二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

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もう一つの獣の奏者
日時: 2011/03/21 17:38
名前: スズ ◆ixbyCx13Wk (ID: OWe0NuL4)
参照: http://www.kakiko.cc/bbs/index.cgi?mode

「獣の奏者エリン」のもう一つの物語…。
イアルとの隠れたもう一つの出会い…。
少女エリンと少年イアルの切ない物語です。

☆作者メンバ〜☆
スズ
azuki)

キャラクター紹介 >>3 >>4

目次
++プロローグ++ >>6
*第1話* >>8   *第6話* >>15
+第2話+ >>10  +第7話+ >>16
*第3話* >>11  *第8話* >>17
*第4話* >>13  *第9話* >>18
+第5話+ >>14

+第10話+ >>23  +第16話+ >>29
*第11話* >>24  *第17話* >>30
+第12話+ >>25   +第18話+ >>31
*第13話* >>26  *第19話* >>32
+第14話+ >>27
*第15話* >>28

*第20話* >>35
+第21話+ >>40
+第22話+ >>42
+第23話+ >>43

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Re: もう一つの獣の奏者 ( No.29 )
日時: 2010/12/30 17:19
名前: スズ ◆ixbyCx13Wk (ID: OWe0NuL4)
参照: +第16話+

イアルは文を書き終え、筆をおく。
今までの事をセ・ザン(堅き楯)に居る友に綴っていくうちに、たくさんの事があったのだと改めてイアルは少々驚いた。
この文が届く頃には自分がどれほど変われているか…。
少年特有のワクワクとした感情が溢れてきた。

その日の深夜…。
村の家の明かりが一つ残らず消えた頃、銃声が数発鳴り響いた…。
しかし、銃声は夜の闇にかき消され、村人誰一人気付くものは居なかった…。

あくる日の朝。アケ村の大人達はある広場に呼び出された。
勿論、ソヨンも例外ではなかった…。

「なんとも惨たらしい…」「何でこの村の中にこんなものが?」
人々は〈それ〉を囲みながら口々に囁きあう。
「静粛に!」
その囁きを一言で止めたのはこのアケ村でも一目置かれている闘蛇衆の頭領のハッソンであった。
ハッソンやその他の闘蛇衆は〈それ〉の第一発見者に当たるため、群衆の前で立っている。
〈それ〉というのは動物の死骸だった。
猟銃で撃たれた鳩が4羽、刃物で切り刻まれたネコが3匹の計7つの尊い命が失われた。
それも、内臓がむき出しになっていたりと何とも惨たらしい状態であった。
単なる嫌がらせにしてはやりすぎだった…。

「この他に何か被害は無いのか?」
「あ、あの…俺の家に飾ってあった猟銃が今朝盗まれてて…」
群衆の中の一人が恐る恐る発言する。

「なるほど、凶器も分かった…。この件は我々で話し合おう…。
全員ひとまず家に戻ってくれ…」

その家に数人の男性と真ん中に老人が1人、ろうそくを囲うように座っていた。

「いったい、犯人は誰なんだ?」「まさか、この村にあのような事をする者が?」
「分からないが、そう考えるのが妥当だろ?」
口々に討論が繰り広げられていく…。

「わしは知っておるぞ!そんなことする奴を!!」
当ての無い討論の中一人の老人がズカズカと家に入ってくるなり大きくそう叫んだ。

「アンタは…ガシュラの旦那、誰だ?その人間は?」
「そいつはな………」
ガシュラが話し始めたのは数日前に自分の家に居た一人の少年の話であった。
ガシュラの話を聞いて人々はその少年の目撃情報を話し出していった。

「で?そいつの名前と居場所…誰か知らないのか?」
「俺が知っている…」
「ガシュラさん!なら早く教えてくれよ…」
「そいつの名前はイアルだ、確かあのソヨンの家で匿われているらしい…」
「またか…」
その話しを静かに聞いていたハッソンは小さくそう囁いた。

急に家のドアを強く叩かれソヨンは慌てて出迎えた。
「はい…あ、どうしたのですか?」
「ソヨン、此処にイアルという少年が居るそうだな?」
「え、えぇ…」
「そいつをこちらに渡してもらえないか?」
「…それは、何故ですか?イアル君がいったい何を?」
「ソヨン、お前も朝聞いただろ?あの犯人として名前が挙がったんだ!」
「馬鹿言わないで下さい…あの子はまだ子供です…そんな事できるわけありません!帰ってください!!…早く帰って!!!!」
ソヨンは力任せに無理やり扉を閉めた。
その様子を見ていたエリンとイアルが戸惑いの目でソヨンを見つめる。

「大丈夫よ!ほら、ご飯食べましょ?」
ソヨンは笑顔で2人を安心させようと普段通り夕飯の準備を始めた。

「俺、迷惑なら…別に捕まっても大丈夫ですよ?前も似たような所にいたし…俺、追いかけてきます!」
イアルがそう言って駆けて行こうとした時ソヨンはその肩掴み自分の方に向かせてイアルの頬を叩いた。

「何でそんな事言うの!?イアル君…悔しくないの?貴方は関係の無い事で容疑がかかったのよ?そんなの良い訳ないでしょ?」
ソヨンは涙ぐみながらそう言った。

「分かったらお願いだから、もうそんな事言わないで…」
イアルには分からなかった…何故怒られたのかが。
冷静に考えれば村の者からそう言われたのなら従えば後々何も起こらないのに今、こんな事をすれば又何かあるに決まっているのに…。
イアルはまだ理解できなっかた。本当の人間の温かさが…。

Re: もう一つの獣の奏者 ( No.30 )
日時: 2010/12/31 15:40
名前: (梓!*、 ◆hLMPZ4CBa. (ID: aU3st90g)

*第17話*


「エリン、……貴方が頑張らないと、報われないの。でも、これは貴方にしか出来ない事。——やってくれるわね?」
「私、イアル君が助かるなら何でもするよ!」

念のため、イアルを物置の奥に隠した後、ソヨンは重々しく言った。

「—私、見てしまったのよ。エシュラさんが、慌てて家に帰るところと、銃を持っていたこと……」
「エシュラさんが…そんな訳、無い……」

ソヨンは「ほらね」と言うと、きつい瞳で言った。

「優しかったのは、裏の顔なのよ。でも、私が言っても何の効果も無い。」

さっきの行いで全てを駄目にした、ソヨンはそう言っているようだった。

「……だからエリン! どうにかして、エシュラさんの家に忍び込んで。そして、こっそり銃を持って帰って。そうしたらお母さんがハッソンお爺様に言って指紋、調べてもらうから」
「私に出来る……かなぁ」

エリンはぎゅっと服のすそを掴んだ。

「大丈夫、エリンだから頼むのよ。こうしている間にも、お役人が来てイアル君を連れ去っていくかもしれない…さぁ、早く」

エリンはうん、と頷くと、パッと駆け出した。

「今日ガシュラはいない、そしてアリエスさん達がいる……娘にこんなことさせたくないけど、アッソン…あの子を守って」

ソヨンの言葉は、誰にも聴こえなかった。




「こんにちは! エシュラ伯母さん!」
「エリンちゃん! 今日と、このあいだはごめんね…」

ガシュラのことを言っているのだ。

「大丈夫です。あの、それより、忘れ物を…してしまって」
「何をだい?」

エシュラの瞳をなるべく見ないようにしながら、「鞄と、小さい石です」と静かに言った。

「石? そんなものがいるのかい?」
「はい。お母さんと探した、ピカピカの石なんです。
今日気づいちゃって、来ました」

その後ろから、アリエスの声がした。

「エリンちゃん、探し物ー?」
「あ。……はい、ごめんなさい!」

その横からはリナエスの声がした。

「今日は爺さんいないから、ごゆっくり!」

少し鋭い声でリナエスが言う。


「こんなばあさんでよかったら、探すよ。 よっこらしょと、ピカピカの石ねぇ……」
「す、すみません…失礼します」


アリエスが近寄り、エリンに耳打ちをした。

「私がお婆ちゃんを向こうへひっぱりだすから、その隙に銃を取って。
そのあとリナエスに渡して…そうしたらリナエスがソヨンさんのところへ行くわ」
「……どの銃ですか?」
「真ん中よ。 あれ、お婆ちゃん! これかな?」

エリンは自分がいろんあ人に助けられているのを知り、涙が出そうになった。

「紐がでてるから鞄の取ってかなぁ?」
「どれどれ……ん、そうかもねぇ。エリンちゃん、こっちはいいから石を!」

アリエスはわざと物陰に隠れてくれたので、エリンは真ん中の血痕がついた銃を取り、リナエスに渡した。

「なかなか取れないねぇ。リナエスー!」

あやうくこっちを見そうになったエシュラに、エリンは言った。

「あの、あの…リナエスさん、厠に行きました。」
「もう。あの子は! ほらお婆ちゃん、もう少し!」

ぐい、と引っ張ると、アリエスが仕込んだ鞄が出てきた。
エリンもじゅうたんの上にあった石を掴むと、「あったぁ!」と声を上げた。

「ありました。ごめんなさい! あ、リナエスさんによろしく言っておいてくださいね」

と言いながら、ゆっくりと家を出た。
その後ろで、アリエスが「お婆ちゃん、腰痛い?……ここで休んで」と言っているのが分かった。


エリンは、イアルが無事だということを願わずにいはいられなかった。


Re: もう一つの獣の奏者 ( No.31 )
日時: 2011/01/02 02:16
名前: スズ ◆ixbyCx13Wk (ID: OWe0NuL4)
参照: +第18話+

エリンはアリエスに言われたとおり、リナエスに銃を渡し真っ直ぐ家へと向かっていた。
ソヨンの元へ銃が届いたのはエリンが銃を渡した3分後…。
ソヨンは大急ぎで銃をハッソン達が居る門の前まで走って持っていく。

「待ってください!!!」
ソヨンは大きな声で叫びながらハッソン達の前に立ちはだかった。

「どけ!ソヨン!!この少年は無抵抗でここまで来た!これはコイツが犯人である最もな証拠だ!何故お前は抵抗する?」
「いいえ違います!!此処に!私が手にしているこの銃こそ最もな証拠です!!!」
ソヨンは何を言われても怯むものかと、周りのハッソンを含む村の者達を強く睨んだ。

「……では聞いてみよう、その銃がどういう証拠なのかをソヨン」
ハッソンは睨んできたソヨンの瞳を静かに見つめてから問いただした。

「はい、この銃はエシュラさんのご自宅にあった銃です。
此処に付着している血も古くは無いもの、つまり最近付着したものです。そして、エシュラさんの2人のお孫さん…アリエスさんとリナエスさんの証言によると、この銃は今朝…リビングに急に飾ってあったと言っていました…」
「なるほど…この条件からして、お前は今回の犯人をエシュラだと思っているのだな?」
「……そういう事になります」
2人の会話は何一つ争いの要素を感じさせない静かな会話だった。
この会話の真っ只中に居るイアルは、静かに自分に降りかかっている今の状況を分析していた。

「なるほど…ではソヨン、何故この少年……イアルは無抵抗で我等に従い付いて来た?」
「それは…」
ソヨンは考えるようにしてイアルのほうをじっと静かに見つめた。
イアルは自分のした行動に対してソヨンが何故、悲しみの表情で見つめてくるのか少し疑問に感じていた…。

「この少年、イアル君は心に大きな傷を抱えています。
そのせいで人間の感情というものを忘れてしまっている部分があります。
私としては、人間の感情というものは大事であると彼に教えなければならないと思っています。
しかし、今の彼はまだ感情を分かりきっていません。今の彼の行動の源は、全て利益の上になっています。
彼の今の状況把握は実に正しいものだったと思います。
私たち家族にとっての不利の状況を彼は失くそうとしてくれました。ですがそれは、機械的な行動で人間的とは言えません。
まだ人間的である我々に、理解しがたい行動をしたのはそのためです。普通ならば、無理矢理にでも逃げ延びようとするその状況で、無抵抗だったのはそういう事です。ご理解頂けましたか?」

ソヨンの言葉に村人達は考え込んでいた、『少年がそのような状況ならば、見逃してやるべきか』という正論と『ソヨンに丸め込まれてる』という反発心のなかで如何すべきかを…。
考え込んでいる村人の思考をやめさせるかのように、一人の大きな老人が叫んでやってきた。

「馬鹿言うな!!!!!!!!そいつに決まってる!」
それはエシュラの夫ガシュラであった…。

Re: もう一つの獣の奏者 ( No.32 )
日時: 2011/01/03 09:17
名前: (梓!*、 ◆hLMPZ4CBa. (ID: aU3st90g)

*第19話*


「…ではお聞きします、ガシュラさん。貴方はご自分の孫を信じていますか?」
「勿論だ。それが何だ!!」

ソヨンはさっ、と後ろに退いた。

「アリエス…御前、此処で何をしている! 子供が来る場では無い!!」
「あら、お爺様。子供だけれど、立派な証人よ。証人に年齢制限は、無い」

アリエスは一度口を閉じ、ハッソンを見て口を開いた。

「あれは、事件が起こる昨日の夜でした。私が厠へ行こうと目を覚ましたとき、お婆ちゃんの声が外からしたのです。」
「そなたの伯母は、なんと?」

アリエスは鋭い瞳でガシュラを睨むと言った。

「…これはいい皮ができそうよ。苦労して狩った甲斐があったわ……」
「如何でしょう、お爺様」

ソヨンはハッソンに向き直ると問うた。

「うむ……信じ難いが、……誰か、この銃の血痕を調べて参れ!」
「待ってください、村長!! この孫は嘘をついています、自分の手柄が欲しい為に、嘘をついている!!」

ガシュラは荒れ狂った声で言った。

「あら、見苦しいですわよ。……貴方はついさっき、孫を信じていると仰ったではないですか」

ガシュラは言葉を見つけようとするが、何も言い返さなかった。

「ハッソン村長、結果を申し上げます。血痕はあの獣達のものと判明致しました! そして指紋は——……エシュラのものと見られます!!」
「決まりだな、ガシュラ。……見苦しい真似は辞めろ」

イアルの錠が離され、その錠でガシュラを捕まえた。

「何だ! やったのはあの婆さんだ、俺は関係無いんだよ!!」
「罪人を庇った罪として、嘘の情報を提供した罪として……連行する。意見は?」

ガシュラは唇を噛みしめると、大人しく手を前へ出した。

「あぁ、イアルとか言う者。」

ハッソンがイアルの手をとった。
反射的に身構えるイアルの頭に手をのせ、ハッソンは言った。

「……君は、偉い。事態を大きくしないように頑張ったのだな。
でも、……違う時は違う、と否定せよ。——さぁ、坊主は帰れ」

ソヨンに手を引かれ、その場を立ち去るイアル。

「……エリンが喜ぶわね」
「え?」

ソヨンの言葉を聞き返すと、天使のような微笑を浮かべたソヨンがいた。

「これ全部、エリンがやったようなものよ。銃を奪ったのも、全部……」


イアルは早く家に帰りたくてしょうがなかった。
それは、初めての思いで、なんとなく心がくすぐったかった。

Re: もう一つの獣の奏者 ( No.33 )
日時: 2011/01/04 07:59
名前: レミニカ (ID: 9UBkiEuR)

まだ途中までなんですが、(スミマセン;
凄く面白いですw獣の奏者大好きですw
そしてイアル・・・惚れますね(*^_^*)
応援してます!頑張ってくださいW
他の方のとこから来たんですが、私も
フェアリーテイル好きですwww


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