二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
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- 【二次創作】泡沫【短編集】(リクエスト募集)
- 日時: 2013/04/28 20:26
- 名前: 雲雀 (ID: Ma3wYmlW)
ご訪問ありがとうございます。
初めまして、雲雀といいます。
ここでは作者の嗜好を中心に、二次小説を書かせていただきます。
同人や乙女ゲームに免疫のない方および苦手な方はご遠慮ください。
また年齢制限があるようなものはカキコのルール上、認められていないので書きません。
18歳未満の方も安心して読んでください。作者自身も18歳未満です。というか、そもそも書けません。
作者の文章能力は他の人と比較して著しく欠落しています。
作品のイメージが損なわれる場合も御座いますので、そのあたりのことは自分で判断してくだい。
たまに創作物やオトメイト作品以外の物も書いたりします。
以上のことをご理解の上でご覧ください。楽しんでいただければ、幸いです。
■取り扱い
【オトメイト】
◇緋色の欠片 ◆薄桜鬼 ◇夏空のモノローグ ◆ワンドオブフォーチュン ◇二世の契り
◆翡翠の雫 ◇蒼黒の楔 ◆ヒイロノカケラ ◇神なる君と ◆AMNESIA
◇猛獣使いと王子様 ◆華鬼 ◇DIABOLIK LOVERS -ディアボリックラヴァーズ-
【ジャンプ】
◇家庭教師ヒットマンREBОRN! ◆D.Gray-man ◇黒子のバスケ
◆magico ◇テガミバチ ◆めだかボックス
【Gファンタジー】
◇君と僕。 ◆Pandora Hearts ◇黒執事
◆デュラララ!! ◇キューティクル探偵因幡
【LaLa】
◇夏目友人帳 ◆ヴァンパイア騎士 ◇狼陛下の花嫁
◆おいらんガール ◇サクラの秘事
【その他】
◇ボーカロイド ◆靴下にゃんこ ◇Sentimental Circus
◆FINAL FANTASY ◇THE LAST STORY ◆イナズマイレブン
◇カゲロウプロジェクト ◆終焉ノ栞プロジェクト ◇創作物
■お客様
◇マッカナポスト ◆亜瑠都様 ◇ツン萌え ◆蟻様 ◇亜鶴様 ◆カノン様 ◇素海龍様 ◆苗字様
■いちまんきかく
10000hit Thanks >>208
◇素海龍様 家庭教師ヒットマンリボーン/ヴァリアー 【くるくるまわる/ヴァリアー】 >>211
◆苗字様 夏目友人帳
参照が10000を超えたので、そのお礼です。
忘れ去られているとは思いますが、かならず書きます。
■更新履歴
<緋色の欠片>
【その声に。/祐一×珠紀】 >>1
【二人の彼】 >>34 【触れた指先/祐一×珠紀】 >>73
【記憶に残る花はあまりにも鮮やかで/真弘×珠紀】 >>81(一部) >>82(二部)
【想うことが罪だとしても/ゲントウカ×玉依姫】 >>146 【記憶の果て/祐一×珠紀】 >>158
【守りたい人/慎司×珠紀】
ACT1【分かたれた結末を想う。】 >>180
ACT2【独白】 >>181
ACT3【夕暮れに消える。】 >>187
ACT4【愛してるに耳を塞ぐ。】 >>201
ACT5【木漏れ日の記憶。】 >>203
<蒼黒の楔>
【花火】 >>13 【傍に、と消える声/拓磨×珠紀】 >>46 【花ノ香ノ/拓磨の頁】 >>70
【刹那ノ蒼/祐一の頁】 >>71 【羽休メノ刻/真弘の頁】 >>79 【褪メユク残香/卓の頁】 >>90
【春ノ呼声/慎司の頁】 >>102 【灰色ノ空/遼の頁】 >>153
<ヒイロノカケラ>
【あなたしか見えない/怜×沙弥】 >>39
<薄桜鬼>
【永久の軌跡/総司×千鶴】 >>6 【巡りゆく桜の記憶/総司×千鶴】 >>111
<ワンドオブフォーチュン>
【今日の永遠/エスト×ルル】 >>47
<夏空のモノローグ>
【いつかが終わるその日まで/葵&陽&涼太】 >>60 【気づいてしまった。/涼太×葵】 >>68
<神なる君と>
【それはもう過去のこと。/鳴海×咲耶】 >>67
<DIABOLIK LOVERS -ディアボリックラヴァーズ->
【堕ちる瞬間】 >>156
<家庭教師ヒットマンREBОRN!>
【雲雀家四人兄弟/アラウディ&風(大人ver)&雲雀恭弥(10年後)&雲雀恭弥(10年前)】 >>9
【好きを憧れで捩じ伏せる。/ベルフェゴール&フラン】 >>186
【くるくるまわる。/ヴァリアー】 >>211
<黒子のバスケ>
【甘いお菓子には変わらない/黒子&木吉】 >>59
<めだかボックス>
【気まぐれな世界の終わり/善吉&禊】 >>177
<君と僕。>
【その言葉に救われる。/悠太&祐希】 >>57 【17回目のハロウィン/悠太&祐希&要&春】 >>61
【桜日和/浅羽story&塚原story&松岡story】 >>152
<Pandora Hearts>
【終わりに重ねる掌】 >>131
<キューティクル探偵因幡>
【その声をどうか。/圭&遥】 >>27 【はじめまして、と笑う。/圭&遥】 >>213
<蛍火の杜へ>
【いつまでも。/ギン×蛍】 >>147
<ヴァンパイア騎士>
【ただあなたの幸せを。/零×優姫】 >>105 【黒ノ独白/零×優姫】 >>121 【二度と帰れない場所/零×優姫】 >>126
【面影−オモカゲ−/枢×優姫】 >>136 【虚像/枢×優姫】 >>160
<FINAL FANTASY>
【架かる虹の麓へ】 >>124
<カゲロウプロジェクト>
【あの日、いつか。/シンタローとコノハ】 >>199 【この世界に、今。/シンタローとコノハ】 >>200
【それでも、世界。/クロハ】 >>209 【伝えたいことがある。/シンタロー】 >>214
【延命プレリュード/シンタローとコノハ】 >>220【深海シンフォニー/シンタローとクロハ】 >>221
【さよならにキスをする。/シンタローとアヤノ】 >>222 【Please tell me my thought/シンタローとカノ】 >>224
◇しりーず
シンタローとコノハとクロハと遥が兄弟な話。
【朝に見る。】 >>223
<終焉ノ栞プロジェクト>
◇しりーず
【0と1のラブレター/A弥】 >>225 【届くことのないさよならを/C太】 >>226
【君が0になる前に/A弥】 >>231
<ボーカロイド>
【ロミオとシンデレラ/初音ミク】 >>2 【五月雨恋歌/初音ミク】 >>3 【秋風恋歌/巡音ルカ】 >>5 >>52
【暗い森のサーカス/初音ミク&鏡音リン&鏡音レン】 >>7
【人柱アリス/初音ミク&鏡音リン&鏡音レン&KAITО&MEIKО】 >>8 【月光と黒/KAITО】>>10
【鬼と娘/KAITО】 >>14 【大和撫子、咲き誇れ/初音ミク】 >>15 【夢の浮橋/巡音ルカ】 >>35
【からくりピエロ/初音ミク】>>45 【Trick and Treat/鏡音リン&鏡音レン】 >>62
【つきうさぎ/初音ミク】 >>63 【夢と葉桜/初音ミク】 >>125 【会いたい−Dear My Friend−/GUMI】 >>139
【右肩の蝶/鏡音リン&鏡音レン】 >>163 【背徳の記憶〜The Lost Memory〜/鏡音レン&KAITO&神威がくぽ】 >>164
<Sentimental Circus>
【いつかの温もり】 >>50 【幸福論】 >>166
<創作>
【微睡み/Short Story】 >>4 【譬えばそれを。】 >>18 【境界線】 >>38
【さよならの記憶】 >>42 【二度はないから】 >>51 【切ない優しさ】 >>53
【思慕/Short Story】 >>56 【一番星に消える】 >>58
【Disappearance】 >>64 【懺悔と後悔】 >>65 【謝罪と切望】 >>66 【夢物語—ユメモノガタリ—】 >>69
【瞬間センチメンタル】 >>72 【光と闇の狂想曲】 >>78 【螺旋の渇望】 >>80
【思慕の狂想曲—シボノラプソディー—】 >>140 【月下で踊る白うさぎ】 >>142
【鮮やかな黒と無色彩の真紅−Deal of black and crimson−】 >>144
【永遠の物語−Eternal story−】 >>145 【永遠の空白】 >>157 【瞬間/Short Story】 >>162
【薄紫の手紙】 >>171 【color】 >>191 【慟哭】 >>196
【アスタリスク】 >>202
<そーさく。>
【出鱈目セレクション】 >>204 【感情制御。】 >>207 【この思いが届くなら。】 >>210
■もう戻れないあの日々を、どうか。
01/あなたの傍にいられるだけで幸せ 【この思いが届くなら。】 >>210
02/口づけだけで満たされる想い 【二度と帰れない場所/零×優姫】 >>126
03/幸せになろうね 【記憶に残る花はあまりにも鮮やかで/真弘×珠紀】 >>81(一部) >>82(二部)
04/どうかあなただけはそのままで 【ただあなたの幸せを。/零×優姫】 >>105
05/あなたと過ごした日々 【いつまでも。/ギン×蛍】 >>147
06/触れ合った指先のぬくもり 【気づいてしまった。/涼太×葵】 >>68
07/追憶 【それはもう過去のこと。/鳴海×咲耶】 >>67
08/傍にいて 【その言葉に救われる。/悠太&祐希】 >>57
09/大切すぎて 【触れた指先/祐一×珠紀】 >>73
10/ずっと傍にいたから 【譬えばそれを。】 >>18
■求めたものが、あまりにも儚い存在だと知る願い
01/この瞬間が 【瞬間/Short Story】 >>162
02/今だけは 【二度はないから】 >>51
03/人というぬくもりに 【感情制御。】 >>207
04/君に会えるなら 【伝えたいことがある。】 >>214
05/静かに眠る夜 【いつかの温もり】 >>50
06/心地いい君と 【深海シンフォニー】 >>221
07/ごめんね 【謝罪と切望】 >>66
08/触れていたぬくもりが
09/痛みを抉る 【切ない優しさ】 >>53
10/もしも願いが叶うなら
■君におくる。
01/君が好きでくるしい。 >>215
02/君が嫌いすぎてわらえる。 >>216
03/君が幸せならそれでいい。 >>217
04/君が許せなくてつらい。 >>218
05/君がいてくれてうれしい。 >>219
自分で勝手につくりました。
途中からお話の中にいれるのを忘れてたので、まとめて書いておきました。興味があればどうそ。
もう戻れないあの日々を、どうか。 >>212
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- Re: 【二次創作】泡沫【短編集】 ( No.218 )
- 日時: 2013/01/21 19:33
- 名前: 雲雀 (ID: Ma3wYmlW)
◆君が許せなくてつらい。
「君になりたい」
そう言ったら、君は笑って、なら、君になりたい。と言った。
私になんかなっても意味ないよ。そう言ったら、なら、私になんかなっても意味ないよ。まったく同じ答えを、君はした。
違う、違うんだ。
確かに、君はとてもきれいで、優しくて、頭もいいし、運動もできる。
そんな人に、私もなってみたいけれど。でも、違うんだ。
「君になりたい……」
またそう言えば、どうしたの。と、笑ってくれる。
馬鹿みたいとか、無理だよとか、君は絶対に言わない。
優しいな。なんて思いながら、君の肩に頭をあずけた。
「君の一部に、なりたい」
素直に言えば、君はどうしてと言いたげに目を見開いた。
心臓の音が聞こえる。心地よくて、悲しくて、涙が出た。
「私なんて、いらなかった。私として、生まれたくなかった」
だって、どんなに願っても、ずっと君の傍にいることはできない。
どちらかが、先にいなくなってしまう。それなら、初めから。
「君の一部として、生まれたかった……」
一番傍で、君の生きてる音を聞いて。
君の命が尽きるとき、私も命尽きたかった。
優しく頬を撫でられて、君を見上げれば、君は優しく笑っていた。
「私は、ふたりでよかったって、思ってるよ」
こうして、君に会えるから。
ふんわりと笑う、君。
切なくて、寂しくて、苦しくて、何よりも、好き。
(でも、)
(それでも私は)
■後書き
こうして、生まれてしまったのなら。
これにいたっては何がしたかったのかわかりません。
本当にすみませんでした。
- Re: 【二次創作】泡沫【短編集】 ( No.219 )
- 日時: 2013/01/21 19:32
- 名前: 雲雀 (ID: Ma3wYmlW)
◇君がいてくれてうれしい。
大人に言われたことだけをやって、眠る。
それはなんて、つまらないことなんだろう。
これがしたい、あれをやってみたい。そんな思いも全て、捩じ伏せられて、将来のためと、そう言われる。
それなら、それらを押しつけられて、それらに押しつぶされて、いなくなっていった子供たちは、なんだと言うのだろう。
「つまんないなら、変えてみようか」
君がそう言って、悪戯っぽく笑った。
その言葉に返す言葉なんて、一つしかない。
「やるなら、派手にね」
つまりは、ОK。
さぁ、大人がつくったこの世界、壊しにいこうか。
感謝してることだって、あるんだよ?
玩具をつくってくれたり、間違いを正してくれたり。
勉強も、運動も、俺らのために言ってくれてるんだよね。
でもさ、間違いだらけの俺たちには、正しすぎるダウンロードはいらないんだ。
あなたたちの作品には、なりたくない。
正しくなくてもいい。自分らしくいられるなら。
今日もまた、大人がつくったルールを破って、そして笑う。
つまらない常識の中になんて、いたくないんだ。
「ほら、行こう」
君が手を差し出してくれる。
笑って手をとれば、そのままいっきに走り出す。
いい子になんてなれないよ。
だってまだ、子供でいたいから。
(このまま大人になんて、)
(なれるはずない。)
■後書き
理屈じゃない、何かをちょうだい。
我儘だって思うけど、まだ子供でいたい。
本当は、ずっと子供でいたいです。
- Re: 【二次創作】泡沫【短編集】 ( No.220 )
- 日時: 2013/01/21 19:31
- 名前: 雲雀 (ID: Ma3wYmlW)
◆延命プレリュード
人は、心のどこかでかならず、きっとこの日々は明日も続いていくだろうと、勝手に思っている。
『永遠』——その圧倒的質量をもつ、言葉。その意味を、その存在を、心から信じている奴なんて、いったいこの世界に何人いるだろう。
いつか、終わる。それは誰もが知っていることで、そして、誰もが知らないひとつの真実。
あたりまえのような、非現実。
——甘ったれた思考に、吐き気がした。
気づこうが、気づかなかろうが、いつか来ることに変わりはない。
そうやって、今日もまた。
そんな思考に、蓋をした。
「初めまして、九ノ瀬遥です」
ありきたりな自己紹介とともに、目の前の彼は柔らかく笑った。
その笑顔に、目を見開く。
無表情だったときには、気づきもしなかった、のに。
——笑ったときの顔が、酷く、あの人に似ていた。
「あ、し、シンタロー、です」
コミ障全開の挨拶をぶちかましつつ、その人を上目に見る。
高い背に、白い髪。赤い目と、右頬にある同色のマーク。
俺の知る、あの人の姿ではなかった。
でも、笑顔だけは、何故か。
「初め……」
そこまで言いかけて、口を閉じる。
言えなかった。
それを言ってしまったら、認めてしまうことになる気がしたから。
「シンタロー……?」
「え、あ、いや、あの……っ」
不思議そうに首を傾げる彼に、何か言わなくてはと口を開くが、何一つ、意味をもった声が出てこなかった。
その代わり、なんの意味もない言い訳だけが頭を巡る。
別にあの人と、特別仲が良かったわけじゃない。
けれど、大切に思っていた少女と、どこかよく似たあの人の笑顔は、何故だか酷く、安心した。
たった、それだけのこと。
そして、それだけのことの為に、気づいてしまった。
——俺だけが、生きている。
『永遠』——いつかの思考を思い出す。
本当の馬鹿は、俺だった。
勝手に、この日々はずっと続いていてくれるって、そう思い込んで、君の悲しみに気づかずに。
明日も、またあの二人に会いにいくんだろうなって、今度は何話すんだろうな、とか。
またいつもみたいに、あの人は笑ってるのかな、とか。
そして突然、崩れた。
なんの前触れもなく、少しの別れの声もなく。
君も、あいつも、あの人も、いなくなった。
「……っ」
認めてしまうことが、怖かった。
目の前にいるこの人に、よく似た笑顔のあの人が、あの笑顔が、もう。
『シンタローくん!』
——もう、この世界にはないということを。
「シンタロー……?」
再び名前を呼ばれて、はっとした。
なんでもない。そう言おうとして、その人の顔を見たことを、酷く後悔した。
容姿も、態度も、俺の名前の呼び方も、何もかも変わってしまったけれど。
それでも、気遣うような、優しいあの笑顔だけは、
「大丈夫?」
——あの頃と、何一つ変わっていはしないんだ。
(その事実が、余計苦しい。)
(あなただと、確かめる術もないのに。)
■後書き
どうしても、あなたと重ねてしまうから。
私の中だと、シンタローと貴音、そして、文乃ちゃんと遥くん。この組み合わせが、所謂『似た者同士』なんじゃないかと思っています。
だからシンタローは、どことなく文乃ちゃんに似ている遥くんに懐いていたんじゃないかと、そう思ったら書いてしまいました。
そしてシンタローくらいの頭なら、ケンジロウ先生に何かされてない限りは遥くんのことを覚えていて、コノハの笑顔を見たりしたら、思い出すんじゃないかな……と。
四人が仲良かったとすると、シンタローは一人だけ取り残されてることになるんですよね。
長々と、すみませんでした。
- Re: 【二次創作】泡沫【短編集】 ( No.221 )
- 日時: 2013/01/21 21:02
- 名前: 雲雀 (ID: Ma3wYmlW)
◇深海シンフォニー
息をすることを、忘れてしまいたい。
たったそれだけの行為を覚えているがために、人は生きている。
たったそれだけの行為を忘れたがために、人は死んでいく。
まだ『遥』として生きていた頃の俺は、いつその行為を忘れてもおかしくないほど、弱く、そして脆かった。
今となっては、あの頃の俺が少し羨ましい。
生きたくても、生きられない。
死にたくても、死ねない。
くだらない、無いものねだり。
結局、俺は何一つとして、あの頃から変わってはいない。
願いが逆さになっただけ。
届かないことに、変わりはない。
「息をすることを、忘れたい」
ぐるぐるとまわる、持て余すだけの思いを吐き出せば、隣にいたシンタローが驚いたようにこちらを見た。
どこか悲しげな目と視線が合う。
何かを言おうとして口を開いたが、結局何も言わず、シンタローは目を逸らしてから。
「馬鹿かよ……」
吐き捨てるようにそう言って、またケータイを弄りだした。
『天才』だった頃のこいつに比べれば、かなり丸くなったと思う。
他人を拒絶するような雰囲気もなくなって、随分と人間らしくなった。
あの頃の冷たい目をした少年は、どこへ行ってしまったのかと思うくらい。
ただやはり変わっていないと思うのは、冷静すぎて冷酷ともとれる判断。
たとえどんなに慌てようが、泣きそうになろうが、こいつの判断はずれることがない。
悲しいくらい正しくて、泣きたくなるくらい残酷な、判断。
それを今、現在進行形で、俺が痛感している。
「誰が馬鹿なんだ?」
「は?え、ちょ、」
座っていたソファーに、シンタローの手を押しつけるようにして見下ろす。
さっきの声が気に障ったわけでもないが、少しだけ、確認したいことがあった。
「離せ、よ……!」
手の拘束をほどこうともがくが、さすがはヒキニート。
2年間で培われた人並み以下の力では、押さえつけられていない指先を動かすだけで精一杯だった。
「……この細い首を絞めたら、お前のその声も、出なくなるんだな」
つ、と、シンタローの首筋をなぞる。
その瞬間、全ての抵抗が止んで、代わりにあの頃の冷たい目でも、こいつがいつもする怯えたような目でもない。
ただただ悲しげな、虚無の目が俺を見た。
「お前は、息の仕方を、呼吸を、忘れるんだな……」
そう言って、シンタローの胸に耳を押しつける。
とくん、とくん、と、早くも遅くもない、こいつの生きている音が聞こえた。
その音に、無性に泣きたくなる。
「本当に馬鹿だな……お前」
吐息とともに聞こえた、声。
その声を頼りにシンタローの方を見れば、彼は泣き笑いのような顔をしていた。
「いつか……終われるよ」
胸に焼きついたどうしようもないくらいの思いのままに、目の前の彼を抱きしめた。
いつか、終わる。
そのときにも、こうしてお前を抱きしめられらたいいのに。
叶わないのなら、いっそこのまま溺れてしまいたい。
(沈んで、沈んで、)
(いっそ、君と息を忘れたい。)
■後書き
君がいない世界で、生きていたくないから。
シンタローもクロハも、この世界が大嫌いなんじゃないかな。と、思いながら書きました。
精神的にきてるふたりになってしまった……御免なさい。
- Re: 【二次創作】泡沫【短編集】 ( No.222 )
- 日時: 2013/02/03 14:40
- 名前: 雲雀 (ID: Ma3wYmlW)
【さよならにキスをする。】
「ばいばいシンタロー、また明日!」
靴を鳴らしながらそう言えば、また明日。と、素っ気ない声が返ってくる。
このやりとりは、もう何回もしてきた。
こんなことをしなくても、明日はやってくるし、シンタローにも会えるだろう。
でも、私にとってこのやりとりは、とても大切なものだった。
何もかも不確かな明日というものの中で、たった一つだけ、シンタローのまた明日。という言葉だけ、それだけは信じられた。
だから私は、今日も嘘をつく。
——さよなら。そう伝えようと思ったことは、何度もあった。
また明日は、また明日も会おうね。ということで、でもさよならは、違うから。
私の中で、明日というものが信じられなくなってしまったときは、ちゃんと伝えようって、そう決めていたのに。
シンタローがまた明日って言う度に、また明日も会えたらって、そう思ってしまうから。
だから、ずっと言えないまま。
二人分の足音を聞きながら、もうそろそろかな。と思い、顔を上げる。
今日こそは、伝えないと。君の前で、笑っていられるうちに。
シンタロー。そう呼ぼうとしたら、不意にシンタローがこちらを振り向いた。
「またな、文乃」
そう言って、ふわりと笑う、彼。
言えない。
言えるわけ、ない。
さよなら、なんて。
「——またね、シンタロー」
こんなに、大好きなのに。
(そして私は、)
(初めて嘘をついた。)
■後書き
言えるはず、ないよ。
あえてどんな痛みなのかは書かず、シンプルにまとめました。
「絶園のテンペスト」のОPから、歌詞を使わせていただいております。
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