二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- 【dance;wits:the:DEVIL 】
- 日時: 2010/07/02 15:50
- 名前: EN (ID: tHinR.B0)
- 参照: http://id46.fm-p.jp/209/satorusora/
ドラゴンボールとDevilMayCryのコラボ小説書いてみました。
戦闘重視でがんばります。
※注意※
此方の作品には女性向け・暴力表現が含まれています。
作品に登場するキャラクターの性格はドSが基本装備となっています。
- Re: 【dance;wits:the:DEVIL 】 ( No.5 )
- 日時: 2010/06/27 19:48
- 名前: EN (ID: P3xeYQNF)
- 参照: http://id46.fm-p.jp/209/satorusora/
握手をして好感度を上げる性格ではないのか、代わりにダンテは悟飯の肩を軽く叩く。
悟飯も纏っていた気を崩すと、交友的な笑みを浮かべた。
「悟飯です。あっちで子供みたいのが父の悟空です」
「ゴハンに、ゴクウ…」
噛みながらも二人の名を紡ぐダンテは、まだ此方を伺う悟飯の視線を見詰め返す。
悟飯は、ダンテより少し背が低い。と、いうよりダンテの身長が高すぎるのだ。
「よく、ケルベロスを見つけたな」
「最初に見つけたのは、父ですよ。昔から、異常なくらい敏感に周りを感じ取る能力を持ってましたから」
「…なぁ、ゴクウも強いのか?」
「はい、強いですよ」
ふと、ダンテの会話が途切れる。
ケルベロスが先程眺めていたい場所に視線を向ける眼差しは、無邪気さは失せ険しい顔をしていた。
悟飯も、滴る水のように冷たく重い空気の変化に気付き始める。
ケルベロスが警戒をし始めたのは此方に声を掛ける前だ。
気付けなかったのは、今まで感じた事のない不快すら感じる空気だったからだ。
「お父さん」
「おめぇも気付いたか?」
父を呼べば、悟空も段々と裏路地を包み始める不快な空気に、眼を細めて姿形を表さないモノに不安を抱いてしまう。
「俺がケルベロスを従わせている理由、教えてやろうか」
あまり聞きたくはないが、悟飯は頷くしかない。
裏路地に来なければ良かったと、今になって後悔したが遅すぎる。
尤も、己も父も興味を惹かれるものには追求してしまう性格には、時折頭を痛めてしまう。
ダンテが笑う度に、首に下げるアミュレットが赤い月光を怪しく反射した。
ブツンッ
と、肉を引きちぎるような鈍い音がすぐ近くで聞こえた。
「え、、は?」
悟飯が視界に捕らえたのは、ダンテが首から血を噴出させて激しく痙攣する様だった。
その喉元から突き出ていたのは、銀色の槍だ。
うなじから、喉仏を完全に突き破るその衝撃的な光景に、悟飯と悟空は唖然とするしかない。
あまりにも、不親切な攻撃だった。
背筋が凍るほどの悪寒がした瞬間に、予期もしない攻撃を、いくら百戦錬磨と名高い戦闘力を誇る悟飯と悟空であろうと、直ぐには対処できない。
数分さえ合間を与えられず、迫り来る、肌を突き刺す第2波の気配に、悟飯は余裕もなく髪を逆立たせ風を纏えば、右手を二人が来た闇の道に翳す。
その瞬間、音もなく二本の銀の槍は悟飯の手の前で弾かれ粉砕した。
しかし呼吸する暇さえ与えられず、今度は左右前から第3波が襲い来る。
こればかりはと空中へと舞えば、逃れきれなかった長外套の裾が銀の槍に焼き切られてしまった。
「悟飯!!」
「お父さん気を付けて!囲まれてます!!」
まだ血を流しているダンテの襟を掴み上げ、悟空とケルベロスの元へ走る。
最悪な状況だった。
神経を研ぎ澄ませ意識を集中させれば、攻撃は跳ね返し若しくは回避できるが、相手の気配が一切読み取れない事が、ふたりの不安を更に煽った。
道の先を塗り潰す、まるでブラックホールのような闇が、何もかもを覆い隠していた。
『次元の穴だ、』
3頭それぞれが、辺りを警戒しながら二人の疑問に応えてくる。
『此方の世界で言うなれば、中級の召喚門だ』
「え、ケルは地獄の門の番犬だろう?!」
『ならば、何故我が此処に居ると思う?』
- Re: 【dance;wits:the:DEVIL 】 ( No.6 )
- 日時: 2010/06/27 19:55
- 名前: EN (ID: P3xeYQNF)
- 参照: http://id46.fm-p.jp/209/satorusora/
ザリ、ザリ、と静かに足音を鳴らせ姿を現そうとする闇から視線を外すことも出来ず、悟飯は思わず苦笑した。
「あちら側からの、強力な干渉。ですか?」
「あちら側って?」
「直ぐに分かりますよ」
正体が分かれば、父もそれなりに対処できるだろうと思ったが、悟飯は次元の違う戦いを予想して頭が痛くなった。
耳が痛くなるほどの、首筋が真冬の寒さだけではない寒さに襲われる。
吐く吐息が白いが、ケルベロスが発していた冷気とは全く異なり、それは邪悪に満ちていた。
悟空が無意識に息を飲む。
宇宙一強いと言われては居るが、幾つか苦手なものが悟空には存在する。
コレもだとすれば少々、困った状況になりそうだと悟飯は内心思う。
座ったまま、やはりケルベロスを背後から抱き付いている悟空に、悟飯は笑い掛けるとダンテへ目を向ける。
血は止まっているが、死んだわけではないようだ。
微かに息がある。
気管支が逸れたと思えるほど、突き刺さって消滅した銀の槍はそこまで細くはなかったが、決して見間違いではない。
それに、ダンテを主と言っていたケルベロスが何も動揺を露にしていないのが一番の疑問だった。
ダンテとケルベロスを交互に見ていれば、ケルベロスは何も言わずただジッと6つの瞳で悟飯を見詰め返した。
「動揺、しないんですね」
獣相手によく敬語を使えるなと考えながら、分かりきったことを問えば、ケルベロスは瞳を逸らす。
『慣れている』
そう言ったっきり、ケルベロスはダンテを眺め続けたままだ。
そうしている間にも、闇から響いてくる音は大きくなってゆく。
あわあわとし出す父に悟飯は溜め息を付くと、闇に飲まれて今にも何か飛び出してきそうなその道へ振り返る。
「兎に角、『攻撃』されたんです。対処する方法なんて、ひとつしか有りません。しかも、相手は余程えげつない」
長外套を脱ぎ捨てれば、闇夜に浮かぶのはダークブルーのスーツ。シャツの上にベストを着込んでいただけなので、身持ちは軽い。
「それが本当に、『悪魔』だったらの話ですがね」
クッ、と喉を震わせる悟飯の横顔は冷ややかな笑みを浮かばせている。
袖を捲り、ネクタイをポケットに仕舞えば、ずっと響いていた音が突然、不気味に途絶えた。
かしゃん、
と木製が擦れ軋み合う音が、闇の中から這い出てくる。
2メートルはあるだろうか。大きな糸操り人形に似ていた。
くすんだ気色の悪い、サーカスのナイフ操り士のような服を着た、木の人形。
その木偶の坊が音を立てて器用に歩いているものだから、悟飯は眼を細めたまま息を飲んだ。
「あれは、何だ」
思ったことをそのまま悟空は口にする。
しかも一体だけではない。
軋む音を高く冷たく響かせ、闇から這い出てくる数体の人形に、悟空は表情を歪ませた。
「アレが悪魔ですか?」
ケルベロスに問うと、悟飯は徐々に気を高めてゆく。
『人形だ。下級悪魔だが、集団だと厄介な輩だ』
「でも、歩きはのろいですね」
『、侮るな』
ケルベロスがそう言った直後、先頭にいたマリオネットが突然、地面を蹴り跳躍した。
手を閃かせ、悟飯に向かって投げつける。
それは短剣だ。
別のマリオネットは半月刀を投げ付けてくる。
しかし悟飯は動じる事なく、発生させた風圧で弾きまたは粉砕する。
「成程、投擲率はほぼ的確。此処まで速いと、僕も完全に避けるのは難しいですね」
そう言っているが、迫り来る短剣を全て跳ね返す悟飯はケルベロスと悟空に振り返る余裕の笑みを見せる。
- Re: 【dance;wits:the:DEVIL 】 ( No.7 )
- 日時: 2010/06/27 19:52
- 名前: EN (ID: P3xeYQNF)
- 参照: http://id46.fm-p.jp/209/satorusora/
「でも、不意打ちは嫌いです」
ダンテを襲った銀の槍はマリオネットの攻撃だ。
投擲が速いとなれば、恐らく動きも俊敏な筈だ。
ゆっくりとした動作で歩いているが、きっと対象を捕らえればそれこそ獣が相手の喉を噛み切るが如く飛び掛かかってくるだろう。
赤い月よりも不気味な、寒気すら覚える眼が悟飯を捉える。
ならば、先に叩きのめせばよい事だ。
悟飯は眼鏡を押し上げると、軽く踵に体重を乗せ、動いた。
その地面を蹴る音を、砂を散らす音をケルベロスは聞いただろうか。
助走、ましてやステップすら踏まなかった悟飯が次の瞬間、目の前に迫ってきた一体のマリオネットの歪な能面に飛び膝蹴りを喰らわせていた。
両手をスラックスのポケットに入れたまま、悟飯の空中蹴りは凄まじい音を立ててマリオネットの顔を粉砕した。
顔を砕かれたマリオネットは重力に逆らわず後ろに倒れると、悟飯は無表情のまま倒れるマリオネットを踏み超え半月刀を投げようとしたマリオネットからそれを奪い取ると、皺のない眉間に深々と突き刺す。
半月刀を抜こうとするマリオネットの肩を踏み台にして、背後から飛び掛かってきた2体のマリオネットに、悟飯は胸板を踏み砕いたマリオネットの右足を掴み、飛び掛かってきた2体のマリオネットに叩き付ける。
振り上げた時の半回転ですら唸りを上げるその颶風に、3体は見事に地面に叩き付けられる。
だがマリオネットも馬鹿ではないようだ。
木偶の坊は関節などない。
半月刀と短剣を持った3体のマリオネットが、上半身を高速回転させて攻撃を仕掛けてくる。
掠めただけでもかなりの打撃を受ける残忍極まりない攻撃だが、やはり悟飯は顔色ひとつ変えない。
「回転したら、どうだと言うんです。威力は格段に上がりますが、でも…」
投げつけられた半月刀を避ければ、今にも首を掻き切ろうとした別のマリオネットの眼を抉る。
そのマリオネットの首を鷲掴み、それをそのまま盾にすれば回転速度を増した短剣の群れは同じマリオネットの体を引き裂くだけで終わる。
「回転軸は横槍の攻撃には弱いんですよ」
最後まで言う前に、悟飯は3体のマリオネットを引き千切っていた。
冷たい笑みさえ見せる悟飯はしかし、すぐさま嫌な寒気を覚えた。
直感のままに横転すれば、悟飯が先程まで居た場所に、深々と鉄の茨に撒かれた逆十字が現れる。
悪寒の正体は此だった。
あれは標的を縛り付ける術だ。
赤錆びた鉄の茨は生き血を吸ったように生臭くそして禍々しく、悟飯を捕らえようと襲い来る。
『気を付けろ、アレに捕まれば大抵の人間は死ぬしかない』
「そういう事は、早く言ってください!」
右へ捻って速度を付けた回し蹴りは、叫んだままにマリオネットの腹を音すら上げず断ち割り、威力は殺されずに別のマリオネットを巻き込んで吹き飛ばされる。
「ごは—ん、手伝おうかぁ?」
手伝う気すら感じられない、眠気を誘う間延びいた悟空の声に、悟飯は短剣が頬を掠めてうっすら滲んだ血を拭いながら、笑い返した。
「お父さんの、眠気覚ましで喰らったラリアットの方が強烈ですよ」
笑ってはいるが、悟飯の両手は確りとマリオネット2体の首をへし折っている。
「でも、流石に飽きてきました」
そう言うと、
スッ、と悟飯は急に体の力を抜いて静かに眼を閉じた。
思わずケルベロスが驚いて耳をピンと立てるが、悟空は笑ったままだ。
しめたとばかりに、マリオネットが襲い掛かってくる。
悟飯の首目掛けて短剣と半月刀が降り下ろされた。
だが、その攻撃は悟飯に触れることすら出来なかった。
闇を溶かすような、濃密で重い光を悟飯が纏い始める。
地面が煮え立つ、それこそ瞬間沸騰の様に眩い光は全てのマリオネットを捕らえた。
それは音というものを一切遮断した、強烈な光の冷酷無比な攻撃だった。
風が柔らかな光を巻いて消えてゆく。
光が完全に消えた時には、マリオネットは欠片すら残らず消滅していた。
地面が湯気を立たせて、アスファルトが溶解仕掛けていた。
天然アスファルトと違い、ゴム変動性を高めた工務用のアスファルトは通常、500℃を越えなければ変形すらしないものだ。
そして変形に伴う圧力はそれ以上の負荷を求められる。
陽に焼けない、うっすら病的に思えるほどに白い肌と無駄のない引き締まった肉体とは言え、その中に秘めた力にケルベロスは本能的に冷気を発生させていた。
「体が訛りましたね。もうちょっと、手加減出来たんですけど…」
そう言って悟空に笑い掛ける、先程まで薄ら寒いもの感じた悟飯の横顔が、打って変わった柔らかな表情に、ケルベロスは小さく唸った。
- Re: 【dance;wits:the:DEVIL 】 ( No.8 )
- 日時: 2010/06/27 19:57
- 名前: EN (ID: P3xeYQNF)
- 参照: http://id46.fm-p.jp/209/satorusora/
ケルベロスの気配に気付かぬ振りをして額に触れた前髪を撫で上げれば、悟飯は穏やかな微笑から冷笑に切り替える。
「終わった訳じゃねぇよな」
ケルベロスの毛並みを撫でながら悟空が呟けば、悟飯は小さく頷く。
「妙な気配は消えてません。寧ろ濃くなってます」
風は吹くことはなく空気は澱みを増した。普通の人間なら、二酸化中毒による失神か悪ければ心臓発作を起こしかねない重圧だ。
携帯電話を取り出したが、予想通りバッテリーが悲鳴を上げるような音を立てて電源が落ちてしまった。これでは連絡も出来まい。
来た道は未だに深い闇を纏い、何かが蠢いている。
悟空が尻尾を弄ろうが頬擦りしようが嫌がりもせず、逆に尻尾で悟空の額を叩いたケルベロスが僅に 冷気を発生させれば、悟空達を囲んでいた闇色の靄が渦を巻いてゆく。
憎らしげにケルベロスは唸りを上げて、赤い月が浮かぶ闇空を睨んだ。
『姿を現せ、道化師』
足元に転がっていた半月刀を、悟飯が悪戯に真上で渦を巻く靄に投擲した。
しかし、厚さ20cmの強化ガラスさえ打ち砕く程の威力の投擲は、中途半端に実体を形成する相手には当たらず、通り抜けるだけだ。
ならば気弾を放とうと掌に力を溜めれば、投げた筈の半月刀が軌道を強引に変えて悟飯に切りかかってきた。
避けられない速さではない。また弾き返して粉砕しようと右手を翳せば、ずっと見上げていた悟空が眉を潜めた。
半月刀の刀身に、禍々しい紫の電気が走る。
「悟飯!ソレに触れるな!!」
ヒヤリと首筋を襲う寒気に悟空は叫んだが遅かった。悟飯の気弾と、禍々しい紫電を纏った半月刀が触れた瞬間だった。半月刀が2つの力の摩擦に堪えきれず粉砕すれば、紫電が爆発的に溢れだし悟飯の右手に絡み付く。
バチンッと重苦しい音を響かせて悟飯の黒縁眼鏡が割れた。
痺れる痛みに反射的に後退すれば、痛みが増して悟飯は小さく呻いてしまう。
紫電はまだ消滅していない。
おぞましく輝きを増した紫電が悟飯を引き裂こうと襲い掛かるが、紫電は悟飯を捕らえる事は出来なかった。
悟飯を庇うように、悟空が静かに立ち憚る。意思を持って襲い掛かる紫電に、悟空は気を急激に高めてゆく。
僅に吹いた真冬の風と、噎せ返る瘴気が途端に消え失せた。
その変わりに、息を飲む程の、眩い金色の輝きが闇を強く照らした。
黄金色の風は瘴気を押し潰したが、直ぐに消えてしまった。
悟空は黒髪を一瞬だけ金に染め上げただけで、たゆたう柔らかな髪は清らかな風に靡く。
黄金色の光に弾き返された紫電は、弱々しく音を立てて消滅する。
「すみません、お父さん…」
「気にすんな、オラでもアレは油断する」
血の匂いを鼻先が掠めた。悟飯の右手から血が滴っていた。
中指と薬指の爪が割れて、その僅な血が乾いた地面に落ち、蠢く闇が唸るように強い瘴気を放ち悟空と悟飯が纏っていた涼風を消し去ってしまった。
血を振り払い幸い深手ではなかったのか、悟飯の表情はもう冷静を取り戻している。冷たい視線を感じて首を動かせば、ケルベロスが座っていた。むっつの瞳は驚き、警戒を露にしていた。
その冷気を帯びた視線に、悟飯はその冷気に勝る笑みを浮かべる。
ケルベロスは、悟空が動いていた事に直ぐに気付けなかった。子供のようにケルベロスにじゃれついていた悟空が息子が危うくなった途端、悟飯によく似た凍るほどの殺気を放ったのだ。
(穏やかだと思っていたが、子が子なら…)
「どう思います?」
「う〜ん…、見たトコ殴るのは平気なんだろ?」
「はい。でも問題は気功波ですよ。相手の力と摩擦を起こせば、爆発的に膨張する様です。質が悪いですね」
割れてしまった眼鏡を拾い上げた。
修復不可能なまでになった眼鏡の末路に、悟飯は溜め息をつく。
ケルベロスの不審な眼差しを諸ともせず話し合う父子に、しかしケルベロスは今まで抱いていた警戒心よりも畏怖が込み上げてくる。
最初は『悪魔』という存在ですら否定していた筈なのに、突如現れた禍々しい存在に恐れ処か笑顔を浮かべ、それらを叩き潰す様はまるで…。
「なぁ、ケル!」
穏やかな声に名を呼ばれ思考が弾けた。
視線を上げれば、悟空はビルの屋上を指差してケルベロスに問い掛けた。
「ケルが言ってた道化師って、アイツか?」
『何だと?』
視線を辿って見上げれば、赤い月の光を反射させて妙な丸い物体が此方を見下ろしていた。
見下ろしていたと思えざるを得ないのは、紫電を纏った巨大な球体に不気味な顔が浮き出ていたからだ。
弛緩した薄気味悪い笑みを浮かべ自らの丸い体を転がす様は、見る者を不愉快にさせるには充分だ。
ポーン、ポーン、と軽い音を響かせて不気味な球体はビルの屋上から降りてくる。
空中に漂う間も腹に響く笑い声を上げながら転がるものだから、流石の悟空も笑みが凍りついてしまった。
- Re: 【dance;wits:the:DEVIL 】 ( No.9 )
- 日時: 2010/06/27 19:59
- 名前: EN (ID: P3xeYQNF)
- 参照: http://id46.fm-p.jp/209/satorusora/
球体の大きさは、悟空達の身長に比べやや高く、横幅も2m強はある。
その球体の表面全体に浮かぶ微笑みは、悟空の表情をひきつらせ怯えさせた。
「やぁやぁやぁ、新しい客人かい?」
毒が滴るような、背筋がゾワリとする突然の冷たい声が悟飯のすぐ横で聞こえた。
悟空が息子の名を呼ぶ前に、悟飯は反射的に回し蹴りを放つ。
だが捕らえたのは風だけだ。
「いきなり回し蹴りとは、礼儀はお家に置いてきたのかねぇ?」
不愉快極まりない甲高い笑い声が、球体の頭上で響く。
其処に居たのは、黒に近い紫色のピエロの格好の悪魔だ。
ごてごてしい杖を持った、痩せ細った薄気味悪い道化師。
己達を指差し、球体の上で笑い転げる様が悟飯の癪に触ったのか、無言で力任せに球体に蹴りを入れれば、野太い悲鳴を上げて球体は吹き飛ぶ。
道化師は一緒に吹き飛ばなかったが、間抜けな悲鳴を上げて地面に顔を叩きつけ、痛みにのたうち回る。
「これはまた随分と、間抜けな悪魔ですねぇ…」
腕を組んで侮蔑に見下ろす悟飯だが、道化師は至って慌てもせず立ち上がり、悟飯と悟空にお辞儀をしてみせる。
本当にサーカスに出てくるピエロのようだ。
しかし道化師の血の気のない唇からは、毒色の蛇に似た細く長い舌が見え、生気は感じられなかった。
『まさか生きていたとはな、ジェスタ−』
ケルベロスが憎らしげに道化師の名を呼べば、ジェスタと呼ばれた道化師は恍惚そうに笑った。
「いやいや、俺は『彼』の残像思念に過ぎないさ」
クルクルと舞い踊るジェスターに合わせて、球体も踊り出す。
間抜けにも見える光景だが、広場を囲む闇の気配がより一層濃くなった。
『残像思念だと?』
「それほど、人間は欲深いのさ」
クルクルと陽気に踊り回るジェスターが腕に持っているものが見えた。
古ぼけた羊皮紙の、赤黒く変色した色が染み付いた本だ。
見みるだけで吐き気を催し兼ねないその色は、恐らく血だ。
「それで、…」
痺れはまだ残るが乾いてきた血に息をついて、悟飯は視線も上げずジェスターに声を掛ける。
「襲撃を仕掛けた黒幕は貴方ですか?」
悟飯の声は重みを含ませていた。
視線を上げた黒瞳は赤い月光を反射させて、風もないのに前髪を揺らせば、ビルの硝子が軋みを上げた。
しかしジェスターはその尤もらしい『威嚇』に、締まりのない笑みを浮かばせるだけだ。
杖を振り回し、悟空と悟飯の周りをスキップしながら歩き回ると、顎に指を添えながら首をかしげた。
「おやおやおやぁ?」
悟空を凝視して、何に感づいたのかジェスターが悟空の顔を覗き込めば、悟空は気味悪さに呻いて一歩さがってしまう。
「お客人は御兄弟…、いや、親子なんだねぃ」
悟空とジェスターの間に素早く割り込めば、悟飯は得体の知れない道化師を睨む。
「親子ですが、なにか?」
「いやいや、だって、ねぇ」
意味深に笑うとジェスターはケルベロスに視線を向ける。
ケルベロスはジェスターが何を言いたいのか分かったらしく、毛を逆立てて唸るだけだ。
「強力な魔力を感じるのは確か」
道化師が裾を翻して優雅に回転すれば、球体も愉快げに跳ねる。
「父親は、まるで子供のような純粋な魔力を感じるのに」
ビシィ、とジェスターは杖の先を悟飯に向けて歯並びの悪い大きな口を、何が可笑しいのか紫の唇を半月に変えてこれ以上にないおぞけすら感じる笑みを浮かべた。
「息子の魔力は、我々『悪魔』に近いねん」
悟空はジェスターの言葉が理解できないが、悟飯は無表情だが僅に気を乱したのを、道化師は見逃さなかった。
「僕達は、れっきとした人間ですよ。それなのに、…」
悟飯が静かに一歩進む。その瞬間、ジェスターの足下に陽炎が生まれた。
「その不愉快な舌、焼き切りますよ」
しかし強烈な熱風はジェスターを捕らえることは出来ず、飛び上がったジェスターの背後から嘲笑を腹に響かせて襲い掛かってきたのは球体だ。
舌打ちして悟飯は右手を振り翳して気孔波を発生させるが、その寸で悟空が悟飯の右手を引っ掴んで踏み止まらせた。
きつい視線で必死で訴えてくる悟空に、悟飯もその視線に気付いて離れているケルベロスの所まで父を突き飛ばすと、己は左へ大きく横転する。
横転した悟飯の靴爪先すれすれで球体が地面に激突した瞬間、戦慄すら覚える、巨大な紫電柱が落ちてきた。
眩い光を見る暇もなく悟飯は数回横転したが、避けたと思っていた爪先に紫電が絡み付き、悟飯の力と反発し合い、悟飯はその威力に呼吸を忘れ背後の壁を破壊し倒れた。
この掲示板は過去ログ化されています。