二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

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箱庭の少女 
日時: 2012/07/01 11:44
名前: *momo* (ID: xJyEGrK2)

 はじめまして(?)*momo*です。これは、ボーカロイドの「箱庭の少女」を勝手に解釈&ノベライズしたものです。荒しはご遠慮願います。コメントはくださると泣いて喜びます。
 「箱庭の少女」 mothy_悪ノP/作をお聴きになることをお勧めします。





本文↓





この部屋の中には、あなたと私だけ。
二人で唄を歌い続けていましょう。
外の世界?そんなもの、知らなくていいわ。
あなたがそれを望むなら……。

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Re: 箱庭の少女  ( No.1 )
日時: 2012/06/30 19:37
名前: *momo* (ID: xJyEGrK2)

レヴィアンタの屋敷に、その「親子」は住んでいた。

Re: 箱庭の少女  ( No.2 )
日時: 2012/06/30 20:14
名前: *momo* (ID: xJyEGrK2)

「ねえ、お父さん」
「どうした、娘よ」
「唄を歌いたいの。一緒に歌って?」
「ああ、歌おう」
 すうっと息を吸い、口を開く。父も同じようにしていた。
「「るりらるりら……」」
 歌声は、天井と壁に当たって反響し、よりいっそう美しくなる。閉じられた窓からは風も吹かず、この音色が外の世界へと流れ出ることは無い。この部屋の中だけに、子守唄は響く。
 歌い終わった私は、再び父に話しかける。
「お父さん」
「どうした」
「何でも無いの。ただ、そこにいることを確かめたかっただけ……。この足では、振り向くのにも相当の力がいるでしょう?」
「ああ、悪かった、悪かった。今、車椅子を持ってこよう」
「ありがとう」
 そう、私は足が不自由なのだ。さっきのように、ベッドの上にぺたんと座りこんでしまえば、両手で全体重を支え、体を半回転させて振り向かなくてはならない。
 足音が近付く。父が車椅子を持って来てくれたようだ。
「ほら、力を抜いて」
 黙って父の両腕に身を委ね、車椅子へと運んでもらう。
「ありがとう。お父さんの顔が見えるし、こうやって簡単に振り向くことも出来るわ」
 私は微笑み、くるりと一回転してみせる。
「何、お前が楽をできるなら、私は何だってするんだよ」
「お父さん、大好き」
 父に近付き、しがみつく。父は微笑み、とても優しい顔をした。
「でも」
 優しい顔のまま、父が言う。私は、少し心配になった。
「?」
「休日だから良かったが、私が仕事のときは、車椅子から降りるんじゃないぞ。動けなくなるからな」
 何だ、そんなことか。何だか慌てちゃったじゃない。
「わかっているわよ。まったく、心配性ね」
 私は父の言葉を、父は私の言葉を、二人して笑った。

Re: 箱庭の少女  ( No.3 )
日時: 2012/07/01 11:38
名前: *momo* (ID: xJyEGrK2)

 今日は、父が仕事で居ない。私は部屋の中を車椅子で探検している。ふと、部屋の小物達が目に留まった。父が私のために持って来てくれた、美しい物達だ。

赤いグラスの名は
「グラス・オブ・コンチータ」
青いスプーンの名は
「マーロン・スプーン」
黄色い枠の二対の鏡の名は
「ルシフェニアの四枚鏡」

 部屋がこのような美しい物で溢れているのは、歩けぬ私を気遣ってくれているから。そう、父はいつでも優しい。それでも一度だけ、とても怖い顔をした父を見たことがある。確か、あれは……外の世界について、尋ねたとき。

Re: 箱庭の少女  ( No.4 )
日時: 2012/07/21 18:37
名前: *momo* (ID: xJyEGrK2)

 窓から見える美しくも残酷な景色に魅了された私は、「外の世界はどんな様子なの?」と父に尋ねた。きっと優しい父は、私のためを思って私を外へ連れて行ってくれるだろうと思ったのだ。だけど、父の行動は、私の予想とは全く違ったものだった。
「知らなくていい」
 とてもとても怖い顔をして、私の大好きな優しい父は、そう言った。
「外の世界のことなんて、知らなくていい。あんなところ……知らなくていい」
 父は、何度も「知らなくていい」と繰り返した。父が父でなくなってしまうような気がして、すごく怖かった。そのとき、私は悟った。永遠に、この部屋からは出られないのだと。でも、悲しくなんかなかった。別にいいわ。大好きな父と、美しい小物達。それらに囲まれて、幸せに暮らせばいい。外の世界は……ときどき、窓から覗けばいい。そう、この部屋の中だけが、私の全て。それだけで、私はとても幸せなの。
 私は、知らなかった。いいえ、知ることはなかった。父の口から、あの言葉を聞くことになる日までは。


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