二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
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- 〜続・イナイレ*最強姉弟参上?!*短編募集中!
- 日時: 2012/11/26 15:19
- 名前: 伊莉寿 (ID: 7jEq.0Qb)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel3/index.cgi?mode=view&no=21564
クリックありがとうございます!
初めまして、もしくはこんにちは♪ここではイナイレのストーリーにオリキャラを交えた小説を書いています。
タイトルで分かるかもしれませんが、この小説は私の1作目「イナイレ*最強姉弟参上?!*」の続き、イナGO編になります。
上のURLから見る事が出来ます!!
※注意です。
・作者は絶賛受験生!更新はスローペースになると思います。
・オリジナル設定がすごいです、別の意味で。
・文グダグダ注意。
・荒らし等はご遠慮ください。マナーを考えて下さいね!
アドバイス等のコメント下さると作者はパソコンの前でお辞儀する位、感謝します!本当にエネルギーになります!!
コメント下さると嬉しいです。
1作目の方も短編などを書いて、続けて行きますのでよろしくお願いします。
キャラ紹介>>32
*コメントを下さったアフロディより神様な方々*
・茉莉さん…初コメの方!応援して下さる神様です☆展開が気になるトリップ小説を書かれています!!
・姫佳(元刹那)さん…1作目の初コメの方!心友です!!ラティアちゃんと魁渡が仲良くなる日は来るのでしょうか^^;
・蒼炎(元おかゆ)さん…ギャグ小説を書かれています!毎回爆笑(笑)賑やかなコメントが何時も楽しみなんです☆←
・ゆうさん…神文な小説を書かれています!友達です!亜美ちゃんの性格が私的にナイス☆
・流翠さん…すごく親しみ易い方です!円堂達が可笑しい事になっているギャグ小説を書かれています(笑)
・水蓮寺雨音さん…前作の初めの頃からコメントを下さる大大大大大親友です!!!!カキコで書き始める前から私雨音さんの小説のファンだったり♪
・緋音さん…ハガレン小説を書かれています!私、実はハガレンも好きなので☆しかも神文作者なのです!!
・まいさん…イナイレの神小説を書かれています!とても丁寧で上手です。暁君と瑠璃花の趣味とかが少し似てる☆
・Rinさん…設定が尊敬する位すごいイナイレ小説を書かれています。パソの画面に向かってキャラに応援したくなります。
・しずくさん…魁渡のFCの副部長と同じ名前の子が主人公の小説を書かれています☆私がコメントして良いのかってほど眩しい小説です。
・Mr.りーとんしゃん’…私のリア友です。前作で紹介した「がんばって読んでくれてる」方!迷った時の相談相手です☆ダブルス組んでま(関係無い
・てけ107さん…アドバイスして下さった方です。評論家みたいで最初ビックリしました^^;また来て頂きたい方です☆
・エミルさん…ずっと読んで下さっていた方です!オリキャラ募集中ですので良かったらお願いします♪
・風風さん…小説で月乃を使って下さってます!尊敬してます、この方の小説大好きです!!
・凛々さん…お友達です♪ずっと読んで下さっていた&オリキャラを投稿して下さいました!しかも短編を真っ先に応募してくれました!感謝!!
・レッドさん…ダンボール戦機Wの小説を書かれています。推理物です!大学生ですがお友達です!
皆さんコメありがとうございます♪
人気投票!!詳しくは、こちらから♪>>62 >>64 (※終了しました)
結果発表はこちらから♪>>156
キャラ人気投票!
ルール>>433 キャラクター>>434 結果発表>>474
*現在実施中!*
オリキャラ募集!>>597
1作目参照10000超え企画!短編募集>>668
*目次*
プロローグ>>3
*第1章 真っ白な私に、色を混ぜて
1話/ふいに…>>10 2話/memory>>13 3話/サッカーを?>>23 4話/編入試験とピアノの音色>>29 5話/本音>>38
6話/強引だと言われても>>48 7話/moon&memory >>55
*第2章 雷門の愉快なクラスメイトは不機嫌の素
8話/学校へ >>67 9話/部活-club >>77 10話/真っ直ぐなんて>>93 11話/バカ>>108 12話/メモリーズ>>123
13話/学校で、友達と>>127 14話/教室の空気>>144 15話/数学>>151 16話/音無先生>>160
17話/レースと向日葵>>165 18話/rain-雨>>170 19話/umbrella-かさ->>186
*第3章 ホーリーロード地区予選-VS天河原中-
20話/試合と心>>198 21話/ツインテールと弟>>207 22話/自由に…>>211 23話/>>217
24話/勝利の女神>>232 25話/初戦突破>>235
*第4章 モノクロのボールを追いかけて
26話/部活動、それは選択>>241 27話/おすすめの部活!>>246 28話/シード、種ではありません>>249
29話/新入部員>>281 30話/抱きしめるのは、想いとボールと眠る力>>293 31話/人間界には罠が!!>>302
*第5章 VS万能坂、秘めた力と共に目覚める——
32話/——明るい病室に——>>306 33話/潰す。>>322 34話/悪魔の目覚め>>324 35話/−闇色のフィールド−>>329
36話/聖なる光と独りじゃない>>340 37話/前進する度の、後進>>343 38話/脅威の仲間たち>>354 39話/最終結晶>>367
40話/She knows all.*彼女は全てを知っている。*>>379
*第6章 繋がっている過去と天界、そして記憶
41話 目覚め…>>384 42話/神童邸、異変>>390 43話/それぞれの朝。>>411 44話/記憶と予感を、胸に。>>424
45話/{目覚めの時}>>429 46話/病室にて———1>>484 47話/病室にて———2>>485
48話/ダ・カーポ +悪夢+>>489 49話/失踪!?>>507 50話/…出会ったのは?>>516 51話/俺の携帯電話は!?>>527
52話/いしんでんしん。>>532 53話/天使の求める物>>535 54話/突風少年の名前、松風天馬>>537
*第7章 モノクロのボールを置き去りにして-VS帝国学園
55話 フィフスセクターへご招待>>544 56話/見張り?偵察?>>547 57話/フィフスセクター>>550 58話/VS…?>>555
59話/Good bye.>>559 60話/彼らの良心は裏目に出る>>569 61話/ベンチにリターン!?>>572 62話/天国の天使>>575
63話/悪魔を破れ!!>>582 64話/おきてがみ>>594
*第8章 A級天使長奮闘記-VS海王
65話/聞き間違い…?>>615 66話/レジスタンスと爆弾料理との対面>>618 67話/天使たちの前進>>632
68話/初めましてな2人と敬語>>635 69話/ドジでちっちゃな小学生?>>642 70話/2つの計画、始動!>>655
71話/化身と本気、発動!>>659 第72話/硝子の槍>>663 73話/希望をつないで>>669
*第9章
第74話/暗雲>>676 第75話/揺れる、>>693
ティアラちゃん達キャラ紹介>>111
映像で書いた物>>440
相談解決です。>>500
■柄風教えてくれバトン■>>523
予告>>514
駄作者1周年挨拶>>566
リメイク決定>>711
For水蓮寺雨音様「誕生日プレゼント/短編」>>612
最新!
(10/31)ハロウィン短編>>703
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- Re: 〜続・イナイレ*最強姉弟参上?!*new:フィフスセクター ( No.555 )
- 日時: 2012/04/10 01:13
- 名前: 伊莉寿 ◆EnBpuxxKPU (ID: r4kEfg7B)
第58話 VS…?
〜天馬SIDE
橘「…何か久し振り。」
帝国学園のグラウンドに向かって歩いていると、美咲が吐く息に乗せて呟いた言葉。
そう言えば、美咲はテニス部でついこの前来たばっかりなんだっけ。
今日はホーリーロード地区予選準決勝、帝国学園戦。剣城がいない10人で戦う事になる。月乃さんも、休部だから。
月乃さんがいれば心強かったとは思うけど、事情があるんだってキャプテンが言ってたから俺はどうこう言えない…かな。
本当はその事情が何なのか教えてほしいし、良くなるように手伝いたい。だって、万能坂戦で月乃さんは俺達を助けてくれたから。
助け合うのが仲間だという以前に、俺は月乃さんから見ればきっと友達にもなれていない、でも、だからこそ。
橘「…天馬、どうしたの?そっちは壁…」
「ゴンッ」
葵「天馬!?」
西園「大丈夫!!?」
ほ…星が散った…。
三国「薄暗いから、気をつけろよ?」
天馬「はい…」
でこが痛い。考え事をして歩いたらだめ、ってこういう事だったんだ…。
でも、考えずにはいられない事だった。………今度からは前を注意して考えよう!←
橘「…何考えてたの?でこ大丈夫?」
天馬「大丈夫!」
美咲の右手がでこに当てられた。熱を持ってるからか、ひんやりと冷たく感じられて気持ちいい。
橘「…試合の時、タンコブ出来てたら面白いね!」
葵「美咲ちゃん…;;」
でも相手選手の注意がでこに向いて、良いかもしれないなぁ…。
**
『貴女は悪魔の血を継いでるんだから!』
『違うっ、パパは…普通のパパだもん!!優しいんだからっ!』
『良い悪魔なんて、居る訳ないじゃない!』
『あの悪魔がどれだけ天使を殺したと思ってるの!?』
月乃は思う。
自分は、ここでどうあるべきなのか。ただ記憶を取り戻すだけで良いのか、と。
自分に友達などいなかった。居る様で、いなかったのだ。
記憶が戻るにつれ、ぼやけた輪郭ながらとても親しい存在を思い出していた。彼女も自分の遠くに居た。結局は、周りと同じで。
強い存在がいたから、強い力を使えなかったから。
病室のテレビの音が、廊下にも漏れていた。わずかに開いたドア。聞こえてくるのは、偶然にもホーリーロードの試合の音。
歩くのをやめ、少しの間その音に耳を澄ます。
雷門は10人でのフォーメーション、対する帝国はやや攻撃的な陣形で試合に挑む様だ。
細かく見れば50年前から因縁のある対決となる、雷門VS帝国。
その一戦は、会場・戦力からして雷門が不利な状態で始まろうとしている。
月乃はネームプレートに視線を移す。剣城優一、試合に出ないらしい剣城の兄だった。
続いて彼女は辺りを見渡し、近くに剣城がいない事を知る。彼が試合に出ないつもりである事は、彼女にも分かっていた。
ならば、ここに来るのではないかという推測。
兄弟それぞれの気持ちを考えてから、しかし表情を変えずにその場を立ち去ろうと一歩踏み出した刹那、背後で足音が止まる。
「月乃さん、勝手に出歩かれては困ります。」
振り返ると、そこに立っていたのはフィフスセクターの黒木。
かつて黒の騎士団を率いて、雷門中サッカー部に壊滅的なダメージを与えた存在だ。
月乃「…私は、診察を受けに来ただけです。」
黒木「まっすぐ来るという話では?」
月乃「私の話を聞いてそう思っただけでは。その様な事は一切言ってませんから。」
しっかりとした口調で、月乃は言い放つ。二度目の診察が必要だったという事を言い忘れたのか、わざと言わなかったのか。
そこは、本人しか知る由もない。
月乃「…これから診察なので、失礼します。」
礼をして歩いて行く彼女の背中を見て、黒木は小さな笑みを浮かべる。
「だが、ここ——入院病棟——に居たという事は剣城の事が気になっての事だろう?」
**
雅野「…おかしい。」
何で彼女がいないんだろう、とキーパーグローブをはめながら雅野は首をかしげる。
視線の先では、雷門サッカー部がウォーミングアップをしていた。
雅野は人数を数えて10人である事にまず違和感を覚え、そして先日帝国学園を騒がせた月乃が居ない事に気付く。
万能坂戦で不可解な行動をしていた10番の姿も見当たらない。
龍崎「雷門は俺達をなめているのか?」
雅野「…ベンチにも選手がいない。何か問題があったと見るのが妥当だ。」
フォーメーションに着いた龍崎。雅野の言葉を受けて、つまらなそうに再び雷門陣を見つめる。
彼らの力がどの程度の物か、龍崎も知っていた。
万能坂戦からどれだけレベルアップしたかは分からないが、そうだとしてもたかが知れていると彼は考えていた。
自分がシードで、化身技を自由に使えるという自信が笑みに現れる。
一方、雷門陣は緊張した面持ちでそれぞれポジションに立った。ベンチにも緊張が走っている。
円堂は鬼道を見た。表情から考えを読み取る事は出来ない。
こうして、試合は始まった。
前半、アルティメットサンダーに挑戦するも全く成功しない雷門は1点を試合開始早々に奪われていた。
神童のフォルテシモも、帝国学園キーパーの雅野があっさりと止めてしまった。
この程度か、とボールを持ってリラックスした表情の雅野は言う。対照的に、雷門陣は驚きの表情を隠せない。
今まで、神童のフォルテシモを技なしで止めた選手がいただろうか。
美咲はフィールドを数秒見つめてから、ベンチを立った。気付いた葵が声をかけようとするも、それより早く彼女が振り返る。
フィールドでの接戦に釘付けになっているのか、ベンチでは葵と円堂以外美咲が立った事に気付いていなかった。
彼女は右手人差し指を立てて口元に持っていき、静かに、というジェスチャー。続いてすぐ戻るから、と口の動きで伝える。
直後、会場にどよめきが広がる。
葵が振り返ると、展開されていた帝国のフォーメーションは中央をがら空きにするという驚きの物だった。
意味を考えてしまった葵がハッとして振り返ると、そこには既に美咲の姿は無く。
スコアは0−1、点数以上に雷門の不利。
*
橘「…ん、良かった。悪魔は動かないんだ。」
ソフィア『あくまでも今の段階での話。逆に何かあると考えられるから、今日はここから見張ってるわ。それと、今日の対戦相手。ラフプレイが得意な選手が多いみたいだから。』
珍しい、と心の中で橘が呟き、画面に映るソフィアに笑みを返す。
橘「了解、忠告ありがと。」
通信を切断し、フィールドの方を向く。そろそろ前半が終わる時間だ。
橘「…サッカー、かぁ。」
彼女の呟きは、薄暗い帝国学園の校舎で響かなかった。
- Re: 〜続・イナイレ*最強姉弟参上?!*new:VS…? ( No.556 )
- 日時: 2012/04/10 13:43
- 名前: 姫佳 ◆MWOkRuxz12 (ID: n8dA/zGw)
- 参照: 今日は午前授業でした♪
天馬、壁にぶつかったけど…、大丈夫?!でも、天馬なら実際にありそうなことだなぁ…^^;
ラティア「でこのたんこぶに注意引きつけられるほど馬鹿がいるとは思えないんだけど。」
まぁ、確かにwでも、それはそれで面白いじゃんwww
杏樹ちゃん?!お父さんが悪魔ってどういうこと?!杏樹ちゃんも、家庭に色々事情があるのかな?
ティアラ「私達と一緒だね〜。」
ですね。
- Re: 〜続・イナイレ*最強姉弟参上?!*new:VS…? ( No.557 )
- 日時: 2012/04/10 18:28
- 名前: 風風(携帯) (ID: lquHsOOW)
こちらではお初です☆
私の小説に来てくださり、ありがとうございました!!
更新頑張ってくださいね♪
- Re: 〜続・イナイレ*最強姉弟参上?!*new:VS…? ( No.558 )
- 日時: 2012/04/10 22:39
- 名前: 伊莉寿 ◆EnBpuxxKPU (ID: r4kEfg7B)
姫佳さん
確かに(笑)
天馬「でも、たんこぶにはならなかった!」
それは良かったですが…はい。←
月乃の戻った記憶が、一部明らかになりました!!橘の回想もあったのですが、文字数の関係で削除…;;
これから上手く書いていけたらな、と思います。ホーリーロードの終了とともに完結させるつもりなので。
ティアラちゃん達みたいに、確かに色々ある家庭です。
コメントありがとうございました♪
風風さん
来て下さったんですか!?本当嬉しいです、でも5割緊張してます;;
応援ありがとうございます!
風風さんの小説も楽しみにしています♪
- Re: 〜続・イナイレ*最強姉弟参上?!*new:VS…? ( No.559 )
- 日時: 2012/04/13 22:05
- 名前: 伊莉寿 ◆EnBpuxxKPU (ID: r4kEfg7B)
第59話 Good bye.
カラリ、とドアが開けられた。
驚いた反動で物想いから覚める。ずっと、弟の事を考えていた。試合に出ず現れたかと思えば、なかなか戻ってこない弟の事を。
「……」
入口に立っていたのは初対面の少女だった。
どこかで見た事がある様な気がして記憶を探る。無意識の内に首を傾げていた。
「剣城優一、さん。」
細い声で突然名前を呼ばれて、俺は目を見開いた。一体何の用だろう…?
虚空を見つめていた瑠璃色の瞳が、俺を捉えた。そして開かれた口から告げられた言葉に目を見開く。
「弟さんの所へ、案内しようと思って。」
ああ、そうだ思い出した。
優一「君は、月乃杏樹さんだね?」
彼女は表情を変える事無く、俺を車いすに乗るよう促した。淡々とした動きに、ふとある少年の面影を見る。
…弟に、似ている気がした。
それが何を指すのか、俺には分からない。ただ漠然とそう思っただけで。
車いすが止まる。そこは中庭への入口で、月乃さんを振り返ると、視線は中庭へ向けられていた。
彼女の視線を追う。
視界に入って来たのは、黒ずくめの男と弟・京介の姿。何かを話している様子だが、男の方は明らかに怪しい格好をしている。
京介の顔も強張っていて、良い話をしている訳ではないと分かった。
中庭へ続く扉を開け、少しの罪悪感を抱きながら耳を澄ます。弟の為、と思い2人の声を必死になって拾った。
しかし。
聞こえてきた言葉は、全く予想していなかったものだった。
月乃「…分かりましたか、弟さんのしていた事。」
落ち着いた声色で月乃さんは、俺の知らなかった事を語りだす。
月乃「彼が所属するフィフスセクターはサッカーの試合に関して勝敗指示や内容の指示を出し、管理する組織です。弟さんは専属選手〝シード〟として雷門中サッカー部を監視しに来ました。指示に逆らおうとすれば力で服従させる…それはフィフスセクターの指示です。」
優一「…何で、京介はそんな事…」
声が震える。初めて真実を知り、京介を見れば今までと同じように思えなかった。どうして、どうして…。
疑問の答えを教えてくれたのは、月乃さんでは無く京介だった。
剣城「…兄さんの手術費は、出してくれるんですよね。」
優一「ーっ!?」
黒木「勿論ですよ。」
俺の、手術費……?
震える拳は、太ももの上にあった。事故で動かなくなったこの足を治すには手術が必要、だがかかるお金は膨大な金額だった。
一般家庭にそんな金がある訳ない。
だから俺はサッカーが出来なくなった、でも京介はサッカーが出来るのだから普通にサッカーをしてほしかった。
悔しさから下唇をかむ。
握りしめた拳を見つめていると、月乃さんが車いすを動かした。後ろに引いて、部屋に戻りましょうという声。
月乃「…今の雷門には彼の力が必要です。そして変えられるのは、優一さんだけです。…あの組織から救えるのは。」
その言葉に、俺は理解した。京介と月乃さんが、似ていると思った理由を。
同じような表情。恐らく、フィフスセクターという組織の重圧に苦しんでいたんだろう。つまり、今までの事を考えれば。
優一「1つ、質問して良いかな。」
月乃「何ですか。」
優一「月乃さんも、そのシードなのかい?」
沈黙が訪れる。
病室に到着し、俺はベッドに戻った。月乃さんの顔を見れば、ゆっくりと彼女は視線を合わせる。相変わらずの、無表情で。
月乃「私は、シードではありません。」
瑠璃色の瞳にある光は、ほんのわずかな物。
月乃「…もうそろそろ弟さんが来ますので、私は失礼します。」
頭を下げた彼女は、体を震わせていた様に思える。シードでは無い、だけど。
病室が俺1人になった直後、京介が何食わぬ顔で入って来た。
さあ……どうしようか。
優一「京介。」
剣城「兄さん…?」
俺の表情は、恐らくいつもより厳しい。京介は気付いたらしい。
さあ、どうしようか。
フィフスセクターのサッカーをやめてほしいというこの想いは、どうすれば真っすぐ届いてくれるんだろう。
**
『月乃さんも、そのシードなのかい?』
違う、と答えた本人は病棟を出た。そこで立ち止まり、振り返る。
今頃、兄弟の対話がなされているのだろう。
月乃「私は、弱い…」
結局、自分1人では力になる事が出来ない。
月乃「私は、シードではありません。」
結局、自分は弱い。再び口に出してみて、悲しさが心を支配するのを感じた。
月乃「……今、は。」
窓から、病院の駐車場を見降ろす。
そこにある1台の黒い車は、フィフスセクターの物だ。恐らく、黒木がいるのだろう。
しばらくそれを見つめてから、出入り口へ向かう。けれど、外には出ずドアの前で立ち止まった。
見つめるのは、階段。
目を閉じて、耳を澄ます。
多くの雑談する声の中、遠くに急ぐ足音。
今すぐに、階段を降り切って視界に入るだろう。
家族の為ではなく、自分の為に。それが、家族の為にもなる。
彼は気付いたのだ。
月乃「…剣城さん。」
剣城「!月乃っ…」
月乃「…すぐ、向かってくれま…」
彼女が、言葉を切る。剣城が頭を下げたのだ。
ゆっくりと頭を上げた剣城が月乃の目を見ると、瑠璃色の瞳いっぱいに彼の顔が映る。
表情には驚きがにじんでいた。
剣城「…俺はお前を、フィフスセクターに売った様なものだ…」
月乃「それは違います、私は…望んで、入ったんです。」
剣城「!?」
今度は、剣城が驚く番だった。
月乃は背を向ける。
早く、という言葉は彼に向けられたものだろう。独り言のようにこぼれた言葉、それはいつも通りの声に聞こえた。
月乃「早く…雷門サッカー部の所に行って下さい。」
桜色の髪は、周りの世界に馴染むことを拒む様で。
剣城は、なぜか走りたがる自分の足を理解できないまま、そのままに走り出す。
試合に出るため、に。シードとしてではなく、雷門中サッカー部の部員として。
**
月乃「…さよなら、雷門中サッカー部。」
これが、サッカー部員としての月乃杏樹の、最後。
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