二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
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- キテレツ大百科 昭和の間違い
- 日時: 2011/03/15 23:04
- 名前: 上野宝彦 (ID: ieojggCq)
どうも。初めまして。上野宝彦でございます。藤子作品を中心に2次小説を作っています。よろしくお願いします。
さて、今日から「キテレツ大百科 昭和の間違い」を書きたいと思います。あらすじは
1981年、東京にある板橋区立志村小学校では、夏休みの課題宿題に「昔の東京の様子を調べよ」というものが出された。そこに通っている11歳の木手英一は、航時機で昔の東京の様子の写真を撮ろうと考えた。終業式が終わって、彼は、ブタゴリラ・トンガリ・みよ子に呼ばれ、一緒に航時機に乗ることが決まる。彼等はそれに乗るのだが、航時機が壊れて不時着墜落。到着した場所は、40年前の国会議事堂であった。英一達は国会議事堂の中を見学していた。彼等は公安に見つかったが、とある政治家に間違えられ陸軍省に連れて行かれる。彼等は1981年の世界へ戻る事が出来るのか?
これがあらすじです。そして、主な登場人物です。
〜登場人物〜
木手英一・本作品の主人公。とある外交官に間違えられる。
熊田薫・ブタゴリラ。とある海軍軍人に間違えられる。
尖浩二・とある陸軍軍人の者に間違えられる。
みよ子・とある貴族の妻に間違えられる。
まだまだ、沢山の人物が出てきますが、今日はこの辺で(−−〆)
では、始まりますよ。そして、昭和の軍人・政治家・外交官など知っている方はコメントください。話の感想もお待ちしています。
- Re: キテレツ大百科 昭和の間違い 第1話 陸軍省へ ( No.1 )
- 日時: 2011/03/25 14:39
- 名前: 上野宝彦 (ID: ieojggCq)
第1話 陸軍省へ
昭和15年、西園寺公望元老が逝去せしめる夜に、私に言われし言葉あり。「君の身代わりが来るであろう。その時まで待て・・・」
1981年、東京の板橋では平和の時間が過ぎていた。今日は7月。快晴の空だ。小鳥の鳴き声も心地よい。
板橋区立志村小学校では、夏休みの課題研究としてこの様な宿題が出された。『昔の東京の様子を調べよ』というものであった。その学校の5年生、木手英一は航時機から写真を撮ろうと思っていた。彼が行きたいと思っていたのは昭和から嘉永年間の間であった。彼は着々とその準備に取り掛かった。
終業式が終わった。英一が学校を出ようとすると後ろから声がした。みよ子とトンガリとブタゴリラであった。「キテレツ。ちょっと待てよ」と呼びかけた。彼は振り向いた。「なあ、お前は課題研究の事ちゃっちゃっと済ましてしまうもんな。どうせならお前に宿題を頼もうというわけだ」「それはいけないよ。自分の事は自分でやらなきゃ」「真面目野郎だぜ」「じゃあ、それなら僕の航時機で時代を見に行くのはどうだい」彼は全員が嘉永年間まで行くとは思いもよるまいと思っていた。案の定、いいという返答が返ってきた。英一は笑った。「じゃあ、明日午前8時集合だよ」「分かったわ。キテレツくんの家に向かうわ」「僕も向かうよ」「約束が違ったらどうなるのか分かっているのか?」ブタゴリラが顔を近づけた。英一は冷や汗をかきながら「うん」とだけ答えた。彼も、心中では不安の念を抱いていた。これで、決まったのだ。
そして、出発の日がやってきた。彼等はリュックなどをしょって家にやってきた。「おじゃまします」彼等が入ってくる。「おはよう。英一ね。英一」母が応対に応じた。「いえ、呼ばなくて結構ですわ。私達が彼のそばに行きますので」みよ子達は冷や汗をかきながらニッと笑った。「分かったわ。英一なら上にいるわよ」「ありがとうございます」彼等は安堵した。ばれなくてよかったと思った。いつも通り、作業場に彼はいた。「キテレツ。約束は出来ているんだろうな」「ほら、これさ」英一が木でできた物体に指差した。彼等はぽかんとしていた。「大丈夫なのか?この様なもので」「いいんだよ。これでいいの」コロ助も一緒に行きたそうにしていたが、前の課題研究で引き替え用のボタンを落としてしまったので行けないのである。一人うずくまっていた。「行ってくるなりか?」コロ助が涙を流しながら言った。「うん。行ってくるよ。ママとパパを頼むよ」「キテレツ・・・」4人は航時機の上に乗った。もちろん操縦は英一である。「では、歴史の旅へ。レッツ ゴ—」「おー」彼等は拳をあげた。そして、航時機は出発したのである。「まず、10年前を調べないとね」みよ子が笑いながら言った。「そうだね。だけど、それは後にしようよ。10年前なんて僕等は生まれているんだから」「それもそうだな」皆はそこを離れた。4分は進んだであろう。急にガタンと音がし始めた。「おい、キテレツ。おかしくないか。さっきガタンと言ったぞ」「大丈夫。何かの衝撃だよ」だが、その音がした途端、強く揺れ始めたのである。「うわー」時間が経つ度に、比例の様にその振動は強くなる。彼等の乗った乗り物は、あっという間に二次元空間を離れてしまい、乗り物が地面に逆さまになって落ちた。 彼等は少し眠っていたようだ。「うん。ここは」英一が眼鏡でじっくり見る。ヨーロッパの宮殿の様な庭園。なぜかしらの門。そして、この大きな建物。「ここは、国会議事堂の中じゃないか」彼は大きな声を発した。「どうしたんだ。ゲッ!」彼等は見たとたん驚いてしまった。その建物は、昭和16年〔1941年〕当時の国会議事堂であった。彼等は、滅多に入れない場所だからと言い、警備員にばれないように、静かに中に入って行った。政治家などの服装を彼等は見た。なぜか古臭い。背広を着ているが、ネクタイが細く、ひもの部分が見えていたり、軍服の者がいたり、なかには国民服の者までもがいた。彼等は、昔の日本の様子を伝えるドラマのセットを見ているようだった。自然に笑顔が表れた。 彼等は公安や秘密警察にばれない様に歩いていたつもりであったが、それも忘れてしまったのであろう。秘密警察の者に付かれていたようである。「お前ら」彼等は呼びとめられた。英一が後ろを振り向くと怖そうな形相の国民服を着ているものがいるではないか。彼等は震えてしまった。ばれてしまったのか?彼等の頭の中にはそのことしか考えられなかった。
英一が後ろを振り向いた瞬間、彼の顔は急に変った。そして、「東郷閣下。東条陸軍大将がお呼びです」と敬礼をしながら言ったのであった。英一はポカンとしてしまった。「すぐに陸軍省へ赴き下さい」
え?東郷って僕の事?明治の軍人の東郷平八郎はとっくに死んでいるはずだぞ。誰なんだ?東郷と言う奴は?
そんな事を思っている間に、秘密警察と思われる仲間がやってきて「東郷閣下。お行きください」と言い、彼の手を肩にかけ、国会議事堂を離れようとしていた。「違う。僕は、東郷とかいうやつじゃない。僕は木手英一という少年だ。違うんだよ。助けてくれ。みんな。みんな」英一は声を張り叫んだが、彼等は英一が連れて行かれるのを見るばかりであった。「みんな」彼はしおれてしまい、用意された車で市ヶ谷にある陸軍省に連れて行かれた。
陸軍省に着いた英一は、すぐに着替えさせられた。あの、政治家の服装の背広と、細いネクタイ姿である。「東郷さん。お入りください」誰かが呼んだ。彼は立たされ、その男の前に出た。そこに現れたのは、東條英機陸軍大臣であった。「東郷茂徳さん。お座りください」
やっとわかったぞ。僕が間違えられていた人物は東郷茂徳と言う外交官・政治家だ。そして、この前にいるのは・・・。東京裁判で殺される張本人、東條英機・・・。
「今日お越し頂いたのは、第3次近衛内閣が退陣して、私に総理大臣の大命が下ったからなのです」東條は、髭を触りながら、秘書にコーヒーを持ってくるように指示させた。「はあ。それで」英一は、東郷茂徳になりきり返答した。「東郷さん。あなたに、外務大臣と拓務大臣に就任していただきたい」東條は机に手を当てた。英一は急に暗くなった気がした。自分がやった事がない大臣に就任するのだから仕方ない。「あの、失礼ですが、他にいい人がいると思いますよ。例えば、松岡さんや、廣田さんがいるじゃないですか」東條は英一のほうを向いて話した。「あなたじゃないとできないのですよ。この仕事は」「もしかして、詔なんか出されていないでしょうね」「いいえ。出されておりますよ」東條は顔を怖くさせた。そして「東郷茂徳公 諸君を外務大臣兼拓務大臣に就任すべし 裕仁」と読み、「この通り、出されております。天皇陛下はあなたを慕っておいでなのです。これほど名誉なことはない。天皇陛下万歳」東條は一息置き「そして、私と一緒に戦陣訓を広めてくれませんか。あなたにも守っていただきます。もちろんですよ。そして、これを覚えてください。『生きて虜囚(りょしゅう)の辱(はずかしめ)を受けず、死して罪禍(ざいか)の汚名を残すこと勿』ですよ」「分かりました。私でよろしければ」英一は東條に向け頭を下げた。「有り難うございます。やはりあなたは私の友達だったのですね」
ーいや、詔を言われると普通はしなきゃいけないというもんでしょうが・・・。
「まあ、そうですね」英一は笑ってごまかした。東條は英一の肩に手をおき「信頼していますよ。一緒に頑張っていきましょう」東條は笑っていた。
東條は次の人物を呼び出した。嶋田繁太郎である。
「嶋田さん。お入りください」英一は驚いた。嶋田と名乗って軍服か大礼服を着ている者は、ブタゴリラ〔熊田薫〕だったのである。彼は英一に向かってニッと笑い、腰掛けた。「嶋田さん。第3次近衛内閣が退陣して、首相の大命が私に回ってきた事についてです」「分かっていますよ。私を海軍大臣にさせたいのでしょ」すごい即答だなと彼は思った。「その通りです。よくお分かりだ。確かに、寺島さんの様に海軍出身者でも、逓信大臣兼鉄道大臣にさせていますが、なぜ、お分かりに」「米内光政より聞き及びました」「米内さんからですか」「ですが、お言葉ながら海軍大臣は辞退させていただく考えであります。もっといい人はおります。何度も海軍大臣をしていらっしゃった米内光政さんや、真面目な山本五十六連合艦隊総司令官や、永野修身連合艦隊司令長官などのお偉方を就任させてはいかがでしょう。私は、海軍大将と言う位しか仰せつかっておりませぬので・・・」いつものブタゴリラと違っていた。まるで、このころのことをよく知っていたかのような感じであった。東條は怒りだした。そして、腰掛けている陸軍の刀を持ってきてブタゴリラの首に近づけた。そして「ぐずぐず言うな。海軍大将と言うのはすごい有り難い役目だということを知らぬのかい。君の出世道がここで決まるんだぜ。そして、天皇陛下からの詔も出ているんだぜ」「かしこまりました。海軍大臣に就任いたします」ブタゴリラの体は冷や汗に塗れていた。「それでこそ愛国心を持っている証拠なのさ。アハハハハ」彼は笑い始めた。2人は馬鹿らしく東條を見続けていた。〔第2話へ続く〕
- Re: キテレツ大百科 昭和の間違い 第1話の語句 ( No.2 )
- 日時: 2011/03/20 08:47
- 名前: 上野宝彦 (ID: ieojggCq)
第1話には沢山の人の名前が出てきてややこしくなりそうですが、全員この物語に登場してくる人物です。では、ご紹介しましょう。新しく登場する人物は、またご紹介する予定でおります。
〜登場人物紹介〜
東郷茂徳〔木手英一〕・国会議事堂内で秘密警察に間違えられた。
嶋田繁太郎〔熊田薫〕・国会議事堂内で秘密警察に間違えられた。
東條英機・1884〜1948。 陸軍軍人。政治家。第40代内閣総理大臣。明治38年〔1905年〕に陸軍に入る。1936年〔昭和12年〕に関東軍参謀長に就任し、陸軍次官に就任し、1940年〔昭和15年〕に近衛内閣で、陸軍大臣に就任し、軍事訓を書き著した。1941年〔昭和16年〕に内閣総理大臣に就任し、大東亜戦争の4年間を首相として過ごした。1945年に戦争が終わると、GHQに戦争犯罪人として逮捕される可能性が出てきたので、銃殺自殺するが、心臓から少し外れていたため一命を取りとめ、逮捕され、1948年〔昭和23年〕に死刑判決を受け、巣鴨刑務所内で絞首刑に処された。
トンガリ・英一の友。英一が連れていかれている後に間違えられ、とある陸軍軍人にされた。
野々花みよ子・英一のガールフレンド。彼らが連れていかれているところで間違えられ、とある貴族の妻となった。
西園寺公望・1849〜1940。貴族・政治家・内閣総理大臣。1906年〔明治39年〕に首相に就任し、1911年〔明治44年〕にも就任した。首相を辞めると、元老に就任した。最後の元老として活躍し、沢山の人を総理大臣に推薦させた。1940年〔昭和15年〕11月24日に92歳で死去した。
コロ助・キテレツ大百科に出てくる木手英一が作ったロボット。
コロッケが大好物。
〜語句説明〜
板橋・東京都板橋区の意。住宅地として有名。
志村・東京都板橋区にある地名。東京都交通局三田線に駅がある。
板橋区立志村小学校・板橋区の志村二丁目にある学校。竹村よしひこさんの漫画「わ〜お!ケンちゃん」にも主人公・志村ケン太が通う小学校として出てくる。
嘉永・江戸時代後期の年号。1848年から1854年までの間に使われた。嘉永6年の浦賀のペリー来航はとても有名。
国会議事堂・東京都千代田区にある政治の議論を話し合う場所。1936年〔昭和11年〕に建てられた。
国民服・1940年11月2日公布の国民服令によって男の人の服装。制服によく似ている。
秘密警察・特別高等警察の事で、社会主義理論者などを捕まえる人々の事。1945年に廃止された。
東郷平八郎・1848〜1934。明治時代の海軍軍人。日清戦争や日露戦争で日本を勝たせる役目を果たした。昭和9年に86歳で亡くなった。
東郷茂徳・1882〜1950.昭和時代に活躍した外交官。東條内閣の時に、外務大臣と拓務大臣を務め、鈴木内閣の時に外務大臣を務めた。GHQに逮捕され、有罪と判断され、禁固20年の判決を受け、その2年後に病気で世を去った。
拓務大臣・1929年から1942年まで存在した日本の省庁。日本の植民地の統治事務や、監督、南満州鉄道などの業務監督を担当とした大臣。
松岡さん・松岡洋右の意。
廣田さん・廣田弘毅の意。
戦陣訓・東條英機が陸軍大臣の時に執筆した本。その教え。
詔・天皇から出される命令の事。
嶋田繁太郎・1883〜1976。海軍軍人。海軍大将。海軍大臣。東條英機内閣の時に海軍大臣として就任した。戦後は、GHQに逮捕され、東京裁判で終身刑の判決を受けたが、昭和30年に釈放され、1976年。92歳で世を去った。
大礼服・明治初期に導入され、大日本帝国憲法発布に至る立憲君主制確立の過程で整備された服制に於いて定められた制服の一つであり、大日本帝国の華族・文官・武官が着用する最上級正装の事。第2次世界大戦後に廃止された。
寺島さん・寺島健の事。
逓信大臣・郵送大臣の古い言い方。郵便局を統括する大臣。
米内光政・1880〜1948.海軍軍人。海軍大臣。第37代内閣総理大臣。
岩手県盛岡市に生まれた。1901年〔明治36年〕に海軍に入った。1940年〔昭和15年〕第37代内閣総理大臣に就任した。だが、陸軍の揺さ振りにあい、短期内閣となった。小磯内閣や、鈴木内閣で海軍大臣に就任し、戦後、東久邇宮内閣や幣原内閣で海軍大臣に続けて就任し、最後の海軍大臣として戦後処理にあたった。1948年〔昭和23年〕68歳でこの世を去った。
山本五十六・1884〜1943 海軍軍人・元帥・海軍大将・連合艦隊司令長官。真珠湾攻撃や、ミッドウェー海戦で指揮を取り行った人物である。
太平洋戦争の日本を代表する提督として広く知られている人物である。1904年〔明治37年〕に海軍に入り、米内光政などと海軍を盛りたてた。
昭和18年(1943年)4月18日、前線視察のため訪れていたブーゲンビル島上空で、アメリカ軍に通信文を傍受されたため乗機一式陸上攻撃機をアメリカ陸軍航空隊P-38戦闘機に撃墜され戦死した(海軍甲事件)。遺骨はトラック諸島に一旦運ばれて、その後内地に帰還する戦艦武蔵によって日本本土に運ばれた。山本は国葬にされ、多摩霊園に葬られた。
永野修身・1880〜1947.海軍軍人・元帥・海軍大将・連合艦隊司令長官・軍令部総長・海軍大臣。1936年〔昭和11年〕3月9日、広田弘毅内閣の海軍大臣に就任し、「国策の基準」の策定を推進する。戦後は、GHQに捕まったが、判決を待たずに死去した。
裕仁・昭和天皇の皇太子時代の名前。本名。
元老・第2次世界大戦前の政府の最高首脳であった重臣の事を言う。内閣総理大臣の推薦などを行った。
これで終わりです。とてもややこしいでしょ。ですが、登場人物の中で出てくる人物達ですので、また、出るのを楽しみにしてください。第2話もお楽しみに。
注・この作品はフィクションですので、歴史的事実と違うことを書いている虞があります。
- Re: キテレツ大百科 昭和の間違い 第2話 東條内閣誕生 ( No.3 )
- 日時: 2011/03/21 16:44
- 名前: 上野宝彦 (ID: ieojggCq)
第2話 東條内閣誕生
ここからは、英一の事を東郷。熊田の事を嶋田と書く。
彼等は東條英機のいる部屋を出た。廊下で、彼等は立ち止まって話し合った。「どうなっているんだ。俺らは誰かに間違えられているらしい」「うーん。なぜだろうね?」彼等は椅子に座って話し始めた。そして、嶋田はなぜか東郷の胸ぐらをつかみ始めた。「お前がこんなのに誘ったからこんなことになったんだぜ。どうしてくれるんだ。キテレツ」「ごめん。あの航時機じたい壊れるとは思いもよらなかったんだ」「この野郎」海軍軍人という大物が政治家と言うひょろひょろな体に殴りかけた時「やめろ」と言う声が聞こえた。彼は、東郷を離した。「何しているんだ。君たちは」「あなたは?」東郷が聞いた。「おいおい。この軍人様の名前も知らないのかい。そうか。君は外交官さんだもんな」「なんだと」東郷は腹を立てた。軍人だとしても自分を馬鹿にしたのだからそれもありえろう。そして、陸軍の帽子を取った。「私は、板垣征四郎と言う」「アハハハハ」嶋田が笑い始めた。「だってお前。トンガリじゃん。そんな劇しなくてよかったのによ」確かにトンガリであった。「良く気づいてくれたね。そうだよ。トンガリだよ」彼を2人は抱きついた。「みんな、ここにいたの」みよ子も陸軍省の中に入ってきたようだ。「私、近衛文麿が妻 千代子よ。よろしくね」彼女はウインクをした。確かに近衛文麿と言う金持ちの政治家の妻だけある。ドレスのようなものを着ていたのだから。「みんなも間違えられたようね」「うん。そうなんだ」板垣が心配そうな顔をして言った。「だけど、キテレツのこのダボダボの格好はおかしいや」嶋田がまた笑った。「で、誰に間違えられたのかしら。みんなは」「僕は、東郷茂徳という政治家・外交官に」「俺は、嶋田繁太郎という海軍の軍人に」「僕は、板垣征四郎という陸軍軍人だよ」「私は、先程言ったわね。でも、なぜ間違えられるんでしょうね」「似ているからじゃないの」東郷が平然とした顔で言った。「あ、ちょっと待って」東郷は、走って陸軍省を飛び出した。「あいつ、何処に行くんだ」「さあ」
東郷は、昔の東京の街を走りながら国会議事堂に戻っていた。門にやってきた。ここに、航時機を落としたんだ・・・。それを思いながら中庭にやってきた。東郷の顔が青ざめた。航時機がない・・・。どうしよう。これがなけりゃ帰れないよ・・・。一人で悦に入った時、後ろから声が聞こえてきた。「東郷さん。東郷さん」「はい」東郷は顔をあげた。前には見たことがある人物がたっていた。「どうも、石原莞爾と申します。近衛卿がお呼びです」「近衛卿が?」近衛卿というのは近衛文麿の事である。「本当なのですか?」「はい」「ですが、石原さんがここにいる自体おかしくないですか?」「今日は有休なんでね・・・」「ほう。それでは、連れて行って下さい」東郷は石原についていく。国会議事堂の中に入って行った。
近衛は、一人煙草をふかしながら待っていた。「お連れしました」石原莞爾が敬礼をしながら言う。「帰って良いぞ」「は」石原は急いで走って行った。満州に早く帰らなければならなかった。「東郷君。これは凄いものだね。感嘆したよ」彼は見た。それは、英一が作った発明機 人検索機である。「私の事も書いてあるんだね」「近衛さま、お言葉ですが、この機械をお返し願いませんでしょうか」「君のなのかい?」「はい」「分かった。返そう。だが、これのせいで僕の死ぬ時が分かってしまったじゃないか。どうしてくれるんだ」「申し訳ありません」「まあ、いいよ。こんな事信じるわけがないからね」彼はそれを返してもらい、すぐに陸軍省に向かう。「東郷だ。早く通せ」「はい」兵が開ける。「おい、遅いじゃないか」嶋田と板垣は手を振っていた。そこに到着すると息切れが激しく、しばらくは動けなかった。「これを取りに行ってたんだ」「なんだ。これ」「これは、人検索機だ。検索してみようか。例えば僕だと・・・・・という感じで出るんだ。さあ、間違えられた人物を言いな。じゃあ、ひっくるめて検索するよ」すると、沢山の人物が出てきたではないか。東郷は顔を青くさせた。「どうしたんだ」熊田が心配そうな顔で尋ねた。「この中の2人は死ぬことになる。何年後に」「なぜ?」トンガリが尋ねた。「日本が戦争に負けるのは知っていることだと思うが、その後に、東京裁判というものがある。そこでここの誰かは死ぬんだ。絶対に」「嫌だ。それは嫌だ。キテレツ。どうにかしてくれよ。歴史を変えてくれよ。お願いだよ」トンガリが泣きじゃくりながら言ったが、英一は考えながら言った。「だけど、歴史を変えることは困難なことだよ。無理にきまっているじゃないか」「そこをなんとか。ね・・・」トンガリは頭を下げ、手を合わせていた。「無理。なぜ無理かと言うと、生きれる可能性もあるからだよ」トンガリは納得したせいか、言葉を発しなくなった。「僕は今から閣僚と撮影会があるから、これで失礼するよ。行こう。ブタゴリラ」「ああ」彼等は首相官邸に向かおうとしていた。
その日の夜、日本ニュース72号で、この様な放送がされた。題名に東條英機新内閣成立というもので、「近衛文麿が首相を辞め、大命は東條陸軍大臣に下りました。午後5時30分、首相官邸にて初閣議を開催。
星野内閣書記官長・寺島逓信兼鉄道大臣・岸商工大臣・嶋田海軍大臣・賀屋大蔵大臣・東郷外務兼拓務大臣・東條内閣総理大臣兼陸軍大臣兼内務大臣。と紹介するものであった。
彼等は首相官邸に着いた。「あの儀式が始まるな」「うん。とても楽しみだね」彼等は笑顔で酌を酌みながら話し合っていた。もう、写真撮影は終わり、楽しみの時間に入っていた。「これはこれは、お2人さん。軍人と政治家が仲良しということは聞きませんが・・・」一人の男が話しかけてきた。「あなたは?」彼等はその男に向かって尋ねた。「ひどいな。東郷さん。嶋田さん。僕は賀屋興宣と言います。大蔵大臣に推薦されました。これからもどうぞごひいきに」「はい。一緒に仲良くしていきましょう。さあ、一緒に酌を酌みあわしましょう」「乾杯!」3人は飲み交わした。沢山の話をした。「そうでしたか。ハハハ」などと酔っ払いながら話を進めた。「あれ、あそこに一人で飲んでいる人がいますが・・・」東郷は、神通鏡を下げたりしながら見ていた。「確かにそうですな。賀屋さん。あの方は」賀屋は「岸信介さんですね。商工大臣になった方です。前から人づきあいしない方でして・・・」「そうなのですか。可哀想に思いますね。誘ってあげましょうか」東郷は優しい気持ちでそれを言った。「東郷さん。あなたは本当に優しいお方だ。感銘を受けましたよ」「いや、それほどでもないです。アハハ」東郷の顔は赤くなり、照れていた。「賀屋さん。ご冗談がうまい」嶋田もそれにのり、手をのせた。「岸さん。私たちと一緒に飲みましょうよ」「え、よろしいのですか」岸は面目なさそうな顔で酌を持ってきた。「もちろんですよ。一緒の内閣の仲間入りじゃないですか。これからも、仲良く行きましょう」「ありがとうございます」岸の顔に涙あふれた。「じゃあ、もう1回やりましょうか」賀屋が大きな声で言う。「乾杯!」4人は沢山飲んだ。
「おめでとう。入閣おめでとう」東條が星野に支えながら、皆の肩を叩いている。「東條さん。そこまで呑んでしまってよろしいのですか?」嶋田が問いかける。「もちろん、いいのですよ。今日は無礼講です。深夜まで飲み明かしましょう」「そうですな」賀屋がニコニコとしながら言った。
東郷は星野が気になった。「星野さん。大丈夫なんですか。東條英機首相をもたれさせていますが」星野は笑顔を見せ「よろしいのです。内閣書記官長なのでこれぐらいの事はしなければなりません。それが普通というものですよ」「私が変わりましょうか?」東郷が星野に言った。「よろしいですよ」東條は急に大きな声を出し始めた。「皆さん、外に出てください。酒を飲んだ後の外は気持ちいものですよ」
彼等は外に出た。10月18日の事であった。彼等は夜空を見上げた。「いつもは気付かない夜空が、今日はきれいに感じるよ。沢山の星空がある。その星々は、君たち、日本臣民なのだよ。一番明るい星は、天皇陛下であらっしゃれる」「まさに」嶋田と星野は独り言の様に言った。彼等は、任期の間に各省庁ともに協力する事を皆誓った。「見よ。夜明けだ」東條が言った。彼等は、夜明けの様に政治が徐々に明るくなるような感じがした。だが、運命の御前会議まで、後2ヶ月を経っていた〔第3話へ続く〕
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