二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

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黒魔女さんが通る!! 二次創作『哀しみキメラと白い影』
日時: 2014/06/06 13:53
名前: RE ◆8cVxJAWHAc (ID: nrbjfzgl)

黒魔女さんが好き過ぎて、自分でも書いてみたいと
思っちゃいました(テヘペロ


暇な人は読んでくれると嬉しいです
コメントくれるともっと嬉しいです
間違いとかはどんどん指摘してください

コメント貰えると更新が早くなるかもしれません
無いと寂しいです

今更ですがタイトル考えてみました


ギュービッドさま、アニメお疲れさまでした( *`ω´)


追加:コメントより
・どこまで過ぎたか…?えっと、じゅ、12?かなっ?
・この先ちょっとグロくなるかもしれない。でも、本家読めるなら多分大丈夫。
・オリキャラ、オリジナル魔法・アイテム有り。


その1 >>01
その2 >>05
その3 >>09
その4(1) >>14 (2) >>15
その5 >>17
その6(1) >>18 (2) >>21
その7 >>24
その8 >>25
その9 >>26
その10(1) >>27 (2)>>30
その11 >>39
その12 >>58
その13 >>64
その14 >>72

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その4 (1) ( No.14 )
日時: 2012/07/14 15:39
名前: RE ◆8cVxJAWHAc (ID: A7lopQ1n)

「死者の匂いが近付いているよ。黒鳥さん、気をつけて…」
「え?」
一瞬、鉄錆のような匂いが、ツンとあたしの鼻をついた。



目を開けると、見慣れたベッドの模様が視界に入った。
ありゃ?大形くん、あたしの部屋に飛んできたんだ。
それより、死者の匂いって、何?
…って、大形くん、いないし!どこ行ったのよ!
あたしは部屋中をキョロキョロ見回す。
多分まだギュービッドは帰ってきてない。ベッドは朝掃除したときの、ピシッとした姿を保っている。
ギュービッドが帰って来てたら、多分すぐゴロンて寝っ転がるハズだし。
うーん…。
ギュービッドと桃花ちゃんがずっと居ないのと、大形くんがギュービッドの名前を出したこと。
それに、5年1組の異常な静けさもきっと関係ある。
何か起こってる。絶対。
あたしは何をするべき?
「……。」
…とりあえず、何が起こっても良いように、ゴスロリに着替えておこうっと。
そう思って、クローゼットを開けた途端、
「おおっ!チョコぉ!帰ってたのかっ!」
うわあ、びっくりしたぁ!
窓がガラバーン!と勢いよく開いて、ギュービッドが飛び込んできた。
「なんだよ、折角学校に迎えに行ってやったのに!帰ってるなら先に言えよ!」
ギュービッドがお怒りモードで叫んでくる。
いや、あたしケータイ持ってないし。ギュービッドさまの番号も知らないし。
ていうか、窓をそんなに強く開けないでよ。二階に誰かいること、ママにばれちゃうよ。
「ママさんは買い物に行ってるぞ」
あ、そう。
「とにかく、自分から帰って来たってことは、異変には気付いてんだろ!さっさと着替えろ!モリカワへ行くぞ!…って、桃花もいねーのかよ!」
「異変…」
ああ、やっぱり何かあるんだね。今度は何が起こるのやら…。
あたしは、言われた通りゴスロリに着替え始める。
その間も、ギュービッドはそわそわと窓の外を見たり、部屋中をぐるぐる歩き回ったり、落ち着かない。
やめてよ、焦るとボタンが留めにくい…。
「ねー、ギュービッドさま、今度は一体なにが起こるの?」
あたしが我慢出来ずに尋ねると、ギュービッドは窓の外を覗いたまましっしとこちらに手を振った。
「あとで、あとで!それより早く着替えろっての!」
あとでって…すごく気になるじゃん。
まあ、モリカワで訊けばいいか。
「早くしろー」
ギュービッドが振り返って急かしてくる。
あーもう、うるさい!これでも急いでるんです!
パニエを付けて、あとはヘッドドレスを…。
「おねえちゃんッ!!!」
「うわぁ!?」
再び窓がガラバーン!と音を立てて開いて、今度は桃花ちゃんが飛び込んできた。
そんなに何度も勢いよく開けたら、割れちゃうんですけど…。
「こらぁ!桃花!」
ギュービッドはというと、窓を背にして立っていたせいで、桃花ちゃんに背中に体当たりされて、うつ伏せにぶっ倒れている。
「すいません先輩!でも大変なんです!おねえちゃん、大形の居場所知りませんか!?」
大形くん?家に帰ったんじゃないの?
「あたしも先輩を追いかけて、大形を迎えに行ったんです!でも、5-1の教室にはいないし、家にもいないし。てっきり先輩がおねえちゃんと一緒に連れて帰ったのかと思ったんですけど…ここにも居ないみたいですし」
部屋を見回しながら桃花ちゃんが言う。
「あたしは連れて帰ってきてないぞ。てか、チョコは自分から帰ってきてたし」
ギュービッドが背中をさすりながら立ち上がった。
「そうなんですか!その時大形は教室にはいましたか!?」
いやいや、居たけどさ…。
「あたし、大形くんにここに連れて来られたんだよ。いきなり瞬間移動魔法使われて…」
大形くんも家に帰ったんだと思ったんだけど、違うみたいだね。
大形くんが行方不明…なんかまた大変なことになってきたよ。
異変って、これのこと?ぬいぐるみの力が弱まってきてるとか。
あたしの言葉を聞いて、ギュービッドと桃花ちゃんが固まった。
ついでに桃花ちゃんの顔がみるみる青ざめていく。
「…んだとおいおいまじかよっ」
ギュービッドが頭を抱える。
あれ?ギュービッドが慌ててたのって、これのことじゃないの?
「はぁ…また協会のお叱りを受けるのは嫌です…」
桃花ちゃんがなにか呟きながらがっくり膝をついてうずくまった。えっと、桃花ちゃん大丈夫?
「ああぁのトラブルメーカー!!騒ぎに便乗して脱走とはいい度胸してんじゃねーか!!」
ギュービッドがブチ切れた。…どうでもいいけど、大形くん、多分ギュービッドにはトラブルメーカーとか言われたくないと思うよ。
あたしが頭のなかでこっそりそんな事を考えていると、ギュービッドの怒りの矛先はあたしの方を向いた。
こっちを指さして怒鳴ってくる。
「つーかチョコ!なんで大形止めないんだよっ!瞬間移動魔法なんか使ったら、いくらなんでもおかしいって思うだろ、普通!…あれか、またなんか変な嘘つかれて利用されたんだろっ!」
いやいやいやいや。だっていろいろいきなりで何がなんだか…。
「ちょっとまってよ、なんか置いてきぼりなんだけど。あたし、まだ、大形くんがどっか行っちゃった事しか知らないんだよ」
そんな状態で何を言われてもイマイチついて行けないよ。
「…あー、そうだっけか…しゃーない、とりあえずモリカワへ行って、黒雷達に合流しないと…」
ギュービッドは決まりが悪そうな顔でそう言って、窓の外を覗きこんだ。
あたしはまだ突っ伏している桃花ちゃんを起こしにいく。
「桃花ちゃん…えっと…大形くんのこと、止められなくて」
「大丈夫です、おねえちゃんのせいじゃありません」
桃花ちゃんはそう言って、ばっ、と上半身を起こした。
「大形…今度こそ許しません!見つけたら、ダイナマイトだけじゃ甘いです!」
ピンクの目に炎が宿ってる。うん、その方が桃花ちゃんらしくていいけど、勢い余ってダイナマイトを直にぶつけちゃ駄目だよ。
「おー、桃花、復活したか。じゃ、急いでチョコのパパさんとママさん用の黒魔法を仕掛けてこい。また何日か人間界に帰れなくなるかもしれないからな」
ギュービッドがニヤニヤしながら桃花ちゃんに言う。
って、ええーー!!あたし聞いてないよそんなこと!
「ふん、もう無断外泊は慣れっこだろ、ギヒヒヒヒ」
無断外泊とか言わないでください。好きでやってるんじゃないです。
「まあまあ、おねえちゃん。ちゃんとばれないようにして来ますんで、安心してください」
桃花ちゃん、さっきの顔色はどこへやら。基本、あたしの周りの黒魔女達はポジティブな人ばっかりです。
「では、ちゃちゃっとおねえちゃんの替え玉を」
「あ、ちょっと待った、桃花」
窓の外を覗きながらギュービッドがストップをかけた。
「チョコ、外見てみろ。ハデハデ女が来てるぞ」
え?メグ?なんで?
あたしが大形くんに飛ばされたのは、二時間目の後だよ。まだ学校は終わってないはず。
あ。
「まさか、瞬間移動するとこ見られちゃったとか…」
それで、あたしの事を探しにきたのかも。あたしが家にいるとも限らないのに。
「それなら、記憶を消すのに都合がいいぜ。わざわざ消されに来てくれるとは、あいつもなかなか気がきくな」
そういうわけでもないと思うけどね…。

その4 (2) ( No.15 )
日時: 2012/06/17 00:19
名前: RE ◆8cVxJAWHAc (ID: A7lopQ1n)

「ふっふーん、そう、あたし、気が利くのぉ!」
うわああ!?
振り返ると、いつのまにか部屋のドアが開いて、メグが立っていた。
え?メグ、玄関の鍵は?掛かってたはずだよね?
ちらっと部屋にいる黒魔女達を見ると、2人とも目をまん丸くして固まっている。
「あー、モモちゃんだぁ!大形くんの妹ちゃんだよね!可愛い!あたしの方がちょっと勝ってるけどね〜」
メグはいつもの調子でニコニコしている。
えーと…。
「メグ、何の用?まだ学校終わってないよね?抜けて来ちゃって良かったの?」
「いいんだよ、三時間目は自習になったからぁ。松岡先生ったらぁ、二時間あのクラスで授業して、心が折れちゃったみたい〜」
うん。ギャグどころか回答指名にも全くと言っていいほど反応無かったからね!あれは誰でも、授業なんてやりたくなくなります。
あたしがうんうん頷いていると、ギュービッドが背後で溜息をつくのが聞こえた。
「チョコ、そんな話はいいから。記憶消すぞ」
後ろからあたしに耳打ちしてくる。そんなこそこそ言わなくても、メグには見えてないのに。
「あ!そうそう!チョコ、あのね!」
うん?
「チョコの後ろにいる、頭良さげな美人さん、だあれ?」
あー、これは、…え?
「…っあ、あたしは、魔界一頭が良くて美人な黒魔女ギュー…あ?」
‘頭良さげな美人さん’に反応したのか、急いで胸を張って自己紹介を始めたギュービッド、あたしと同じく言葉が止まる。
桃花ちゃんもキョトンとしている。
あたしも状況がよく分からないよ。どういうこと?メグ、ギュービッドが見えてるの?
「ギュー…えっと、何?牛丼?わかんないけど、いっかぁ!!」
メグは勝手に納得して、その場でくるくるまわる。ちょっと待って、テンションに付いて行けない…。
「お、おい、ハデハデ女!おまえ、どういうことだっ?おまえにも、インストラクター魔女が付いたのかっ?」
ギュービッドの声が裏返っている。
メグはそれを聞いた途端、ピタッと回るのをやめて、こっちを向いた。
「んふっ、違うよぉ!危ない危ない、用事をわすれるとこだったぁ!」
そう言って、両手を真上に突き出した。
「ルキウゲ・ルキウゲ・ーーー…」
呪文の最後の方は、よく聞き取れなかった。
ただ、メグがいきなり呪文を唱え出したことにびっくりして、一歩後ずさった途端、足元の感覚が無くなった。
背中に感じていたコートの感覚も、一瞬遅れて消える。
そして、ぐにゃんと、視界が、メグの顔が、曲がった。
まるで、笑ってるみたいに。
そのまま、あたしの意識はブラックアウト…。

Re: レモネードさん・アゲハさん・ネコさん ( No.16 )
日時: 2012/06/17 18:13
名前: RE ◆8cVxJAWHAc (ID: A7lopQ1n)

コメントありがとうございます。
頑張ります〜

その5 ( No.17 )
日時: 2012/08/05 23:33
名前: RE ◆8cVxJAWHAc (ID: A7lopQ1n)




「……ーっと……い丈夫?…起きてよー!」
目を開くと、目の前に揺れる人影。
いや、あたしが揺れてるんだ。誰かがあたしの身体をがくがく揺すっているらしい。
これは…どういう状況だ?なんだか頭がぼーっとする…。
えーと、さっきまで、あたしは…、チョコの部屋にいて…ハデハデ女が訪ねてきて…いきなり…。
「…ぉおおあああ!!?」
状況を思い出し、思わず大声を出してがばっと起き上がる。一体あの後どうなった!?ハデハデ女は何をした!?チョコは?桃花は?
「あっ…えっと、ギュービッド、大丈夫?」
あたしを揺すっていた人影は、ひょいとあたしの顔を覗き込む。
学生だった頃から見慣れてる、赤毛の三つ編みと、そばかすの可愛い顔…。
「……森川!?」
「うん。ギュービッド、どうしたの?なんでこんなところでお昼寝してたの?」
森川は心配なのと、呆れてるのとが混じったような顔をして、あたしを見つめてくる。
なんで、は後で話すとして、まずは。
「…森川、ここ、何処だ?」
「……ギュービッド、本当大丈夫?」
「いや、まじでわかんないんだけど」
辺りをキョロキョロ見回すと、どうやら森の中っぽいけど…。
「…魔界か?」
「ええ…まあ、そうね。魔界だけど」
「悪いもうちょい詳しく」
「魔界か?って言ったのはギュービッドじゃない…。えっと、火の国の森の中よ。もう少し行けば“森川瑞姫の店”があったところ」
ふーん…。
あれ?そういや…。
「…何であたしは魔界に来れたんだろ」
「え?どういうこと?」
あたしの呟きに、森川が反応する。
「は?知らねーの?」
「えっと…うん」
森川はしまった!というような顔をして、それから決まりが悪そうに眉をひそめた。
あたし何か変な事言ったか?…まあいいや。
「んー…、昨日から瞬間移動魔法に変な妨害が入っててさ、魔界と人間界の移動がうまくいかなくなってたんだよ」
「…そうなの?なんで?」
「知らん。で、悪魔情に何とか繋いでもらって、チョコ達と一緒にこっち来ようと思ってたんだよ。黒雷と桜田は人間界のモリカワにいるはずだけど」
「そうなんだ…。私、ここ3日はずっと魔界に居たから、全然知らなかったわ」
ふーん。
「3日も魔界に居て、モリカワほっといていいのか」
「モリカワは大丈夫!暗御留燃阿さんに預けてあるから」
そうか。まあ、暗御留燃阿に預けてあるなら確かに心配はいらないな。
「それで、ギュービッド、黒雷達は何処に飛んでくるのか知ってるの?」
「いや…あたしらもモリカワから一緒に来るハズだったから、全然」
悪魔情が何処に繋ぐつもりだったのかも聞いてないし。
「じゃあ、とりあえずこっちの“森川瑞姫の店”に行ってみたら?」
そう言いながら、森川は立ち上がった。
あたしも釣られて立ち上がる。あ、良かった、身体は普通に動いた…。
「“森川瑞姫の店”?だってあれもう、残骸だって片付けたんだろ?地下室だって埋められちまったんじゃないか」
「大丈夫!ほらあっち」
森川があたしの背後を指差した。
振り向いて指差している方に目を凝らすと…。
「…いや、なんも無えぞ」
見えるのは森の木々ばかり。
「ちょっと坂になってるから見えないだけよ!この先に“森川瑞姫の店”の跡地があるから、真っ直ぐ行って」
はあ?
「跡地って、そりゃそこにあるんだろうけど、行ってどうすんだよ」
森川に背を向けたまま訊いてみる。
返事は無い。
「…森川、おい行ってどうするんだって」
言いながら振り向くと、森川がいなくなっていた。
…は!? なんで?どこ行った…?
辺りを見回しても、森川の姿は見えない。
瞬間移動魔法の呪文は聞こえなかったのに…。
「…訳わからんことが多すぎるだろ」
チョコと桃花の居場所は分からないし、ハデハデ女の正体も謎だし、森川も何処かへ消えちゃったし。
心配して慌てようにも、何をどうすればいいのか分からないから、慌てようが無い。
「どうすりゃいいんだ…?」
…まあ、立ち止まっててもしょうがないよな。
ため息をついて、あたしはとりあえず“森川瑞姫の店”跡地に向けて走りだした。



「…何処ですかここはーーーーーーーーーーーーーーッ!?」
目を覚ましたあたしは、辺りをキョロキョロ見回して、開口一番そう叫びました。
叫んだ後に我に返って、深呼吸して落ち着きます。パニックは良くありません。周りが見えなくなります。
あたしが居るのは、どうやら森の中のようです。魔界植物がちらほら見受けられるので、多分魔界のどこか。
近くにおねえちゃんと先輩は見えません。
「…どうしましょう」
なにか行動しようにも、何が起こったのか全く判らないので、動きようがありません。
おねえちゃんの友達らしい少女、またはそれに化けた魔法使いは一体何をしたのでしょう。
黒魔女初段のあたしでも、複数人の黒魔女を、触れずに魔界へ強制送還する魔法なんて聞いたことがありません。
しかもあのとき、浮遊感の他にも、何か気持ち悪い違和感を感じました。これはきっと、今回の大騒ぎにも関係あるはずです。
どうにか先輩やおねえちゃんと合流して、何が起きているのか調べなくては!
「……ーい」
…ん?
何か声が聞こえたような…。
「…えて……かー…」
な、ななな、誰ですか!?
こ、答えろ!さもないと…。
「…うわわわゎ!やめて!落ち着いてください!こんなところで危険物を投げちゃダメですよ〜!」
草むらから何かが飛び出して、ダイナマイトを取り出したあたしの周りをぐるぐる飛び回ります。
まんまるい赤ちゃんみたいな可愛い顔。ちっちゃいけど、悪魔みたいな真っ黒ずくめの…。
「“悪魔みたい”じゃなくて、悪魔です!おいら、悪魔情っての。悪魔が苗字で、情が名前ね。そこんとこ、よろしく!」
悪魔情はあたしの目の前で飛び回るのをやめて、ニコっと笑う。
…はぁ。で、どうしてここに?
「そんなの、探しに来たに決まってるじゃないですか!」
探しに来た?
「そうですよ〜!モリカワで皆さんを待ってたら、チョコさんちの方角から凄く大きな魔力を感じて、急いで向かってみたら、誰も居ないし魔力の残り香がなんか凄く嫌な感じだし黒雷さまも嫌な予感が、あ、黒雷さまも一緒に来てたんですけど」
「ちょっと、もう少しわかりやすく…」
そう言っても大して変わらず、早口大声で聴き取りにくい説明をまとめると。
・黒雷先輩、桜田先輩、暗御留燃阿先輩、森川先輩と一緒に、モリカワであたし達を待っていると、おねえちゃんの家の方角から大きな魔力を感じた。
・悪魔情と黒雷先輩はおねえちゃんの家まで様子を見に来た。
・おねえちゃんの部屋には誰も居なかったが、魔法が使われた痕跡はあった。
・残り香が消えないうちにと、急いでモリカワに戻り、暗御留燃亜先輩以外全員で魔界へ移動した。
「ちなみに、暗御留燃亜さまは店番&人間界の見張りとしてお残りになりました」
やっと落ち着いたのか、補足説明をする悪魔情。
「でも、あたしの事、よくあっさりと見つけられましたよね」
「あぁそれは、ちゃーんと跡が残っていたんです。大きな魔力を使用する魔法は、それだけ痕跡も深く残るんです。それを辿るための魔アイテムを森川さまが持ってたんですよ〜」
悪魔情は、虫眼鏡のような物を取り出して、あたしの目の前で振ってみせました。
「じゃあ、おねえちゃんや、ギュービッド先輩の居場所も判るんですね?」
「お二方の片方は大丈夫です、同じように跡を見つけたので、黒雷さまが向かいました」
でも、と悪魔情は表情を曇らせます。
…まさか、もう片方に何か?
「はい、二つしか跡は見つかりませんでした。チョコさまとギュービッドさま、どちらが見つかっていないのかは分かりませんが…」

その6(1) ( No.18 )
日時: 2012/08/19 22:44
名前: RE ◆8cVxJAWHAc (ID: A7lopQ1n)




目を開くと、紫がかった深い色の空が見えた。
ぼーっとしたまま上半身を起こして、座ったまま考え込むこと数十秒。
さっきまでの事を思い出して…。
「…っわああ!!!」
うん。ばっちり目が覚めた…。
あたしは急いであたりを見回す。
一方には赤茶色の荒野、一方には黒々とした森が見える。あたしが居るのは、森と荒野の境目みたい。
ギュービッドと桃花ちゃんはどうなったんだろう。飛ばされてきたのはあたしだけかな…。
それにメグ、よくわからないけど一体どうして、呪文なんか。まさか、大形くんみたいに、誰かに無理やり黒魔女にされちゃった…とか?
とりあえず、あたしはどうすればいいかな。多分、魔界のどこかに居るんだと思うんだけど。
「………。」
もう一度辺りをきょろきょろ見回す。ほんとに何にも無い。森は真っ暗だし、荒野は、岩がまばらにあるだけ。
森に入っても荒野を歩いても、多分迷子になるよね。
「こういう時は…」
あたしは、木の枝を拾って、地面に垂直に立て、指で支える。
「ルキウゲ・ルキウゲ・アドラメレク!どーちらにしようかな!」
運気上昇魔法。こういう時に効果があるのか分からないけど、的確な方向を示してくれる確率は上がる…と思う。多分。
言い終わると同時に、あたしは枝から指を離した。
支えを失った枝が倒れた方向は、右。
そうそう、それでいいよね。森に進んでも荒野に進んでも迷子になるなら、境目をずっと歩いていこう。
「頑張れ千代子!!立ち止まってても何も解決しないぞ!!」
大声で不安な気持ちを誤魔化し、あたしはずーっと続く赤茶と黒の境い目に沿って歩き出した。



森川が言ってた跡地は、すぐに見つかった。
地面と周りの木々に、ちょっと黒いコゲが残ってる。
まあ、それはいいんだけど…。
「なんだこりゃ…」
店の跡地の隣に、シンプルなログハウスが建っていた。
森川がここに行けって言ってた理由は、これか?
あたしは、ログハウスの扉をノックする。
「はいはぁーい」
中から間伸びした声が聞こえてきて、扉が開いた。
長い睫毛、ピンクのチーク、ぐるんぐるんに巻いた金髪が扉のスキマから顔を出す。
「桜田か。お前らちゃんとこっち来れたんだな」
「ギュービッド!無事だったのねぇ!!良かった、心配したのよぉ〜」
大きなピンクの目がぴかぴかしてる。
「悪い、何か妙な事になっちまった」
「とりあえず、合流できて一安心よぉ。さ、入って」
桜田にコートの袖を引っ張られて、あたしはログハウスの中に入る。
「うわ、すげーなこりゃ」
ログハウスの中は、壁に沿って木箱とか袋とかがごちゃごちゃ積み上げられてる。なんか、ちょっと衝撃を与えただけで崩れ落ちそう…。
部屋の中央には、小さなテーブルと、チェアがいくつか。淡い水色のテーブルクロスがかけられている。
…何だここ?
「森川がね、“モリカワ”の売り上げがなかなか好調だからぁ、在庫を置いておける倉庫を建てたらしいのよぉ」
部屋を見回すあたしに、桜田が説明してくれる。
じゃあこの積み上がってるやつは全部商品か?すげえ。
「倉庫だけど、一応生活はできるようになってるのよぉ。奥の部屋にベッドもあるしねぇ」
ふーん。じゃあ森川のやつ、今日までここに居たのかな。
「なにそれぇ。森川はずっと“モリカワ”に居たわぁ。在庫整理は、時々、暗御留燃亜がやってたみたいよぉ?」
……は?
「ちょっと待て、どうなってんだ」
「何が?」
あたしは、桜田に今までの事を話した。森川に会ったこと、森川に言われたこと。
「うそぉ、森川は行き先不明の誰かを捜しに行ったわよぉ。偶然会ったっていうなら、嘘つく必要は無いし。ちょっとホントに妙なことになってきちゃったわねぇ」
行き先不明?誰だそれ。
「消えたギュービッド達を捜しに行ったのよぉ。2人分は見つけたんだけど、後の1人は手掛かり無いのよねぇ。ギュービッドがその行き先不明さんだったら、手っ取り早いんだけどぉ。とりあえず、黒雷に電話して訊いてみれば?」
あ。なるほど。バタバタしててケータイの存在をすっかり忘れてた。
あたしは魔界ケータイを取り出して、黒雷のケータイにかける。
呼び出し音が止まって、繋がったと思ったら、
『おいこらギュービッド!ケータイあるならそっちからかけろよ!繋がんねーから何かヤバい事になってんのかと思ったじゃねーか!!』
いきなり怒鳴られた。
「あはは…わり、忘れてた」
『ったく…で、お前は無事なんだな?何処に落っこちた?』
「モリカワ倉庫がある森の中」
『あたしが追ってんのはお前って事か…。で、今何処だよ』
「モリカワ倉庫」
『お前な…』
いやほんと、なんか、ごめん。
『まぁ、無事に着いたんなら、いいや。あたしもそっちに戻る』
そう言って、いきなりプツンと電話は切れる。
切るなら切るって言えよ…。まあ別にいいんだけど。
ケータイをコートのポケットにしまうと、桜田がマグカップを手渡してきた。
「お、サンキュ」
「ミルクティーよぉ。…黒雷は何て?」
「こっち戻って来るって。行き先不明者はどうやらあたしじゃないらしい」
「そっかぁ。…心配ね。あとの2人…」
桜田の言葉に頷いて、あたしはマグカップの中身を一口。
…とりあえず、黒雷が戻って来たら、あたしも捜しに出かけるか。


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