二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
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- 聖剣の刀鍛冶 〜聖剣を打つ者と鞘を継承する者〜
- 日時: 2012/01/05 20:29
- 名前: さくら (ID: bT0lLasb)
こんにちは、さくらです!
私は、聖剣の刀鍛冶大好きで、ただ今11巻まで読んでいます。
これから聖剣の刀鍛冶の小説を書いていきたいと思います。
この物語は、聖剣の刀鍛冶小説第3巻の途中あたりから始まります。
- Re: 聖剣の刀鍛冶 〜聖剣を打つ者と鞘を継承する者〜 ( No.4 )
- 日時: 2012/04/13 20:39
- 名前: さくら (ID: adv1iRyT)
2
桜は9歳の時にアリスが発現した。以来、アリス学園に入学している。学園は、一度入れば、外界との接触を遮断され成人するまでは、家族にも会えなくなってしまうのだが、初校長を倒してからは、自宅通学が認められるようになった。だから、自宅通学者は毎日、テレポートのアリス石で自宅と学園とを通学している。
「おっはよ〜」
いつも通り元気良く挨拶をして教室に入る。
「おはよー。」「おはよー、桜。」
学園の終業式だ。
寮生は皆、大きな旅行用のカバンを持っている。
「なあなあ、桜は冬休み何すんの?」
学園の冬休みは2か月と普通の学校よりも長い。いろんなところへ出かけることもできるだろう。
だが、桜はサラリと言ってのけた。
「何にも変わらないよ。いつも通りキャンベル家の人たちと過ごす。私は、キャンベル家に仕えているから。」
「へえ〜っ。家政婦さんも大変なんやな。」
蜜柑は感心したように言う。
彼女がこの様に言うのも無理はないだろう。このアリス学園には、いろんな世界からいろんな種類のアリスを持った者達が入学している。その中には、一般市民もいれば、貴族もいるし、誰かに仕えているものもいる。そして、科学技術が発達した世界からきたものもいれば、魔法がある世界からきたものもいるし、錬金術が発達した世界のものもいる。いろいろな価値観の違いが生まれるのは仕方のないことなのだ。
「そんなことないよ。だって私、キャンベル家が好きだし、キャンベル家に使えていることを誇りに思ってるもん。」「ふうーん。なぁ、魔力の方は大丈夫なん?魔法の修行、しなあかんのやろ?」「それも大丈夫。お兄ちゃんに手伝ってもらって隠れて練習するから。」
「ふうーん。くれぐれも見つからんようにな。」
「分かってるって。」
桜には秘密があった。
それは、自分が人間ではないということ。
桜は、異世界の魔族と人間との間に生まれた者の子孫。だから、多少なりとも魔力を持っている。
いろんな世界の者達が集うこの学園では珍しくもないのだが、桜の暮らしている世界では、そうではない。魔族など空想上の存在だ。ゆえに、桜は自分の正体を隠している。
まぁ、いつかは言わなきゃならないんだけど。
そうこう思いを巡らせている間に学園の終業式が始まった。
空は冬晴れの暖かい日差しがさしている。これから、あの大変な事件が起こるとも知らないで。
- Re: 聖剣の刀鍛冶 〜聖剣を打つ者と鞘を継承する者〜 ( No.5 )
- 日時: 2012/04/13 20:40
- 名前: さくら (ID: adv1iRyT)
〜第二話 二人の大ゲンカ〜
1
終業式が終わってキャンベル家に帰るとすぐ、桜はフィオにセシリーの忘れ物を届けて欲しいと頼まれた。
桜が承諾して公務役所へ行くと、その一室から話し声が聞こえてきた。
どうやら、セシリーが報告書を書いていたらしい。 正義感の強いセシリーのことだ。今回の一件で市民が命を落としたことに心を痛めているのだろう。
桜は部屋に入ろうとしたが、それとは別の声が聞こえてきたため、なんとなく物陰に隠れてしまった。
声の主はセシリーの同僚の騎士たちだった。
彼らは、セシリー達のいる部屋に入ると口々にセシリーを罵り始めた。
「もう帰ってきやがったのか。」
「やっぱり女じゃねぇな。」
「というか、人間じゃねぇだろ。」
「奢るなよ、セシリー・キャンベル。お前は、魔剣がなければ何もできないんだからな。」
瞬間、桜は凍りついてしまった。
騎士団員は男性が多いため、少数の女性はからかいの標的になりやすいのだということはパティから聞いていた。
しかし、これほどまでにセシリーが侮辱されるなんて。
男達が去るとセシリー達の声が聞こえてきた。パティがセシリーに酒を勧めている。
ようやく緊張の解けた桜は部屋に入り、
「セシリー、いる?忘れ物よ。」と呼びかけた。
部屋の中の人物が一斉にこちらに振り向く。どきりとしたが、今聞いてしまったことは悟らせない。何事もなかったように話し、忘れ物を渡して部屋を去ろうとして、いったん立ち止まり、振り返る。
そして、忠告する。
「お酒飲みに行くなら、あまり飲みすぎないようにね。明日、二日酔いで出勤するなんて嫌でしょ?」
セシリーがアリアと顔を見合わせるのを尻目に、桜は部屋を出て行った。
本当は桜はセシリーにルークと喧嘩をして欲しくなかった。だから、そんなことを言ったのだ。セシリーとルークが出会ったのは、偶然ではなく、必然。二人はこれから茨の道を歩かなくてはならなくなる。だからこそ、二人には喧嘩をして欲しくなかった。
それに・・・。
桜には分かっていた。
二人がただの知人ではなく、浅からぬ仲だということを。
そして、二人ともまだ自覚していないだけだということも。
だから余計にけんかしてほしくなかった。桜は、二人の頑固で不器用で素直じゃない性格をよく知っていたから。そんな二人が喧嘩をすれば、なかなか仲直りできないに決まっている。
- Re: 聖剣の刀鍛冶 〜聖剣を打つ者と鞘を継承する者〜 ( No.6 )
- 日時: 2012/04/13 20:41
- 名前: さくら (ID: adv1iRyT)
2
夜、セシリーは、アリア、ルーク、リサとともに酒を飲んでいた。
舞踏会までの期日、シーグフリードの護衛をすることになってしまったセシリーは、大層ご立腹だった。
ルークとリサは、そんなセシリーの話を聞いていたが、桜の恐れていた事態が起きてしまった。
「お前は政治レベルことをなんでもかんでも個人レベルに取り違えてないか?少しは妥協したらどうだ。」
「なんだと。」
「お前は、自分の仕事を美化しすぎだ。」
「私を…、自衛騎士団を侮辱しているのか?」
「なんでそうなる?考えすぎなんだよ。お前にできることは、お前が思っているほど多くない。」
「そんなことっ・・・。」
「ちょっとセシリー。」「ルーク・・・。」
アリアとリサがオロオロするが、二人は止まらない。
「確かに私は無力だ。だが、無力であることを理由に何もせずあぐらをかきたいとは思わない!」
「その心意気は結構だがな。俺が言いたいのは、肩肘張るのもほどほどにしとけってことだ。そんなんじゃいつか潰れるぞ。」
「上等だろうが。それくらいの気概で臨むべきだ!」
「頑固すぎる!」
「それが私の性分だ!」
「かわいくないな。」
「昔の女に引きずられるような男に言われたくはない!」
「・・・何が悪い。愛する女なんざ一生に一人で十分だ。それを引きずって何が悪い。他人のお前がいちいち引き合いにするな。」
セシリーは、たまらなくなってその場から走り去った。
「セシリー!!」
アリアの声にも制止せず。
「ルーク、言い過ぎです!少しはセシリーさんの気持ちも考えてください!」
リサはルークに激怒するが、ルークは悪びれた様子もなく
「俺は本当のことを言っただけだ。それの何が悪…いてっ!!」
ルークは最後まで言うことができなかった。
なぜなら、ルークの頭めがけてげんこつが振り下ろされたから。
「何しやがるっ!!」
ルークは振り向き怒鳴ったが、そこに立っていたのは一人の少女だった。
つややかな黒い髪、まるですべてを見透かしているかのように透き通った黒い瞳の少女。
見た目は、リサと同じくらいの年頃———14歳くらいだろうか?
「サクラちゃん!!」
アリアは驚いて叫んだ。
そう、ルークを殴ったのは、キャンベル家のメイド少女、桜だった。
- Re: 聖剣の刀鍛冶 〜聖剣を打つ者と鞘を継承する者〜 ( No.7 )
- 日時: 2012/04/13 20:42
- 名前: さくら (ID: adv1iRyT)
3
「何しやがるっ!!」
「そういう言葉は、自分が何をしたかを考えてから吐きなさい。」
怒鳴るルークに桜は静かに、けれど冷ややかに言い放った。
その黒い瞳は、ルークを見据え怒りの炎がちらついている。
「サクラちゃん!!どうしてここに・・・?」
アリアが聞くと、桜は答えた。
「帰ってくるのがあまりに遅いから、心配して見にきたのよ。」
その眼光は、ルークの顔を見据えたままだ。
1時間前・・・。
桜とフィオは、夕食の支度を終えて、桜の二人の兄達は屋敷の掃除を終えて、ルーシーと一緒にセシリーとアリアが帰ってくるのを待っていた。
「セシリーもアリアさんも遅いですね。一体どうしたんでしょう?」
「多分、飲みに行ってるんだと思いますよ。私が忘れ物を届けに行った時、パティさんとそう話してましたから。」
「まぁ、セシリーがお酒を?飲んだこともないのに大丈夫かしら。」
「まぁ、くれぐれも飲みすぎないようにと言っておいたので、大丈夫だとは思いますけど。少し、見てきますね。」
そう言い置いて、桜はここへきた。
そして・・・。
「お前は政治レベルことをなんでもかんでも個人レベルに取り違えてないか?少しは妥協したらどうだ。」
「なんだと。」
「お前は、自分の仕事を美化しすぎだ。」
「私を…自衛騎士団を侮辱しているのか?」
「なんでそうなる?考えすぎなんだよ。お前にできることは、お前が思っているほど多くない。」
「そんなことっ・・・。」
「確かに私は無力だ。だが、無力であることを理由に何もせずあぐらをかきたいとはおもわない!」
「その心意気は結構だがな。俺が言いたいのは、肩肘張るのもほどほどにしとけってことだ。そんなんじゃいつか潰れるぞ。」
「上等だろうが。それくらいの気概で臨むべきだ!」
「頑固すぎる!」
「それが私の性分だ!」
「かわいくないな。」
「昔の女に引きずられるような男に言われたくはない!」
「・・・何が悪い。愛する女なんざ一生に一人で十分だ。それを引きずって何が悪い。他人のお前がいちいち引き合いにするな。」
二人の言い争いを見てしまったというわけだ。
「今すぐ、セシリーに謝りなさい!この朴念仁!」
桜はものすごい形相で怒鳴るが、ルークは不機嫌な顔をして
「なんでお前にそんなこといちいち・・・。だいたいお前は誰なんだ?いきなりげんこで殴るやつがいるかっ?!」
「人に名前を聞く時は自分から名乗るというのが礼儀というものよ。この世間知らずっ。」
そして答える。
「私は、キャンベル家に使えている使用人、渋谷桜よ。」
「私の姉に侮辱は許さないわ。今すぐ、セシリーに謝りなさい!このろくでなし!」
「だったら、お前にわかるのかよ。お前に俺の何がわかるっ?!」
「分からないわ。でも、それはあなたも同じことよ。あなたに・・・、あなたに、セシリーの何がわかるっ?!」
声に出すと、もう止まらず
「彼女がどんな子ども時代を送っていたのか、彼女の両親のこと、彼女が背負っているもの、そして、それを背負わせているのが、他ならぬあなた自身だということも。あなたはしらないでしょう!」
あなたは、知らないでしょう?「聖剣の鞘」を。それが何を意味するのかも。
そして小声で付け加える。
「まあ、その言い方は、間違っているのかもしれないけど・・・。」
すると、ルークはこちらの言動を訝しく思ったのか、低い声で尋ねてくる。
「おい、どういうことだ。あいつが何を背負ってる?俺があいつに何を背負わせた?」
「話せないわ。いつかは話さなきゃならないことだってわかってる。でも、今のあなたには話せない。いつまでたっても本気を出さず、こんな風にセシリーを傷つけてしまうような今のあなたには。」
「だけど、これだけは言えるわ。あなたとセシリーが出会ったのは、偶然じゃない、必然よ。」
そして、くるりと背を向ける。
「一度すれ違ったら最後、もう二度と会えなくなってしまうことだってあるのよ。あなたは、セシリーと会えなくなってもいいの?」
悲しそうな瞳をこちらに向けて。
「そんなことっ・・・。」
言いかけてルークは口を噤んだ。
よくない、と言おうとした自分に驚いたのだ。
「だったら、早く謝ってきなさい。なんだか嫌な予感がするの。彼女にとてつもなく大きな危険が迫ってる。」
そう言い残し、彼女は去ってしまった。
- Re: 聖剣の刀鍛冶 〜聖剣を打つ者と鞘を継承する者〜 ( No.8 )
- 日時: 2012/04/13 20:45
- 名前: さくら (ID: adv1iRyT)
4
ルーク達は、長い間、沈黙から抜け出せずにいた。
しかし・・・。
「ちょっと行ってくる。確かにさっきは俺も言いすぎた。」
そう言って、ルークはセシリーが走っていった方にかけていった。
リサとアリアは顔を見合わせた。
ずいぶん素直になったものだと驚いてしまったのだ。
一方、セシリーは、怒りと羞恥心とが入り混じった感情に心を満たされ、傷ついていた。
言ってはならないことを言ってしまったことはわかっている。
だけど・・・。
『お前は魔剣がなければ何もできない』
『お前にできることはお前が思っているほど多くない。』
同僚とルークに言われた言葉が頭に響く。
『お前は違う』『お前は無力だ』
皆がそう言う。誰もが自分を否定し、行き場のない悲しみに突き落とす。
それに、ルークは自分のすべてを否定した。
自分の存在意義、自分の性格、それら全てを。
あれは、売り言葉に買い言葉でお互い様だ。自分から謝りたいとは思えない。
「おい、セシリー・キャンベル。」
名前を呼ばれた気がして、セシリーは涙を乱暴にぬぐい、振り向いた。顔がこわばるのを感じる。
そこに立っていたのは、ルークだったから。
自分も謝らなくてはいけないのはわかっている。
でも・・・。
『頑固過ぎる!!』
先ほど言われた言葉が脳裏に蘇る。
自分の性格を侮辱した。セシリーの性格は、父親譲りだ。自分の性格を侮辱されたのは、セシリーにとって、自分の父を侮辱されたも同じことだった。
だからセシリーは謝らなかった。いや、謝れなかった。
「なんだ?」
低い声で聞く。
「なんだじゃねぇよ。いつまですねてるんだ。」
ルークは手を差し出し、
「ほら、帰るぞ。」
と促した。
途端、セシリーは頭に血が上り、気づけばルークのほおを叩き、叫んでいた。
「あなたに・・・、あなたに、私の何がわかるっ?!」
それは、いつかルークが自分に言った言葉だ。それを今、自分が言っている。奇しくも、自分にその言葉をはなったルークに向かって。
「この、朴念仁!」
セシリーは、たまらなくなって駆け出した。
「おい、セシリー・キャンベル!!」
ルークの声が背後から追いかけるように聞こえてきたが、セシリーは止まらなかった。
残されたルークはただ呆然と立ち尽くしていた。
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