二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
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- 炎神暴君★リシタニア2-銀魂×戦国BASARA3×青エク-
- 日時: 2012/08/09 21:43
- 名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: GlvB0uzl)
この物語は、
銀魂の世界で起こった奇妙なコラボ作品であり、
温かくて冷たい——駄作である。
と、言う訳で意味深長な言葉から始まりましたが!!
お久しぶりです。ここで書くのは5カ月ぶりです、山下愁です!!
皆様、覚えていらっしゃいますでしょうか。炎神暴君★リシタニアを!!
そうですそうです。山下愁による突拍子もないあの駄作です。しかも銀魂と戦国BASARAのコラボと言う異様な小説です。
なんと、そのコラボ作品がついに新しく変わって参上します!!
新たに加わるのは。
オリジナル×銀魂×戦国BASARA×青のエクソシスト(NEW)です。
お分かりいただけるだろうか。あの神作とコラボです!!
と言う訳で、早速注意。
その1……山下愁の超駄作。原作を汚しまくってます。原作を汚すなと言う方は、即バックをお願いします。
その2……原作のキャラ、完全に崩壊します。
その3……ストーリーも破たんします。ゴメンなさい。
その4……オリジナルキャラが出現します。というか主人公はオリジナルです。
その5……新たに加わる可能性高いです。
その6……亀更新です。兼用してます。
以上です!!
では、あなたの心に残るような小説を書ける事を願って。
お客様(Thank You)
柚莉様
目次
序章『なんやかんやで再スタート!!』
>>03 >>04 >>05
第1章『最初が肝心とか言うけど大体踏み外す』
>>6 >>11 >>12 >>13 >>14
第2章『レズとか剣とか男の娘とか』(柳生編スタート!!)
>>15 >>16 >>17 >>20 >>21 >>22 >>23
第3章『幽霊は本当には出ないから安心して』(スタンド編スタート!)
>>24 >>25 >>28 >>29 >>32 >>33 >>34 >>35
第4章『こたつの魔術は偉大である』(あの面倒くさがりになってしまうコタツ編)
>>36 >>37 >>38
第5章『一夜の夢は遊女の町にて開かれる』(吉原炎上編スタート!)
- Re: 炎神暴君★リシタニア2-銀魂×戦国BASARA3×青エク- ( No.47 )
- 日時: 2012/10/25 22:59
- 名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: GlvB0uzl)
第5章 一夜の夢は遊女の町にて開かれる
若干傷ついた体を何とか回復させて、全員して建物の内部へと入る。
数々の畳、そして襖を吹っ飛ばして廊下を突っ切り、たどり着いた場所は巨大なホールのような場所だった。
部屋の中央には、夜兎を象徴するのであろう兎の銅像と、そして————
「……ぎん、」
坂田銀時。翔の主の、無残な姿。
彼の前にいたのは、老人の割にムキムキな筋肉を持つ男。夜王・鳳仙。
息が止まるかと思った。
砂埃が舞う中に見えた銀時の足。それは完璧に壁にめり込まれ、そしてだらりと力なく垂れていた。まるでそう——絶命しているような。
晴太が欄干に手をかけて、銀時の名前を叫んでいるのが聞こえてきた。が、今の翔はそれどころじゃない。
「おいおい、銀時がやられ————翔?」
政宗が振り向いたそこには、すでに翔の姿は見えなかった。
翔は床を踏みぬく勢いで蹴り、宙を舞う。砂埃を吹き飛ばしながら、下の床へ着地を果たした。
鳳仙と、神楽の兄である神威の視線が翔へと注がれる。
「フン。新たな相手か。夜王、鳳仙の前に破れるが——」
「黙れ小物め」
その声は、明らかに殺気を帯びていた。
鳳仙の瞳が大きく見開かれる。夜兎を小物呼ばわりされた事が納得いかないのだろう。
「戦闘民族、夜兎であっても、俺の前では人間どもと何ら変わらない。息を吸い、飯を食い、動き、眠る生物だ。その中で戦うだけに特化しただけの人種が、神の俺に勝てるとでも思うか?」
翔は背中のホルダーから、炎神を引き抜いた。
誓っているのだ。主はどんな事があっても死なせない。主である坂田銀時だけは守ると。
だが、その誓いすらもはや役には立たないだろう。何故なら、何故なら主は。坂田銀時は。
「……まだ気絶してるだけだ。勝手に殺すな」
あ、ハイすみませんそうですね。原作をちゃんと読んできます。ハイ。
翔は2階にいる晴太と日輪、そして戦国武将とエクソシスト諸君と空華を指差した。
「晴太。日輪を連れて、そいつらと一緒に逃げろ。空華、武将ども、エクソシスト、晴太を守れ」
「待て。それなら銀時は——翔はどうするのだ」
孫市が納得いかないとでも言うかのように、口を挟んできた。
翔はにやりと笑うと、
「こいつをちょっとブッ殺さないといけないからさ♪」
などと言った。その顔には完璧な笑顔が張りつけられていた。
その意味を(長年の勘で)悟った武将どもは、「あぁハイ」と頷いた。もちろん空華も同じである。何が何だか分かっていない勝呂は、とりあえず佐助に質問をした。
「何で頷いてんねん。それでええんか?」
「大丈夫だって。翔がああいう時は、命令に従っておいた方がいいからさ」
佐助はケタケタと笑いながら、日輪に手を貸していた。風魔が晴太を背負い、その場から駆けだす。
最後に残った政宗と幸村が、翔へと言った。
「大丈夫でござる、翔殿! 某達の事は心配せず、思い切り暴れるがいいぞ!」
「あぁ。こっちの事は心配すんな! 思い切りやってこい!」
2人の言葉に、翔は無言で返した。だけど、サムズアップで答える。
そして2人は、空華達の後へと続いた。
***** ***** *****
ここは、どこだ?
銀時は暗闇の中にいた。あぁ、鳳仙にやられてしまったんだな、とか考えてみる。
翔が生き返らせてくれるだろうな、とか甘い考えは、不思議な事に浮かばなかった。
前に聞いた事があったのだ。「もし自分が死んだら生き返らせてくれるのか?」と。翔はその質問に堂々とした様子で答えた。
「無理」
何故なら、人間であれば死は免れないからである。たとえそれが主と慕う銀時であっても、死んでしまった場合は翔は生き返らせる事はできない。
「だけど、それを避ける為に俺は銀時を守るって決めた」
その瞳は真剣そのもので、自分を真っ直ぐに貫いていた。
「あら、銀さん。こんなところで何をしているの?」
「……鎖姫?」
「夢亜よ。……死んではいないようね。気絶しているだけ? ならすぐに帰った方がいいわ。ここは、貴方が来るところじゃないの」
「でも、帰り方が分からねぇんだよ」
「それなら私が案内してあげる。ついて来て。こっちに。大丈夫。怖くない。光の方へ歩いていけば絶対につく。でも、何があっても後ろを振り返っちゃダメだよ。絶対に、何があっても」
***** ***** *****
自警団『百華』の連中を三成が峰討ちで蹴散らしつつ、出口を目指す。
だけどどこからわいて出てくるのか、百華は一向に減らない。どうしてだろうか?
「何? 分身の術でも使える訳? 佐助君どうなの」
「え、いや、俺様は使えるけど……一体どうしたの空華」
空華は何もかもに絶望したような表情でため息をついた。
ルアとの戦いで、空華は体力を消耗している。その表情には疲れが浮かんでいた。もうどうにかして休みたいものである。
「やだよもう、動きたくないよ。みんなでやってよ、頼むよ」
「が、頑張ろうよ! ね、空華さん!」
しえみが元気づけるように空華へ笑顔で言った。
いや、それでも目の前から押し寄せてくる大量の百華を片付けろと言われたら、そりゃ無理に決まっている。
その時だ。
「桜花乱舞!!」
「闇解(アンカイ)!!」
黒と赤が、百華を吹っ飛ばした。
襖を踏みつけて廊下へ躍り出てきたのは、銀髪の少女と茶髪の少年である。
椎名昴と篠宮優奈。
真選組の1番隊副隊長と、最強戦闘傭兵民族・夜叉の生き残り。
「管制室ってのに行くと、いいらしいでさ」
後ろには、いつの間にか春夜と希実がいた。春夜はヘラリと笑うと、
「だから、行ってくだせぇ。ここは俺らが引きつけるんで」
「お前ら……でも、どうして」
「どうしてもこうしてもないよ」
それに答えたのは、昴だった。
「翔が頑張っているのに、俺らだけのうのうと帰る訳にもいかないでしょうが。だからせめて、その子供に協力しようと思ってね」
肩越しに振り返り、にっこりと笑う。副隊長のくせに、局長クラスの背中のでかさを持つ男である。
風魔は晴太を無言で下ろした。ポン、と肩を叩き、口元に笑みを浮かべる。
彼は言っている。行ってこいと。
「……母ちゃん」
晴太は日輪に言った。
「帰ってきたら、思い切り甘えさせてくれよな」
「……晴太」
晴太は百華の間をすり抜けて、2階へつながる階段へと駆けよった。
そこには、2人の人影があった。
新八と神楽。万事屋の従業員である。
「マザコン野郎。準備はできたアルか?」
相変わらずの毒舌で、神楽は言う。腕は折れているのか包帯に巻かれていた。
「さぁ、行きましょう。太陽を救いに!」
「あぁ!!」
- Re: 炎神暴君★リシタニア2-銀魂×戦国BASARA3×青エク- ( No.48 )
- 日時: 2012/10/29 23:28
- 名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: GlvB0uzl)
「上がっているじゃねぇか……太陽なら、ここにたくさん」
ゆらりと、銀時が立ち上がる。
額から、全身から血を流しているのにもかかわらず、彼は立ちあがって、皮肉に笑ってこう言った。
「眩しくて寝れやしねぇ」
翔はほっと安堵の息をついた。そしてそのまま流れるような動作で、片膝をつき銀時へ言う。
「それでこそ、俺の主だ」
銀時はそれに応えるように、笑った。
第5章 一夜の夢は遊女の町にて開かれる
鳳仙は何度も彼らを叩きつぶそうと、その巨大な傘を振るった。
しかし、彼らは何度でも立ち上がる。不屈の精神で、その瞳に光を宿して自分を睨みつけ、ボロボロに傷ついても立ち上がる。
「——地獄業火、獄炎乱舞!!」
翔は赤く輝いた炎の刃を、鳳仙へ向かって振り下ろした。
鳳仙は地獄の業火をまとった刃を受け止め、弾き返す。その事も見越してなのか、翔は鳳仙の顔面へ蹴りを叩きいれた。
「ま、こんな事で! 倒れるとは思っちゃいねぇよ!!」
「ほざけ!」
鳳仙は横へ薙ぐようにして、翔の脇腹へ番傘を叩きつけた。
めりめりとわき腹に傘がめり込み、翔の口から血が漏れる。そのまま細い体は、横へ吹っ飛ばされて壁に激突した。
だが、銀時は翔がそんな事になっても気にしなかった。真剣を鳳仙へと振り上げるが、素手で叩き折られてしまう。
「何をそんなに、貴様らを動かすのだ!」
「知ったこっちゃねぇよ」
鳳仙の上から声がかかる。
ふと視線を上に向けると、崩れかかった兎の銅像に、翔が座っていた。傷1つないきれいな姿で、きょとんとした表情を鳳仙へ向けている。
「あれ? 意外だね、驚かないんだ」
「フン。死神をいくら傷つけても死なないのは分かっておるわ」
「学習能力があるようで、俺は安心したよ」
炎神を担ぎ、翔は飛び降りる。
鳳仙はハッとした。翔に気を取られて、こちらの方がおろそかになっていた。
いつの間にか、目の前には銀時が木刀を構えて、こちらに走って来ていた。反応した時にはもうすでに時遅し。
銀時は渾身の力で、木刀を鳳仙の顔面へ叩きつけた。
「うごぉぉぉぉおおお!!」
獣の如く咆哮を上げて、銀時は猛攻を鳳仙へ仕掛ける。
鳳仙を圧倒する速さで、力で、叩きつける、叩きつける、叩きつける!!
これでお終いだとでも言うかのように、銀時は木刀の先端を鳳仙のわき腹に突き刺した。血は出なかった。
何故か? 鳳仙が木刀の刀身を、寸前で押さえこんでいたからだ。
「甘いわ!」
「テメェがだ!!」
翔は炎神を振り上げ、鈍く輝く刃で鳳仙の肩を斬りつける。ブシッ! と血が吹き出したのは言うまでもない。
ふらりと、鳳仙の体が揺らいだ。後ろの壁に寄りかかるようにして、鳳仙は動かなくなる。
その時、誰もが声を上げた。
「夜の王、鳳仙を倒した!」「やった!」「これで吉原は救われる!!」
「いや、まだだ!」
死神だからこそ。人の生死が分かる翔だからこそ言える事。傍に呆然として立っていた銀時の襟首を掴み、そして月詠を脇に抱えて翔は飛び上がった。
がれきが雨のように散乱する。
砂埃を上げて鳳仙が立ちあがった。満身創痍であるのにもかかわらず、彼の体はまだ地に足をつけていた。
「ふは、ふははははは!! これで倒した気になるなよ、人間ども! この夜王の闇は、永遠に拭いきれぬわ!」
「くそ、このまま勝てな————」
翔はふと、視線を上げた。銀時と月詠から手を放し、天井を見上げる。
ギギ、という音を聞いた。
なるほどな、と口の中でつぶやき、翔はにやりと笑みを浮かべる。それに————
「もう視えた」
「フン、か細き炎如きが、一体何をするというのだ。ろうそくの火がどんなに集まろうと、この夜は照らせぬ。照らせぬのだ!」
「そうでもねぇよ」
鳳仙の言葉を否定したのは、銀時だった。ポンと翔の頭に手を置き、乱暴になでつける。
翔はその大きな手を振り払い、炎神を構えた。銀時もその隣で、木刀を構える。
それに申し合わせたかのように、
吉原を覆っていた常世の闇が、
一瞬で晴れた。
天井が裂けたのだ。今まで夜を演じていた無骨な天井が、一瞬で開いた。垣間見えた隙間から漏れる太陽の光が、吉原を照らす。
もちろん、この屋敷だって同様だ。
そして————夜兎族は、陽の光を嫌う性質がある。
「俺は炎を操る死神だ。確かにテメェらとは違うな——だが、銀時達を馬鹿にするなよ。ろうそくの火があれば、どんな闇でも照らす事はできる。たとえそこが、常世の闇でも!」
体力ももう限界に近い。
分かっている。だが、どうしてもやらなければならないのだ。やらなければならないのだ!
翔は炎神に、今出せるありったけの体力を注ぎ込んだ。それに呼応して、炎が膨れ上がる。銀時が木刀を構えるのを視界の端で捕らえ、翔は走り出した。
激痛が足に負荷をかける。傷を回復させまくったので体力も残っていない。膝ががくりと落ちそうになるが、それでも前へ進む。
「翔ちゃん、行け!」
昴が百華の軍勢を蹴散らしながら、
「翔、やれ! やらないと殺す!!」
空華は百華の女性を傷つけないように気絶させながら、
「行けるさ! 頑張れ、2人とも!!」
フープを振りまわしながら、優奈が言い、
「大丈夫です! 必ず勝てます!」
百華を蹴散らしながら、まるで祈るかのようにミウが告げ、
「皆さんならきっとやってくれるって信じてまさぁ」
バリアで何とか日輪を守りながら、春夜がつぶやき、
「……頑張れ」
ひそかに応援する希実がいて、
「「「行け! 銀さん! 翔!!!」」」
管制室を操りながら、神楽・新八・晴太は怒鳴った。
————夜王の鎖を!!
「「「「「焼き切れぇぇぇぇぇえええええええええええええええええええええええええええ!!!」」」」」
銀時は木刀を突き出した。
翔は炎神を叩きつけた。
夜王の体は吹っ飛ばされ、アーチを描いて瓦屋根に叩きつけられて止まった。
- Re: 炎神暴君★リシタニア2-銀魂×戦国BASARA3×青エク- ( No.49 )
- 日時: 2012/10/30 23:37
- 名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: GlvB0uzl)
夜王の闇はとても深く、人が手を出せるような闇ではない。
その闇の中を、夜王はただ1人で歩む事になる。
もう誰も、誰にも止められない。太陽も月もないこの深淵の闇の中をただ逝く——
「……やっと見せてあげられた」
太陽を背後にやってきたその女性。愛しき太陽を司る、常世の町の『太陽』。
日輪。
誰もが太陽と崇めた女が、自分に膝枕をしていたのだ。
「馬鹿な人……本当に、馬鹿な人」
その太陽が、自分の為に涙を流している。これ以上の事はない。
鳳仙は、ゆっくりと目を閉じた。
あぁ、太陽とは——本当に素晴らしいものなのだと。心からそう思いながら。
第5章 一夜の夢は遊女の町にて開かれる
あれから数日後。吉原は完全に太陽を取り戻した。
遊郭がなくなり、代わりにヘルス・ソープなどが増えた。もう風俗店街でいいじゃない。もう。
「……何だかなぁ」
翔は瓦屋根の上から、ぼんやりと空を眺めながらつぶやいた。
「何が不満なのさ?」
「いや、不満って言う訳じゃないんだよ。……これでよかったのかなって思ってさ。鳳仙がいたからこの吉原は統制が取れていた。だけど今や無法地帯。誰が守るのか分かったもんじゃない」
翔は黒い髪をいじりながら、つぶやく。
隣でごろりと寝転がっていた佐助は、「そうだね」と苦笑しながら答えた。
あれから、鳳仙は死んだ。太陽の光を浴びながら、穏やかな表情で逝った。確かにその様子を、死神である翔は見届けた。
「……これでよかったのかなとか思ってさ。鳳仙は幸せだったかな?」
「さぁね。だってあんなに穏やかな表情で死んでいるんだ、幸せだっただろうよ」
「投げやり。忍びってばいつもそんなような返答なのかしらね、奥様?」
「誰に向かって話をしている」
佐助は冷ややかなツッコミを入れつつ、翔を睨みつけた。
今度は翔が苦笑いを浮かべ、そっぽを向く。
「幸村はやっぱり鼻血出して倒れたか」
「遊女のお姉さんには敵わなかったようだね」
「逆に独眼竜はすごいね」
「そりゃ……多分一国の主だからじゃないかな? ナンパとかしそうだね」
賑やかな吉原の町を見下ろしつつ、翔と佐助は同時にため息をついた。
この町も対して変わらない。
明るくて、冷たくて、賑やかで、騒がしくて、笑顔も涙も何もかもがそろうこの町。歌舞伎町にそっくりである。
「……ほーんと、平和な町だ事」
「佐助達の戦国時代は平和じゃなかったみたいだな。戦ばかりやっていたんだろ。——俺も見た事あるからな」
ぼんやりと平和な町を見下ろしつつ、翔は記憶の奥底を探る。
今は靄がかかって何も思い出せないが、唯一思いだしたものがある。ルアに出会って思いだした。
攘夷戦争。
天人を排除しようと、侍達が立ち上がった——銀時も参加したあの大戦争。あれらを全て、思いだした。
「……うん。でも、平和な世の中を作らんとする為だったよ、戦は」
「今はこうして一国の主同士で馬鹿な事をやっているけどな。知ってるか? この前政宗は元親と一緒にパンチラを拝もうとしていたぜ」
ケタケタと楽しそうに笑いながら、翔が茶化す。
佐助は小声で「俺様の主じゃなくてよかったわー」とか言いながら、烏の羽を残してどこかへ消えた。
1人になった翔は、虚空へとつぶやく。
「どうだ、鳳仙。テメェが生きて、テメェが死んだ今の町だ」
『フン、実に騒がしい町だ』
翔の隣には、いつの間にか初老の男が腰かけていた。
鳳仙。吉原の支配者。
『だが、そこがいい』
「そうかい。鳳仙もそう言ってくれるとは、お墨付きだね」
ハハッと軽く笑い飛ばしながら、翔は言った。
あの時、鳳仙は確かに逝った。しかし、翔が魂をまだ現実につなぎ止めておいたのだ。かろうじて残っているという感じである。
『どうして小僧はワシをこの世にとどめようとする?』
「なぁに。実はな、テメェの死亡予定時刻は今日だった訳だ。あの時狂っていたみたいだな——すまん。完璧にこちらのミスだ」
『ハタ迷惑な神だ』
「俺もそう思った」
よっと、とジジイ臭い掛け声と共に、翔は立ち上がって鳳仙の首筋に炎神を当てた。
「最後に言いたい事はあるか?」
『ある訳なかろうて。——だが、1つだけ。年老い気づいた事がある。戦って戦って奪ってきた者の後ろには、何も残らないものなのだ』
「いや、案外そうでもねぇよ。人間」
鳳仙の体が徐々に薄れて行く。
翔はそんな鳳仙へと笑いかけた。胸へ手を当て、英国紳士もさながらの流麗なお辞儀を見せる。
「貴方の来世での幸せを、心よりお祈りいしております。——行ってらっしゃいませ、鳳仙」
フッとその姿が掻き消え、空へと上って行く。
確かに鳳仙は人を殺した。だけど、本当は年寄りのおじいちゃんなのだ。天寿を全うし、彼なりの人事を尽くした。
「翔、帰るぞ!」
下から銀時の声がかかる。
翔は炎神を収めて、瓦屋根から飛び降りた。
- Re: 炎神暴君★リシタニア2-銀魂×戦国BASARA3×青エク- ( No.50 )
- 日時: 2012/10/31 23:47
- 名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: GlvB0uzl)
また会ったな、読者のみなさん。
俺の名前を覚えているか? 東翔だ。いい加減覚えてくれ。
さて、今回は短いがここで終わりになる。ここまで読んでくれてありがとう、と言っておこう。
あ? 戦国武将とエクソシストども?
武将どもは万事屋で働いている。エクソシストどもはさすがに面倒見切れないから、真選組に引き取ってもらった。戦力的にも問題はない。雪男の奴は最後まで渋っていたが、結局は納得してくれた。
あそこなら3食寝床つきだしな!
しえみは雫のもとで働いている。しょっちゅう顔を出しに来るぜ、あいつら。昴じゃないんだから。
さて、前振りが長くなったようだが。
ここで最後の話と行こうか? 全員ついてこいよ。
最終章 人生何があるか分からない。
江戸の町は夏真っ盛りだった。
万事屋メンバーは市営プールの監視員のバイトをしていた。もちろん翔もいつもの死神スタイルではなく、黒いハーフパンツに首から赤い小さな鎌のネックレスを下げ、黒い髪をポニーテールにしている。
双眼鏡であちこちを眺めつつ、翔はため息をついた。
「子連ればっかじゃん」
面倒くさい……とつぶやきつつ、翔は再び監視を続ける。
そろそろ休憩時間のはずだ。主である銀時の方へ視線をやると、今まさに笛を吹こうとしているところだった。
ピリリリリリという笛の音が、ホールへと鳴り響く。
「ハーイ、10分休憩。そろそろ上がれ」
翔が双眼鏡を首に引っ掛け、プールで遊んでいた子供達へと声をかける。
何人かは素直にプールサイドへ上がってくれたが、悪ガキどもはそうはいかなかった。まだいいじゃん、などと言いつつ泳ぎを続行する。
この時、翔は強硬手段に出る事を許されていた。いや、水を蒸発させるのではなく。
「ハイハイ、上がろうな」
翔はプールに入って子供達を掴むと、ポイポイとプールサイドへ向かって放った。
そこには戦国武将どもがいて、次々に子供達をキャッチする。キャッチしなきゃ死ぬから。
「何するんだよー!」
「いいじゃんか!」
「遊ばせろよー!」
「死にたいなら——どうぞ?」
首に引っ掛けた鎌——炎神を元の大きさに戻し、翔はにっこりとした笑みを浮かべた。完璧に脅しである。
子供達は一瞬で黙った。当たり前である。殺されたくはない。
翔はポリポリと頭を掻くと、銀時へ報告すべく主の方へと視線を投げ——
「————ハァ?」
何故か、子供達が怯えたようにプールサイドの端で震えていた。何で?
見れば新八が全身紫色に染まり、ガタガタと痙攣を起こしている。銀時が心臓マッサージの最中だった。
あぁ、なるほど。恐怖を植え付ける事によって? 子供達を上げたんだ? ふーん。
「なるほどじゃねぇよ。佐助、風魔。殺してこい、俺が許可する」
「あれ? 主だ何だ言ってなかったっけ?」
「大丈夫だ。問題ない」
あいつが死ねば天国へ行かせればいいだけの話だ、と翔は心の中で思った。
佐助と風魔が銀時へ特攻し、吹っ飛ばしている姿を尻目に翔は政宗に声をかけた。
「大丈夫か? 監視員って言っても楽じゃないからな」
「まぁな。だがこういう仕事も楽しいもんだな」
政宗は口笛を吹きながら、女性集団がいる方面へ双眼鏡を向けていた。元親と共に。
翔はその双眼鏡を握りつぶしつつ、欠伸をする。翔の握力をもってすれば、双眼鏡を握りつぶすぐらい訳ない。
「何するんだ」
「何をしているんだ」
可愛い顔をしているくせに、翔は怖い。死神だから。
10分間がいつの間にか経過し、子供達に「入ってもいいぞ」と言うと、プールサイドからバシャバシャと飛び込んでいく。何故か紫色のプールに。
「……あぁ、新八が入ったんだな」
翔はすぐに悟った。
プールに入った新八の体が、下半分が普通の白へ戻っている。ペンキが落ちたのだろう。どうしてプール入れる。
「大体よ、この夏休みにこの市営プールに来る女なんざいい体してねぇよ? 体系が崩れている奴が多いもんだ」
「いや、そうでもねぇぞ」
元親が双眼鏡を見ながら言う。
翔が首を傾げると、スライダーの方に子供を連れた女の人が行くではないか。それも飛びきりの美女だ。
しかし、その顔に傷がなかったらの話だが。
「晴太と月詠じゃね?」
「嘘だろ、あんなにいい体しているのか」
後ろから鶴姫が「最低です」などと声を上げていた。
「ま、大方日輪が『プールに連れて行ってやって』って言ったんだろうな。しかし相手は遊女、常識が通じると思うなよ」
翔はため息をついた。
その瞬間、爆発音と悲鳴が同時に上がる。見ればなんと月詠がローションを塗りたくった体でスライダーを滑り、スキーの要領で水面を滑ったからだ。そこで受け身を取るところはさすが忍びである。
「……な?」
翔はにっこりとした笑みを浮かべた。政宗と元親は同時に視線をそらしたのだった。
- Re: 炎神暴君★リシタニア2-銀魂×戦国BASARA3×青エク- ( No.51 )
- 日時: 2012/11/01 22:52
- 名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: GlvB0uzl)
最終章 人生何があるか分からない。
で、プールに月詠・そして九衛兵・お妙が来たらしく、ますますプールはカオス状態へと陥った。結果、客は1人もいなくなり、ついに翔達だけとなってしまったのである。
翔はプールサイドからプールへと足を沈ませ、ぶらぶらと揺らしていた。
(にしてもなぁ……)
翔はぼんやりと思う。
この状況——どうしろって言うんだ? え?
この状況とは、至極簡単である。将軍様が遊びに来ておられるのだ。
「……いやいやいや。いやいやいやいや」
またか。またこいつか。またこいつはこの場所にやってきたのか。しかもこのカオス臭が半端ないこの場所に。
翔はため息をついた。
どうしてこの将軍様は、このような庶民派のところが好きなのでしょう? いや、庶民と触れ合うのはいいことなのだろうが、翔にとってはいい迷惑である。
「まぁ、武将達が何とかフォローしてくれるかな」
適当な事を考えて、翔はごろりとプールサイドに寝転がった。
その時、銀時の声がプールサイドまで響き渡る。
「ドキ☆ 侍だらけの水中騎馬戦大会ぃ〜!!」
そして口でドンドンパフパフなどと言う馬鹿げた声。
翔は飛び起きた。
水面に置かれたビニールボートの上に将軍様を乗せ、さらに困った事に人数が増えている。ひょろりと背の高い忍者の野郎と、青い髪を持った少年と少女、そしてさらには銀髪のナイスバディの少女に+普段は指名手配されているはずの侍。
翔は頭を抱えた。
どうしてこいつらがここにいる。
「テメェら、どうしてここにいるんだ!!」
「え? 楽しそうな場所だから来るでしょー。それに暑いし」
きょとんとした様子で、スカイが答えた。彼は最終兵器としての自覚があるのかないのか。
同じく雫と優奈が顔を見合わせて、「楽しそうだもんねー」と言う。あぁそう。もういいよ。
銀時は笑っていた。彼が何を考えているのか、手に取るように分かる。
奴はポロリを狙っているのだろう。水中の上でくんずほぐれつの女体——そして輝く双丘。これを狙っていたのか——と考えた翔は、情けなくて頭を抱えた。
さっそく準備に取りかかる——と動いた奴らが取った行動は、なんと、
「うわ」
翔は苦笑いを浮かべるしかなかった。
男子がゴムボートの上に乗り、女子が馬の役をしているのだ。あほか。さらに翔は頭を抱える。何でこうなった。
「翔殿! 銀時殿が楽しそうな遊びをしようとしているでござる!」
「テメェらは絶対に参加するなよ、いいな絶対だぞ? 参加したら天国へ召すからな」
首元にかかった炎神をちらつかせながら、翔は子犬のような表情でやってきた幸村を脅す。
純真幸村はきょとんとしたような表情で、「分かったでござる!」と頷いた。純粋で助かった。
「……銀時、どうしてこうなったのか説明をしてくれ」
「翔か……俺も何を言っているのかさっぱりでな……。もうカオス臭がするから帰りたくなってきたんだが、どうにかしてくれないか?」
どうにもならん。翔はそう答えてやりたかったが、何とかこらえた。
男達へと視線を巡らせ、翔はため息をつく。どうしてこいつらはエロい事を考えている顔をしているのだろうか。将軍も鼻血を垂らしているし。
「やっぱり水上騎馬戦は危ないから却下。じゃんけんして負けた奴が飛び込み台の1番上から飛び降りる事にしようと思うのだが、どうだ?」
「んー? どうしてまた? 別にうちは上に乗ってもいいけど」
雫が不思議そうに首を傾げているが、その手に持っているのはゴツイハンドガンである。確実に誰かの眉間を打ち抜くつもりである。仕事を増やされてはたまったものではない。
翔は「怖い奴もいるんだよ」と教えてあげた。
「それじゃ、最初はぐー。じゃんけんぽん!」
————バシャン、
じゃんけんで負けて飛び降りたのは、何と将軍だった。
「男の下着が尻に食い込むさまを見ても何も面白くないが」
月詠がぽつりと言葉を漏らす。翔はこの未来を予想していなかった。銀時を助けたつもりが何か大変な事になっているし。Tバックになっているし。
もう嫌だよ、何だよコイツ! と叫びたくなる衝動を押さえて、翔が顔を上げると、
「「「「ふんぎぎぎぎぎ」」」」
いつの間に開催されたのか、男だらけの水上騎馬戦大会が行われていた。しかも集中して将軍を狙っているという始末である。
「おいおい?! 何してんだテメェら!」
1人を寄ってたかっていじめるな! と叫んだが、そこへ空華が反論をする。
「こいつは最初に潰しておかないとまずい気がした!」
気がしないでもないけど止めてください。それは将軍様なのです。
もう嫌だ。こいつらどうにかしてくれ。というか炎神で燃やしてしまえばいいのか、そうかそうしよういますぐそうしよう。翔はそう考えて、炎神を発動させることにした。
プールの中でも燃える紅蓮の炎をまとった大鎌。それを大上段に振り上げて、翔は戦闘態勢に入った——
シュバババッ!!
ボートに乗っていた4人の男の水着が四散した。
翔はまだ何もやっていない。ただ炎神を振り上げただけで何もできやしないのだ。スカイがもしかして何かやったのではないかと思ったが、スカイは首を横に振った。
「——将軍家は、」
ボートの上を見やる。
帽子を取って、全員を見渡し、後光が輝く勢いで、
「パッツリゴム、もっさりブリーフ派だ」
どうでもいいよ。翔と空華とスカイは同時に思った。
ちなみに女性陣は子供用のプールでビーチバレーに興じていた。
「どうでもいいけど……もういいや。俺上がるわ。疲れた。寝る」
「休んできな。代わりに仕事はやっとくわ」
双眼鏡を手渡し、翔はプールから上がった。
ふと巨大なガラスの先に映る自分の姿が目に映る。濡れた髪が白く細い体に張り付き、なまめかしい雰囲気を醸し出している。そんな自分が——不意に笑ったのだ。
——東翔。
——いつか、ここに来た理由を思い出してくれる事を願うよ。
そして自分はまた、疲れたような表情へ戻る。
翔は本日何度目か分からないため息をついた。
「思い出せなくてもいいさ。こいつらがいるからな」
プールに目を向けると、何でか将軍が浮いていた。
翔はそんなカオスな光景を見て、思わず吹き出してしまった。
ご愛読ありがとうございました!
炎神暴君☆リシタニア2をご覧の皆様、山下愁です。この小説はここで終わりとさせてもらいます。
続編——は、予定が立ったらやろうかなと思っています。
それまではしばしのお別れです。では皆様、ごきげんよう!!
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