二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
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- 【イナイレ】〜俺のサッカー〜『第七章・明かされる記憶』
- 日時: 2012/10/22 18:05
- 名前: まい (ID: CMvpO4dN)
は〜い初めましてまいです!!
私は小説を書くのは2回目ですが、1回目はケントと一緒にリレー小説だったので一人で書くのは初めてで正直不安でいっぱいです。はいこんな私ですが暁をよろしくお願いします!!
3月14日:一章開始!(ちょっと修正が全話入ります)
〜プロローグ〜
俺は昔、両親に捨てられたんだ。それはあの日。
『おとうさん!・・・・おかあさん!!・・・・どこにいるの!?』
8年前、辺りが真っ暗な森のなかずっと俺は泣きながら叫んだ。何度も、何度も叫んだが、自分の声が反響するだけだった。しだいに喉がかれて声が出辛くなる。視界が揺らいでただその場に座り込んでしまった。
『へんじくらいしてよ・・・・・』
『坊やどうした!? ひどい怪我をしているじゃないか!!』
その時、目の前に光が見えた。発見してくれたおじさんが近寄りながら声を震わせていた。
『え? けが?』
一瞬、何を言われたのか分からなかったが、自分の体を障ったら、背中にぬるぬるとした感覚がある。
恐る恐る自分の手を見ると真っ赤に染まっていた。その怪我に気づいた当時の俺はすごく混乱した。
『なにであかい・・・・・もしかして、血なの? う、うわああぁあぁぁあ!!!』
その場にいたおじさんが手当してくれて一命は取り留めたが、背中の傷は一生のこると医師に言われ、その頃から、暗いところが大嫌いになり。サッカーも大嫌いになった。人も嫌になった。俺は生きている価値もわからなくなった。その答えがわかんなかった。
雷門としてサッカーをするまでは・・・・・
*目次*
オリキャラ、暁 直也(一条 氷空)>>1 東條 颯音>>108 ティム>>109 暁家>>116
オリキャラバトン>>277 ←ちょっと変えました アンケート>>325
第一章『氷のテクニシャン』(全20話)
>>2 >>3 >>4 >>7 >>8 >>9 >>16 >>21 >>24 >>25 >>26 >>30 >>31 >>32 >>39 >>44
>>45 >>46 >>47 >>54
第二章『暁と影山』(全16話)
>>56 >>57 >>58 >>59 >>60 >>61 >>62 >>63-64 >>65 >>66 >>69 >>70 >>71 >>72
>>73 >>74 >>75
第三章『大波乱の遊園地!』(全20話)
>>77 >>79 >>80 >>81 >>82 >>84 >>85 >>86 >>87 >>88 >>89 >>90 >>92 >>93 >>94
>>96 >>99 >>100 >>104 >>105
第四章『暁の弟をスカウト!?』(全22話)
>>107 >>111 >>112 >>115 >>117 >>123 >>127 >>128 >>129 >>130 >>133 >>136 >>137
>>140 >>141 >>145 >>147 >>148 >>149 >>150 >>151 >>152
第五章『運命は動き始めた』(全21話)
>>155 >>166 >>167 >>168 >>169 >>174 >>177 >>179 >>180 >>184 >>187 >>190 >>191
>>192 >>195 >>198 >>201 >>204 >>209 >>212 >>214 >>216
第六章・『奇跡の新タッグ!』(全22話)
>>218 >>220 >>221 >>222 >>226 >>229 >>233 >>235 >>237 >>240 >>243 >>244 >>245
>>249 >>251 >>253 >>254 >>255 >>256 >>259 >>261 >>267
第七章・『明かされる記憶』
>>270 >>274 >>282 >>285 >>290 >>291 >>293 >>296 >>298 >>302 >>304 >>306 >>309
>>314 >>315 >>317 >>318 >>320 >>321 >>322 >>327 >>333 >>334 >>335 >>337 >>339
>>342 >>344 >>345 >>346 >>347
番外編
10日はXデー >>157 >>160 >>164 >>165 本当の願いは? >>203 出会う前は (颯音編)>>110 弟の誕生日 >>311
質問コーナー >>122 >>125 >>162 >>206
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- Re: 【イナイレ】〜俺のサッカー〜『第七章・明かされる記憶』 ( No.333 )
- 日時: 2012/04/21 18:44
- 名前: まい (ID: louOLYa3)
〜第22話〜「吹雪、復活?」
※勝手な解釈が一部あります。アニメと手順が色々変わっている※
究極必殺技が破れてしまい、完全に押されている状態でみんなの士気が下がっていた。不安になるのは当たり前だ。しかし、これでは対等にやっていたプレーに支障が出てきてくる。この状態でやり合えば・・・・負ける。そう直感する円堂はなんとか皆を立ち直らせる言葉を考え出す。
円堂が考えだそうとした瞬間に瞳子監督がベンチから立ち上がって選手全員に向かって叫びこんだ。
瞳「顔を上げなさい! これまでにやってきた特訓を思い出して。諦めず、立ち止まらず、一歩ずつ積み重ねてここまで来た。自分を信じなさい! そうすれば、貴方達は勝てる!私は信じているわ!」
その監督の顔は今まで見てきた冷酷ではなかった。本当の雷門の監督である顔だ。その一言で雷門イレブンは今までやった特訓や試合を思い出す。確かに、最初はジェネミストームにコテンパンにされたが、今は最強のジェネシスと戦っている。それほど、自分達は成長していると自覚すれば、雷門イレブンは再び試合に集中する。
試合再開するホイッスルが鳴り響く。リカがボールを豪炎寺に回して勢いよくDF陣も攻め上がってきた。が、素早く動いたティムが立ちふさがった。
ティ「・・・・・<ディメンションウォーター>」
その瞬間、ティムの足元から水の壁を噴射させて目の前にいる豪炎寺を吹き飛ばしてボールを奪い取ってしまった。分かりやすく言えば<ウォーターベール>のディフェンス技バージョンのようだ。
ティムは薄く笑って、ゴール前にいるグランへと少し強めのパスを送り出す。DF陣の頭上を通り越してグラン飛んでカットしようとした瞬間。グランよりももっと高く飛んだ暁がパスカットした。素早く空中でパスしようとするが、全員マークされていてパスが出せない。そう判断した暁はやむを得ずボールを外に出す。
暁「くそっ! 防戦一方か・・・・明らかにアイツらの方が優勢だ。このままだと、ワンサイドゲームになる可能性が高い。何かしないとこっちのリズムが作れない」
円「何かを?・・・・・誰かが点を取ればリズムがつくれるのか?」
暁「例えば、誰かさんをこの試合で思い切って使うとか・・・・まぁ、本人自ら決断する必要があるけどな」
暁はじっとベンチにいる吹雪を見つめた。一方、その吹雪は脳裏にあることが浮かび上がった。
・
・
僕はココで何をしているのだろう? なんで、こんな所で見ているんだ? 完璧になるためにキャプテンや皆と戦うことを決めたのに・・・・。
アフロディ君は自分を犠牲にしてまで戦った。染岡君は僕にFWを託してくれた。豪炎寺君は強くなって帰ってきた。僕がこのままベンチにいて良い訳ない! 分かっている! これじゃあ、何も変わらない。何もできないのか? またあの時と同じように!
あの時のことが走馬灯のように鮮明に浮かび上がっていく。
数年前、試合で勝って、その帰り道に突然の雪崩で怒った悲劇。天地がつかめない程の衝撃が襲い、目の前が真っ暗になって、何も見えなかった。最後に握りしめた手はいつの間にか離れていて、アツヤのマフラーを掴んでいたんだ。
あの雪崩のせいで僕は家族を失って、一人ぼっちになった。もう、あれを繰り返されるのは嫌だ!
完璧じゃないから僕は誰ひとり助けられない・・・・完璧じゃないから試合に出ることさえできない! でも・・・・でも、僕は皆を!
・
・
その時、吹雪がベンチから立ち上がった。その時の吹雪の手は震えていて、何かに怯えているように感じ取れる。それでも、恐怖を乗り越えようとする姿がしっかりと瞳子の目に焼き付かれる。
吹「監督、僕を試合に出して下さい! 僕は皆の役に立ちたいんです。」
瞳「・・・・・分かったわ。選手交代! 浦部 リカに代わって吹雪 士郎!」
一瞬、監督も判断が出来なかった。吹雪はあのイプシロン改戦以来、ロクに練習参加しなかったし、ボールに触れることすらなかった。この場面で参戦するのには更に危険が伴うということだ。
だが、状況は防戦一方。吹雪を投入するタイミングは今しかない。それに、完璧になる答えはグランドでしか見つけられない。そう思って瞳子は交代の指示を出した。
颯「ちょっと兄貴・・・・・大丈夫か? 先輩を信頼しているけど、この場面で試合に出させるなんて」
暁「大丈夫。あいつはきっと、この試合の流れを変えてくれるはずだ」
円「そうだな。俺達が出来ることは、ひたすらボールを吹雪につなげることだけだ! みんな、出来るだけ吹雪にパスを集中させてくれ」
そうだ流れを変えるとしたら、今しかないんだ。信じるしかない。きっとそれが仲間である自分たちが唯一出来る支えだ。あとは、自分自身で乗り越えられない壁を越えるしかないんだ。
どんなに危険を伴っても、同じチームを支えるのが仲間の役目だから。全員、円堂の指示にうなずいた。
正面スタンド側の手前、リフェンスライン辺りからジェネシスのスローインから試合再開。ホイッスルが鳴り、ボールをアークはウルビダに向けて投げた。少しゆるい弧を描くボールにいち早く反応し、颯音はパスカットをする。瞬時にボールを取りに向かうウルビダ。それをかわすために颯音は高く飛ぶ。
颯「吹雪先輩! 頼みますよ!」
早速、吹雪にチャンスが到来した。相手のゴール前にいる吹雪を確認すると、超ロングパスをする。敵のマークもいなかったので、GKと一対一だ。
パスを受け取った吹雪は人格を変えてアツヤになった。
吹「この試合で俺は・・・・完璧になるんだ!! 吹き荒れろ! <エターナルブリザード>!」
会心を込めた必殺シュートの氷のエネルギーは高速回転をしてゴールに向かう。
<エターナルブリザード>は以前と同じほどの威力があった。時間が経ったから復活を遂げたのであろうか?
ゴールキーパーのネロは少しもあせる様子を見せず、手を前に出した。そして、小声で<プロキオンネット>と唱える。ベスタ状のエネルギーネットがアツヤのシュートを包み込んだ。回転していたボールはいつの間にか止まってしまい、ネロの腕に治まってしまった。完全に力負けしたのだ。
吹「な、なに・・・・」
暁「あいつ。今更、なにしているんだか・・・・・」
遠くで見ていた暁は呆れていた。理由は簡単、今の吹雪はあることに気付いてないからである。今まで通りに人格を変えたって意味がない。やはり今、吹雪をグランドに上がらせたのは間違ったのではないか。雷門イレブン全員が不安を覚えた瞬間だった。
その後の試合展開は防戦一方。D F だけではカバーしきれなく、F W の颯音や豪炎寺もディフェンスに回らなければいけない、つまり攻撃が出来ないという最悪のシナリオが用意されていたのだ。吹雪の<アイスグランド>はジェネシスに効かなかった。技を発動しても、踏み込まれてしまえば技が破れてしまうのである。雷門イレブンは今、歯が立たない状況にあるのだ。
しばらくして、前半残り10分。ディフェンスだった雷門にチャンスが来た。
ティ「グラン、決めなさい」
円 「そうはさせるか!」
グ 「なに!? いつの間に・・・・」
ティムがグランへ上げたセンタリングを円堂が高く飛び、カットする。敵が油断した隙を見て、少し遠くにいた吹雪を発見すれば、そこへ鋭いパスをした。
しかし、吹雪は自分へ向かっていたボールに気付かなかった。下に視線を落として地面を見ていた。
暁「吹雪! ボールが来ている!!」
吹「・・・・え?」
気が付いた時は遅かった。ボールはすぐ横の地面に着き、大きく跳ねてラインから出てしまったのである。吹雪が試合に集中していなかったのが明らかだった。そのことにムカムカした暁が吹雪の元へ歩こうとした。
豪「おい・・・・・」
その瞬間 ————— ボキッ!!!
嫌な鈍い音がグランドに響き渡った。蹴られたボールがモロに入った体は吹き飛ばされて地面に叩きつけられる。一瞬、何が起こったのか敵も味方も分からなかった。しかし、冷静になればすぐに結論付けられる。豪炎寺が拾ったボールを吹雪に向けて蹴ったと。
颯「ちょっと豪炎寺先輩!? いくらなんでも、腹にシュートは・・・・」
暁「あいつは放っとけ、颯音」
颯「で、でもさぁ・・・・・」
確かに、今の吹雪のトラップミス。それも、試合に集中していない様子だった。つまり本気でやっていなかったのは明らかだったので怒るのは分かる。けど、いくらなんでも(手加減はしたと思うが)やり過ぎだと思う。反論しようとする颯音の肩に手を置いて暁は止めた。
暁「俺達があの場にいたら邪魔だ。さっさとポジションに戻れ。豪炎寺を信じろ・・・・・」
念押しに言った最後の一言で颯音は迷いながらも自分のポジションに着いた。暁は自分のポジションに向かいながら、二人の姿を脳裏に焼けつけた。
- Re: 【イナイレ】〜俺のサッカー〜『第七章・明かされる記憶』 ( No.334 )
- 日時: 2012/05/02 18:19
- 名前: まい (ID: louOLYa3)
〜第23話〜「みんなの声」
グランドの片隅で吹雪は怯えている目をしていた。せっかくグランドに立ったが・・・・必殺技が通用しないことで戦意喪失。自力では復活が不可能だったのだ。そんな吹雪の様子を見て、豪炎寺は息を大きく吸い、眉間にしわを寄せながら怒鳴りつけた。
豪「本気のプレーで失敗するなら良い。だが・・・・やる気のないプレーだけは絶対に許さない! お前には聞こえないのか? あの声が!」
吹雪は、なんのことを言っているのか分からなかった。しかし、目の前にいる豪炎寺の瞳が真っ直ぐ澄んでいて、何かを自分に伝えようとしているのはすごく伝わってきたのだ。
試合再開のホイッスルが鳴り、ジェネシスのスローインから始まる。ボールは M F のコーマがトラップし、空中へ上げる。ティムがヘディングでウルビダへつなげた。そして、グランがゴール前まで走って来た。それに気づいた暁が木暮達に指示を出すが、遅かった。ボールはグランの頭上に来てしまったのだ。
グランは飛び上がって<流星ブレード>を放った。怯えている立向居の目の前に、さっきまで前に出ていた円堂が現れて<メガトンヘッド>を発動する。技と技のエネルギーがぶつかり合う。思い切り踏み込んでしぶとく喰いつく円堂のパワーの方がわずかに上だったようだ。ボールは押し返され、高く弧を描いた。そして、センターライン辺りにいる吹雪の胸へ行った。
——————————————— 吹雪!!!
ボールを受け取った瞬間に不思議と聞こえた。皆の声・・・・皆の込められた想いが聴こえた。
・
・
途端に心の中が澄んでいるように見える。今までは真っ暗で何も見えない空間に一人ぼっちでいたはずなのに。目の前に太陽のような明るい光の柱が差し込んだ。その光の中から手を差し伸べるキャプテンが見えて・・・・その温かい手を握って光の中に吸い込められる。そこには、雷門イレブンの皆が僕の周りで笑って、待ってくれていた。どれだけ、ココが温かい所だろう? 自然と笑いがこぼれる。
その時、誰かに手を引っ張られた。後ろを振り返れば、あの時のままの幼いキミが僕の手を握っていた。目線を合わせるために屈むと、キミは安心したかのように無邪気に微笑んでいた。
『兄貴は一人じゃない! もう、俺がいなくても大丈夫だな・・・・・・』
そう言ったキミは僕に力強く抱き着く。顔は見えないけど、涙を流しているように感じた。
ああ、そうか。答えはもう、知っていたことだったのに・・・・どうして今まで気付かなかったのだろう?
父さんが言っていたことは自分がアツヤになるんじゃない。仲間と一緒に戦うこと・・・・・仲間と一つになることだったんだ・・・・・。
でも、キミがいなかったら、僕は雷門イレブンにも出会えなかったのかもしれない。キミがいなかったら、ここまで来られなかった。キミがいなかったら、今の僕はいないんだ。
強引で生意気で、ちょっと皆に勘違いされやすいけど。それでも、世界で一人だけの僕の弟なんだ。僕はキミを誇りに思えるよ。幼い背中に手を回せば、僕の目から一粒の涙が頬を伝った。
———— 吹雪先輩!!
東條君の声だ。後ろを振り向けば、さっきの太陽のような光よりも目を開けられない程に眩しい光の柱が立っていた。多分、ここを走り抜ければ、現実に戻れる。それと同時に、キミとお別れすることになるんだ。
『ほら、行けよ。仲間が呼んでいるぞ』
「嫌だ。まだ行けないよ。まだ僕はキミに・・・・アツヤにちゃんと僕の気持ちを伝えてないから!」
そうだよ。この時間がキミと過ごせる最後の時なんだ。気持ちを伝えないでどうするの? ここで、何も伝えられないでお別れを迎えるのなら、キミも僕も未練が残るに決まっているじゃないか。
そんなの、おかしいよ ———————— だから、最後に僕からの感謝を込めた言葉を聞いてね。
「さようなら・・・・・・そして、今までありがとう。アツヤ」
不思議と涙は出てこなかった。
本当に、キミという弟がいて僕は幸せだった。キミと過ごした日々は一生忘れないからね・・・・・アツヤ。
その時、アツヤの顔は今までで一番、最高の笑顔がそこにあった・・・・。僕はその顔を脳裏に焼き付けて、ゆっくりと離れた。そして、仲間の声がする方向へ走り込んだ。アツヤに見送られながら。
『さよなら、兄ちゃん・・・・・ありがとう』
最後に聞いたその言葉が僕の心を突いた ————————— 。
・
・
暁「吹雪!!」
暁がもう一度叫んだら、吹雪は瞬時に高く飛ぶ。その姿は、迷いを捨てきった新しい吹雪 士郎がそこにいた。答えを見つけ出した吹雪は肌身離さずつけていたマフラーを投げ捨てる。
着地して立ち上がると、その顔つきは今までと違っていた。たれ目だった目は若干釣り目になり、さらには、髪も逆立っている。まるで、アツヤと吹雪が統合したような容姿になっていたのだ。
チームのみんなも唖然とする中、暁、颯音と豪炎寺だけは薄く笑みを見せる。
暁「そのまま豪炎寺とゴール前まで進んで決めろ! 今のお前なら出来る!!」
颯「一発かまして、先輩の雷門魂をジェネシスに見せ付けてください!!」
二人の声援を受けた吹雪はトップスピードで上がっていく。目の前にディフェンダーがいたが、同じタイミングで上がっていた豪炎寺にパスをつないで、先に進んでいく。さっきまで怯えていた同じ人物とは思えない。
吹「これが、完璧になるための答えだ! <ウルフレジェント>!!」
ドリブルでスピードに乗った吹雪は思い切り踏み込んで、空中で狼の爪で引っ掻かれたように鋭い回転をボールにかける。黄色い満月のようなエネルギーが発生する。雄叫びと同時に背後から狼が現れる。そして赤に変わったエネルギーが矢のように速いシュートがゴールに向かった。
ネロはすぐに<プロキオンネット>を発動するが、力の差は圧倒的だった。いとも簡単にネロの技が破れ、ゴールに突き刺さった。
この瞬間、一人のサッカープレイヤー・・・・吹雪 士郎が復活・・・・いや、覚醒した。
円堂達が駆け寄って喜び合う姿を少し遠くにいる暁は唇を尖らせている。
暁「なんだ、思ったよりも早く復帰したじゃないか。心配したのが無駄だったみたいだな・・・・・まぁ、俺にはあんまり関係ないけどよ」
そう言いつつ、暁は一人、瞳子監督の元へ走って行った。
その頃、フィールドを見渡せるほどの高さにあり、120度くらいガラス張りにされている白い、楕(だ)円型の特別ルーム。そこに星二郎は肘掛で革張りのオフィスチェアに座って茶を啜りながら試合見物していた。隣には研崎が立っていた。
目の前で起こったことが信じられなくて研崎は焦っていた。一方、星二郎は別に焦っておらず、落ち着いていた。
研「まさか、このような展開になるとは・・・・」
星「ジェミニやイプシロンを倒した雷門です。考えられないことではありません・・・・・ですが、これは単なる偶然。二度と起こりません」
星二郎の視線の先には瞳子監督と暁が話合っている様子だった。薄く開いている瞳は何を思っているのだろうか?
ベンチに行った暁は身振りをつけながら思いついた作戦を瞳子監督だけに伝えていた。話に区切りがついたところで監督は少し間をあけて、人さし指を口元にもっていく。
瞳「それで、うまくいくのかしら?」
暁「さぁ? 俺はただ、勝つために考えた結果・・・・仕掛けるなら今しかないと判断しただけです。あの案は賛成ですか?」
瞳「・・・・・分かった。貴方を信じてみましょう」
暁「ありがとうございます」
愛想笑いを浮かべて暁はグランドに戻った。瞳子はその背中を心配そうに見つめていた。
ジェネシスからのボールで試合再開する。すると、ジェネシスは速攻を仕掛けてきた。グランがスピードに乗ったまま突き進んでくる。あっという間にゴール前まで来てしまい、飛び上がる。
グ「<流星ブレード>!」
流れ星のように流れる眩い強力なエネルギーがゴールに向かう。立向居は身震いが、先ほどの吹雪のプレーを見たら、忘れかけていた本来自分が持っていたものを思い出した。 G K はゴールを守る重要な役割、ゴールを決められてはいけないプレッシャーは半端じゃない。その心に打ち勝つには大切な何かが必要だった。その大切な何かとは・・・・諦めない心だ。
立「俺も・・・・俺も雷門の一員なんだ! <ムゲン・ザ・ハンド>!」
立向居の<ムゲン・ザ・ハンド>に変化が起こった。今までは4本の腕が現れたのだが、四方八方に分かれる腕が6本に増えたのだ。<流星ブレード>の力を凝縮し、力をねじ込める。やがて、勢いが止まり、立向居の腕に収まった。
暁「究極奥義に完成なし。その真意は必殺技を繰り出すプレーヤーの諦めない心がある限り、進化し続けるってことだったようだな。だったら俺も・・・・・手品でも魅せるか」
敵が唖然としている間に手を挙げて合図を送る暁に立向居はパスを送る。反撃と言う劇だろうか。暁は今までにないほどのスピードを出してどんどんジェネシス側に攻め上がっていた。
その頃、星二郎がいる部屋では、研崎の携帯電話が鳴る。研崎はその音に気付いて少し遠くに行って電話を取った。電話の相手は機械のように冷たくて低い男の声だ。
『研崎様、 エリア D に侵入者です。どうなされますか?』
その男は更なる混乱を招く警告が告げた。
- Re: 【イナイレ】〜俺のサッカー〜『第七章・明かされる記憶』 ( No.335 )
- 日時: 2012/05/26 20:26
- 名前: まい (ID: NBzaXsLD)
〜第24話〜「計画の真意」 ※星次郎さんが黒いです※
薄暗く長い廊下で金属と骨がぶつかっている鈍い音が響く。次々と現れる人型ロボットを確実に顔にあるカメラの部分を的確に狙って殴れば簡単に倒すことが可能だが、数が多い。おかげで目的地である所まで遠く感じてしまう。
「ま、まだですか!?」
「もう少しだ・・・・あと、少しで着く。それまで、耐えるんだ! ゲンちゃん!!」
「この緊急時にその呼び方しますか!?」
ゲンちゃんと呼ばれたのは鬼瓦 源五郎刑事。その彼をこの呼ぶのは暁の父親である。東條 正治だった。なぜ二人がこのアジトに侵入しているかと言うと・・・・それは、つい5分前のこと。
内閣総理である財前 宗助が以前、誘拐された場所がココ・・・・富士山麓にある研究所と警察の調べで判明したのだ。そして、鬼瓦刑事に依頼し、侵入捜査をしていたのだ。だが、試合が始まる前に星二郎が口にしたエイリア学園の真実を聞いた途端に目的を変更した。
それは『エイリア石のエナジーを送っているシステムを破壊する』ことだ。雷門イレブンとジェネシスの試合中継を利用して、民衆の前で力を失っていく様子を見せるためだ。
しかし、そのシステムはセキュリティがかかっているだろう。うかつにシステムを手荒に爆破すると何が起こるのか分からない。なので、内側から確実に破壊するやり方にした。そのために、正治はハッカーとして呼ばれたという訳である。
二人は一気に走り出し、奥にあるメインコンピュータールームに飛び込んだ。ロボットが駆け出してきたが、急いでドアを閉めてロックをすればこっちにまでは来なかった。どうやら、必要以上の追尾機能はついてないようだ。ホッとして二人は安堵の表情を浮かべる。
親父「間一髪か・・・・あーもう。吉良に侵入したのがバレた!!」
鬼瓦「仕方ないですよ。あんなにロボットがいたとは思いませんでしたし」
親父「あぁ。だが、ここまでくれば、もはや勝ったも同然だ」
鬼瓦「それもそうですね」
メインコンピューター室の奥には直径約10メートル。幅は5メートルくらいのごつごつとしたダイヤ型エイリア石が紫の眩い光で部屋を照らしていた。それは、真帝国学園の不動がしていたペンダントと同じエナジーが感じられた。いや、それ以上だ。
奥にある大型コンピューターを発見すると、正治はキーボードにそっと手を置いていじりだした。
鬼瓦「何か、手伝うことはありますか?」
親父「持ってきた小型爆弾を仕掛けてくれ。今、真剣だから。静かにしてくれ・・・・・邪魔するなよ」
その顔は真剣そのもので、普段は穏やかな正治とは別人のようだった。全神経を指に集中させ、まるですごく複雑な楽譜をピアノで演奏するかのように、超高速でキーボードを打ち始めた。鬼瓦刑事はその様子をただ黙って見るしかなかった。
親父「管理者アカウント入手・・・・・権限執行・・・・・これより、データのハッキングを開始する」
目を大きく開いて、更にスピードを速め、次々と画面上にエイリア学園に関する経歴が映し出される。正治はそのデータに介入してどんどんデータを処理していく。順調にハッキングしていると、正治は突如、大声を出した。
親父「なんでパスをしないんだ!! 直也!」
鬼瓦「・・・・・・・え?」
親父「何ドリブルしているんだ!? そこは無理せずパスをつなぐべき! もう少し、雷門に残って、指導した方が良かったか・・・・・早くこんな仕事をほったらかしにして応援に向かわねば!!」
一瞬、なぜサッカーのことを言ったのか分からなかったが、正治の右耳を見れば瞬時にわかった。耳には白のイヤホン。コードの先を辿ると、ポケットに超小型ラジオに差し込んでいた。叫んだ内容を考えれば、サッカー中継とつながっているだろう。息子のことが心配なのは痛いほど伝わってくる。
だが、今は仕事をしている時だ。心を鬼にして鬼瓦 源五郎はイヤホンのコードを掴んで政治の耳から勢いよく外した。もちろん、正治はこれにより、ご立腹になる。
鬼瓦「真剣ってハッキングする事とサッカー中継に耳を澄ましている事だったんですね! 最後の方、心の声が丸聞こえでしたよ!」
親父「ハッキングしながらで聞いていたから、プライベートの時間でしょうが! ゲンちゃん。そういうのはプライバシーの侵害だよ!」
鬼瓦「仕事に専念してください! というか、画面をしっかりと見て、ハッキングをして!! 失敗したら一大事ですぞ!」
親父「ゲンちゃんのくせに生意気な口を! 失敗したら、その時はその時で片付けようよ!!」
鬼瓦「これは日本の運命を賭ける任務なのです! その時で片付けようとするのは止めて下さい! せめて緊張感くらいは持ってくださいよ!!」
親父「ゲンちゃんは親心が分かってないから言えるんでしょうが!! 日本も大切だが、俺にとっては息子の方が大切だ!!」
一見、子供のような言い争いをする二人は立派な大人。感情が高ぶり過ぎた結果、お互い肩で息をする。しばらく睨み合っていたが、やがて鬼瓦刑事の熱意に負けたのか。イヤホンを鬼瓦刑事に渡して、不機嫌になりながら正治は画面に集中してハッキングをし始めた。
ちらりと目を見れば今度は正真正銘、本気でやっているのが分かった。鬼瓦は肩を落としてから、持ってきたバックから3つの小型爆弾を取り出してコンピューターの近くにセットし始めた。
高速でキーボードを打つ音が部屋中に響く。ほんの2分経ったところで正治の手の動きがゆっくりとなった。これはハッキングが完了した合図だ。
親父「ハッキング完了・・・・・エイリア石メイン駆動プログラム、破壊」
Enter ボタンを押すと、光を放っていたエイリア石の原石は徐々に光を失い始める。次の瞬間、鬼瓦刑事が仕掛けた装置近くにあった爆弾を爆発させた。その反動で施設全体が激しく地震のように揺れる。
それは試合会場になっているサッカー場でも影響があり、揺れ始めた。選手たちが驚いている中、星二郎は特に焦る様子はなく口角を上げて、研崎が持ってきた小型の機械を操作し始めた。
親父「なんか、おかしいな」
鬼瓦「どうしたんですか?」
親父「一回もトラップをしてこなかった。いくら権限操作をしたとはいえ、非常用になんらかのものを仕掛けるだろ。ましてや財閥会社ならなおさらだ。
だが、こんな簡単に突破できるなんて・・・・・まるで、俺達がプログラムを削除させるのを前提に仕組まれているようにしか・・・・」
『ご苦労でしたよ鬼瓦警部。それにあなたが来るとは想定外でした、東條 正治さん』
一瞬で背筋が凍りつく声がした。顔を上げると長方形型の画面に星二郎が映っていた。それを確認すれば、瞬時に理解した。
(なるほど・・・・俺達が侵入してくるのを読んでいたから、わざとトラップは仕掛けて来なかったのか。だが、なぜメインコンピューター室まで俺達を泳がす必要があったんだ? ・・・・ま、まさか!)
正治はすぐに違和感を感じ取り、試合会場の様子を小さな画面を出す。そこには、平然と立っているジェネシスと茫然とする雷門。さらにはメインコンピューターについているカメラがまだ機能しているのか自分の顔も映っていた。その姿を確認した正治は途端に手が震える。そして、歯切れを悪くしながらこう、発した。
親父「吉良 星二郎、子供達にどんな特訓をさせた?」
鬼瓦「え、エイリア学園の子供たちはエイリア石で強化されたんじゃないのですか?」
親父「違う。もしエイリア石が力の源なら、何らかの変化があるはずだ。だが、彼らの様子は変わらない」
確かに、言われてみればエナジーを失ったとすれば、その反動で苦しむはずだ。しかし、そうなるとなぜ彼らは平然と立っているのかが分からなくなる。正治は震えている手を思い切り握りしめ、うつむいたまま口を開いた。
「俺の推理通りなら、ジェネシスは ——————— 特訓のみで鍛えられた普通の人間だ・・・・・・違うか?」
その瞬間、グランドにいる雷門の選手は目開くしかなかった。いや、雷門の選手だけではない。きっと日本全国の人々が驚いているだろう。星二郎は微笑みを浮かべた。
星 『そう。貴方達の考える通り、エイリア石にエナジーが人間を強化する効果があり、エナジーが供給されなければ、元に戻ってしまう。
では、そのエイリア石で強化されたジェミニやイプシロンを相手に人間自身の能力で鍛えたらどうなりますか? ・・・・・・・その答えはすぐに分かりますよね。
ジェネシスはジェネシスの力・・・・真の人間の力を! 弱点なしの最強人間なのです。ジェネシスこそ、新たなるヒトの形! ジェネシス計画そのものなのです!』
親父「お前がやろうとしていることは完璧な人間兵器を作って、日本を支配すること・・・・その兵器はお前の子供達なんだぞ! それをなんとも思わないのか!?」
鬼瓦「せ、正治さん! 落ち着いてください!」
親父「源五郎は黙れ! 俺は、一人の親として許せないんだ!!」
瞬間、正治は握りしめていた拳を振り下ろす。落下地点であるキーボードの基盤の一部が割れてしまった。もうこのコンピューターは使い物にならなさそうだ。振り下ろした拳は基盤の破片が刺さったのか、血が少々流れる。ただ、正治は許せなかった。自分の子供を手足のように使う星二郎を。
言われた本人は呆れたかのように目を細めて、作り笑いを浮かべながらその問いに答えた。
星『何かの道具を扱う時に、道具自身に気遣いますか? 当然、全く気にしませんよね? その感覚と一緒です。サッカーは日本を変える手段として選びました。人も、そんなに変わりませんよ』
それは極悪非道な言葉だった。非道すぎて吐き気がする。それを聞いた円堂の目つきが変わり、頭に血が上ってくる。一気に我慢していた感情が溢れだし、星二郎がいる部屋に向かって叫んだ。
円「お前にとってヒロト達ですら道具なのかよ!? お前の勝手で、人と俺達の・・・・・俺達の大好きなサッカーを悪いことに使うな!!」
その叫びは会場中にむなしく反響した。
- Re: 【イナイレ】〜俺のサッカー〜『第七章・明かされる記憶』 ( No.336 )
- 日時: 2012/05/27 09:29
- 名前: 伊莉寿 ◆EnBpuxxKPU (ID: r4kEfg7B)
お久し振りです☆
親父さん強!!まさかハッキングを…!!
でもゲンちゃんて…可愛いですなぁ♪←
暁君の作戦も気になります…!
続き楽しみにしてますっ、それでは♪
- Re: 【イナイレ】〜俺のサッカー〜『第七章・明かされる記憶』 ( No.337 )
- 日時: 2012/07/08 20:29
- 名前: まい (ID: .057oP6P)
〜第25話〜「大胆に」
円堂の叫びは会場に虚しく響き渡った。しばらくすると、円堂の目の前に長方形型の大きな画面が現れた。そこに映し出されたのは星二郎がいた。星二郎は円堂に言葉の意味を問いかける。
星『それは、どういう意味です?』
円「ヒロト達は道具じゃない!! ヒロトはお前のせいで、間違ったチカラをつけてしまったんだ!」
星『はて? 私はただエイリア石と言う偉大なるチカラを彼らに与えただけです。それのどこが間違いですか?』
円「チカラとは、皆が努力して身に着けるものなんだ!」
この時、円堂の頭は怒りで埋め尽くされていた —————— 許さない。
そのたった一つの想いが大きい感情がどんどん膨れていく。今までためてあった心のダムが溢れだし始めるのだ。その様子を見た星二郎は微笑して、更に挑発し始めた。
星『もしかして、忘れたのですか? ・・・・・貴方達もエイリア石でパワーアップしたジェミニやイプシロンと戦って強くなったということを・・・・エイリア石を利用したと言う意味ではジェネシスも雷門も同じなのです。
雷門もすっかりメンバーも変わり、強くなりましたね。それは、道具を入れ替えたからこそ。ここまで強くなったということです。エイリア学園と同じく、弱い者を切り捨て、強き者を入れ替えることで ——————— ここまで来たのでしょう』
わざとらしく『弱い』と強調するため最後の方に間をおいて話し出す。普段の彼なら、腹を立てたとしても、それをあまり表に出さないだろう。しかし、この時は一気に血が頭に上りだして、冷静にいられなかった。
円「ふざけるな!!」
颯「きゃ、キャプテン! 少しは冷静になって! あんな挑発に乗ったら、相手の思うつぼだ!!」
円「離せ! 東條! 風丸達は弱くないんだよ!! あんな奴にバカにされて俺は!!」
円堂を止めようとした颯音の手はものすごい力で押し返された。バランスを崩して暁は尻餅をつく。ダメだ・・・・今の円堂は冷静になれない。とてもじゃないが、あれを今すぐ正気に戻すのは難しすぎる。普段の円堂とは違い、あの穏やかな面影はない。颯音は今の円堂がとても怖く感じて、ガタガタと体を震わせる。
星『いいえ、弱いからですよ・・・・弱いから怪我をする・・・・弱いからチームを去る。実力がないから脱落していったのです。彼らは貴方達にとって運用の存在』
円「違う・・・・・違う! あいつらは弱くない!! 俺が証明してやる!!」
星二郎は怪しく笑みを浮かべて、出されていた画面を消える。ボールを持っているのはグランだ。円堂はただ、怒り任せに相手へ突っ込んで行く。だが、そんながむしゃらに一人でボールを奪うのはジェネシス相手では通じない。グランは呆れたようにため息を吐いた。
グ「今のキミじゃあ、俺達には敵わないよ・・・・」
そう言うと円堂の頭上を越え、ゴール前へ一直線に走り出した。それを合図にウルビダとティムも動き出した。今まで戦ってきたエイリア学園は必ず、一つは合体技があった・・・・そのことに立向居が気付いた時には三人は同時に飛んでいた。
全く同じタイミングで飛んだ三人は一斉にバク中し、勢いづいた片足を同時に蹴り上げた。その瞬間、空間を切るような鋭い光のエネルギーが交差し、大地を切り裂く強力な力がボールに加えられる。
「<スーパーノウ゛ァ>!!」
そう叫んだ直後、目にもとまらぬ速さで立向居の目の前まで来る。踏ん張って止めようとしたが、技の威力が強すぎて、自分の体ごとゴールへ押し込められた。
これで点数は1−2 あんなに苦労して同点になったのに、逆転されてしまったのだ。立向居は直接受け止めた時の技の威力があり過ぎて、少し手がしびれてしまった。電光掲示板を見る暁は苛立っている。
暁「あぁ〜・・・・最高にムカつく」
そう呟いた直後に、前半終了のホイッスルが会場に鳴り響く。
ハーフタイムになり、各自水分補給などをしている。円堂は首にタオルをかけて、不機嫌そうにグランドに座っていた。
瞳「・・・・円堂君」
今の彼は怒りの感情で頭が埋め尽くされていて、試合に集中していないのが前半で見受けられた。このままでは、確実に負けてしまう。そう思い、瞳子監督が動き出した・・・・・が、それを暁が押し退けて円堂の元へズカズカと歩いていった。
暁「おい・・・・円堂・・・・」
その声は恐ろしく低くて、周りで聞いた味方さえも鳥肌が立った。そして、よく見ると彼の手には普通、この時間には選手は欠かさず飲む自分用のドリンクがあった。暁はそのドリンクのふたを開けた。その中にはマネージャーがキンキンに冷やしていたスポーツドリンク、それもかなりの量が残っていた。
事も有ろうか、それを円堂の頭に向けて逆さまにする。重力に従い、バチャッと派手な音を立てて液体が落ち、すべて円堂の全身がびしょびしょに濡れてしまった。それを遠くで見ていた味方は血の気がサァーと引くような凍りつく感覚に陥る。わなわなと肩を震わせ、堪忍袋の緒が切れた円堂は掴みかかった。
円「なにすんだよ!!?」
暁「おーぉ 元気だな。さすが怒っているだけいつもよりも声が大きい。頭に血が上っている奴には冷たい飲み物を被れば、話を聞くことができるはずだ。本当は救急箱で殴って気絶させてやりたいところだが、自重して飲み物を掛けただけにした俺に感謝してほしい。あと、なんで注意したのにバカみたいに突っ走るのか訳分からん。そうなるとバカ以外になんもないな。敵の思惑通りになると分かってないからそうなるんだろ。おかげで作戦も実行に移せなかったじゃないか、この状況をどうするんだよ? 俺がせっかく考えた作戦も監督に伝えるのにメチャクチャ緊張したのに、俺の緊張感を返せ。 ついでにどうして颯音を突き飛ばすんだよ? 怪我でもさせたら、兄としてお前でも許せれないことだってあるからな。しっかりと覚えとけ。ここまで聞いてなにか問題でもあるか?」
(いや、色々と問題があるだろ。兄貴・・・・ん? 俺の心配してくれたの・・・か?)
そこには、目の輝きが全くないに等しい瞳で円堂を軽蔑し、マシンガンの如く話し続ける暁がいた。文句を言おうとしている円堂も口を噤(つぐ)んでしまうほどの威圧感があったのだ。これまでに何度か暁が怒っている姿を確認したことはあるが、弟である颯音も心の声を黙秘する程、ここまで冷たい怒り方は見たことない(途中、弟を心配した発言をしたような気がするが)正確には怒りを通り越して呆れの気持ちが爆発したと言うのが正しいかもしれない・・・・。
暁「まず、何を証明するために戦っているのか分かっているか?」
円「風丸達をバカしたアイツに弱くないと証明を ————— 」
暁「一切周りを見ずに一人で突っ走った奴が風丸達は弱くないことを証明する? ・・・・笑わせるなよ」
そう言って暁は円堂の胸倉を掴んで自分の方へ引き寄せた。その眼を見た円堂は身震いしてしまう。暁は円堂の様子など気にせず、淡々と続ける。
暁「大体、ボールに怒りをぶつけてプレーするのが間違いだ。それじゃあ、簡単に次の動きを読まれて、相手に抜かれてしまう。それはチームにとって致命的な弱点にもつながることくらいお前は知っていただろ?」
円「そ、それは・・・・」
暁「あいつらが強いことを知っている仲間がココにいるのを忘れるな。キャプテンのお前だけが怒っていない・・・・あと、この試合はお前だけの戦いじゃない。俺達、雷門で戦っているんだ。それを忘れてどうする?」
この言葉でなぜ今まで気が付かなかったのかを痛感させられた。周りを見れば、皆は真っ直ぐに澄んだ瞳で自分を見つめていた。冷静に考えれば、自分でもバカだな・・・・とも感じられた。円堂は自分の頬を思い切り叩いた。
円「ごめん・・・・俺、大切なことを忘れていた」
その映る瞳はもう、迷いなどなかった。それを確信すると、鬼道達は自然と笑顔がこぼれる。強めに背中を小突くと暁は大きく息を吸って、皆を集める。
暁「みんな、円堂も落ち着いたところだし、そろそろ反撃をしたいと思う」
鬼「何か手はあるのか? 知っての通り、これまでの敵よりスピードは全く違う。ティムとグランにボールを集めてシュートを決めるのがあいつらの戦法だ」
暁「だが、そんなの分かりきったことだ。そこで、立向居。お前がアイツらのシュートを止めたら、速攻で一気にたたみかける」
立「そ、それって・・・・俺がシュートを止める前提で話していますよね?」
暁「そんなの当たり前だろ。何を言っているんだ?」
立「で、でも、ジェネシス相手にその作戦で本当に行けますか?」
暁「さぁ? 多分、なんとかなる」
颯「へ!? ちょっと待って!!」
いつもなら、色々と理論とかつけてやる暁がテヘッとわざとらしく笑っているが、その笑いには絶対に裏があると読めるメンバーは身震いを覚える。絶えず、後ろにいた颯音は人混みを手でかき分けて暁の腕を掴んだ。
颯「兄貴、そんな大胆にいっていいのか? それに、兄貴がこんな作戦にするなんて見たことない! 頭でも打ったか?」
暁「俺は至って、大真面目だ。この作戦にした理由は・・・・長い付き合いの中、大胆な作戦の方がお前達に合っていると結論がついたからだ。お前達に細かいことを言う必要はない・・・・サッカーは進化し続けられる。俺をその事に気が付かせたのはお前達だ。この際、雷門流の全員サッカーで勝利する。そうすれば、グランや大仏野郎にも間違った考えを改めさせられるはずだ!」
————————— それに、お前達が進化する成長ぶりは司令塔である俺でも予測不可能に近いし
と、続けたかったがそれを言ったら綱海辺りが調子に乗る確率があるので。最後の本音だけは言葉に出さなかった。しかし、それを聞いた雷門イレブンはそれに同意し、声を上げた。それは、勢いづけた本人も驚いてしまう程の士気だった。
円「全員! この作戦にしていいか? 俺は賛成! ゴチャゴチャ考えるより行動するのが大切だからな!!」
塔「あたしも賛成! 雷門のサッカーでジェネシスの奴らを倒そうぜ!」
颯「打倒ジェネシス! こういう展開、大好きだ!! 燃えてきたぜ!」
円堂と塔子それに颯音と次々と賛成し、いつしか全員頷いていた。本当はこの作戦にするか迷っていた。苦しい展開だが、戦力的に倒そうと思えば、別の作戦も何通りも考えていた。だけど、星二郎の様子を見たらどうしても放っとけなかった。あの夢で見た星二郎の姿じゃないからだ。きっと戦略だけだと星二郎に間違った考えだと伝えられないだろう。だからこの作戦にした。ボールを夢中に追いかけていたあの頃と同じやり方で ————
———— とは言っても、まさかここまでやる気になるとは・・・・・やっぱり、このグループはサッカーバカの集まりだなこりゃ
心の中で暁は微笑した。
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