たく・・・・・なかったの・・・・。」
「どうゆうことだ。李麻、知っていただと?誰から聞いた。」

玲生の低い声に蜜柑と李麻は同時に、玲生へと目を向けた。

「違う・・・・・よ・・・・・。聞いたんじゃ・・・・・ないの・・・・・。・・・・・未来を・・・・・見せて・・・・・貰っただけ・・・・・・。」
「・・・・・先見のアリスストーンか。」

憎々しげに言葉を吐き出す玲生を蜜柑は睨みつけていたが、李麻は慈しむように見つめる。
ゴホゴホと李麻が咳き込み、吐き出された血が蜜柑の顔と制服に飛び散った。癒しのアリスストーンを持たず溢れ出す血を止められない蜜柑は、李麻の名前を呼び続け、それに微笑む形で答える李麻達に玲生は再び銃口を向ける。

「だったら!!!!未来が見えていたなら、何でそれで学園を滅ぼさない!!!!分かっていたんだろう!!!!俺たちの行動も、あの人の思惑も、学園側の事も!!!!!学園を滅ぼす事が、俺たちの目的だ!!!!お前だってそう思っていたからここまで来たんだろう!!!!なのに何で邪魔をするんだよ!!!!」

吐き出すように怒鳴る玲生の声に、蜜柑は顔を顰める。それでも、李麻の表情は変わらず、優しいままだった。

「玲生・・・・・の目的は・・・・・・学園を・・・・・滅ぼす事・・・・・?」
「当たり前だ!!!!!」

優しげに呟かれる言葉を玲生は強く肯定する。
まるで、何かを捨て去るようなその言葉に初めて李麻の表情が曇る。しかし、目の力はそのまま玲生に向けられていた。

「・・・違うよ・・・・。」
「なっ!!!」
「玲生・・・・・は・・・・・そんなの・・・・・願って・・・無いでしょ・・・・?」
「何を・・・・。俺は学園を滅ぼすために・・・・・!!!!」
「だったら・・・・なんで・・・・そんなに悲しそう・・・・・なの・・・・・・・」

玲生は、李麻の言葉に俯き掛けていた顔を上げた。驚くように戸惑った目は揺れていて、向けられた銃口も震えていた。

「・・なんで・・・・鳴海・・・・先生を・・・『先輩』と・・・・・呼び続けるの・・・・?」
「それは・・・・・。」
「・・・・まだ・・・信じているんでしょ・・・・・?残された・・・・希望を・・・・・捨てきれ・・・・ないんでしょ・・・・・?・・・お願い・・・・もう止めて・・・・・もう・・・・誰にも・・・・傷ついて・・・・欲しく・・・・ない・・・・・の・・・・・・。」

否定出来ず押し黙る玲生を諭すように語りかける。小さく途切れながらでも、その言葉には力が感じられた。
睨み続けていた蜜柑も、その目に怒りはもう見えない。代わりに切なげな目を玲生に向けた。

「玲生。なんで?何であんたはそこまで学園を恨むん?ここは、あんたにとって思い出に成らなかったん?鳴海先生とだって・・・・・」
「五月蝿い!!!!!」

明確な拒否に蜜柑は口を噤む。

「何も!!!!何も知らないくせに!!!!!分かった事を言うな!!!!!!」

震えはもう無く、銃口はぴったりと狙いを定めていた。引き金に掛けられた指がゆっくりと動く。

「これで・・・終わりだ・・・・・。」
「玲生!!!!」

聞こえた新たな声に玲生の動きが止まる。
見ると森の中から、戦っていたはずの彼方達と鳴海が
息を切らせながら走って近づいてくるのが分かった。

「玲生!!!もう止めるんだ。こんな事しても君は救われない。憎しみが増すだけだ。」
「相変わらずの綺麗事ですね。ナル先輩。」
「玲生!!!!」
「・・・・・今回は引き上げますよ・・・・。彼方、日下。来るか?」

玲生の誘いに二人は首を振り、それを冷めた目で玲生は見る。

「お前ら後悔するぞ・・・・。」
「しないよ。少なくとも俺は・・・・。」

玲生は彼方達から蜜柑と李麻に目を移し、小さく何かを呟くとテレポートのアリスストーンを使い、消えていった。


つづく

わぁ〜・・・・今回は書くのが大変な話に成りましたよ。人の感情は良くわからんですね。
李麻の言っていた事は自分が漫画を読み、不思議に思った事を自分なりに考え出した結論です。
玲生が未だにナルのことを先輩呼びにしていたのがしっくり来なかったもので、李麻に代弁して貰いました。これが、当たっているとは思いません。あくまで自分の想像の範囲です。

 

Re: 学園アリス —記憶の在処— ( No.64 )
日時: 2010/12/18 17:18
名前: あやのん ◆u4eXEPqmlc (ID: g1CGXsHm)

23巻がほしい・・・

Re: 学園アリス —記憶の在処— ( No.65 )
日時: 2010/12/18 21:13
名前: 時計屋 (ID: klLmhm9D)

終わりが朧気ながら見えてきました!!!!
年内には終わりを迎えたいのですが・・・・出来るかな?まぁ、成るようになるでしょ!!!

第十八話 —君の元へ—


北の森。木々が育ち風が流れるその場所で、彼方は棗達と対峙していた。とわ言っても、戦闘ではなく睨み合いの方が正しい。
戦力的に棗達は分が悪く、彼方と日下をまともに相手にすれば間違いなく勝利の女神は彼方達の味方をするだろう。それでも、棗は引かない。否、引けないのだ。今引いてしまえば二度と蜜柑に逢う事は叶わない。それを知っているからこそ、死んでもここから逃げるなど棗は一瞬も考えはしない。蛍達も棗と同じであろう。引く気配など微塵も感じさせず、手練れであるはずの彼方達と対峙しても毅然としている。
いくら待ったとて引かない棗を、呆れたように彼方はため息を吐き真っ直ぐ見据えた。

「俺たちはあんたらが引いてくれれば追撃はしない。痛めつけるのが今回の任務じゃないからね。」
「次会ったら消すとか言ってなかったか?」
「状況によりけり。今は李麻達ん所行かないといけないからさ。引いてくれない?」
「そんな事聞き入れられると思ってるの?」
「だから頼んでるんじゃん。」

文句を垂れる彼方に、棗達が顕現しそうな目を向ける。
彼方は棗達に頼まずとも、動けないまで痛めつければいいのだ。それだけの実力があるのは棗は疎か蛍も分かる。棗に傷を負わせたのがその証拠だ。その気になれば殺す事すら難しくはないだろう。しかし、李麻と蜜柑をこの場から遠ざけた以降の攻撃には、殺傷能力があるものではなかった。精々が威嚇。足止めにしか成らないものだった。それなのに、学園殲滅を掲げる玲生と行動を共にする彼方達の目的が見えず、棗は焦りが募るのを感じていた。

「お前らの目的は何なんだよ。」
「目的・・・・ねぇ・・・・。」
「俺たちを殺す訳でもなく、学園に攻撃するわけでもない。なのにZと共にいる。何を企んでいる。」
「何って、蜜柑を返しに来たんだよ。」
「な・・・・に・・・・・。」
「聞こえなかったか?俺たち、つっても俺と彼方、李麻の三人だけだが。お前らのお姫様を返しに来てやったんだよ。」

話が見えず動きを止める棗達に、日下は軽く言い放つ。その言い方を咎めるように彼方が睨むが、それが日下に対して意味など成さない事を彼方は承知している。

「言っている意味分かってんのか?」
「俺はそこまで馬鹿じゃないつもりだぜ?翼。」

そう。彼方達三人の行動はZに対する裏切り行為に他ならない。バレれば消されかねない程のイカレた行為だ。それほど重大な内容にも関わらず日下は普段と変わりなく、彼方も嘘など吐いているようには見えないほど自然体だった。

「・・・・・それがもし本当だとして、お前らにとってメリットがあるのか?」
「損得抜きの行動だよ。俺は人間だからな。感情抜きで機械みたいに動けはしない。強いて言えば、李麻を悲しませたくなかったってとこか。」
「李麻?」
「零那に懐いてたんだよ。あの日からずっと零那を蜜柑に返してやりたい言っていってたのは李麻だから。」
「あの日?」
「それは・・・・・」
「棗君達!!!!」

彼方の言葉は流架が呼んできた鳴海によって遮られた。
新たに人が増えたことに彼方が舌打ちした時、その音は微かだが確かに彼方の耳に届いた。音の下方向を確認し、李麻達がテレポートした場所からだと気付くやいなや彼方は走り出していた。後から日下が追いかけてくるのが分かる。足を止めず全力で李麻の元に向かった。


銃口が蜜柑に向けられているのが見えると、棗は凍り付くほどの衝撃を覚えた。既に玲生に余裕は見受けられず、蜜柑が打たれるのは時間の問題だった。

「これで・・・終わりだ・・・・・。」
「玲生!!!!」

鳴海の声で止まり掛けていた棗の思考が再起動する。
玲生と蜜柑が振り向くのが分かった。棗達は速さは弛めず蜜柑に駆け寄る。

「玲生!!!もう止めるんだ。こんな事しても君は救われない。憎しみが増すだけだ。」
「相変わらずの綺麗事ですね。ナル先輩。」
「玲生!!!!」
「・・・・・今回は引き上げますよ・・・・。彼方、日下。来るか?」

玲生の誘いに二人は首を振り、それを冷めた目で玲生は見る。

「お前ら後悔するぞ・・・・。」
「しないよ。少なくとも俺は・・・・。」

玲生は彼方達から蜜柑と李麻に目を移し、小さく何かを呟くとテレポートのアリスストーンを使い、消えていった。


「李麻・・・・李麻・・・・・。」

玲生が消えると、彼方は真っ先に蜜柑に抱えられてる李麻に駆け寄り蜜柑から自身の腕の中へと移し、血の気が薄れている李麻の頬に手を添え名前を呼ぶ。

「彼・・・・・方・・・・・だい・・・・・じょうぶ・・・・?」

力なく微笑みながらも心配する李麻の言葉に、彼方は李麻を抱きしめた。

「平気だよ・・・・怪我もしてない・・・・。蜜柑も日下も蜜柑の大切な人も無事だよ・・・・・。」
「そう・・・・よかったぁ・・・・・。」

安堵する李麻の言葉に蜜柑は棗に縋りつきながら声を押し殺して泣きじゃくる。棗は苦しそうに顔を歪ませ、抱きしめる力を強くした。

「・・・・み・・・・かん・・・・。」
「!!!李麻!!!!うちはここや!!!」

蜜柑は棗に支えられながら、李麻の手を取り存在を教える。握りしめた手は冷たく、李麻の命が尽きようとしている事を示していた。

「・・・・み・・かん・・・。約束・・・・して・・・・?」
「何?」
「・・・・・幸せになる・・・・って・・・・・。」
「李麻・・・・・。」
「・・・・大切な・・・・人達と・・・・・幸せに・・・なって・・・・・・ね・・・・・。」
「そんな!!!!最期みたいな言い方せんといて!!!!」

蜜柑の懇願は悲痛な叫びのように聞こえる。
その場に居る全員が分かっていた。少女の命は長くはないと。それでも、蜜柑は手を握りしめ繋ぎとめようとしていた。
李麻は蜜柑から彼方に顔を向ける。

「・・・・・かな・・・・た・・・・。」
「李麻・・・・・。」
「ごめん・・・ね・・・・・約束・・・・守れなくて・・・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・・一緒・・・・に・・・・居たかった・・・・よ・・・・彼方・・・・大好き・・・・・。」
「俺もだよ・・・。李麻、約束して?」
「な・・・・に・・・・?」
「俺が李麻の所行くまで、待ってて。」
「・・・・彼・・・・方・・・・」
「少し遅くなるけど、必ず李麻の側に行くから。待ってて李麻。」
「・・・ん・・・・待ってる・・・・・必ず・・・・待・・・てる・・ょ・・・・」

ぱたんと重力に逆らわず、李麻の手が地面に落ちた。

「りお・・・約束・・。」

彼方は李麻に口づけをすると、温もりを逃がさないように強く抱きしめた・・・・。

約束しよう 例えどんな事があろうと
僕は君の元へ還ると


つづく


うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!!
前々から予定していたのに書くのは辛かったです。
しかし、書かずに終わるわけにはいきませんでした。今回の話は、李麻の本心を書きたかったんです。
彼方に救われ、蜜柑に会い、学園にやってきた李麻。彼女はこれまで世界だったZから離れ、大勢の人を見て自身の言葉を蜜柑達に託したかった。そう思っています。

Re: 学園アリス —記憶の在処— ( No.66 )
日時: 2010/12/18 19:02
名前: あやのん ◆u4eXEPqmlc (ID: g1CGXsHm)

李麻・・・(泣)
続きが気になる〜・・・

Re: 学園アリス —記憶の在処— ( No.67 )
日時: 2010/12/19 13:24
名前: 時計屋 (ID: klLmhm9D)



第十九話 —記憶の在処を—


君がいない それだけなのこんなにも胸が痛いんだ



中等部A組教室。そこに、棗達は集まり日下と彼方を囲むような形で各々腰を下ろしていた。
Zの襲撃は、玲生達の撤退として幕を下ろした。元々襲撃自体が玲生と一部上層部達の実験の為だけに行わていたものであり、学園側にそれほどの被害は出なかったが、李麻の死が蜜柑に暗く伸し掛かっていた。
玲生が撤退した後もしもの為にと鳴海が手配していた治療班は間に合わず、李麻の死は確定した。それに対し蜜柑は泣き叫び、事実を否定していたが棗と蛍に言い聞かされ今は落ち着いている。それでも蜜柑の落ち込みは酷く、やっと保っていられる状況だった。

「・・・・君たちが知っている事全部説明して貰おうか。」
「俺たちが蜜柑を学園に返す目的で動いていたのは話したよな?」
「あぁ・・・・聞いた。」

自分の事が話に出て来た蜜柑は、辛そうに俯く。それを庇うように棗が蜜柑の手を握り、話を進めた。
日下は彼方に顔を向け頷くのを確認し、首から提げていた自らのネックレスを外し棗達に見せる。

「これは、ある人から貰った先見のアリスストーンだ。これを使って、未来を見ていた。」
「だから、玲生が蜜柑を誘拐する事を知っていた?」
「あぁ・・・・彼方と俺、李麻の三人はそれを知ったから蜜柑を学園に戻そうと計画したんだ。」
「だったら!!!!なんで、蜜柑が連れて行かれる前に行動を起こさなかったの!!!そうすれば玲生に連れて行かれずにすんだじゃない!!!!!」

蛍の訴えに二人は顔を顰め、目線を逸らした。

「・・・・・知ったのは玲生が蜜柑を連れて来る日だったし、行動を起こそうとした時にはもう遅かったんだ。」

辛そうに喋る日下に蛍は言葉を詰まらせる。
未来を知ってもそれを変える事は難しい。蛍とて知らないわけではない。知っているからこそ、蜜柑を守れなかった自分に腹を立て、その怒りを日下にぶつけられずには居られなかった。ごめんなさい と小さく謝る蛍に日下は 気にするな と同じように小さく呟く。

「それで?未来を知っていたのは分かった。けど、蜜柑ちゃんを助ける根本的な理由にはなっていないよね。」
「そうだな・・・・。・・・約束したんだ。」
「約束?」
「アリスストーンを俺に託してくれた人と、蜜柑を守るって。」
「その人って・・・・・。」
「安積柚香。蜜柑の母親だよ・・・・。」
「お母さんが・・・・・・・。」

柚香の名前を聞き、蜜柑は顔を上げた。信じられないと呟く蜜柑の頭を日下は優しく撫でる。

「本当だよ。柚香さんはいつもお前の事を心配していたんだ・・・・・。だから俺たちはお前を守るために動いた。」
「先輩と君たちが繋がっていた・・・・・?」
「繋がっていたっつーより、恩返しだよ。柚香さんは俺たちの恩人なんだ。」

何処か懐かしい目をする日下を、鳴海は驚きと戸惑いが入り交じった目で見る。

「でも・・・・約束を守るために・・・・うちのために李麻が命を掛ける事無いやん!!!!」
「・・・李麻があの時撃たれてなかったらあんたが死ぬ事になって玲生の暴走を止められなかった。それを止めるためだったんだよ・・・・・。」
「けど!!!!!李麻が死んだら彼方が・・・・・」
「俺だって止めたさ!!!!!!!!」
「・・・・・彼方・・・・・・。」

蜜柑の言葉に彼方は声を張り上げる。その姿を見た事のない棗達は目を見開き驚いていたが、日下は悲しそうに見つめるだけだった。

「俺だって止めたんだ!!李麻が傷つくことなんて無いって!!玲生を止めたいなら他の方法も在るんだって言った!!!最後の最後まで思い止まるように、傷つかなくて良いように・・・・何度も何度も言ったんだ!!!!・・・けどあいつは李麻は・・・聞かなかった・・・。自分が死ぬ事も、それで俺たちが悲しむのも知っていたのに・・・・最期まで笑ってたんだよ・・・・。覚悟はしてるって、勝手でごめんねって笑って言ったんだ・・・・・。」

これまで一度も涙を流さなかった彼方の瞳から少しずつ水滴がこぼれ落ちた。その彼方を庇うように日下が
前へと出る。

「俺たちの知っている事は全て話した。これ以上隠している事はない。」
「・・・・分かったよ。・・・ところでこれから君たちはどうするんだ?Zに戻るわけにも行かないだろうし。良かったら学園に入らないか?一応アリス保持者は学園で保護する決まりになっているから、入学は歓迎するよ。」

日下は鳴海の言葉に少し目を伏せるが、すぐ顔を上げにかっと笑った。

「いや、勝手だけど俺はここに留まる気はないし、元々Zだった俺が入るのもなんか気が引けるしな。」
「・・・・俺も入らないよ・・・・。」

二人はそう言うと未だ直されていなかった割られた窓から飛び降り、森の中へと消えていった。

残された蜜柑は悲しげな顔を見せたが、棗が手を握りしめる力を強めた事が分かると微笑んだ顔を棗に向けた。


真っ黒な空間に『彼』は満足そうな笑みを浮かべていた。

「ご苦労だったな。」

ドアが開き玲生が入ってくると、労りの言葉を投げかける。玲生が悔しそうに顔を歪ませるのが『彼』には分かった。

「・・・・俺は・・・・間違っていたのでしょうか・・・・・。」

玲生の言葉の意味を正しく理解した『彼』は、浮かべていた笑みを更に深めた。

「間違っていた、と言ったらお前は正しい道を歩めるのか?」

部屋に流れる空気が揺れ、玲生が顔を上げる。

「正しい、と言ったらお前は満足するのか?」
「・・・・いえ・・・・。」
「つまりはそうゆう事だ。この世における全ての事は正しくもあり間違ってもいる。だが、それをどう解釈するのかは人の意思にゆだねられている。お前は自分の行いを後悔するのか?」
「・・・いえ。全て自分で決めた道ですから。」

『彼』は頷くと、持っていた資料を玲生に投げ渡す。

「次の任務だ。期待しているぞ。」
「はい。」

了承の返事だけを返すと、玲生は部屋を出て行く。

「彼方の処分を頼むぞ。」

再び一人になった『彼』が独り言のように呟くと、部屋にあった気配が動くのを感じた。それにまた笑みを深めると静寂した時間を『彼』はまどろみ始めた。


つづく


次回が最終話です。
出来るだけ速く書きたいと思います。


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