二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
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- NARUTO 〜明日の未来〜
- 日時: 2010/07/01 18:18
- 名前: 娃輝 (ID: qwjQ/00r)
注意事項
・オリキャラとオリジナルの術がでます
・ヒロインは、デイダラ姉とイタチ姉とサソリ妹です
・できるだけ、微原作沿い&ギャグ(?)&若干シリアスにしたいと思います
・特殊能力が少しだけ出てきます
・原作で亡くなる人が亡くならない場合があります
・デイダラ姉はシカマルと飛段寄り、イタチ姉はカカシ寄り、サソリ妹はサスケとイタチ寄り・・・落ちは未定です。
・いきものがかりなどの曲の歌詞が入り、それをヒロインが作った設定になっております
・ヒロインの過去の方でサソリ妹はデイダラと、デイダラ姉はイタチと、イタチ姉はサソリと会っています。
上記の他にも読者様が「ん?」と、思ってしまう所があるかもしれませんが、ご了承ください。
上記の事がNGの方は読まない方が良い事をお勧めします。
読者様が喜んで読んで頂けたら、私も嬉しいです。
- NARUTO 〜明日の未来〜 第一章 三人の少女 ( No.3 )
- 日時: 2010/07/07 20:55
- 名前: 娃輝 (ID: qwjQ/00r)
ある日・・・火の国 木の葉隠れの里の一角では、忍を育てるための学校・・・“アカデミー”で、教師による教育指導が行われていた。
「はぁ・・・つまらん・・・。」
アカデミーの生徒の一人である少女は、机に突っ伏して、窓側の席から、ゆっくり流れ行く雲を見つめていた。
「こーゆー日は、日向ぼっこ日和だよねぇ・・・ふわあぁ・・・早く授業、終わらないかなぁー・・・眠い・・・。」
「・・・お前が、ちゃーんと授業受けてくれたら、早く終わるんだが・・・?」
「・・・!」
少女は、体を微かに震わせ、声が聞こえる方向に顔を向けると、教科書を持った男性が、上から少女の事を見下ろしていた。
「よく、最前列の窓側で何度も同じ事ができるなぁ?ソフィア。」
「あ・・・こんちわー・・・イルカ先生、今日は一段とご立腹なようで・・・。」
ソフィアは反省する気もなく、意地悪な笑みを浮かべながら、イルカ・・・という教師に歯向かう。
「・・・ソフィア・・・お前、岩隠れでもそういう態度だったのか?」
ソフィアは首を縦に振り、変わらぬ口調で話した。
「オフコース、おかげで岩影に説教食らうのが毎日の日課になってたからね・・・。」
ソフィアの言葉を聞くと、イルカは、はぁー・・・と盛大にため息をついた。
「・・・いくら、お前が他国から来た生徒だとしても、俺は最後まで手加減するつもりはないから覚悟しとけよ・・・今日、お前居残りな。」
後半はポツリ・・・と言ったはずだが、イルカと近距離にいたソフィアには聞こえていたようだ。
「えぇーーっ!!そんな!ひどいよ・・・!ただでさえ、今眠くて眠くて、あくびを必死に抑えてたのに・・・!・・・ふわあぁ・・・。」
「おい、言ったそばからあくびをするな。」
イルカは持っていた教科書でソフィアの頭を軽く叩いた・・・が、そんな事をされて怯むソフィアではなかった。
「・・・ってか、他国の忍だったら、サオリはどうなるのさ!サオリだって砂からの留学生じゃん!」
ソフィアは、ビシッと、赤髪の女の子の方を指差す・・・、そして、他の生徒達の視線が一気にその子に集まった。
「サオリはソフィアと違って、アカデミーの成績で優秀だからな・・・お前とは天と地の差だ。」
「贔屓だぁー、贔屓だぁー、贔屓だぁー・・・ぶぅーぶぅーぶぅー・・・。」
ソフィアが頬を膨らませて、イルカにブーイングを送っていると、イルカはそれを振り払うように言い放った。
「とにかく!今日放課後残れ・・・いいな?」
「・・・・・・へーい・・・。」
渋々ソフィアが了解すると同時に、授業の終わりを告げるチャイムが鳴った。
「よし!今日の授業はここまで!ソフィア以外帰る支度をしろー!」
その号令に合わせて、九ノ一の生徒達がぞろぞろと立ち上がり、イルカもソフィアを一目見てから教室の外に出て行った。
「・・・ソフィア。」
次々とカバンの中に教科書やら、筆記用具やらを入れる人達の中・・・さっきの赤髪の女の子、サオリと黒髪のもう一人の女の子が、ソフィアの前に来た。
「ごめんなさい・・・さっき、フォローしてあげられなくて・・・。」
サオリはソフィアに向かって軽く、頭を下げる。
「いいよ、いいよ、そんな謝らなくても・・・私がサオリを巻き込んだんだから・・・。」
「まぁ・・・ソフィアらしい、って言ったら、ソフィアらしい行動よね・・・あれは・・・。」
黒髪の女の子は少し苦笑しながら、ソフィアに話しかける。
「その言葉って褒めてんの?貶してんの?どっち?コウハ。」
「・・・・・・どっちも。」
コウハは少し間が開いてから、ソフィアに言うと、ぶぅー・・・と、また、頬を膨らませた。
「そう拗ねないで・・・今日私、日直だし・・・貴方が終わるまで待っててあげるから。」
「え、あ・・・いいの?」
さっきのソフィアの態度は消え、戸惑いながらもコウハに問いただした。
「えぇ。」
・・・が、コウハの気持ちは変わらなかった。
「どーも、コウハ。」
「どういたしまして。」
コウハはソフィアに微笑んだ後、視線をソフィアからサオリに変えた。
「サオリも残れるわよね?・・・早く終わったらの話だけど。」
「・・・?サオリ、なんかあるの?」
すると、サオリは周りを見渡して、一歩ソフィアに近づき、誰にも聞こえないように、自らの口をソフィアの耳まで持ってきて、耳と口からの距離まで、手を添えた。
「実は、今日の放課中・・・“あの人達”に絡まれてしまいまして・・・。」
「あーぁ・・・分かった・・・“あいつ等”ね・・・・・・だから、今日の放課にサオリの姿がなかった訳だ・・・。」
サオリは、さっきと同じ体制に戻り、帰りの準備をしながら、キャーキャーと話している“あの人達”の方を見た・・・それにつられて、二人も同じ方向を見る。
「・・・七月から、同じ事何回もくり返して、よく飽きないものね・・・いじめ行為なんて・・・。」
コウハは呆れながら、独り言のように呟いた。
「・・・ま、そのいじめの被害にあった子達は私が助けてあげてるから、教師の耳には入ってきてないけど・・・たしか、ずいぶん前にコウハも呼び出しされてなかった?」
ソフィアはコウハの顔を覗き込んだ。
「九月に一度だけね・・・サスケと一緒に暮らしているからって、調子乗るな・・・っていう内容だったけど・・・別に、好き好んで暮らしている訳でもないし、貴方達がそう判断しているだけでしょう?・・・って言ったら、案の定、怖気づいたのか、いじめは免れたわ・・・。」
「・・・ですが、コウハの次は、ソフィアがターゲットにされて、被害に遭っていましたよね・・・。」
サオリの悲しげな表情とは裏腹に、ソフィアは笑いながら、過去の事を話し出した。
「そーそー、いきなり、木の棒持って叩いてこようとするからさぁ・・・お得意の水遁で脅したら、腰抜かして、どっかに飛んでいったよ・・・あの時はスッキリしたなぁ・・・もう一回やりたい。」
「ソフィア、水遁得意だからね・・・。」
「うん、その後、水遁じゃなくて土遁で泥だらけにした方が良かったかなって今でも思うよ・・・サオリも、おもいっきりやっちゃっていいからね。」
「だからと言って、“出す”訳にもいかないでしょう?」
「そうね、それはそれで大騒ぎになる。」
三人は笑いながら話をしている時には、すでに他の生徒は下校しており、教室にはソフィア、コウハ、サオリだけとなっていた。・・・しばらく、三人で話し込んでいると、教室に戻ってきたイルカが“何か”を持って、コウハ、サオリの横を通り、ソフィアの机に、その“何か”を、ドス・・・と置いた。
「ソフィア、このプリントを夕方までに終わらせろよ。」
その“何か”とは、大量のプリント達・・・その量と言ったら半端なく、厚さだけでも、五センチは超えていた。
「うげっ!こんな量、私にできる訳ないじゃん!」
ソフィアがあまりのプリントの量に音を上げた
「・・・大丈夫ですよ、ソフィア・・・時間はたっぷりありますから、根気良くやっていけば時間内に終わります。」
ソフィアはサオリの励ましの言葉を聞くと、もうやだ・・・と言って、おでこを机に付けた。
「がんばって、私は黒板を拭きながら、ソフィアの事・・・見守っているから。」
コウハはソフィアの肩に手を置いた。
「ううっ・・・二人共どっちの味方なのさぁ・・・。」
唸りながらも、ソフィアは一番上にあるプリントを一枚取ってから、筆箱から鉛筆を取り出し、問題に取り掛かった。
「「「・・・・・・・・・・・・。」」」
他の三人は邪魔してはいけないと思い、教室を出た所の廊下に移動した。
「・・・はぁ・・・集中力と発想力はアカデミーで一番なのに、なんでそれ以外は九ノ一でドベの成績なんだろうなぁ・・・ソフィアは・・・。」
独り言なのか・・・それとも、ソフィアと親しいコウハとサオリに向かって言っているのか・・・イルカは、ため息混じりに呟いた。
「それに体術も、九ノ一でトップですよ、イルカ先生。」
コウハがイルカの言葉に付け足す。
「・・・あぁ・・・そうだったな・・・男勝りな性格だから、体力はある方だと思っていたが、まさか・・・あそこまでだったとは、俺も驚きだ・・・。」
サオリはイルカに、にこりと微笑んだ。
「人を見かけで判断してはいけませんよ?イルカ先生。ソフィアは少し、めんどくさがり屋さんなだけで本当はやればできる子なんですから・・・。」
サオリは母親的な目で、頬杖を突きながら鉛筆を走らせているソフィアを見つめていた。
「そこらへんは俺も分かっているつもりなんだがなぁ・・・って、そういえばサオリ、お前早く帰らなくていいのか?コウハは日直だから居てもいいんだが・・・。」
イルカは頭を掻きながら言うと、サオリは体をビクッと震わせた。
「あっ!!そうでした!すみません、イルカ先生!すぐ、帰りの支度をしますので・・・!」
サオリは早口で言った後、再び教室に入って、自分の席に戻り、カバンの中に荷物を入れ始めた。
「・・・先生、そういえば、卒業試験って・・・明後日でしたよね?」
イルカとコウハはそのまま廊下に出て、他愛のない話をしていた。
「あぁ、そうだが・・・それがどうかしたのか?」
コウハはイルカににっこりと微笑んだ。
「ソフィアとナルト・・・受かるといいですね。」
「!なっ・・・!」
イルカは図星なのか、顔を真っ赤にして、後ずさりしていた。
「・・・だって、アカデミーの問題児といえば、男子では、うずまきナルト・・・女子では、ソフィアって、他の先生方も言っていますよ?・・・あと、イルカ先生、二人の事見る目だけ、私達と違いますしね・・・。」
イルカは、顔が若干赤いまま、ゴホン・・・と、わざとらしく咳払いをして、その場でしゃがみこみ、コウハと同じくらいの背丈になってから、さっきのサオリと同じ行動を取った。
「コウハ・・・頼むから、その事は誰にも言わないでくれないか?その事がばれると、他の先生方から、贔屓していると言われて、俺の立場が無くなってしまう・・・下手すると、退職・・・なんて事もあり得るかなぁ・・・。」
イルカが元の姿勢戻ると、コウハはイルカを見つめた。
「そんな頼まなくてもいいですよ、言うつもりはありませんから、安心してください・・・。それに、先生にはアカデミーを辞めてほしくありませんからね。」
コウハはくすり・・・とイルカに微笑み、イルカも安堵の胸を撫で下ろす。
「恩にきるよ・・・コウハ。」
しばらくして、教室の中から、パタパタパタ・・・ドテン!・・・という、足音と効果音が聞こえた。
「?何?今の・・・。」
「何かあったのか?」
コウハとイルカは、不思議な音に疑問を感じていると、教室からソフィアとサオリの会話が聞こえてきた。
「だ、大丈夫・・・?サオリ・・・。」
「は、はい・・・だいじょうぶです・・・ごめんなさい・・・邪魔してしまって・・・。」
ソフィアとサオリの会話が終えた後、コウハ達の疑問は解かれた。
「「((転んだのね(転んだな)・・・サオリ・・・。))」」
・・・コウハとイルカの心が一致した瞬間だった。
「・・・ふぅー・・・イルカ先生、さようなら。」
教室から出てきたサオリは、コウハ達の所に来て、イルカに深々とお辞儀をした。
「あぁ、また明日・・・それより、今大丈夫だったか?」
すると、サオリは苦笑いを浮かべた。
「はい・・・少し足を挫いただけですから、すぐに治りますよ。」
サオリはイルカに挨拶を済ませると、次はコウハと向き合った。
「では、コウハ・・・また。」
「えぇ、また・・・。」
コウハとサオリは小さく手を振って、別れを告げた。
「・・・さて、私は日直の仕事に入ろうか・・・。」
サオリが行った後、コウハは教室に入ろうとした時、イルカに呼び止められた。
「コウハ、悪いが、ソフィアが終わるまで待っててもらえないか?あいつ一人じゃ心配で・・・。」
コウハはイルカの心の内が見えのか、一人・・・心の中で苦笑した。
「最初からそのつもりですよ・・・あ、イルカ先生・・・学級日誌、書き終えたらどうしましょうか。」
「あぁ・・・書き終えたら、職員室まで持ってきてくれ、その時間になったら俺も居ると思うから。」
コウハはイルカの言い方に疑問を感じた。
「?先生、どこか出かけるんですか?」
するとイルカは、楽しそうに笑った。
「男子の方にも、居残りの奴らが居るから、そいつ等を・・・な・・・。」
「なるほど・・・。」
コウハは大体予想がつき、納得した。
「だったら、今頃・・・今日の日直は手を焼いていますね。」
「あぁ・・・その通りだ。」
二人は静かに笑っていると、遠くからギャーギャーという声が聞こえた・・・おそらく、男子のクラスからだろう・・・。
「おっと・・・いかんいかん・・・じゃあ、また後でな、コウハ。」
「がんばってくださいね、先生。」
コウハはイルカが行った後、教室に入り、黒板を拭き始めた。
- NARUTO 〜明日の未来〜 第一章 三人の少女 ( No.5 )
- 日時: 2010/06/25 21:45
- 名前: 娃輝 (ID: qwjQ/00r)
「はぁ〜・・・なんで、オレ達がサスケの手伝いなんかしなくちゃいけないんだってばよォ・・・。」
金髪の少年が箒でゴミを掃きながら、ぼそっと呟いた。
「ったく・・・ナルト、お前のせいで、おれまで被害にあったじゃねーか・・・ったく、めんどくせぇ・・・。」
ナルトが集めたゴミを塵取りで取る仕事をしている、黒髪の少年がため息をついた。
「お前らがイルカの授業をサボるから、こんな雑用頼まれんだよ・・・ウスラトンカチども・・・。」
サスケが黒板消しを持ちながら二人に喧嘩を売った・・・そして案の定、その一言にサスケと仲が悪いナルトがキレた。
「んだとォォー!!サスケェェーー!!」
今にもナルトがサスケに飛び掛ろうとしている時、黒髪の少年が二人を止めた。
「おい、ナルト、お前が飛びかかってもサスケに適うわけねーだろーが・・・。」
「うるせぇ!シカマルは黙ってろっての!」
ナルトの語尾が終わるか、終わらないかぐらいの時、教壇側の教室のドアが勢い良く開いた。
「こらぁぁぁーーっっ!!ナルトォォォ!!」
「げっ!!イ、イルカ先生!!」
ナルトはすばやくサスケから離れると、青ざめた表情でイルカを見ていた。
「お前は俺が居ないと掃除もできんのかぁぁ!!」
「ギャーーッ!!痛い、痛いってばよォー!!」
イルカがナルトの耳を引っ張っていると、サスケがその光景を呆れ顔で見ながら、少し大きめの声で言った。
「イルカ、一通り終わったんだが・・・。」
サスケはチョーク受けに黒板消しを置いた時、イルカは一時、ナルトの耳を引っ張るのを止め、サスケの方を見て、軽く苦笑した。
「あぁ、それならもう終わっていいぞ、日直の仕事、ご苦労だったな。」
サスケはイルカの言葉を聞くと、黒板の前から、自分の席に移動し、カバンに荷物を詰め始めた。
「せんせー・・・おれも、終わったんスけど・・・。」
シカマルは掃除道具を片付けながら言った。
「分かった、シカマルも上がっていいぞ。」
「あー!シカマルずりーぞ!」
ナルトがシカマルの傍に行こうとした時、イルカに止められた。
「お前はまだだ。」
「えぇっ!!な、なんでだってばよォ!」
「お前、さっきからギャーギャーギャーギャ騒いでただろ、九ノ一の教室まで丸聞こえだったぞ。」
「そ、そんなぁ・・・。」
ナルトはがっくりと肩を落とした・・・イルカはそんなナルトの姿を見て、さっきのコウハの言葉を思い出した。
———— ・・・だって、アカデミーの問題児といえば、男子では、うずまきナルト・・・女子では、ソフィアって、他の先生方も言っていますよ?・・・あと、イルカ先生、二人の事見る目だけ、私達と違いますしね・・・ ————
「(・・・はぁ・・・やっぱり、俺はまだまだ甘いな・・・。)」
イルカはナルトを見つめ、そう心の中で呟いた・・・そして、結果的には・・・。
「・・・しょうがない・・・今日は特別だ、上がっていいぞ、ナルト。」
「っ・・・やったああぁぁぁぁ!!!」
イルカはナルトを開放するや今や、ナルトは跳ね上がり、すぐに帰りの支度をし始めた・・・そして、しばらくすると、新たな来客者が訪れた。
「イルカ先生ー!開けて!開けて!重い!重いよー!手がちぎれる!」
イルカが入ってきたドアとは違う、教室の後ろ側の扉を、誰かがドンドンドン!・・・と、叩いていた。
「「「(((・・・?)))」」」
ナルト、シカマル、サスケはその声の主が分からなくて、ただ眉を潜めていた。
《ガラガラガラー・・・》
イルカが教室の扉を開けると、金髪の少女と、黒髪の少女が教室に入ってきた。
「ぬおぉぁぁ・・・重かったぁー・・・。」
金髪の少女は意味不明の声を上げ、近くにあった机に、ドス・・・っと、白い“何か”を置いた。
「(コウハちゃん・・・?・・・と、もう一人・・・金髪の女の子・・・誰だってばよ・・・?)」
「(あんな奴・・・アカデミーにいたか・・・?)」
「(・・・ってか、あの紙・・・補習用のプリントじゃねーか・・・。)」
少年達が心の中で呟いている時、イルカは目を丸くさせていた。
「お、お前・・・、もう終わったのか・・・?」
イルカが驚きながら、机に置いてあるプリントを指差しながら言った。
「合ってるかどうかは別として、ぜーんぶ終わった!私の集中力、甘く見ないでよね、イルカ先生。」
少女は笑顔で得意げに言った。
「はい、先生・・・学級日誌。」
金髪の少女と入れ替わるように、ポス・・・っと、コウハは黄土色に古ぼけた日誌を渡した。
「なんだコウハ・・・お前も来たのか、職員室に持って来いって言ったのに・・・。」
すると、コウハは金髪の少女の方を見た。
「いえ・・・私も、最初はそう思ってたんですけど、彼女が丁度終わったから、ついでに渡そうと思ったんですよ。それに、教室から意外な気配があったので・・・。」
コウハはイルカから視線を外し、サスケの方に向けた。
「・・・貴方が居残りなんて珍しいじゃない・・・サスケ。」
ナルトとシカマルは瞬時にサスケの方を見た。
「おれは日直の仕事をしていただけだ。」
「あら、奇遇ね・・・私も今日、日直だったのよ。」
コウハはサスケに笑みを浮かべ、次にナルトとシカマルを見た。
「・・・今日はキバとチョウジはいないのね。」
「二人は家の都合で早引きしたってばよ。」
コウハの言葉にナルトが返した。
「そう・・・教えてくれてありがとう、ナルト。」
コウハはにっこりとナルトに微笑んだ。
「っ・・・!」
ナルトは、その笑顔に顔を真っ赤にさせた・・・大人っぽい性格からなのか、普段コウハは男子に笑顔を見せることはない・・・もしも、男子がコウハの笑顔を見たら、大半は美しい・・・と、思ってしまうだろう・・・大人でもその笑顔に顔を赤くする人は少なくはない。
「・・・おーい・・・コウハ・・・、待ち人がいるんだから、早くしないと・・・。」
金髪の少女は教室の壁にもたれかかって、ナルトとコウハを我に返した。
「・・・あぁ・・・ごめん。」
コウハは振り返り、少女を見つめた。
「・・・でも、行く必要ないわよ。“あっち”の方から来てくれたようだから・・・。」
コウハの一言で金髪の少女は眉を潜めたが、しばらく経ったら、何かを感じ取ったのか・・・納得したように頷いた。
「・・・あぁ、ほんとだ・・・。」
その少女の一言に、少年達はそれぞれ違う疑問を持ち始めた。
「(な、何言ってるんだってばよ・・・?)」
「(あいつ・・・意味不明な事ばっかり言ってやがる・・・本当に何者なんだ?)」
「(・・・誰かの気配が近づいてくるな・・・しかも、チャクラの量が多い・・・。)」
「(!この気配・・・!)」
少年達の疑問の中・・・イルカだけはその言葉の意味と気配の正体が分かっていたようだった。
《パタパタパタ・・・》
だんだん近づいてくる足音が急に止んだかと思うと、一人の少女が紅緋色の巻物を持って教室に入ってきた。
「(・・・また、知らない女の子だってばよ・・・。)」
「(ったく、次から次へと・・・誰なんだよ、一体・・・!)」
「(?あいつが持ってるのは・・・・・・口寄せの巻物・・・?)」
・・・少年達は新たな疑問を持った。
「お前・・・まだ帰ってなかったのか・・・?」
一方、イルカは怒っている様子もなく、ただ、驚いて目を開いていた。
「はい・・少し私用がありまして・・・。」
赤髪の少女はイルカに頭を下げた。
「・・・で、どうだった?おもいっきりやってやった?」
金髪の少女は赤髪の少女に詰め寄った。
「えぇ、それが・・・話し合いだけで解決しようと思ったのですけれど、少々相手が、手荒な行為をしてきたので、つい・・・“出して”しました。」
“出した”という単語で赤髪の少女はその白い巻物を二人に見せたら、金髪の少女とコウハは固まった。
「・・・マジで?」
「そしたら相手・・・何て言った?」
コウハが問うと、少女は苦笑しながら言った。
「案の定、泣きながら、もうやらない・・と、約束してくれました。」
すると、二人は浮かない顔をした。
「・・・約束するぐらいなら、被害に遭った子達に謝罪してほしいな・・・。」
「うんうん・・・、いまさら約束されてもねぇ・・・明後日、卒業試験だっつーの!」
「まぁまぁ・・・お二人とも・・・細かい事はおきになさらずに・・・。」
赤髪の少女は二人を宥める。
「(だ・・・出したって・・・?)」
「(案の定って・・・確信犯かよ・・・おい。)」
「(・・・・・・・・・・・・。)」
「ゴッホン!」
イルカがわざとらしい咳をして、三人の少女を振り向かせた。
「三人とも、話しているのはいいが、そろそろ帰った方がいいぞ・・・もう五時半を過ぎてるしな・・・。」
少女達は教室に設置してある時計を見ると、長い針が七、短い針が五と六の間を指していた。
「あー・・・ヤバイね、こりゃ・・・。」
金髪の少女が時計を見ながら、手で頭を押さえていた。
「・・・ごめんなさい、こんな時間まで長居してしまって・・・。」
赤髪の少女はイルカに一言、謝罪の言葉を発した。
「・・・じゃあ、私達はこれで・・・。」
コウハが言うと、少女達はぞろぞろと教室から出て行った。
「「「・・・・・・・・・・・・。」」」
それから少年達は、少女達が出た教室のドアを見つめたまま、一歩も動こうとはしなかった。
「?どうした?三人とも・・・。」
イルカがその場で固まっている、三人の顔を見た。
「イルカ先生・・・コウハちゃんと一緒にいた女の子達って・・・誰だってばよ?」
ナルトが聞くと、イルカは瞬きしながら言った。
「誰って・・・同い年の九ノ一だが・・・?」
「でも、あんな容姿をした女・・・木の葉では、見たことないっスよ。」
シカマルが口を挟んだ。
「あぁ・・・そういう事か・・・あの金髪の子と、赤髪の子は他国からの留学生でな・・・去年に転校してきているんだ・・・知らなかったか?」
「た・・・他国?」
ナルトが呟くと、サスケが口を開いた。
「なぜ、他国の奴が木の葉に来るんだ?別に、自分達の里でもアカデミーはあるだろ。」
イルカは以外にも三人がしつこく言ってくるので、返答に困っていた。
「・・・まぁ、色々と家の事情があるんだろうよ、これは教師の俺が言う事じゃないからな・・・直接、本人達に聞いてみたらどうだ?」
イルカがそう提案すると、ナルトは急いで自分の荷物を持ち、大声を張り上げた。
「よし!んじゃあ、さっそく追いかけるってばよ!!」
ナルトは元気良く教室を飛び出し、シカマルとサスケも自分のカバンを持ち、後を追おうとした・・・が、教室の後ろ側のドアまで行ったところで、イルカに声を掛けられた。
「ナルトはともかく、シカマルとサスケが食いつくなんて珍しいな・・・二人共、こういうのはあまり好まないものだと思ってたが・・・そんなに気になるのか?」
イルカは少し悪戯げに言うと、少し間が空いて、サスケとシカマルは同じ意見を主張した。
「・・・おれは、“他国の者”っていうのに興味があるだけだ。」
「以下同文。」
そう言うと、二人は走っていったナルトを追いかけていった。
「・・・全く、素直じゃない奴らだなぁ・・・。」
教室に残されたイルカは、苦笑いを浮かべながら、さっき金髪の少女が置いていった大量のプリントを見た。
「・・・ま、とりあえず、プリントの答え合わせでもしておくか・・・。」
イルカは大量のプリントを持ち上げ、教室を出て行った。
- NARUTO 〜明日の未来〜 第一章 三人の少女 ( No.7 )
- 日時: 2010/07/07 21:13
- 名前: 娃輝 (ID: qwjQ/00r)
時は過ぎ、昼は青い空のはずだったのが、今はほんのり茜色・・・道は夕日の光によって、鮮やかな橙色に染まっていた。・・・アカデミーを後にしたソフィア達は横一列に並んで、自宅に続いている通学路を歩いていると、ソフィアは何かを感じ取ったのか、急に後ろを振り返った。
「・・・なんか後ろから、三つの気配がすごい勢いで近づいてくるんだけど・・・。」
ソフィアの問いにコウハは冷静に答えた。
「きっと、ナルト達よ。」
ソフィアはぽかんとした表情でコウハを見た。
「ナルト?・・・ラーメンの具の?」
ソフィアが首を傾げて言うと、コウハはそのおかしな返答に笑った。
「違う違う・・・さっき、教室に金髪の男の子がいたでしょう?あの子がうずまきナルトって言うの。」
すると、ソフィアはようやく納得したように頷いた。
「・・・へぇ・・・変わった名前が多いねぇ・・・木の葉は・・・。」
ソフィアが感心してる時、後ろの方から少年が一人・・・こちらに迫って来ており、十数秒もしない間に、金色の髪をした少年が三人の少女の目の前に現れた。
「っ・・・はぁ・・・はぁ・・・や、やっと・・・追いついたってばよぉ・・・。」
ナルトは膝に手を付け、息を整えていた。
「・・・ったく、最初に飛ばすバカいるかっつーの。」
「・・・ウスラトンカチ。」
そして、ナルトが着いてから五秒後、シカマルとサスケはあまり息を切らさず、ソフィア達に追いついた。
「うっわー・・・この二人毒舌だ・・・。」
・・・さっきの少年二人の一言で、ソフィアのシカマルとサスケの第一印象は“毒舌の少年”・・・となった。
「・・・で、どうしたの?三人とも、走ってきて・・・。」
コウハが問うと、息を整えたナルトが顔を上げた。
「コウハちゃんと一緒にいる女の子達が気になったから、追いかけてきたんだってばよ。」
ストレートに自分の気持ちを発するナルトにコウハは微笑んだ。
「・・・そちらのお二人も?」
コウハはシカマルとサスケに質問したが、図星なのか、あえて答えようとはしなかった。
「(・・・まぁ、答えは分かってるから、いいか・・・。)」
コウハはソフィアとサオリの方を見た。
「・・・だってさ、二人共。」
「・・・コウハ、だってさって言われても・・・どうリアクションすればいいのか分からないんだけど・・・。」
「とりあえず、最低限・・・自己紹介はしておきましょうよ。」
サオリはナルト達の方に視線を合わせると、にっこりと微笑んだ。
「私の名はサオリ・・・“白砂のサオリ”です。・・・以後、お見知りおきを。」
その丁寧な言葉にその場にいた全員が固まった。
「・・・サオリ・・・めっちゃくちゃ偉い事なんだけど・・・もう少し“子供らしく”しようよ・・・。」
ソフィアが瞬時にその場の空気を変える。
「あ・・・ごめんなさい、どうしても慣れなくて・・・。」
サオリは俯き、ソフィアに軽く頭を下げる。
「・・・まぁ、いいんじゃない?その方がサオリらしいし・・・。」
コウハが弁解すると、ソフィアは苦笑を浮かべながら、少年達の方を見た。
「私はソフィア、よろしく!」
にこりと笑うソフィア。
「オレはうずまきナルト、よろしくだってばよ!」
「・・・奈良シカマル。」
「・・・うちはサスケ。」
ナルトは愛想よく自己紹介したが、もう二人は性格からなのか、名前だけ答えた。
「?うちは・・・という事は、コウハと双子のお兄さんか弟さんですか?」
サオリはコウハとサスケを交互に見ると、コウハはサオリに視線を合わせた。
「えぇ、私が妹でサスケが兄。」
「そうですか、失礼しました。」
サオリはそれ以上問わず、二人に微笑みかけた。
「でもさぁ、サオリ・・・“白砂”まで付けなくても良かったんじゃない?」
「いえ、異名も私の名の一部ですから・・・。」
ソフィアとサオリの会話にナルトが口を挟んだ。
「い・・・いめい?」
ナルトが訳が分からないような顔をしているので、コウハが説明した。
「忍の名前の中にはそれぞれ戦い方にあった異名が付けられる場合があるのよ。」
「へぇー・・・。」
ナルトはサオリを見ながら感心した。
「しかし、まだアカデミー生のお前がなぜ異名を持っている?」
サスケはサオリに直接聞いた。
「故郷で色々とやっているうちに、皆からそう、呼ばれるようになったんです。」
サスケはそれから黙ったまま、サオリを見つめていた。
「・・・まぁ、歩きながら色々と話そうよ。」
ソフィアが言うと、全員頷き、橙色の道を歩きだした。
「ソフィアちゃんは故郷で何してたんだってばよ?」
「ソフィアでいいよ、ナルト・・・。・・・って、なんで私が木の葉出身じゃないって分かったの?」
「イルカ先生に教えてもらったってばよ。」
ナルトは二シシ・・・と、笑った。
「なるほど・・・イルカ先生がねぇ・・・私は家の手伝いしながら、“あっち”のアカデミーに通ってたよ。」
「・・・ふーん。」
ナルトはまだ聞きたげな顔をしていたが、それ以上何も言わなかった。
「・・・ま、気が向いたら、そのうち言うよ。気が向いたらの話だけど・・・。」
ソフィアは苦笑を浮かべ、空を見上げた。
「あーあー・・・、今日すごく暖かかったから、日向ぼっこ日和だったのになぁー・・・残念・・・。」
ソフィアはため息をつき、コウハはくすっ・・・と、笑った。
「ソフィアが授業中ぼーっとしてるから悪いのよ・・・自業自得。」
「だって、つまらないもん。」
「それは言い訳。」
「むぅ・・・。」
ソフィアとコウハのやり取りをナルト達とサオリは黙って様子を伺っていた。
「・・・いつも、こんな調子なのか?」
シカマルがサオリに問う。
「はい、大体は・・・。」
サオリは二人を見て、微笑んだ。
「でも、個性豊かで楽しいですよ?」
「・・・豊か過ぎるだろ・・・。」
「ふふっ、そうかもしれませんね。」
サスケがポツリ・・・と、呟くと、サオリはその返答に笑った。
「・・・んじゃ、オレこっちだから、じゃーな!」
分かれ道に着くと、ナルトは違う方向に行き、ソフィア達とサスケとシカマルに手を振っていた。
「じゃーね!また明日ー!」
ソフィアもナルトに向かって、手を振り返した。
「・・・あ、そういえば・・・コウハん家って・・・たしか、このまま真っ直ぐ行ったところだよね?」
ソフィアがナルトを見送ると、再び歩き出し、コウハに問う。
「えぇ・・・あの無駄に大きい建物の事よ。」
「「((無駄って・・・おい。))」」
サスケとシカマルが心の中で突っ込んだ。
「へぇー・・・そうなんだ・・・。シカマルは?家、どこ?」
ソフィアの気まぐれの性格が発揮されて、話し相手をシカマルに変えた。
「・・・真っ直ぐ行って、右曲がって、また右に曲がったら、鹿がうじゃうじゃいる所に家っぽいのがあるからそこが、俺ん家。」
「うっわ・・・複雑な道のり・・・。」
「しゃーねーだろ、そーゆー地形なんだからよ・・・。」
シカマルはため息をつき、今度はシカマルがソフィアに問う。
「・・・ところで、お前はどこの里出身なんだ?」
「・・・いきなり話し変えたな、おい・・・まぁ、いいや・・・私は岩隠れ出身で、少しだけ霧の血が混じってるんだ。」
「・・・意味分かんねぇ・・・、もう少し分かりやすく言えねーのかよ・・・。」
シカマルが言うと、ソフィアはシカマルにもう一度、分かりやすく説明した。
「・・・だーかーら、私の親父が岩出身で、私のお袋が霧出身だから、私は霧と岩のハーフって訳・・・分かったかい?シカマル君。」
すると、シカマルは納得したように首を上下に動かした。
「だったら最初っからそう言えっつーの。」
「シカマルの頭にクモの巣が張ってあって、頭の回転が悪すぎるんだよ。」
ソフィアは意地悪な笑みを浮かべながら、シカマルを見つめていた。
「・・・はぁ・・・言い返すのもめんどくせぇ・・・。」
シカマルは今日何回目か分からない、ため息をついた。
「・・・あ、ソフィア・・・ここですよ。」
しばらく黙っていたサオリが、ソフィアに話しかけた。
「あ・・・本当だ・・・話してたから気づかなかった。」
ソフィアはサオリの隣に行くと、横の路地に向かって走り、後ろにいるコウハ達に手を振った。
「三人ともー!バイバイー!」
「また、明日。」
サオリは小さく手を振り、コウハも手を振り返すと、二人は路地の奥に消えていった。
「・・・さて、行こうか・・・二人共。」
コウハはソフィアとサオリを見送った後、シカマルとサスケを呼ぶと、二人はコウハと並んで歩き出した。
「あいつら・・・一緒に住んでんのか?」
「そうみたいよ。他国からの留学生だから、三代目から家を貸してもらってるらしいわ。」
「へー・・・ずいぶんとお偉い様扱いだな・・・。」
「しょうがないでしょう?他国からのお客様を死なせたらどうなるか分からないもの。」
シカマルとコウハは話を進めていると、サスケが話しに入ってきた。
「・・・あそこに人が住めるのか?いかにも誰も踏み入れなさそうな場所だろ・・・どう見ても。」
「さぁ・・・?三代目はもっと人通りが多い家を紹介したんだけど・・・二人が遠慮して古い家を頼んだんだって。」
コウハは結論まで言うと、二人は納得したのか・・・していなのか、そのまま黙って俯いていた。
「・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・。」
三人はそれ以降、口を開こうとはしずに、ただ黙って歩き続けた・・・コウハというと、右の人差し指を軽く曲げて、唇に当てながら、なにやら考え事をしており・・・しばらくすると、なにか閃いたのか、人差し指を唇から離し、顔を上げ、呟いた。
「・・・今日の給食になんか入ってたかな?」
「「は?」」
シカマルとサスケはいきなりコウハが意味の分からない事を言うので、思わず気が抜けた声を出してしまった。
「・・・だって、今日の、二人、おかしいもの。」
単語一つ一つ区切って言うコウハに、サスケは眉を潜めた。
「おれはいつも通りだ。」
「おれも。」
シカマルは空を仰ぎながら、サスケの言葉に続いた。
「そう?そこまで二人が言うんだったら、私から指摘していい?」
コウハは日頃見せない意地悪な笑みを二人に見せた後、右の人差し指を立てた。
「まず一つ目・・・なんでナルトはともかく、私達の後を追ってきたの?」
サスケは何も動じなかったが、シカマルの肩が微かに動いたのを、コウハは見過ごさなかった。
「・・・おれ達は“他国からの留学生”に興味があって、追ってきたんだ。」
シカマルは嘘でもなく、本当の事でもない答えを述べた。
「あ、そう・・・それじゃあ、二つ目・・・サスケ、なぜかは知らないけどサオリによく突っかかってたわね。」
「・・・・・・・・・・・・。」
サスケの左手の指の何本かがぴくっと震えた。
「・・・別に、突っかかってなんかない。」
サスケはコウハの顔を見ずに答えた。
「・・・じゃあ聞くけど、私とソフィアが言い合いしてる時・・・シカマル、なんて言ったんだっけ?」
コウハはシカマルに質問すると、シカマルは頭の中の記憶を駆け巡り、その結果、一つの言葉が思い浮かんだ。
「“・・・いつも、こんな調子なのか?”」
「正解、そうしたらサオリは・・・。」
———— はい、大体は・・・でも、個性豊かで楽しいですよ? ————
「・・・と、言った・・・。・・・で、サスケ・・・貴方は何と呟いたか・・・。」
「・・・“豊か過ぎるだろ・・・。”」
サスケは渋々答えた。
「そ、それがサスケのおかしいと思った理由。」
サスケはコウハを軽く睨んだ。
「・・・どこが、おかしいんだ。」
一見、何も動じてない言葉と口調だが、長年サスケと一緒に暮らしているコウハにとっては、明らかに動揺を隠しているものとしか思えなかったらしい。
「いつものサスケならサオリの言葉、無視するはずでしょう?まぁ・・・“いつものサスケ”だったらの話だけど・・・。」
「・・・何が言いたい・・・。」
サスケは実の双子の妹に殺気を込めて睨んだ・・・が、兄妹〈姉弟〉の睨み合いは日常飯事だったのでコウハは何も動ぜず、諦めたように両手を挙げた。
「・・・まぁ、私が今言うより、自分で気づいた方がいいわよ・・・そういう事はね。」
「・・・?」
「・・・・・・・・・・・・。」
シカマルはコウハの言った意味が分からず眉を潜めており、サスケはまだ黙ったままだった・・・コウハはそんな事お構い無しに、今度はシカマルに視線を変えた。
「・・・で、最後三つ目・・・シカマル、なんでソフィアに自宅の場所、教えたの?」
「あいつが知りたがってたからに決まってんだろ。」
「・・・貴方も素直じゃないのね。」
「どういう事だよ。」
シカマルはコウハを睨む。
「・・・今さっき、サスケにも言ったけど、私が言うより、そういう事は自分で気がついた方がいいわよ、シカマル・・・・・・まぁ、これらはあくまで私の推測だから、あまり気にしないでね・・・二人共。」
うちはの家の前に着くと、サスケは早々と家の門に入り、コウハもサスケの後に続き、入って行こうとした時、急に後ろを振り返り、シカマルに一言言った。
「明後日の卒業試験、受かるといいわね・・・シカマル。」
それだけ言うとコウハは家の門の奥に入っていった。
「(・・・ったく、なんなんだよ・・・コウハの奴・・・。)」
シカマルは一人、自宅に足を運んでいる途中で、ポケットに手を突っ込んで考え事をしていた。
「(つーか、なんでおれはコウハの言った事をいつまでも気にしてんだ・・・・・・はぁー・・・考えんのもめんどくせぇ・・・。)」
シカマルは頭を掻きながら茜色の空を見つめていた。
- NARUTO 〜明日の未来〜 第一章 三人の少女 ( No.9 )
- 日時: 2010/07/07 20:13
- 名前: 娃輝 (ID: qwjQ/00r)
深夜・・・里は暗い闇に包まれて、冷たい北風が吹き、満月の光だけが地上を照らし、星達は誰かを見守っているように優しく輝いていた・・・そんな時、三つの影が風を切って、木の葉の住民が住んでいる屋根の上を足場にして、里内を飛び回っていた。
「コウハ、サスケはいいの?」
「・・・・・・影分身を置いてきたから、ばれないとは思う。」
「少しの間が空きましたが、本当に大丈夫ですか?」
サオリの言葉にコウハは苦笑を浮かべた。
「サスケは、ああ見えて鋭いからね、少しでも曖昧な影分身を作ると・・・確実にばれる。」
「「・・・・・・・・・・・・・・・。」」
コウハがきっぱりと言い放つと、二人は黙ったまま、コウハを見つめていた。
「・・・ってか、やっぱりこの姿になったら体が重く感じるね。」
ソフィアはころっと話を変え、自分の姿を改めて見て、呟いた。
「ソフィアの場合、“変化”している時から実年齢まで五才も違うもの・・・そう思うのは当たり前。」
今のソフィアの姿は昼の姿とは全く違い、背は伸び、若干大人の女性の体形になっていて、暗部服を身に纏い、口に黒いマスクを付け、背中に大刀を背負っている。コウハも全体的に風貌も体格も変わっており、昼の姿の時よりも、一層美しさが増していて、ソフィア同様・・・少し形は違うが、暗部服を着用し、ネコの面を被っていた。
「・・・サオリはそう思わないの?」
「私はあまり感じませんが・・・。」
サオリも背はもちろん、赤い髪は胸囲まで伸び、横で三つ編みで束ねていて、顔は長い質素な薄茶色の布で目以外の部分を覆っていた。
「・・・んで、これからどうするの?」
ソフィアがコウハに問う。
「満月が隠れる前に、色々と話しておきたい事があるのよ。」
コウハの言葉にサオリが眉を潜めた。
「でしたら、この姿ではなくてもいいのではないですか?」
「・・・私もそう思ったんだけど、深夜の方が人気が少ないでしょう?」
「一般人の変わりに返り血が体中にこびり付いてる木の葉の暗部の気配がちらほらとあるんだけどね。」
ソフィアがコウハの言葉に突っ込むと、コウハは軽く苦笑した。
「それもそうね・・・でも、暗部だったら遠慮なく記憶をいじる事だってできるから・・・見られても私達の行動には支障はないわ。」
「ねぇコウハ・・・一言だけでもいいから木の葉の暗部の皆様に謝った方がいいよ・・・今、すごく失礼な事言ったの、自覚してる?」
「一応、私も木の葉の暗部だから・・・。」
「駄目だこりゃ・・・。」
ソフィアは小さくため息をつくと、サオリは二人に話しかけた。
「・・・ところで、どこで話を?」
「あぁ、そうね・・・・・・あそこに森があるから、そこで話すわ。」
コウハが指差した所は薄暗く、誰も近寄らなさそうな森だった。
「暗いですね・・・。」
「木と草がずいぶん枯れてる・・・。」
三人は森の入り口に着くと、サオリとソフィアが薄暗い森を見て呟き、コウハはため息交じりに言った。
「ここの森は場所的に太陽があまり当たらない所だから、光合成があまりできないの・・・だから、木と草花はあんなに枯れているのよ。」
コウハが言うと、二人はコウハの後に続いて、森の奥に入っていった。
「(一応・・・聞いてみようかな。)」
ソフィアはコウハとサオリの前に歩み出て、そこらへんに生えている草木に触れ、目を閉じた。
< あ・・・お客さんだ! >
< 久しぶりの人間だっ! >
< わーい!わーい! >
「・・・草木が私達を歓迎してるよ。」
ソフィアが草の葉に触れながら言った。
「それは良かった・・・これから満月の深夜にここに来るからよろしくって言っておいて。」
コウハは一時足を止め、ソフィアの方を見た。
「りょーかい。」
ソフィアは再び目を閉じ、草木に想いを伝えた。
< こちらこそ! >
< ここに来てくれてありがとう! >
< ゆっくりしていってね! >
「・・・ん・・・ありがとさん・・・。」
ソフィアは草木から手を離し、コウハとサオリの元に戻った。
「・・・ここらへんかな・・・。」
コウハが立ち止まり、ソフィアとサオリもつられて立ち止まった。
「・・・して、話とはなんですか?」
ソフィアとサオリは適当に腰を掛けると、コウハに視線を合わせた。
「・・・アカデミーの教師をやってるミズキっていう人・・・知ってる?」
「うん、知ってるよ。あの愛想の良い先生でしょ?」
「すごく生徒の思いを主張する先生ですから皆、ミズキ先生を慕っていますよ。」
「表向きは・・・ね。」
ソフィアとサオリの言葉にコウハがぽつりと呟くと、二人は表情を変えた。
「・・・どういう事?」
ソフィアがコウハに真剣に聞いた・・・が、コウハの返事は曖昧なものだった。
「私もよく分からない。」
「なんじゃそりゃ・・・。」
「でも・・・卒業試験の日に、何かやらかす。」
「危険人物・・・という事ですね。」
サオリが言うとコウハは頷いた。
「そういう事。」
「・・・で、話す事はそれだけ?」
ソフィアがコウハに詰め寄った。
「あともう一つ・・・これから本来の姿の私達の活動が多くなると思うから、この姿の時だけ、偽名を使おうと思うのよ。」
「偽名・・・ですか?」
「そう・・・あ、暗部名は駄目よ?私達の知人に会ったらすぐばれるから。」
「いや、その前に姿見られたらアウトだよね?コウハの場合。」
「大丈夫よ。“うちは姉弟”の関係者全員の記憶いじってるから・・・。」
「・・・よっぽど自分の力に自身があるんだね。」
「そういう事。」
コウハはソフィアに微笑んだ。
「・・・“黒蘭”・・・。」
「「?」」
サオリが急に呟いたので、ソフィアとコウハはサオリを凝視した。
「黒蘭に決めました、偽名。」
・・・と、言って、にっこりと微笑むサオリ。
「“蘭”って・・・たしかサオリの暗部名だったよね?・・・それに黒?」
「サオリにはあまり似合わない名前ね・・・由来は?」
コウハが聞くとソフィアも興味津々でサオリを見つめた。
「“黒蘭”という花があるんですよ。そこから取った名前です。」
「それまさか毒花じゃないよね?」
ソフィアは嫌な予感がしてサオリに問う・・・すると、案の定・・・。
「?よく分かりましたね?黒蘭は毒殺によく使われる花なのですよ。・・・今は、“毒に似合わない美しい花”と言われているので、使っている人は私ぐらいだと思うんですけど・・・。」
サオリの言葉を聞くと、ソフィアはやっぱり・・・と、肩を落とした。
「じゃあ、私は “白月”にするわ。」
「・・・なんか今日の二人逆だね、コウハが光で、サオリが闇。」
ソフィアが意地悪な笑みを浮かべると、コウハはソフィアを睨みつけた。
「・・・普段の私が闇って言いたいの?ソフィア・・・。」
コウハの怒りのオーラを感じ取り、ソフィアは微かに身震いした。
「いや、闇とは言わないけどさ・・・コウハは黒、サオリは白ってイメージがあるじゃんか・・・ほら、殺気しまって・・・普通に怖いから。」
ソフィアが抑えると、コウハは殺気をしまい、そのまま俯いた。
「その名の由来は何かあるんですか?」
サオリが話を変え、コウハに問いかけた。
「“白い月”・・・それが私の通り名だったから。」
コウハが呟くと、ソフィアが話しに入り込んできた。
「白い・・・月?・・・しかも“だった”って・・・なんで過去形?」
ソフィアがコウハに聞いても、黙ったままソフィアの質問に答えようとはしなかった。
「・・・まぁ、言いにくいんだったらいいんだけど・・・。」
ソフィアはコウハの気持ちを察して、そのまま口を閉じた。
「・・・ソフィアは偽名・・・決めましたか?」
サオリが話しに戻す。
「うーん・・・偽名っていっても、すぐ思いつく訳ないよ・・・暗部名の“洸”じゃ駄目?」
「・・・ばれてもいいのなら・・・。」
コウハがちらっとソフィアを見た。
「多分大丈夫だよ、この名前知ってるの、岩影だけだし・・・。」
「しかし、その姿を岩の忍に見られたら・・・。」
「そこも問題なし・・・私十才の頃に里出たから、岩の人達は子供の姿しか頭にありませーん。」
ソフィアが軽々しく言うと、サオリは心配そうにソフィアを見つめる。
「・・・ソフィア、油断大敵ですよ・・・。」
「ソフィアが良いって言うんだったらいいんじゃないの?」
サオリが言い終わると、コウハはそっぽを向きながら、頬杖を付いていて、呟いた。
「コウハ・・・まだ私が闇って言った事気にしてんの?なんかどっかのフクロウみたい・・・。」
「別に気にしてなんかないわよ。」
「そーゆーところが気にしてるっていうんだよ。」
「ソフィア・・・!」
「なにさ、私は事実を言っただけだけど?」
ソフィアとコウハは殺気満ちた目でお互いを睨みあった。
「二人共落ち着いて下さい、とりあえずソフィアは洸、コウハは白月、私は黒蘭でいいですか?」
サオリが二人を宥めると、ソフィアとコウハはお互いふて腐れた顔で俯いた。
「(・・・はぁ・・・このような仲でもソフィアとコウハのコンビネーションは抜群なんですが・・・。)」
サオリは心の中でため息を付くと、空を見上げた。
「お二人方、そろそろ夜明けですよ。いつまでもお互い大人気ない喧嘩は止めてください。」
「「・・・・・・ふん・・・。」」
サオリが言っても、二人は少しサオリを見ただけで再び俯いてしまった。
「・・・・・・・・・・・・・・。」
サオリは黙ったまま二人を見つめると、懐からアカデミーの時に持っていた紅緋色の巻物を取り出して、シュル・・・と、止めてあった紐を解き、巻物を開いた。
《ボオォォン!!・・・シュウゥゥゥーー・・・》
ソフィアとコウハがその音に驚いてサオリを見ると、二人の目の前には一体の傀儡が立っていおり、サオリの両手の指の先には青白い糸がその傀儡の本体に繋がっていた。
「・・・ソフィア、コウハ・・・そんなに“椿”の餌食になりたいんですか?」
「「ごめんなさい。」」
サオリから黒笑いと目と口調から発せられる殺気に二人は即、サオリに頭を下げて謝罪した・・・それだけ、サオリと傀儡の恐ろしさを知っているという事だろう。
「分かってくれれば、それでいいです。」
いつものサオリの笑みが戻ると、椿は白い煙とともに姿を消した。
「・・・あ、それと・・・ソフィアの偽名は“洸夜”で、どうですか?」
「洸・・・夜?なにそれ?」
ソフィアは首を傾げた。
「光の水に夜・・・って、意味じゃない?」
コウハが呟くとソフィアはへぇー・・・と、口をポカンと開けた。
「・・・じゃあサオリ、ありがたく使わせてもらうよ。」
ソフィアが言うと、コウハは立ち上がった。
「・・・よし、偽名が決まったら今日は解散・・・帰るときには誰にも見つからないように気をつけて。」
「ほーい。」
「了解しました。」
二人が承知するとコウハは右手を上げ、一言呟いた。
「・・・散!」
コウハが言うと二人は瞬身でその場を後にし、コウハも続いて姿を消した。
< あっ!朝が来た・・・! >
< あの子達大丈夫かなぁ? >
< きっと大丈夫だよ・・・“選ばれた者”なら・・・ >
草木達は朝日を迎えながら、冷たい風に揺られていた。
- NARUTO 〜明日の未来〜 第二章 過去と真実 ( No.11 )
- 日時: 2010/06/25 21:52
- 名前: 娃輝 (ID: qwjQ/00r)
「・・・・・・ア・・・。」
遠くの方で声が聞こえる・・・でも、うまく聞き取れない・・・。
「・・・ィア・・・。」
そして、その声はだんだん大きくなっていって・・・。
「・・・フィア・・・ソフィア・・・。」
私の名前を呼んでるの?・・・しかもこの声・・・どっかで聞き覚えがあるような・・・・・・どこだっけ?
「ソフィア・・・あと・・・でおき・・・と、あさ・・・はん・・・な・・・とう・・・します・・・ね。」
あとでおきと、あさはんなとうしますね?何かの暗号っすか?
「・・・・・・・・・・・・。」
急に声が途絶え、私が不思議に思っていた時、私の耳元ではっきりとした言葉が聞こえてきた。
「・・・・・・ソフィア・・・後十秒で起きないと、朝ご飯・・・納豆にしますからね。」
“納豆”・・・というワードで私は目をかっと開けた。
「それだけは勘弁して!」
そう言いながら、ガバッと布団から上半身を上げた私・・・そして左横を見ると、それを満足げに見つめて、正座しているサオリの姿があった。
「おはようございます、ソフィア。」
「・・・おはよ、サオリ・・・。」
なーんか聞き覚えのある声だと思ったら、私と同居している白砂のサオリちゃんでした。
「・・・さ、まずは洗面所に行って身だしなみを整えてきてください、布団は私が畳むので・・・。」
「ほーい・・・。」
私は布団から足を出し、両足に力を入れて立ち上がり、そのまま洗面所に向かった・・・そして、五秒足らずで目的地に着きました・・・早い早い。
「はあぁぁ・・・冷たいんだよねー・・・水が、特に冬・・・。」
今は春だからまだマシな方だけど・・・。
《シャー・・・》
「うっわ・・・やっぱり冷たい。」
蛇口を捻って水を出し、少し水に手をつけてみたら・・・案の定、冷たかった。
《シャー・・・バシャバシャ!シャー・・・》
両手を重ねて器のような形を作り、ある程度水が溜まると、そのまま水を顔にぶっ掛けた。
「(・・・これで目が覚めない人はいないね・・・。)」
そんなマイペースな事を考えながら、さっきと同じ動作をくり返す。
《シャー・・・キュッ・・・》
だいぶ目が覚めたところで、己の右手で蛇口を閉めた。
「・・・・・・ふぅ・・・。」
横にある小タオルで顔を拭いて、私は一息ついた。
「・・・ふわあぁ・・・目が覚めても、あくびはどうしても出るんだよねぇ・・・。」
・・・不思議な現象。
「お・・・っと、歯磨き歯磨き・・・。」
私は自分用の黄色い歯ブラシを取って、それに歯磨き粉を適量につけた。
《シュコ・・・シュコシュコ・・・・シュコシュコ》
「ほひ、ほはひ。《よし、終わり。》」
少し早いかな?・・・まぁ、いいか。
《ガラガラ・・・ガラガラガラ・・・ガラガラガラ・・・ガラ・・・ガラ・・・ペッ・・・》
水を口の中に含んで、うがいをした後、そのまま水を吐き出し、再び小タオルで口を拭いた。
「さーてと、ごっ飯、ごっ飯・・・っと。」
私は軽い足取りでリビングに向かった・・・しかも変な歌を歌って。
「・・・そういえば最近歌ってないなぁ・・・今度歌おっかな・・・でも、歌う場所がないんだよなぁ・・・あ、昨日行った森で良いじゃん・・・これ、ナイスアイディア。」
そんなのんきな考えを呟いている時、急に右目に鋭い痛みが走った。
「痛っ・・・!」
私は右目を右手の甲で強く抑え、その場に蹲った。
「・・・っ・・・はぁ・・・っはぁ・・・・はぁ・・・・・・っ」
息が自然と荒くなる。
「・・・っはぁ・・・はぁ・・・・・・はぁ・・・。」
だんだん痛みが治まってきたところで、私は右目を抑えたまま顔を上げ、ゆっくりと立ち上がった。
「・・・最近多いな・・・こういう事・・・。」
私は右目を抑えていた右手をゆっくり離した。
「写輪眼を使えって事?・・・だーれが使うかっつーの。」
私は戦闘でピンチになった時でも、逃げるか、死ぬかのどちらかを選ぶ・・・写輪眼を使うなんて事は絶対にしない事にしているんだ。
「・・・でも、これからはそうも言えないかも・・・。」
私とコウハ、サオリの中で一番チャクラ量の多い人は断トツにサオリだけど、一回の技に大量のチャクラを使うのは私だ・・・その分、チャクラ切れは早いし、敵にも隙を突かれる事も時々あった。
「(その時は、コウハに助けてもらうか、サオリにチャクラを分けてもらうかの二つだったから、私が危機に陥る事はまず無かった・・・でも・・・。)」
六才の時から少しずつだけど、私の右目から“気”が発せられるようになってきた・・・もちろん、誰にも怪しまれないように、自分自身で“気”を抑えてるんだけど・・・。
「(こんな大きい“気”・・・今の私じゃギリギリ・・・。)」
もし、右目から発せられる“気”がこれから大きくなるんだったら、さすがの私もこれ以上抑えることは到底無理。
「はぁ、しょうがない・・・。これからは誰もいない時に右目を開けるしか・・・」
「右目がどうかしたんですか?ソフィア。」
「!」
背後から声がして後ろを振り返ると、サオリが歩きながら、私に近づいてきていた。
「・・・・・・サ、サオリ・・・い、今の・・・もしかして全部・・・聞いてた?」
私はダメで元々・・・サオリに聞いてみた。
「全部も何も・・・ソフィアが膝を付いていた時から様子を伺っていました。」
と、言う事は・・・。
「“写輪眼”・・・って単語も・・・聞いてたか・・・。」
すると、サオリはゆっくりと頷いて見せた。
「そっか・・・。」
「ごめんなさい・・・聞くつもりはなかったんですけど・・・。」
うん・・・人間誰でもそういう事はあるよ・・・。
「まさか、ソフィアが・・・・・・うちはだっただなんて・・・」
「うん?それは間違いだよ?サオリ。」
サオリ・・・どうしたら私がうちはになるのかな?
「え・・・?写輪眼はうちは一族の血界限界でしょう?その写輪眼を持っているという事は・・・」
「私は黒髪じゃありませーん、金髪でーす。」
はぁ、全く・・・サオリの天然ぶりには頭を使うよ・・・。
「で、では、なぜ・・・・。」
サオリがおどおどしている姿を見て、私は全部話すしかないか・・・と、決意した。
「実は、サオリ・・・よく聞いて・・・。」
私は忘れもしない十一年前の出来事をすべてサオリに話した・・・私の親がうちはに殺された事、私が誘拐されて、うちはの実験台にされた事・・・そして、私の右目には写輪眼が宿っているという事・・・あえて、弟の事は伏せておいた。
「・・・・・・そうでしたか・・・。」
ポツリとサオリが呟き、俯いた・・・私もそれ以上口を動かさなかった・・・廊下に静かな空気が流れ、しばらくすると、サオリが下を向いたまま、私に言った。
「・・・その事・・・コウハは知っているのですか?」
サオリの口調はいつもの穏やかな口調とは全く違った・・・トーンが低くて、声もすごく震えていた。
「・・・いや、今のところは何も知らないみたい・・・。」
私がそう言うと、サオリはゆっくり顔を上げ、私と視線を合わせてから、胸を撫で下ろして安心したかのように、ほぅ・・・と、息を吐いた。
「ソフィアの過去を知ったコウハは・・・いままで通りに接する事はないでしょうね・・・。・・・きっとコウハの事ですから、ひどく責任を感じるでしょう・・・同じうちはとして・・・。」
私とサオリは廊下を歩きながら、お互いの目は見ずに、声だけで感情を読み取っていた。
「だから私も右目を前髪で隠して隠し通してるんだよ・・・コウハと初めて会った時、本当にびっくりしたもん・・・まさか、私以外の選ばれた者がうちは一族の人だっただなんてね・・・。」
私がリビングに足を踏み入れると、サオリがこちらを凝視していた。
「ソフィア・・・もしかして、両親の敵討ちのためにコウハを・・・。」
「まさか!復讐だなんてこれっぽっちも考えてないよ!コウハは“あの事件”と全く係わりの無い人物だからね。」
私は料理が置いてある机に正座すると、サオリもゆっくりと座り込む。
「それを聞いて安心しました・・・とにかく最低限、すべてが終わるまではコウハにこの事は・・・。」
「禁句。」
私とサオリは頷きあった。
「・・・さ、この話はこれまでとして・・・ソフィア、もしも右目が再び痛むようであれば私に言ってくださいね痛み止めの薬を調合しますから。」
「はーい、よろしくおねがいしまーす。」
私は軽くサオリに微笑んだ後、両手を合わせ、いただきますと、呟いた。
「・・・・・・あ。」
「?どうかなされましたか?」
しばらく食が進んでいる時に、私はあるものに目を止めた。
「・・・混ぜご飯。」
そう、いつもは白いご飯のはずが、今日は色とりどりの刻み野菜が入っている少し茶色かかった主食だった。
「・・・ソフィア、混ぜご飯“も”お嫌いでしたか?」
「いや、久しぶりに食べるなぁー・・・と、思って・・・私の身内が混ぜご飯大嫌いでさ・・・あま
り、混ぜご飯は炊かなかったんだ。」
私が懐かしむように言うと、サオリは手を止めて、私の話を微笑んで聞いてくれていた。
「・・・そうですか・・・それではこれから、混ぜご飯ばかり出しましょうか?懐かしむために・・・。」
「それは遠慮しとく。」
私は笑いながら言うと、再び手と口を動かし始めた。
「・・・ごちそうさまでした。」
「早っ!」
私は顔を上げ、目の前を見ると、空になった食器がサオリの前に並んでいた。
「サオリ、今日食べるの早くない?」
「時計を見てください。」
「え?時計?」
私は壁に飾ってある振り子時計を見ると・・・・・・私は固まった。
「・・・サオリ。」
「はい?なんでしょう?」
「アカデミーの授業って・・・何時からだっけ?」
「・・・八時五十分ですね。」
「あの時計って正確?」
「はい、一分も間違っていませんよ。」
「・・・私の目の錯覚でありたいんだけど・・・あの時計で十時半・・・差してるよね。」
「はい、私の目からでも十時半ですよ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「「・・・・・・・・・・・・・・・。」」
「だああぁぁぁぁ!!!完璧遅刻じゃん!ってか、遅刻どころじゃないじゃん!八時五十分から十時半って事は三時間二十分の遅刻じゃん!」
「計算が速いですね・・・それに“じゃん”が多いですよ、まるで“あの子”みたい・・・。」
≪ズズッ・・・≫
「落ち着いて茶を啜るなー!!」
・・・って、こうしてもいられない・・・!早く準備しないと・・・!
≪バタバタバタバタバタ!!!≫
私の足音が家中に響き渡る。
「・・・ソフィアでも慌てる事はあるんですね。」
私の後ろの方でサオリがクスクス笑っているように思えた。
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