二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
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- キョンの消失
- 日時: 2012/01/09 22:32
- 名前: デストルドー (ID: xPOeXMj5)
初めまして、デストルドーと申します。新参者なので至らないところもあると思いますが、よろしくお願いします。
〜注意〜
・これはライトノベル「凉宮ハルヒシリーズ」の二次創作です。涼宮ハルヒシリーズファンの方は特にキャラのイメージが各々の方と異なる可能性があります。キャラのイメージを損なわないよう努力致しますが、あらかじめご了承お願いします。
・作品の評価や感想は厳しくとも喜んで受けとるつもりですが、謂われのない誹謗中傷はご遠慮ください
その他何か問題点等あればいってくださるとありがたいです。
〜目次〜
・プロローグ >>1
・第一章 >>2 , >>3 , >>4 ,>>5
・第二章 >>6 , >>7 , >>8 , >>9
・間章 >>15 , >>16
・第三章 >>17
- Re: キョンの消失 ( No.4 )
- 日時: 2012/01/07 21:28
- 名前: デストルドー ◆s4.FcLcEko (ID: GUeCGhoP)
その後、どうなったか、俺の曖昧な記憶によると、愕然としている俺に、
「規定事項とは言いましたが、どうにか変えることが出来ないのか、『機関』が全力を注いで調査をしています。だから、気を確かにしてください!」
などと、声をかけていた気がするが、定かではない。結局その後ハルヒどころか、誰ひとりとして文芸部部室の戸を開けるものはいなかった。
「長門さんには、事情を伝えて誰もこの部室に来ないよう情報操作をしていただきました。長門さんにも、この場にいてほしいといったのですが、断られてしまいました」
古泉は続けて、
「お察しの通りだとは思いますが、朝比奈さんには伝えていません。色々大変そうですから。尤も未来人なのですから、既知のことかもしれませんが」
言い終わるとすぐに、下校のチャイムが旧校舎内に鳴り響く。古泉は俺の様子を見ると、
「ひとまず、学校から出ましょう。話の続きは駅前の喫茶店……はマズいですね。『機関』の車を寄越しますから車内で…」
「いや、今日は家に帰るわ」
俺は恐らく机の向かいにいる古泉になんとか聞こえるかどうかの声で言った。
やれやれ、俺もどうかしちまったのか?
- Re: キョンの消失 ( No.5 )
- 日時: 2012/01/07 22:28
- 名前: デストルドー ◆s4.FcLcEko (ID: GUeCGhoP)
で、現在俺は家にいるわけだが、古泉にもっと詳しく事情をきかなかったことを後悔し始めている。夕飯もほとんど喉を通らず、風呂に入ってもしっかり体を洗ったかどうか定かでもないが、少しリフレッシュしたらしく思考回路がまともに機能し出した。ここで後悔の種が芽をだしたのだ。今手元にある情報は、俺が死ぬのは一週間後であり、規定事項であること。そして、その原因の根本はハルヒであること。こんなもんか。この情報で何か仮説を立てるのは凡人にはあまりにも酷ではないだろうか。まあ、情報供給を断ったのは俺なんだが。一度断ってしまった以上、あちらからアプローチをかけてくれないと聞きにくい。古泉は気にしないかもしれないが、俺が気にする。やれやれ、死ぬっていうのに暢気なもんだ。
いや、待てよ。古泉は確か長門にも事情を話したと言っていたな。『機関』が長門よりも情報を先取りするとは思えないし、仮にそうだとしても長門は今には情報を収集していることだろう。それに、古泉を信用しない訳ではないが長門から詳しく事情を聞いておきたい。急にお前は絶対死ぬと言われたら仕方のないことだろう。急に聞かされたら絶望するかもしれんが、ブラックアウトは二度経験ずみだからな。
正直なところ、このままでは不安で寝るどころではない。
机の上のデジタル時計に目をやる。
午後8:45分、まだ補導はされないな。
俺は携帯電話を手に取ると長門に電話をかけた。
prrrrr……ピッ
「……なに」
感情が薄い声が聞こえる。
「ああ、ちょっと相談したいことがあるんだ。今から言っていいか?」
数秒の沈黙の後、
「……いい」
「ありがとう。今からすぐ向かう。」
「……分かった」
「じゃあ、後で」
「……」
この後俺が何にも行動を起こさないと永遠の沈黙が続くので俺から切った。
俺はパジャマから普段着に着替えるとコートを羽織り、携帯電話を持って外へ飛び出した。
自転車をこいでいる間、いくつか疑問が浮かんだ。そりゃまあ疑問だらけなのは始めからなんだが、明確な疑問がいくつかうかんだ。長門に聞いてみることにしよう。数十分こぎ続けると見覚えのある高級分譲マンションのエントランスにたどり着いた。
- Re: キョンの消失 ( No.6 )
- 日時: 2012/01/08 12:05
- 名前: デストルドー ◆s4.FcLcEko (ID: COM.pgX6)
《 第2章 》
エントランス内のパネルでテンキーを708と押し、その後ベルのマークのボタンを押す。慣れた手つきで入力をしていると、この状況は一見するとまるで一高校生が彼女の家に遊びに来たように思える気がしてきた。こんな遅い時刻に一人暮らしの女子高生の家を訪ねるのだ、不純異性交遊だと思われかねない。と思ったが、相手は長門だ。まかり間違ってもそんなことにはならないだろう。俺にそんなつもりはないし、長門は尚更だ。尤も今更気にするようなことでもないが。
数秒の沈黙、その後、ぷつんとインターホンが接続する。
「よう、長門、俺だ」
再びの沈黙、すると
「入って」
と平坦な声が聞こえた。だが、俺の意識の中で初めて長門に会ったときに比べたら大分感情が感じられるようになったのだ。これは俺の勘違いではないだろう。でも、ストラディなんたらとかいう名器の音を聞き当てることができる一流芸能人でも判らないような変化であるだろう。恐らく、SOS団のメンバー以外は気づけないような微細な変化だからな。
そんな感慨に耽っていると、玄関のロックが解除されているのに気づいた。もうそこそこ遅い時間だ。急がないとな。
エレベーターに乗り込むとふと少々の後悔に襲われた。俺は去年の12月のあの事件以降、長門に頼りすぎないと決めたばかりではないか。アイツにはしっかりと心があって、エラーとかなんだいっていたが、要はストレスだってたまるんだ。なんと情けないことか、自分が死ぬとなったらうろたえちまうのか。俺は再びブルーな気持ちになっていた。やれやれ、メランコリーだ。
そんなこんなをしているうちに、七階に着き、708号室のベルを鳴らした。鉄扉は数秒の内に開いた。
「……」
「……入っていいか?」
俺がそう言うと長門は数秒の沈黙の後、顎を数ミリ引いてすっと部屋の奥へ向かった。どうやら入ってもいいようだ。
俺は靴を脱ぐと靴の数がおかしいのに気づいた。長門の靴、俺の靴、そしてもう一足、男物の革靴がある。恐らく学生が履くものではないだろうか。俺の持っているものでは無さそうだ。となると、アイツくらいか。
俺はリビングルームに入ると俺の予想した人物がそこにいた。なんだよ、これじゃ結局意味ないじゃないか。俺のプライドが若干のダメージを受けた。が、ある意味居てくれて安心したよ。
なんて、思っていると明らかにソイツの状態がおかしいのに気づいた。
「古泉……お前ッ…」
「んふ、どうも」
そこには制服の所々が破けてボロボロの古泉一樹の姿があった。
- Re: キョンの消失 ( No.7 )
- 日時: 2012/01/08 13:20
- 名前: デストルドー ◆s4.FcLcEko (ID: COM.pgX6)
俺が唖然としていると、
「……おや?……ああ、この格好ですか。いや、ふふ、お見苦しい姿で申し訳ありません」
「いや……そんなことより大丈夫なのか?」
「お気遣いいただきありがとうございます。しかし、お気になさらずにも大丈夫ですよ」
とてもそうは見えないが。まあ、コイツは『神人』とやらと命懸けの戦いをしているんだったよな。今日もその後なのか?
「……!ええ、まあ、そんなところです、ふふ」
なにやら歯切れが悪い言い方だな。まあいい、それより長門の情報操作で治してもらえばいいじゃないか。
俺がそう言うと、長門は少々困ったような顔をしているようだった。微細なものだが、変化している。
すると古泉は、
「長門さんにエラーが出てしまったようで少しの間情報操作ができないそうなんですよ。こんなときに怪我をするとは間の悪いものです」
そう言えばコイツが怪我をして学校に来ているのはあまり見たことがないな。『機関』の技術で隠しているのかと思ったが、なるほど、あまりヘマしないのか。そういえばいつだったか、古泉と閉鎖空間に行ったとき、古泉が神人狩りに参加するとあっという間に神人がやられていた気がする。もしかしたらコイツは超能力者の中でもエース的存在なのかもしれない。
長門が、
「申し訳ない」
と一言、すると、
「いえいえ、鈍くさい自分が悪いのです。気を悪くしてしまったのだったら申し訳ありません」
コイツらがこんな風に会話しているのを見ると新鮮だな。
だが、そんな暢気にしている場合ではない。俺は古泉と長門に聞くべきことがあるんだ。
「いくつか聞きたいことがある」
俺は続けて、
「先ずは長門に質問がある。一度古泉から教えてもらったことなんだがもう一度確認したい」
長門はこちらに黒曜石のような黒い瞳をこちらに向けて、
「わかった」
と言った。
「俺は一週間後に死ぬんだよな」
長門は少し寂しそうな顔をして、
「……そう。正確には6日と3時間23分20秒後にあなたは生命活動を終える」
携帯電話を取り出し時刻を見ると、11月18日午後9時42分となっている。ということは……11月25日の……午前0時、俺は真夜中に死ぬのか……。
「死因はなんなんだ?」
「それは不明。その時刻の私と同期しようとしても拒否される。恐らく強力な情報プロテクトがかかっている」
なるほど、ハルヒの仕業か……
「確定したわけではない。しかし、あれほどの情報プロテクトをかけられる人物は極少数」
「なんで規定事項なんだ」
「私が同期しようとしたときに得られた唯一のデータにあった情報。しかし、その情報が正確なものであるかどうかは不明」
なるほど、だから古泉はまだなんとかなるかもしれないと言ったのか。
「現に朝比奈さんがまだこの規定事項を知らないようですから、鵜呑みにするには良くないでしょう」
古泉、お前が俺に規定事項だとつげたんだろ。鵜呑みにさせようとしたのはお前だ。
「いえ、その後詳しい事情を話そうとしたのですが、あなたが帰ってしまったのでね。あまりにショックだったようですね」
ふん、悪かったな。メンタルが弱くて。
「ふふ、冗談ですよ。それに、急に余命宣告をされて絶望しない人がいたら、その人は悟りでもひらいているか、それとも、既に生きることに絶望しているかのどちらかです。あなたは悟りを開くには少々若すぎですし、後者にしても友人として心配ですよ」
まあ、俺はゴーダマ・シッダールタさんのように長い修行をしたわけでも、まだミルク粥も食べたこともないさ。
「んふ、先程よりも大分心に余裕があるようで安心しました」
「ああ、まあな。それで、だ。俺はどうすればいいんだ。」
古泉は困ったような、やるせないような顔をして、
「それが解れば、規定事項などとは言いませんよ」
と乾いた笑みを浮かべた。
やれやれ、今回のはかなり厄介みたいだな。
- Re: キョンの消失 ( No.8 )
- 日時: 2012/01/08 13:55
- 名前: デストルドー ◆s4.FcLcEko (ID: COM.pgX6)
「しかし、現在の状態がいつも通りとは言えません。恐らく何か原因があるはずです。お心当たりはありませんか?」
現在の状態、というと、簡単に言えば、ハルヒが放課後の団活動に参加しなくなったというところか。2週間ほどまえからのことだ。だが、ハルヒと会えば話すし、つい一昨日も恒例の市内不思議散策をしたばかりだ。それ以外は変化がない。
「いえ、それからもう一つ、大きな変化があります。お気づき、ですよね?」
いや、分からん。もったいぶらずに教えてくれ。
「この間、席替えがあったでしょう。そのことです」
席替え、ああ、そういえば今までずっと俺の座席はハルヒの席の前だったのにこの前初めて離れたな。それがどうかしたか?むしろ今までがおかしかったんじゃないか。
「……はあ、あなたはつくづく鈍感ですね。涼宮さんには願望を叶える能力があるのは身を持って体験しているはずですが」
おい、お前はもしかしてハルヒがそれを望んだからとかぬかすんじゃないだろうな。俺はそんなに自惚れるつもりもないぞ。それに冗談でもそんな恐ろしいことを言うのはよせ。
「んふふ、あなたは、前にも言ったと思いますが、所謂一般人、凡人です。それは僕が保証しましょう」
うるせえ、そんなの自分でも分かってる。
「私も保証する。あなたは普通の人間」
なっ……。そう何度も言われると少し傷つくぞ。
「でも……」
長門は続ける。
「凉宮ハルヒにとって、SOS団にとって、そしてわたしにとってかげがえのない人でもある。それも保証する」
そうか……。ありがとよ、長門。
「僕にとってもですよ。もちろん友人としてね。」
ああ、まあ、最後のは言わなくても解ってるから言うな。気持ち悪いぞ。
「んふ、これは手厳しい」
「それでですね、今長門さんがおっしゃったように、あなたは凉宮さんにとって特別な存在です」
特別って言っても、団員その1兼雑用に過ぎないだろ、席が近かったのは何か命令したりしやすいからじゃないのか?
「あなたも強情な人です。もし雑用にするのだったら、もっと文句を言わない大人しい人が適任でしょう」
悪かったな、口うるさくて。
「それに、あなたには凉宮さんは他の人物にはしない特別な行動をしています」
例えば?
「一年生の5月、閉鎖空間の中に凉宮さんと一緒にいたのはあなただけです」
そのことにはふれないでくれ。
「ふふ、失礼。他にも……」
ああ、もういい。分かった。
「そうですか、それならいいのですが」
そう言いながら、古泉は肩をすくめる。コイツはなかなか意地の悪い奴だ。