二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

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二ノ国 不思議な世界で
日時: 2012/01/24 17:39
名前: テテ (ID: IycwIUpg)

こんにちは、テテといいます♪ちょっとわかりにくい部分とかもあるかもしれませんが、よろしくお願いします・・・。

人物紹介(オリキャラ)

ナウィン・無口で毒舌。人に気持ちを伝えるのが苦手。12歳の少女。
     回復魔法と補助魔法が得意。

ショウ ・無表情。マイペースだが、運動神経は良い。12歳の少年。
     風属性の攻撃魔法が得意。

フィン ・さっぱりきっぱりした性格。明るい。15歳の少女。
     ナウィンの姉。水属性の攻撃魔法が得意。

あとは、イマ-ジェンがしゃべります。
オリバー、マル、シズク、ジャイロもでます。

二ノ国が好きな人、見てくださると嬉しいです。

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Re: 二ノ国 不思議な世界で ( No.36 )
日時: 2013/08/28 18:26
名前: テテ (ID: 0aJKRWW2)

18・「ポーカーフェイス」

hello、皆さま。
前回(15話)に引き続き筋肉痛な12歳、ナウィンです。
割とシリアスな雰囲気ぶち壊してすいません。

『ギシ・・・ギシ・・・・・・』
体を起こすとベッドのスプリングと同様に体中が軋んだ。
inドア派であった私には、かなり堪える。
「うぐぐ・・・っ。」
何だか足の裏さえもズキズキ痛む感じで、重力に逆らう気力さえ失われてきた。
でも時間は待ってくれない訳で。
「ナウィーン!おっはよ、今日のご飯はオムライスよっ。
さぁ、起きて。」
朝からハイテンションなマルが、今日も私を起こしに来た。
・・・一応目覚まし係はクロロなんだけどね(起きれない)?
「わかりました・・・。・・・っ〜〜〜。」
激しい音を出して、それはもう折れそうな勢いで軋む体に鞭を打って立ち上がる。
心配性なマルに心配を掛けるわけにはいかないんだ・・・!
「だ、大丈夫?何か・・・・・・軋んでるけど。」
「!!・・・いや?全然軋んでないよ、空耳じゃないかなっ?」
「・・・・そう?・・・っていうか今日は敬語じゃないんだね!もうさ、何時もそれでいこうよ?」
おぉ、忘れてた。
「何か怪しいなぁー・・・。」
疑いの目が向けられる。
「Σあっ、いや。さぁっオムライスが冷めない内に!」
絶えず軋む体は、限界を訴えているが
その痛みは爽やかな笑顔の裏(←)に隠して
何時も通り歩き出す。
「ナウィン、階段に気を付け・・・って!」
『どてっ、ゴロゴロガッシャーン☆』
一段目を踏み外し、そのまま一気に一番下まで転がっていった。
「お、おい・・・大丈夫か?」
丁度そこを通りかかったレイスが、私の顔を覗き込む。
「うぐぐ・・・、ァぁああアア・・・いっ・・・!」
反応もせずに、激痛に悶え苦む私を見て、
レイスが呆れたような溜息をつく(酷いな)。
「・・・馬鹿・・・。」
「・・・(泣)」
「いいな、・・・その表情。」
そういやこの子ドSだった・・・。
私が頭を擦りながら彼をギッと睨みつけていると、
レイスはそんな視線を華麗にスルーして
自分の足元に目をやった。
「お、これ・・・・・・。」
瓶が割れて、中から甘い香りを発する液体がこぼれていた。
「あ、やば・・・。」
「ナウィーン、大丈夫!?・・・って、あら。
”元気シロップ”割れちゃった?」
「げんきしろっぷ?」
「イマージェンのみが罹るちょっと特別な病気を治す薬なの。」
「薬か・・・高かった?」
「ううん、そんなでもないよ。気にしないで、最近は
もうほとんど皆罹ってないし、ね?」
「ああ、たぶんそれは賞味期限切れだ。」
賞味期限とかやっぱりあるんだ・・・。
「んじゃ、先行ってて。私、これ拭いて片づけてから行くよ。」
「私も手伝うよ。」
「いや・・・それは普通の人間が触ると危ない・・・俺がやっておいてやる。」
「?ありがとう・・・。どう危ないの?」
「状態異常、みたいな・・・。」
何か歯切れ悪いな。
「〜〜〜っ、言えない、早く行け!兎に角これはヤバいんだ・・・!」
「はっ、はい!」
まるで追い払われるようにして、食堂へ駆け込む。
「レイス、どうしたんだろ・・・。」
「さぁ・・・?あ、そう言えば何かセバにもおんなじようなこと言われたような・・・。」
「人間には猛毒、ってことかもね。」
「うーん・・・。」
食堂入り口付近で二人で講義していると(邪魔)、先に食堂にいたオリバーが近づいて来た。
「おはよ、ナウィン。今日はこのビッキーニにずっといて、明日出発するから。だからゆっくりしてていいよ。」
「うぇ?いや・・・あ、そうなの?」
意外だった。結構先を急ぐ旅かと思っていたのだが・・・。
私の疑問を感じとったのか、オリバーがニコッと優しく微笑む。
「昨日、ナウィンすごく頑張ってたし・・・筋肉痛でしょ?僕らもそうだったんだ。
だからゆっくり休んで。」
「え。気なんて遣わなくて大丈夫だよ・・・?」
「いいんだ。ナウィン、もうちょっとで僕らにLevel追い着きそうだしさ。」
異世界から来た為か、LevelUPという感覚が今一つ掴めないのだが、そんなに上がっていたのだろうか。
「何かルッチとかレイスとかブロッケみたいだったぜ。」
ジャイロが笑う。
「何かねー、戦闘中毒者(battlejunkie)みたいだった〜。」
ジャイロの言葉に、セバが詳しく付け足した。
「ルッチ、中毒か?」
答えたのは私ではなく、ルッチ。
可愛らしいキョトンとした表情で、首を傾げ尋ねる。
「ルッチは自覚なし・・・と。」
まぁ、確かに好戦的ではある。
「私も、まぁ——・・・強い奴と戦うのは好きだよ。楽しいからね。」

「(中毒だ・・・)」

そんなこんなでどうでもいい会話(中二系のが、その多数を占める)が途切れ始めたとき、丁度朝食を平らげて一人席を立った。
——・・・海を見に行こう。

陽は燦々と街全体を照らし、波はそれらを反射して小さくキラリキラリと光る。
その青い外套を翻して海は
『・・・ザザー・・ン・・・パシャリ』
時を超えて運び、そして
「え?・・・これ・・・。」
——やっと、辿り着いた。
ナウィンは波が運んできたそれを
そっと手に取る。
「これは・・・首輪?」
かなりの年月がたっているもののようで、波に運ばれていたせいもあるのか
原形を留めていなかった。
色褪せ、千切れ、破け、此処に辿り着いた。
「こんなもの・・・・・・。」
どうでもいい、そう思った。
でもこれに触れた瞬間、何かが・・・私に呼びかけたような気がして・・・・・・。
私は結局、それを捨てることができなかった。









Re: 二ノ国 不思議な世界で ( No.37 )
日時: 2013/08/29 15:36
名前: テテ (ID: 0aJKRWW2)

19・「姉Side ここは夢の中」

起きた・・・筈、でしょ。
でも起きてない。
こんなにハッキリとした夢は初めて見たが、何だか頬を抓っても痛いし、・・・どうやっても本当に目覚めることができなかった。
まるで、夢に閉じ込められたような気がして怖くなってくる。
誰でもいい、何か・・・誰か・・・いないだろうか。
背景がまるで絵みたいに描かれてあり、自分だけが現実的で何もかもが噛み合っていなかった。
「ここ、何処?」
一本道をただ進み続ける

——その時間は永遠と思われ、疲れて果て立ち止まろうとしたその時。
ついに、道が開けた。
「え・・・!」
その光景を見て、私は絶句する。
五頭身くらいの兎一匹、太陽と二つの白黒の月、空飛ぶ魚。
その全てが非現実的なものだった。
「ようこそ、夢の世界へ。僕は夢の管理人。」
「は、はぁ・・・。」
やっぱり、夢なんだ。
私の記憶の何に基づいて、この夢は構成されたんだろう。
「おや、君は・・・ううん、何でもないよ。それよりどうだい?
夢の世界は。・・・ゆっくり見ていくといいよ。何か良いものが見つかるといいね。」
「・・・・・・。」
取り敢えずその言葉に大人しく従い、其処ら中を探索してみると、幾つか面白いものを見つけた。
問題を出してくる宝箱(もちろん解けない)、森の奥から呼びかけてくる何かの声、影のない棒、不思議な蝋燭、火のついた枝のない木、そして今、端っこにポツンと生えていた一つの花を摘んだ。
何やら花粉が光っているが・・・。
「・・・・・・・・・!!!」


「   、貴女もお姉ちゃんになったわね。」
「お姉ちゃん、    を宜しくな!仲良くするんだぞ〜。」
「えへへーっ、    、私がお姉ちゃんの   だよ!
今日からよろしくねー!」
「あぶー・・・ぶ?」

「    、泣かないの!大丈夫だよ、痛いの痛いの飛んで行け〜・・・っ!」
「・・・うん、なかない!お姉ちゃん、ありがとうっ。もういたくない!」


突如頭に流れ込んできたヴィジョン。
笑っている優しそうな男女と、何処か私と似た無邪気な少女、そしてとても可愛い女の子・・・。
名前の部分だけ聞き取れなかった、でも。
あれは・・・私の記憶?
・・・だとしたら、あの人達は一体どこにいるんだろう・・・。
光らなくなった花を、そっとポケットに入れた。
「ふふ、見つけたみたいだね。大切なものを・・・。
でもまだだ。まだ、君はその記憶を思い出してはいけない。
だからその”想い出の花”は僕が預かっておこう。」
「・・・どうしてですか?どうして、思い出してはいけないんですか?」
「さぁね、偶然かもしれないし必然かもしれない。でも、”ここで”知るべきではないんだ。
さ、そろそろ夜が明ける。この夢から覚めれば、君は此処のことを全て忘れてしまう。
・・・空に二つ浮かぶ白黒の月を見たら、僕の事も偶には思い出しておくれ。」
そんなものはない。
「待って、まだ・・・!」
——この記憶を、取って置きたいのに。
あの女の子の笑顔を見たとき、心の中で
何かが動かされたような・・・そんな気がした。


「ふぁぁぁ・・・・・・。」
何だっけ、とぼんやり考える。
今日は爆睡してしまったらしく、何の夢も見られなかった。
・・・つまんないの。
重くてだるい体を何とか起こし、のそのそと立ち上がった。
「・・・お腹空いたな。」

それは眠くなるくらい暖かい日差しに包まれた午前9時。
・・・今日は、夢日和。










Re: 二ノ国 不思議な世界で ( No.38 )
日時: 2013/09/08 01:13
名前: テテ (ID: 0aJKRWW2)

20・「病んだ」

今、私達は氷河島という所にいる。
何でも、まだ大氷河穴には行ってなかったのだとか。
「うぇ・・・寒い・・・!」
今までビッキーニなどの温かい地方に居たせいか、余計に寒く感じる。
「そうか?」
・・・と元イマ−ジェンの水属性に強い方々。
逆に水属性に弱いルッチやブロッケ辺り(表情は平然を装っている)は結構ガチガチ震えている。
・・・面白いな。
そういえば今考えると何故ルッチは雨が好きなんだ!?
私は不思議でたまらない(←
「あれっ。」
マルがいない?
・・・・。
恐る恐る後ろを振り返る。
すると、両手で肩を抱きながら一歩一歩ゆっっくりと前進する、山で遭難してしまった人みたいな彼女の姿がそこに。。
「hey,girl!」・・・と思わず叫びそうになったのはぐっと堪えた。
皆に心配かけるといけない、私は足を緩めてスムーズに、かつ誰にも気づかれずに彼女の隣に辿り着く。
「マル。」
呼びかければ、虚ろな瞳をした彼女がゆっくり顔を上げ、焦点の合わない瞳で私を何とか見ようとした。
———これは拙い。
自分の羽織っていたマントをフワッと彼女にかけて、自分の筋肉を酷使して彼女を抱きかかえた(所謂お姫様抱っこ)。
そして重くなった足取りで一歩一歩、サムラへと歩いて行く。
・・・寒いし体力をかなり消耗するが我慢だ我慢。
抱きかかえているマルを見れば、彼女は静かに眠っていた。
夏国生まれの彼女には、・・・というか半袖の彼女には、雪国の寒さはかなり堪えたんだろう。
「・・・参った。」
道のりはまだまだ遠く、仲間達とはどんどん距離が開けて行った。
彼らが私達に気づいてくれないのは、この酷い吹雪と寒さのせいだと信じたい(泣)。
「ナウィン〜。」
突然、この過酷な状況に似つかわしくない緩みきった声。
吹雪で前がよく見えないが・・・この声と口調は。
「僕だよー、セバっ。ねぇねぇ、何かさっきから何となくー、体が怠いからマルに何かあったのかなーって。」
「おぉー、正解。・・・そんな機能あったの?」
「うん、ルッチや、ブロッケもそうだよー、だって僕達は”心のイマージェン”だから〜。
ナウィン、僕が運ぶよ。」
「え?いや、別に・・・。」
「一応僕は男の子だし〜、主をほっといた上にナウィンに風邪ひかせたーなんて言ったら僕が怒られちゃうよー。ほら、これはナウィンが着てて。
マルには僕の貸すからさ〜。
大丈夫。心配しないでー、僕は寒いの全然平気なんだ〜。」
彼はそう言って私がマルに着せたものを、また私に着せてしまった。
逆にいらっと来るほど和んだ空気で語尾を伸ばし続ける彼だが、まぁ意外と紳士ではある。
「ごめん・・・ありがと、でも一応傍にいるよ。
無理しないでね。」
「ナウィン・・・僕の気持ちも汲んでよぅ・・・。
女の子に其処まで心配されちゃう僕って何ぃ・・・?」
男の子としては華奢なセバを心配して傍にいると言うと、彼は物凄く凹んだような悲しそうな顔になり、
何だか恨めしそうな目でこちらを睨んでいる。
・・・彼にも面子(?)というものがあるようだ。
先に行った方がいいか、いやいや・・・でも心配だ。
でも余裕そうだし。
「どうしよう、この葛藤。」
「いや、行ってよ。」
アッサリ切り返される。
セバこそ私の気持ちを汲めよ!こう見えても心配性なんだよコノヤロー!!!
「おーいナウィン?」
「っは、・・・・・・!あ、うん。じゃ、マルを宜しくね!」
「任せといてー。」
足が諤々震えてうまく走れないが、懸命に皆の後を追い続ける。もう少し、もう少しで・・・
「ヴオオオオオオオ!!」
「わっ!?」
辿り着かなかった。
突然襲い掛かってきた魔物に、ヘタッと座り込む。
魔物自体は造作もなく倒せてしまう程度の強さだが、私は防御はかなり低い。
体力もそこまで高くない。
「あ・・・ぅ・・・。」
敵が先手を取る。
その刃を振り上げ、冷たい眼で私を見下ろすと、
真っ直ぐ、それを振り下ろした。
何故だかスローモーションで映し出されるその光景をまるで他人事のように見る。
刹那、一筋の輝く銀色が一面に赤い滴を散らしながら消えた。
——死んでない。じゃぁ、消えたのは・・・・・・。
恐る恐る上を見上げれば、銀と同じくらい冷たい輝きを放つ少年・・・ルッチ、がいた。
正しくはルッチではなかったのかもしれない。
彼はその凍りつくような目つきと表情で真っ直ぐ前を見据えていた。
その眼から僅かに感じ取れる狂気とどす黒い感情が、彼の秘める内なる姿なのだろうか。
「・・・・・・る、ルッチ・・・?」
周りの血だまりの色を反射して、彼の瞳が紅く見えた。
「・・・大丈夫?ナウィン・・・。」
声までもが何時もより淡々としていて何処か冷たかった。
紅い瞳。ルッチはしゃがみ込んで私に視線を合わせた。
「怖い?ルッチ・・・怖い?」
少年の口が楽しそうに弧を描く。
「ナウィン——、・・・・・・いや・・・、皆、すぐそこ。ナウィン、行こう。」
まるで大切な言葉であるかのように、愛おしげに私の名前を呼ぶ。
寒さでちょっと病んでしまったのだろうか?
「うん、ありがとうルッチ!」
そう言って満面の笑みを彼に向ければ、ルッチは哀しげな眼をしてふっと笑みを零した。
——この時、何故気づけなかったのだろう。
病は少年の心を蝕み、何れ彼を”化け物”へ変えるだろう。
狂おしいほどのその感情の名前を、彼はまだ知らないから——・・・。


目を覚まし破壊を求める僕の”化け物”と、
眠りにつき空想を求めた僕の”通常”。
おはよう、そして初めまして・・・。
おやすみ、そしてさようなら・・・。

















Re: 二ノ国 不思議な世界で ( No.39 )
日時: 2013/09/12 20:49
名前: テテ (ID: 0aJKRWW2)

21・「重要問題」

日没。
——今日は実に様々な無駄遣いをしたと思う。
「こんなのいるかぁぁーー!!」
私の鋭い突っ込みが彼、もといショウに繰り出された。
「女王様の似顔絵バッジとか限りなくいらないから!その他諸諸これら全て必要ないんだよおぉッ。」
「・・・・・・つい・・・勧められたから。」
彼は気まずそうに視線を逸らし、罪逃れをするような口調で呟いた。
「やかましぃ!売ってっ、今すぐ売ってこい!!
勧められた物全て買ってたら何時でも金欠だよ!」
・・・っと、ついつい激高してしまった。
ショウは肩を竦めてトボトボと指示された店へ向かう。
「全く・・・。」
私は別に、moneyに関してそこまで煩い方じゃない。寧ろ疎い。
しかし——、使えないし邪魔だしセンスも芸術もない、意味の分からない物体に所持金の3分の2も費やすのは馬鹿げている気がしてならなかった。
これからまた別の地へ旅を始める旅人の身としては、余計なものは一切持っていたくないのだ。

——数分後、ショウが駆け足で戻ってきてそのお金を私に手渡した。
「はぁ、はぁ・・・ごめん・・・フィン。」
一応反省はしている・・・仕方ない、6万円の罪は許してやろう。

「あ、ところでさ・・・次は何処へ行くの・・・?」
沈みかけた太陽の僅かに残る弱い光を頼りに、二人で地図を眺めた。
「ほら、此処にビッキーニってところがあるでしょ?
此処に行きたいと思って。」
「へぇ・・・。」
興味ない、といった風にショウが無関心な返事を返す。
「此処が一番近いんだよ。それに、この町は港町だから・・・。船、必要でしょ?」
「あ、そっか・・・。」
私たちは船を持っていない=何処へもいけない。
大陸を渡る旅に船がなくてはどうしようもない。
・・・しかし、必要だといってもお金はなく、貰えたり貸したりしてもらえる当てすらない。
——困った。
これは重要な問題だ。
「うむむ・・・・・・。どうやって手に入れるか・・・?」
頭を抱えてしゃがみ込めば、ショウが別のところに心配しながら話しかけてきた。
「フィン、ねぇ・・・・・・人目・・・。」
ざわざわ、ざわざわ。
何だかさっきから騒がしいなと思っていたら、この町の優しい人々が私を心配して集まってきてしまったようだ。
「おねぇちゃん・・・アタマ、大丈夫・・・?」
愛くるしい幼女が私に近づいて頭を撫でてくれた。
うん・・・そういう意味じゃないってことは分かってるんだ。
でも何故だろう・・・何か一瞬脳が意味を取り違えたのか、胸が痛い。
その何気ない言葉が突き刺さり、ちょっと涙目になりながら
「大丈夫だよ〜、ありがとう!」
なでなで。
そうすれば女の子は天使の笑顔でニコッと微笑み
「良かった!」
と言った。
悩殺されました(←
——ところで彼女、何か引っかかるな。
こんな風に眩しくて優しい笑顔で誰かがそっと呟いたんだ。
”     ”・・・・・・。
・・・・・・・・・・・忘れた。
愛の言葉だったか、別れの言葉だったか、普通の会話だったのか。
はたまた出会いの言葉だったのか・・・?
あと少しのところまで記憶が来てたのに、思い出そうともがくほど、それは引っ込んで小さく薄くなっていってしまった。
・・・今日は諦めよう。
ふわり。
暗闇に冷やされた風がそっと私の髪をなびかせて
通り過ぎた。
只々ぼうっと目の前を見つめていた瞳を、すっと
遠くへ向ける。
「さぁ、出発しようか。」
迫る未来。
歩く今。
儚い過去。
その全てを私は背負わなくてはならない。
(・・・全く、この旅一番の重荷だ・・・。)
でも、背負って前を向く。
未来を感じ
今を刻み
過去を想って
——少女は前を見据えた。
空白へ溶けて未だ見えぬ、彼女を構成し、支え、護る
記憶。
少年は、その強さを湛えた鈍く輝く澄んだ茶色を横目でじっと見つめる。
そして、
「フィン・・・ねぇ、船の話・・・考えた?」
「あ゛・・・・・・。」
——水を差した。



















Re: 二ノ国 不思議な世界で ( No.40 )
日時: 2013/09/12 22:02
名前: テテ (ID: 0aJKRWW2)

22・「water dragon」

「あーーヤバいなー・・・。これは死んだわ。マージーでヤバ〜い。」
初っ端からギャルの如き言葉づかいですいません。
「フィン、ここ・・・何処?」
カラカラと掠れた声でショウが囁くようにそう言った。
その顔にはぐったりとした疲労感が滲んでいる。
「知らないよぉ・・・。地図盗られちゃったんだから仕方ないでしょ・・・?」
そう、私たちは今この広大なニエルデ砂漠の中を彷徨っている。
まぁ、簡単に言えば迷子だった。
それも砂漠に巣食うカークンとか言うカラスっぽい怪鳥のせいなのだが・・・。
「あづいいい・・。」
最早叫ぶ気力もない。
さっきから水の石を多用しているのだが、それでもすぐ乾く。
日陰もない為、遮るものもなく直射日光はぎらぎらと私達を
焼き続けた。
喉が潤っても体力は回復しない。
——ぁあぁぁ。
そう一声、自分のものだと信じられないほど掠れて潰れた声を上げると
もう限界だとばかりに私の体は前へ倒れ込んだ。
じゅわっ!
「ぁづぅぅぅッ!」
しゅううううーーー。
砂漠の砂は、まるでフライパンのようでして。
「ちょっ・・・フィン!?」
ショウが珍しく慌てた様子でフィンを立ち上がらせる。
へにゃり、くにゃり、とフィンの体は完全に脱力状態。
ショウも困った様子で辺りを見回すと、はぁっと溜息をついた。
「おい。」
「!!」
何か誰かに声を掛けられたような気がして、ショウは警戒し振り返る。
そこに、傷つき疲れ果てた様子の少年———
碧く水のようにすべらかな髪、空けるように白い肌、鋭く知性溢れていて、しかし何処か危険性・・・獰猛さを潜ませている黄金の瞳は
どう見ても異形だった。
「・・——おい。お前ら、迷ってんの?」
とても初対面とは思えない態度で、ショウに話し掛ける少年。
「・・・いや、そうなんだろうな。絶対にそうだ。」
しかしその会話は一方的で、返答を求めてすらいなかった。
「だってこっちさ———」
そこで少年は一旦言葉を切ると、猫のような、鷹のような目つきでニヤリと口角を持ち上げる。
「何処へも続かない方向だしね。」
「そ、そんな・・・。」
それは苦労して此処まで歩いてきた彼にとって、とても残酷な一言だった。
どうしよう、とショウが顔を俯かせたのをじっと見つめ、それから少年はまた笑う。
「まぁ・・・行先によっては助けてやらんこともない。」
品定めするかのように、気まぐれな口調でそう言った。
「なぁ、何処行きだ?」
「え、・・・っと。ビッキーニっていうところ・・・らしい。」
「ふーん・・・・・・。」
ごくり、と唾をのむ音だけが沈黙に響いた。
「なら・・・・・・・・・・・いいぜ、連れてってやるよ。」
ショウの顔が輝き、少年は唯笑う。
「・・・んの代わりぃ・・・水。飲ませろ。」
ん、と手を差し出す少年。
「あ、うん・・・フィン!フィンっ、起きて・・・。」
「んー・・・。・・・お?あるぇ、ショウ?どした?」
寝惚けた混乱の中、フィンは少年の存在を完全スルーしてショウに問う。
「あの・・・水の石、あれ。その人に、使ってあげて。」
「・・・誰!?」
やっと気づいたらしく、フィンは焦って何かの構えを取った。
少年は呆れながらも自己紹介をする。
「あぁ・・・ま、ちょっと色々あってな。俺はウィルラ。
宜しく、フィンとやら。」
「あ、ハイ・・・って「あのね。僕らをビッキーニまで連れて行ってくれるんだって。」・・・え?あ、それはどうも・・・。」
きょとん、とフィンが情報を整理できずに固まる。
「ぁああ!じれってぇな、早くしろよっ。」
「う、うん・・・。」
びしゃぁあああああ。
「イキナリ?うわっ・・・フィ、フィン・・・!」
ずぶ濡れになって俯いているウィルラが怒っていると解釈し、ショウはおろおろと動き回る。
しかし。
「よっっっっ・・・。」
「「よっ・・・?」」
「っしゃぁあああああああああああああ!!完全復活、これで本来の力が出せる・・・ありがとな、お前ら。じゃ、行こうぜ!」
喜んだ。























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