二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

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ぼくらの Crisis[新章開始]
日時: 2013/01/11 19:21
名前: tawata ◆Roz37FRKJ6 (ID: t7vTPcg3)

初めまして、tawataと申します。
この小説は「ぼくらの」の二次創作となっております。
とは言っても原作の設定のみを使用したほぼオリジナルの作品となっているので原作を知らなくても読める作品です。

読んでくださった方はコメント等下さると嬉しいです。
励みにもなるので是非お願いします。


【目次】

プロローグ
>>1

1 ココペリ
>>2
>>3
>>4
>>5
>>6
>>7
>>8

2 尖塔
>>9
>>10
>>11
>>12
>>13

3 命の秤
>>14
>>15
>>16
>>17

Page:1 2 3 4



1 ココペリ ( No.8 )
日時: 2012/11/01 21:36
名前: tawata ◆Roz37FRKJ6 (ID: t7vTPcg3)



 上方から飛んできた軍隊の攻撃に対して、ココペリは全く無頓着だった。
 目の前に居る敵を放って戦闘機程度の、装甲に傷一つつけられないものに気にしている場合ではないのだ。
 コックピットには衝撃の一つすら来ていない。
 念じることで操縦をし、それによりこのロボットと意思を疎通しているココペリのみがミサイルの衝突を気付いているため、子供達は気付いていない。
 しかし戦闘機による攻撃は子供達も察知していた。
「あの戦闘機、味方してくれるのか?」
 子供達には自分が乗っているロボットの事は見えないが、敵の姿なら見えている。
 その敵にミサイルが直撃したのを見れば、そうも思うだろう。
「だけど無傷だ……まるで効いていない」
 黒い装甲故、傷が見つからないのではない。
 どこにも、傷なんてついていない。
「あの程度の玩具で傷つくほどヤワなもんじゃねぇんだよ、こいつらは」
 コエムシが軽く言うが、それは子供達にとって衝撃だった。
 兵器の効かないロボット。
 どんな構造なのかなんて知る由すらない。
 戦闘機が一機、二つの巨体の間を通ったとき、敵の胸部から光が走る。
 それは見当違いな方向に飛んでいった。
 通り過ぎていったその一機。
 光は子供達、ココペリ、コエムシ、誰一人名前を知らないとある空尉が乗った戦闘機を撃ち抜いた。
 きっとその空尉は状況を把握できなかっただろう。
 視認出来ないほどの速度の攻撃が、一瞬にして戦闘機のコントロールを奪う。
 真正面から一直線に放たれた光は間違いなくその乗っていた人間諸共貫いた。
 爆炎が夜空を照らす。
 子供達はその光景を呆然と見ていた。
 その一瞬で整理できなかった思考が少しずつ整理されていく。
 敵がレーザーを放った。
 戦闘機を貫いた。
 戦闘機が爆ぜた。
 つまり、その中に居た人間が——
「……あああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」
 何もそれは一人だけが放った叫びではない。
 コックピットが阿鼻叫喚に包まれる。
 寧ろ、初めて今の様な、あまりにもあっさりとした、故に想像しやすい死を目前として誰が平常心で居られようか。
 尚も無表情なココペリとコエムシは余程異常なのだろう。
 続け様、敵のレーザーは残る三機を正確に撃ち抜く。
 子供達は見ていなかっただけマシだろう。
 邪魔者が居なくなったと見て取った敵が再び攻撃態勢を取る。
 鉄塊の如き腕を遠心力に任せて振ってくる。
 それを紙一重で躱した後、剣はその腕を切り裂いた。
 大きく空ぶり、そのまま斬られた腕は勢いに乗ったまま海上を飛んだ。
 陸地の方に行かなかったのは幸いだろう、落ちた場所から津波が巻き起こる。
 その振動で少しながら我に返った子供達は、再び敵を見る。
 いつの間にか片腕を失った敵に、ココペリは止めを刺しに行く。
 飛び掛り、敵を押し倒すとその胸部に剣を突き刺した。
「こいつらには急所がある」
 ココペリはそう言いながらロボットの左腕で腹部の装甲を数枚引き剥がした。
「それは敵によって区々で、どこにあるかは一定じゃない」
 さらにその中に手を突っ込み、内部を破壊していく。
 敵が右腕を振ろうとするが、それを先に察知したココペリが腕を踏みつけ止めた。
「大体は体の奥深く、幾層もの装甲に守られている」
 剣が刺さっている場所の直ぐ下辺りにあった何かを掴み、引っ張り出す。
 小さな——とはいっても数十メートルはあるだろう——球体。
 装甲よろしく、何層もの板で守られている。
「こいつを探し出して——」
 掴んだ腕に力が込められる。

「——潰せ」


 破裂するような音と共に、急所と呼ばれた球体が潰れた。
 隙間から光と煙を噴出しながら手の中に納まるそれの最後は酷く呆気ないものだった。
 頭部に合った仮面の様なものに灯っていた十一個の光が消えていく。
「——これで、終わりだ」
 ココペリの言葉で、子供達は戦いの終わりを悟る。
「次からは君達の番だ。僕はもう次の戦闘からは居られない」
「どうして……?」
「……どうしてもだ」
 答える気は無いらしい。
「後は君達が、地球を守るんだ」
 その言葉に他意は無かった。
 しかし子供達は、
「あぁ、任せろ」
 少なくとも、今はそれを完全に理解してはいなかった。
「コエムシ……後を頼む……」
「あいよ」
 景色が消え、動き出す前の闇に戻る。
 ココペリは周囲、誰も座っていない椅子を見渡す。
「君達……」
 最後にチラと子供達を一瞥し、言う。
「す…」


 次の瞬間には、子供達は旅館の前に居た。
 海には既に敵の姿は無く、今自分達が乗っていたロボットは足から消えていった。
 子供達には見えなかった。
 ロボットの頭部にあった仮面、そこに開く十三の隙間にあった一つの光がゆっくりと消えたことに。
「……今のは……」
 まるで夢。
 しかし、
「夢だと思ってんじゃねえぞ」
 背後に浮いていたコエムシがそれを否定した。
「その内てめえらのマガジンが装填される。そしたら迎えに来るぜ。何かありゃ呼んでくれてもいい」
 表情の変わらない鼠の顔からは何も感じられない。
 ただ、子供達も良い予感はしていなかった。
「俺様はいつでもてめえらの傍にいるからよ」
 言って、コエムシは消えた。
 残された十五人の子供達。
「……何だったの?」
「分からない、けど……」
 その中に、真実を見出した者が少なからず居た。
「これは、ゲームなんかじゃない」
 現実味がありすぎる、先程の死。
 彼らが直に見たわけではないが、戦闘機に乗っていた人間が死んだのは明確だった。
「でも、今度からは俺達が戦うんだろ?」
 それは紛れも無い事実だった。
 戦う上で多くの犠牲が出るだろうし、それに罪悪感を感じない子供達でもない。
「……今みたいに海で戦うときは被害も少なそうだけど……」
 そう、街中で戦うとき。
 どれほどの被害が出るかは安易に想像ができた。
 子供達はそれを天秤に掛ける。
 ゲームではない現実。
 戦うことにより起こる被害と、大勢の人の死。
 地球を守るという使命。
 どちらを重視するかというのは、決めようの無いものだった。
 地球を守るために多くの人を殺すなんて出来るのか。
「……俺は、戦う」
 最初に決意をしたのはクルだった。
「要するに被害を出さなきゃ良いんだろ? 地上で出てきても海まで行けば済むことじゃん!」
 子供達は目を合わせる。
「……それもそうか」
「やろうぜ、皆!」
 ガヤガヤと騒ぎ始める。
 中途半端なれど、それぞれ決意が固まったようだ。
 それがどんな形だろうと。
 今彼らの知っている情報に、戦う意思を削ぐようなものは無かった。

「あの人…最後に……」
「どうしたの? マイヤ」
「あの人、最後に「すまない」って言ったんだと思う……」

2 尖塔 ( No.9 )
日時: 2012/11/16 21:40
名前: tawata ◆Roz37FRKJ6 (ID: t7vTPcg3)



 翌日。
 子供達は、好奇心故にロボットを見に行っていたという口実で何とか家族を説得した。
 危なかったが怪我人が居なくて良かったという事で解決した。
 奇跡的に陸地にはほとんど被害は出ず、死傷者は「四人」だけだった。
 ロボットに乗ったこと、契約については十五人だけの秘密。
 そういう事にした。
 いつもの様に海で遊んでいる子供達だが、二人の姿が見えなかった。
「あれ? ウラノは?」
「トヨもいねぇぞ?」
「灯台のところじゃねーの? あいつらあそこ好きらしいし」
 旅館付近の灯台の下は、二人のお気に入りの場所だ。
 ウラノとトヨはツアーが始まって初めて友人関係となった二人であり、子供達全員が仲良くなる切欠を作った二人でもあった。


「なぁ、トヨ。昨日のアレ、どう思う?」
「どうって言われても……夢とは思いたいけど、実際死者も出てるしさ…本当なんだろうなぁ」
 二人は灯台の下で、昨日の事について話していた。
「ウラノ……アレ、本当に乗りたいと思う?」
「あぁ。地球を守るって、かっこいいと思わないか?」
「……かっこいい、ねぇ」
 トヨが少し考える。
「僕はさ、正直、地球を守れるかなんて分からないんだ」
「最初に面白いって契約したの、トヨじゃなかった?」
「それはそれだよ。ゲームだと思ってた頃とはワケが違うんだから」
 ゲームではなく現実だという事を知ったことで、事情が変わってきた。
 トヨ自身も、契約したもののどうするか、迷っていた。
「地球を背負ってるって分かったら、戦う意思ってのも無くなっちゃった」
「だったら、背負ってるものを幾らか捨てりゃ良い。犠牲が出ても勝てば良いんだ」
 即答だった。
 ウラノの目を見るに他意は無く、本気でそう思っているらしい。
「——、え?」
 流石に聞き違いだとトヨは思った。
 ウラノがそんな事を言うはずは無い、と。
「俺さ、両親居ないんだよね」
「え、だって……」
 海の方を眺めながら、ウラノが現実を話す。
「先月親が事故で死んでさ、今回のは親戚が俺を心配して連れてきてくれたんだ」
「……」
 トヨは唖然となっていた。
 初日に見たときから、喜怒哀楽を共有する仲の良い理想的な家族だと思っていた。
 その実態が、まさか真の家族では無かったとは。
「親に言われてたんだ。どんな形でも良いから人を沢山救えって」
 ウラノの口元は笑みを浮かべていた。
「少し犠牲が出ても、その百倍救えればそれは成立すると思うんだよ」
 彼なりの正義感。
 犠牲以上の命を救えればそれで良い。
「ウラノ……」
「トヨ、俺はあのロボットで地球を救う。その上で犠牲が出るのは仕方の無いことなんだよ」
 トヨは何も言う事が出来なかった。
 彼が決めた断固たる決意。
 友としてそれは黙認するしかなかった。
 駄目だ、と言えるほどの勇気がトヨには無い。
 トヨは間違った道を歩む友に対して、どうする事も出来ないでいた。

2 尖塔 ( No.10 )
日時: 2012/11/18 21:50
名前: tawata ◆Roz37FRKJ6 (ID: t7vTPcg3)



 その日の夜。
 旅館の大広間で子供達が談話しているとき、事は起こった。
 ふと全員の会話が偶然途切れた。
「——誰か、俺のこと呼んだか?」
 異変の予兆は、ウラノが言ったその言葉だった。
「……誰も、何も言ってないよ」
「……?」
 空耳じゃないの、と軽く済まされるが、ウラノはそうは思わなかった。
 耳から、というより心に直接届いたような言葉。
 何て言っているかも分からない。
 それが人語なのかすら理解できなかった。
 首を傾げるウラノの上に、一瞬で現れた白い鼠。
「よっ」
 ロボットの中でコエムシと名乗ったそれは軽い挨拶で存在をその場の全員に主張した。
 大人が居なかったことは奇跡だろう。
「てめーらマガジンが装填されたぜ。声受けたの、誰だ?」
 コエムシはその場でクルクルと回転しながら問う。
 誰もその「声を受ける」という事に心当たりは無かった。
 ただ一人を除いて。
「声……? さっきのアレか?」
 ウラノが上を向いて言うと、コエムシは真下を向き目を合わせる。
「てめーか。何で下に居んだ、気付かなかったぜ?」
「なっ……」
 ウラノが何か言おうとするが、コエムシはそれを無視する。
「よし、じゃ、早速ぬいぐるみのコックピットに行くぜ」
 言うが早いか、子供達の視界は暗闇に消えた。


 半円に並んでいた椅子は、全く違うものに置き換えられていた。
 十五個の椅子は子供達それぞれに見覚えのあるものだった。
「てめーらの頭の中をちょこっと見せて貰ったぜ。どれか憶えがあるだろ?」
 子供達が自分の椅子を見つけていく。
「これ、俺だ……」
「私、これかな……?」
「何だこの豪華な椅子……?」
 それは基本的に王や貴族が公の場所で座る玉座と呼ばれる椅子。
「……」
 セントがそれに手を置いた。
「お前、本当にどこの生まれだよ」
「……うるせぇ」
 投げかけられた疑問に答えることなくセントは椅子に座った。
「これ、私達の?」
「二人で一つってか?」
 センとアイ。
 双子の兄妹である二人に用意された椅子は二人用のソファだった。
 ふかふかのクッションが据えられた高価なものだ。
「すげぇ、浮いてるぞ」
 椅子は三十センチ程浮いているものの、固定されているように動かない。
 ウラノが座った勉強椅子が中央に移動する。
「俺が動かすのか?」
「あぁ、そうだ」
「ところでこれ、危険なことは無いんですか?」
 マイヤが切り出すと、
「……」
 コエムシは黙った。
「そしたら止めちゃえばいいじゃん」
 そうだな、と肯定する子供達をコエムシは無表情で見つめていた。
「ところでこのロボット、名前とかあるのか?」
 クルがコエムシに聞く。
「そんなのねーよ」
「だったら俺達で決めようぜ! ロボットじゃアレだしさ。何かカッコいい奴ない?」
 クルが皆に意見を聞く。
「レイセン号!」
「お前の名前じゃねーか」
「サンボット!」
「昔のロボットアニメにそんなのあったな」
「ゲッターボロ!」
「それもだよ」
「黒くて硬くてデカいの。略して黒巨硬」
「死ね」
 中々決まらないものだった。
「じゃあ、こんなのは?」
 次に案を出したのはユズだった。
「地球を代表する皇帝——カイザー」
 おぉ、と感嘆の声が上がる。
「カイザー…カイザー…うん、カッコいいじゃん」
「皇帝か……地球を代表するのに相応しい名前だね」
「よし、決定! カイザーだ!」
「相談はそこらへんにしときな。来るぜ」
 ロボットの名前が決まると同時、コエムシが言う。
 昨夜の戦いと同じ、旅館の前の海の景色が広がる。
 近隣の住民はそれを見てすぐに逃げ出した。
 昨夜の死人が出たという情報を聞き、危機感を感じたのだろう。
 旅館では揃って居なくなった子供達を親が探し回っていた。
「俺が、動かす……」
 ウラノがぼそりと呟く。
 何を犠牲にしてでも、地球を守る。
 その考えは変わらなかった。
 敵がゆっくりと姿を現す。
 まず初めに天辺の尖った部分。
 そこから円状に段々と太くなっていく。
 天辺に近い場所には仮面が付き、さらにその上に円を囲むように四本の角が付いている。
 それ以外は特に目立ったものも無くただ下に行くにつれとにかく太くなっていく。
 最下まで達すると最低限の移動を可能とするような四本の足。
 三角錐の様な全貌が明らかとなると、それは地に足をつける。
 下方の水が押し出され、大きな津波が起こる。
「あれが、敵……」
 ウラノの意思に反応し、ロボット——カイザーが動き出す。
 新たな仮面の十五本のスリットに、それぞれ光が灯った。

2 尖塔 ( No.11 )
日時: 2012/11/23 20:35
名前: tawata ◆Roz37FRKJ6 (ID: t7vTPcg3)



 *


 悪く言えば平凡、良く言っても極普通の家族だった裏辺家が崩れるのは一瞬だった。
 学校から帰ってきた俺に伝えられたのは両親が事故で死んだことだけ。
 詳細なんて教えられなかった。
 程なくして親戚に引き取られることになったが、事故の噂が広がるごとに俺の友人は俺から距離を取る様になった。
 それを知っていて、俺の身を案じてくれたのか親戚は俺を旅行ツアーに連れて行ってくれた。
 そこで出会ったのは事情を知らずに親しくしてくれる同年の十四人だった。
 特にへらへらと笑って接してくる一人の男子とはすぐに仲良くなった。
 その男子、トヨは意外にも学校が近く、ツアーが終わっても遊び続けられるようだった。
 しかしながら平凡な俺とは何か違う雰囲気を持っているトヨ。
 彼は俺とは何か違っていた。


 特に取り得の無い俺に与えられた圧倒的な力。
 巨大なロボットを操り、敵を倒して地球を守る。
 これだけ聞いても単なる夢物語としか思えないだろう。
 しかし俺はそれが現実だと知り、実際にロボットに乗っている。
 地球を守るために。
 平凡な俺なんかに地球は託されている。
 ならばそれに尽力しよう。
 俺に出来るなら。


 *


 全貌を現した三角錐の巨体はカイザーの姿を確認するとゆっくりと動き出した。
「来る……」
 二つの巨体が距離を詰めていく。
 ウラノの念でカイザーの拳が強く握られる。
「らああぁぁっっ!!」
 振られた拳は三角錐の中心を的確についた。
 装甲に大きな罅が入る。
 数歩下がった所をウラノは更に追撃する。
「おおおおぉぉぉっっ!!」
 迎え撃つ腕の無い三角錐は手の出しようも無く、二発目の拳もなすすべもなく受けた。
 しかし三角錐の方も、何もしない訳ではない。
 四本の足の前二つを突然に地から離したのだ。
 するとバランスを取れなくなり、巨体は倒れる。
「うわっ!」
 文字通り、身体全体でぶつかってきた三角錐をカイザーは受け止める。
 しかし最大限の衝撃を与えただけで、三角錐はすぐに体制を立て直した。
 そして間髪入れずに右側の二つの足を離す。
 右側に倒れ掛かり、すぐに後ろだけを地につける。
 すると三角錐の身体は左前方向に振られるように体制を立て直す。
 それはカイザーにとって、「強力な横殴りの一撃」になる。
 この行動を予測し切れなかったウラノは対処が遅れ、それが直撃した。
「っ、腕が……!」
 中ごろから砕け、左腕が海に落ちる。
 攻撃の要である腕を失わせた後も三角錐は攻撃を止めない。
 三角錐の最上部が光を収束し始める。
「今度は何だ!?」
 嫌な予感を感じ取ったウラノはカイザーを後退させる。
 光は巨大な球状を成し、太い閃光となってカイザーを襲った。
 左腕を砕いたのはウラノを警戒させるだけのもので、真の目的はこの閃光を安全に撃つ事だった。
 胸部に当たった閃光は、見た目ほどの豪快な破壊力は無く、しかし確実に装甲を削っていく。
「削られてんぞ」
「くそっ、どうすりゃ良いんだ!」
「とにかく反撃しなきゃ!」
「どうやって!」
「…レーザーは?」
「それしかないよ!」
「よし!」
 削られる胸部は浴びる光とは個別の光を収束させる。
 そして放たれたカイザーの閃光は、
「なっ!?」
「普通に考えりゃ、分かる事だろうがよ」
 三角錐の閃光とその場で接触、爆発し、カイザーを吹き飛ばした。

2 尖塔 ( No.12 )
日時: 2012/11/30 23:46
名前: tawata ◆Roz37FRKJ6 (ID: t7vTPcg3)



 *


 元々俺は自分が特別な人間だなんて思ったことはなかった。
 極普通に生き、極普通に人として一般的な生活を送り、極普通に一生を終える。
 それが大半の人間の生き様であり、その大半に入るであろう自分もその枠を出る事はないのだろうから。
「もう少し頑張れない?」
 親からはショッチュウそう言われてきた。
 成績は中の上程度。
 自分の長所らしい長所といえば、運動馬鹿と呼ばれるくらい運動が出来たという事くらいか。
 親が死ぬまで、学校では友人が少なかったわけではない。
 正確に言えば俺にとっては十分に満足できる人数だった。
 しかしそれは果たして真に「友人」と呼べるものだったのだろうか。
 どんな物語でも大抵、運動神経の良い奴の周りには人が大勢居るものだ。
 それはこの世界の「一般的」なものの見方なのではないか。
 運動が出来る、人が集まる。
 勉強が出来る、人が集まる。
 何かしら自分で長所を見出し、伸ばすことが出来ればそれに感心した人が寄ってくる。
 しかしその人らは交友を真の目的として近づいているのだろうか。
 勉強が出来る奴に近づけば、勉強を教えてもらえる。
 だから自分も賢くなれる。
 それと同じで運動が出来る俺に近づけば自分に何か恩恵が来るとでも思っているのだろうか。
 そういった偽りの友情だのを考えさせるような友情は、俺が望むものではなかった。
 結果的に、どんな奴が近づいてきても、俺はそれらを「偽り」としか思えない。
 歪んだ感情だとは思うが、一度そういう考え方をしてしまうと飲み込まれてしまうのが人間だと思う。
 親戚に誘われたツアーに参加したのも「偽り」の無い友人というものを作りたかったからだ。
 そして出会ったのが十四人の同学年の子供達。
 その中でも全く裏表が無さそうな奴が一人だけいた。
 鈴千 豊助。
 俺が望んでいた「真の友達」だった。
 今この場で負けてしまえば、同じコックピット内にいる彼や他の皆にも危害が行く。
 絶対に避けたい。
 何が犠牲の百倍救えば、だ。
 守りたいものを守るからこそ戦う価値というものがある。
 負けられない。
 皆を、地球を守るために。


 *


 胸部に深く開いた穴。
 しかしそれでも戦闘に支障は無い。
「ほら、また来るぞ」
 コエムシの言葉の通り、三角錐は再び頭に光を集める。
 先程と同じようにはウラノは動かない。
「っ、だったら!」
 光より早く、カイザーの身体中から閃光が伸びる。
 一歩遅れて放たれた光は、先程とは逆に三角錐の傍でレーザーと相殺される。
 爆発は三角錐の最上部を飲み込んだ。
「いいぞっ! たため!」
「分かってる!」
 ウラノが念じ、カイザーの腕が動く。
 それは背中の装甲を掴み、そして引き剥がした。
 ココペリがやった様に。
 長すぎるカイザーの指は装甲を剥がして造った剣をがっしりと握ることは出来ない。
 五本の指それぞれで支えるように持ち、三角錐に向かって歩いていく。
 爆発の煙が晴れ、見えたのは最上部——仮面から上が無くなった三角錐の姿。
 三角錐が身体中からレーザーを放つも、全てカイザーの装甲に弾かれる。
 危機を感じたのか三角錐は後退をし始める。
 しかし歩幅はカイザーが勝り、逃げ切るには至らない。
「くらえっ!」
 カイザーが腕を振るう。
 手に握られた剣は、三角錐の中央に突き刺さった。
 四本の足が滑るように倒れ、三角錐が力なく崩れ落ちる。
 間髪入れずにカイザーが掴みかかる。
「後は急所を——」
「終わりだ」
 ウラノが追撃を加えようとしたとき、コエムシが静止をかけた。
「え?」
 子供達が一斉にコエムシを見る。
 それらを特に気にせず、コエムシが続ける。
「終わり、だ。見事に奴の急所を潰したぜ」
 三角錐の仮面に開いた十三本のスリットに灯っていた、十個の光がゆっくりと消える。
 それは戦いの終わりを意味していた。


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