二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
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- ぼくらの Crisis[新章開始]
- 日時: 2013/01/11 19:21
- 名前: tawata ◆Roz37FRKJ6 (ID: t7vTPcg3)
初めまして、tawataと申します。
この小説は「ぼくらの」の二次創作となっております。
とは言っても原作の設定のみを使用したほぼオリジナルの作品となっているので原作を知らなくても読める作品です。
読んでくださった方はコメント等下さると嬉しいです。
励みにもなるので是非お願いします。
【目次】
プロローグ
>>1
1 ココペリ
>>2
>>3
>>4
>>5
>>6
>>7
>>8
2 尖塔
>>9
>>10
>>11
>>12
>>13
3 命の秤
>>14
>>15
>>16
>>17
- 1 ココペリ ( No.3 )
- 日時: 2012/09/30 21:59
- 名前: tawata ◆Roz37FRKJ6 (ID: t7vTPcg3)
洞窟の内部は電気も通っていないようで、先も見えない。
しかし、自然の力で出来たものではない。
間違いなく、人の手によって掘られたものだ。
ライトを持って先導するのは先程この洞窟を見つけてきた少年、クル。
「なあ、この先何があるんだ?」
「さぁ? 俺も直ぐそこまでしか行ってないもん」
「何だよそれ。安全なんだろうな?」
「大丈夫、大丈夫。危険なんて無いって」
どんどんと進んでいく男子達とは裏腹に、女子達はゆっくりだ。
「ねぇ、戻らない? 男子達は放っとこうよ」
「何行ってるのよカオ。洞窟なんて何かわくわくするじゃない」
「はぁ……」
寧ろ探検を楽しむものとそうでないものに分かれていた。
「この蜘蛛何て種類なんだ? サク」
「俺は蜘蛛博士じゃねえぞ……」
道中に見かけた蜘蛛に興味を持つ子供も居た。
興味の対象である蜘蛛は洞窟の壁を這っていた。
子供達の視線はその蜘蛛をひたすらに追いかけている。
と、突然にその蜘蛛が「潰れた」。
投げられた石によって。
「……おいセント。お前、蜘蛛でも生きてる命だぞ」
「……毒かもしれないだろ。人間に害を加える可能性がある生き物なんて生きている価値なんかねえよ」
セントと呼ばれた少年はそう言うと、さっさと洞窟の奥に歩いていく。
「変な奴だよな。あいつ」
「良いとこの坊ちゃんだったらしいよ。何だかんだで普通の家庭に引き取られたんだってさ」
家族の数だけ、事情がある。
セントのそれも、事情の一つだった。
「おーい、皆! 早く来いよ!」
クルの声が洞窟内に響き渡る。
それを聞き、皆の歩みは速くなった。
洞窟の最奥部。
そこにあったのは妙な形をした一台の機械だった。
五角形の平たい金属板を粗末な金属棒で固定させ立てている。
そして、その場に倒れた一人の男性。
「おい、これ……」
「し、死んでる……のか……?」
子供達が近づこうとすると、
「っ、…ん、ふぁ、よく寝た……」
あっさりとその男性は起き上がった。
黒髪を肩の辺りまで伸ばしている。
癖がつき放題になっている辺り申し訳程度の手入れもしていないのだろう。
長さにバラつきのある無精髭が口元を黒く染めている。
近寄りがたいというイメージが真っ先に出てくるような男性だった。
「……」
唖然として見つめる子供達を、男性は薄らと開いた目で見渡す。
幾度か、瞬きをした後、状況を把握したのか大きく溜息を一つ吐き、立ち上がる。
「君達、どうしてここに……?」
「え、あ、洞窟を見つけたから……探検しようと……」
先頭に居たクルがしどろもどろと答える。
それを聞いた男性はやはり瞬きを何度かする。
「あ、そう。……まぁ、ちょうど良いか……」
小さく呟き、笑みを浮かべる。
「君達は運が良いよ」
そう言う男性を子供達は不穏な目で見つめる。
「運が良い?」
「あぁ、君達、ゲームをやってみない?」
ゲーム。
この単語にほとんどの子供が反応した。
彼らとて中学生。
そういった遊びには興味がある。
「ゲームって?」
「どんなゲーム!?」
興味を示したのは男性陣だけではない。
先程から探検も楽しんでいたユズが強く反応する。
と言うのも彼女、親がゲーム会社に勤めており、その影響かゲームには目が無いのだ。
子供達の食いつきに少し後退りつつ、男性は説明を始める。
- 1 ココペリ ( No.4 )
- 日時: 2012/10/05 20:57
- 名前: tawata ◆Roz37FRKJ6 (ID: t7vTPcg3)
「この地球を、十五体の敵が襲う。迎え撃つのは巨大なロボット」
黒い塊、積層された装甲。
圧倒的な力。
無敵の存在。
「それを操るのは——君達」
子供達の心を掴むのは、これだけで十分だった。
「すげえ、面白そう! やろうぜ皆!」
「そうね! ロボット、カッコ良さそうじゃない!」
ほとんどの子供達は心を擽るその単語にはしゃいでいた。
「では、契約としてここに手をついて名前を教えて欲しい」
男性が妙な形の機械を引っ張り、子供達の前に出す。
「契約! かっこいい! 早速やる!」
一人がまずそこに走りより、手をつく。
「鈴千 豊助(れいせん とよすけ)!」
——通称、トヨ。
次の一人が手をつくと、それに呼応するように他の全員が近づく。
「ユズよ! 癒州 正義(ゆず せいぎ)!」
——通称、ユズ。
「俺は美星 戦(みぼし せん)だ」
——通称、セン。
「私は美星 愛(みぼし あい)」
——通称、アイ。
「えっと、繰流 商業(くる しょうご)です!」
——通称、クル。
「……佐藤 慎二(さとう しんじ)」
——通称、サトシ。
「玖比 恋(くひ れん)、よろしくね」
——通称、レン。
「裏辺 野空(うらべ のそら)だ」
——通称、ウラノ。
「天地 諭人(あめつち ゆひと)……」
——通称、アマチ。
「あー、酒月 羽楠(さかづき ばくす)」
——通称、サク。
「日向 穂滝(ひなた ほろう)よ」
——通称、ヒナ。
「皐月 舞弥(さつき まいや)です」
——通称、マイヤ。
「香窓 乙女(かまど おとめ)!」
——通称、カオ。
「狩野 由美(かりの ゆみ)よ」
——通称、ユミ。
十四人が手をつき、名前を言う。
残りの一人。
セントはずっと、興味なさげに壁に寄り掛かっていた。
「……セント? 早く」
「馬鹿馬鹿しい。くだらねえよ、本当に」
これが、セントだった。
はぁ、と溜息を吐いたトヨが走りより、セントを引っ張る。
「って、おい! ちょっ!」
トヨがセントの手をだん、と強く機械に叩きつける。
「早く! 名前言えって!」
「うるせぇ、俺に構うな!」
「面白そうじゃん、やろうぜ!」
「っ、あー! 分かった! 海鳴 泉斗(うみなり せんと)! これでいいだろ!」
海鳴 泉斗——通称、セント。
これで、十五人。
「まぁ、良いだろう。これで契約は終了した」
男性がさっさと機械を奥に追いやる。
「そういえば、おじさん、名前は?」
クルが聞く。
男性は頭を掻き毟りながら言う。
「あー、うん……ココペリ、としておこうかな」
ココペリ。
そう名乗って、子供達の間を歩いていく。
「ココ……?」
「何それ……?」
当然、こういう反応となる。
まさか横文字の名前が出てくるとは思ってもいなかったからだ。
しかしそれに返すつもりもないようで、ココペリは洞窟の入り口に向かう。
「それじゃ、ルールはまたいつか話そう」
ココペリの言葉に子供達は動揺が隠せない。
「いつかって……どういう……」
「ロボットに呼ばれる時が来る。その時にまた会おう」
さっさと出て行くココペリを目で追いながら、子供達は首を傾げていた。
「な、なんだったんだ?」
「さぁ? 変なおっさんだったな……」
子供達は、ココペリと名乗った不審な男性が残していった機械に目をやる。
特に目立った付属品もついていない。
ただ五角形を棒で固定させて立てているだけ。
しかも地面からコードを繋いでいるわけでもない。
契約といったものの、たったこれだけで何が出来るのか、と言わんばかりの代物だった。
「これ……結局何か意味があったのか?」
子供達は知らない。
この機械によって成された契約によって地獄の様な戦いに巻き込まれた事に。
「あのおじさん、不思議な人でしたね……」
子供達は知らない。
彼らに契約をさせたココペリの実態を。
「どうせ何かの悪戯だよ。ゲームなんかありゃしねえ」
子供達は知らない。
これはゲームなどとは程遠い。
恐怖と、死と、虐殺の「ただの」悪夢だという事を——
- 1 ココペリ ( No.5 )
- 日時: 2012/10/15 21:24
- 名前: tawata ◆Roz37FRKJ6 (ID: t7vTPcg3)
「……え?」
子供達は揃って、動揺を隠しえなかった。
暗い部屋。
上を見れば星のない夜と思える闇。
立っていながら、立っているという感触のないその足場は果てが無いかの如く延々と続いているように見える。
十五の椅子が半円に並んだその中央に立つのは昼間、ココペリと名乗った男性だった。
何故自分達がこんな所に居るのか。
子供達には一つだけ心当たりがあった。
その日の夜。
昼間の事は「良い年したおっさんの悪戯」として気にしない事にした。
夕食を終え、いつもの様に旅館の大広間で談話をしていた。
普段ならそれを一時間くらい続け、適当に切り上げて終わる筈だった。
ふと、窓の方を見たクルがそれを見つけた。
「……おい、何だアレ」
クルが指差すのは海。
いや、海ではない。
海に「立つ」、一つの物体。
「……あんな物さっき無かったよな?」
「でけぇ……五百メートルくらいあるんじゃないか?」
それは、人型に見えた。
頭があり、脚があり、腕がある。
明らかに海に立っているのは異様と言える存在を、子供達はココペリが言っていた言葉と結び繋げた。
——迎え撃つのは、巨大なロボット。
悪戯だと思っていた子供達はその光景を見て、彼の言葉に虚偽が無かった事を悟る。
これは紛れも無い事実。
ゲームの、断じて仮想の世界ではない、現実の世界の事なのだと。
それに全員が気付くと同時、視界が一瞬にして移り変わったのだった。
「良く来たね、君達」
訳の分からない事実を、子供達が半ば強引に理解した頃、ココペリが口を開く。
後日、伝えると言っていたゲームのルール。
それを今説明するというのは、子供達も理解できた。
しかし、彼らが説明して欲しいのはルールよりも、突然こんな得体の知れない場所に連れてこられた理由、そしてそもそもここは一体どこなのか、という事だった。
「こいつらか?」
ふと、子供達でも、ココペリでもない誰かの声が聞こえた。
それは、上から。
子供達は反射的に声がした方向を見る。
そして、唖然となった。
さも当然のように宙に浮くその存在。
一言で言うなら、白い鼠。
頭でっかち、というよりは奥行きがあるのは頭のみ。
紙のようにぺらぺらな体。
張った頬は薄紅色に染まっている。
人間とは程遠い異形だった。
「あ、あんたは…?」
そう聞こうとするクルを無視し、その異形はココペリの周りを回りながら不機嫌そうに言う。
「全員ガキじゃねえか。手ェ抜いたんじゃねえだろうな?」
「きっと大丈夫だ。俺が見つけてきた人材だぞ」
異形の鼠は知らないだろうが、無論「見つけてきた」とは言っても寝ていた洞窟にやってきた子供達である。
「はっ、まぁ信じてやるよ。俺に関係はねぇし、てめぇの探してきた奴らが今まで勝ってきたんだしな」
そう言うと今度は子供達を見定めるようにぐるっと回る。
「ガキ共、俺様の名はコエムシ。まぁよろしくな」
コエムシ、と名乗ったそれはくるくると回りながら暢気に言った。
子供達は目を白黒させて「鼠が空を飛んで喋っている」という異常を見ている。
遊園地にいる「夢を与えている二足歩行の鼠」なんていうレベルではない。
小さいながらもそれは、間違いなく本物の「異常」と呼ぶに相応しかった。
- 1 ココペリ ( No.6 )
- 日時: 2012/11/05 19:33
- 名前: tawata ◆Roz37FRKJ6 (ID: t7vTPcg3)
「さて、ルールの説明だ」
ココペリが半円状に並ぶ椅子の一つに座る。
すると果ての無い闇が晴れ、何かが映った。
「……あれ、俺達が泊まってた旅館……?」
真正面、遠くに見える明かり。
遥か下には波打つ海。
ここがどこなのか。
その解は、ここに来る前に記憶と繋がり、導き出される。
即ち、ロボットの中。
「君達はこいつを操り、敵を倒さなければならない」
ココペリの言葉と共に、視界が揺れ動く。
同時に足場がぐらりと動く。
ゆっくりと景色がスライドしていく。
ここがロボットの中とすると、この場所は言わばコックピット。
その景色が動いたという事はロボット自体が動いたという事だ。
「こいつは念じれば動く」
レバーも無ければ、スイッチも無い。
操縦は単純、ただ心で念じるだけ。
景色が百八十度スライドする。
つまり旅館を背にした。
真正面は、ただひたすら海が続く。
水平線に、何かが現れた。
「あれは……?」
子供の問いにココペリが答える。
「あれが敵だ。今回は僕が倒す。次の敵からは、君達の番だ」
上方からゆっくりと顕現していく敵。
まず始めに、二つの突起が見えた。
次に頭。
突起は付け根と先端が細く、中央が太いそれは宛ら動物の耳のようだった。
次に肩、体と腕、腰、脚と順に出現していき、やがて全貌が現れる。
細身ながらその身は金属で覆われており、細い体の中で腕、肘から先は太くなっている。
鉄球の如き手はそれが武器ですと主張している。
「来るぞ」
金属の体とは思えない軽快なステップで巨体が迫ってくる。
足を打ちつける度に、海に穴が開き、大波が起こる。
まずその鉄球の拳を遠心力に乗せて繰り出してくる。
一方それを後退しつつ受け止め、威力を削減するのがココペリの選択だった。
しかしそれでも威力は中々のものらしく、コックピットが振動した。
「きゃっ!」
レンがその振動でバランスを崩す。
それを支えたのは以外にもコエムシだった。
「ったく、ちゃんとバランス取っとけ」
「あ、ありがとう……」
「礼なんざいらねーよ。操縦する前に…あー、怪我しちまったら俺様が困るからな」
コエムシはレンが安定したのを見てココペリの近くに飛んでいく。
「格闘戦が得意なタイプらしいな」
「なに、力任せに殴ってくるだけなら簡単なものさ」
もう一度殴るべく腕を振り上げたところを、ココペリは的確に狙った。
胸部から放たれた光。
大振りの攻撃のせいでがら空きの体を、その光が襲う。
光に押されるように飛び、倒れた。
「今のって……」
「こいつはビームが撃てる。そしてメインとなる武器が——」
ココペリがロボットの腕を動かし、背中を覆っていた装甲の突起を掴む。
そして突然、それを引っ剥がした。
装甲を一部残し、剥がされた長いそれ。
黒く鋭い装甲を幾重にも重ねたそれは剣にも槍にも見える。
ゆらりとコックピットから見る視界が動く。
防御に徹し、ゲームのルールを教えていたココペリが攻撃に転じた瞬間だった。
ズン、ズン、と歩を進める足に呼応し、波が起こり、地面が軋む。
そして倒れた敵の元まで歩み寄り、その装甲に剣を突き立てた。
- 1 ココペリ ( No.7 )
- 日時: 2012/10/27 21:35
- 名前: tawata ◆Roz37FRKJ6 (ID: t7vTPcg3)
バキッ、メシリ、と。
何重にも重ねられた装甲が次々と貫かれていく。
「凄え……」
感嘆の声を漏らす子供達を特に気にせず、ココペリはその剣を引き抜く。
そしてそれをもう一度突き入れようとした時、敵の装甲の隙間から光が放たれた。
コックピットに強い衝撃が来る。
「っ、今みたいに攻撃を受けたとき、その衝撃は減衰してコックピットに伝えられる」
彼自身にも予想外の攻撃だったのだろうが、臨機応変に解説をする。
光自体に大した威力は無いものの、それによって出来た僅かな隙は敵を立ち上がらせるに至った。
再び睨み合う形となった両者。
すると、そこに入り込んでくる部外者。
というのも、ここまで異質なものが目立っていると当たり前とも言える。
軍が出てこない訳がないのだ。
「あれ、戦闘機?」
「かっけぇ、本物なんて初めて見たぜ!」
部外者の登場で盛り上がりだす子供達だが、ココペリは特に気にしていない。
今、彼が考えることは、子供達に戦いを教えることと、勝ち残ること。
彼の「最後」の戦いに、部外者など付け入る余地すら無かった。
「……何だアレは?」
そんな気の抜けた言葉と共に、飛場空尉は目を疑った。
巨大な二体の……何だろうか。
黒い二つの物体が海上で戦っている。
数々の修羅場を潜って来た国防省のエリートである飛場も、こんな状況は初だった。
SF映画でも見ているような、あまりにも現実的でない光景。
騒ぎを沈静化しろ、という指示を一瞬忘れたものの、すぐに平常心に戻る。
しかし、これを止められるものかと考える。
ともかく、あれへの攻撃からだと、通信を始める。
「全機、攻撃開始せよ」
『了解!』
国防軍が誇る戦闘機四機が一斉にミサイルを放つ。
長距離滞空能力を持つ自立型空対空ミサイル、91式空対空誘導弾は狙い違わず二つの異物に突っ込む。
爆発音と共に煙が上がる。
「やったか?」
煙が引くのを見計らい、飛場が戦闘機を近づける。
『隊長! 危険です!』
部下達の心配よりも、飛場が率先すべきは任を果たすことだった。
あれは倒したのか、倒してないならば、どの程度の損傷を与え、後何発で倒れるのか。
煙が晴れ、その先に飛場空尉が見たものは——
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