二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

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トゥモロー・ガール【鋼錬】
日時: 2012/08/04 13:11
名前: サチカ ◆iYEpEVPG4g (ID: IGAMlEcf)


 ◆index◆◇◆ ———————————————————————————————

始めましてこんにちは、サチカと申します(´・ω・`)
タイトルがなんか聞いたことあるぜよって方は使い回しだとも考えてください。
シリーズ物にしようかなあと考えていますがいまのところどうなるかは不明です。
まだまだ至らぬ点もあるかとは思いますが、どうぞお楽しみください。

   トゥモロー・ガール / サチカ


 ◆up date◆◇◆ ——————————————————————————————

H24現在
 
7・30 スレ建設 回転寿司たべたおいしい


 ◆about◆◇◆ ——————————————————————————————

当スレは鋼錬を取り扱う夢小説です。
原作者様、出版者様及びその他関係者様とは一切関係ありません。
無断転載は禁止です。ご理解ください。最低限のマナーやルール・掲示板の規約は守りましょう。
また、この小説には一部残酷な表現が含まれています。
程度の軽いものですが、苦手な方、及び無理な方はバックプリーズ。上記のことを踏まえてお進みください。


 ◆novel◆◇◆ ———————————————————————————————

こちら、現在執筆中の長編の見開きメニューになります
※お話は時系列順が異なる場合があります

 
ヒロイン紹介 >>


00/母娘おやこ >>1



 ◆short◆◇◆ ———————————————————————————————


ブルー・バードに愛と夢と絶望を/見当ちがいのホラ吹きめ/終焉グッドナイト
牡丹にくちづけ/アンダーストゥッド・ユー/愛しているのは自分だけ
溺れる淡水/セカンド・ストーリィ/マザーグースの子守唄
水晶体に視る青/愛恋アイデンティティ/つめたい遺骸/ミルクココアを
透明な花/きっと捨て駒にすらなれない/さまよえる槐樹/篝火より終末を埋める
セピアの街灯/ポルックスの消失
太陽の瞳に初夏は焦がされ/夜明けまで、あと//愛を片手に飛び降りて


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Re: トゥモロー・ガール【鋼錬】 ( No.1 )
日時: 2012/07/30 05:07
名前: サチカ ◆iYEpEVPG4g (ID: IGAMlEcf)



00 母娘おやこ






 おかあさん、そう枯れた声で叫んだけれど母は鬼のような形相でこちらを一瞥して名も知らない男の車に乗り込んだ。きらきらと陽のひかりに輝く銀色の大きくて綺麗なそれはいつも母を連れて行ってしまう。殴られても蹴られても何されたって母が一番大事で母はわたしの世界で唯一無二の存在だった。
そして帰ってくるなり部屋でぽつんと座っているわたしを見て死ねだの産まれてこなければ良かっただの暴言を吐き掛けて疲れて飽きたら眠りに付く。わたしにはベッドなんてそんな代物は与えられていなくて、凍える冬でも冷たいフローリングの床で母の視界に入って機嫌を損なわないようにと部屋の隅で縮こまって寝た。

もし運悪く部屋の真ん中で寝ていたりなんかしたら、それでいて申し分程度のタオルでも被って寝ていたら、腹を蹴られて起こされて、ベランダに突き出されて放って置かれる。どんなに寒くてもずっと。ベランダは狭いから横になることもできない。ただ突っ立って夜を過ごすのだ。雨の日は絶え間なく冷たい水が降り注いだ。
それでもわたしは母に嫌われることの方が怖かった。最初から愛されてなんかいなかったのにね、産まれてくる前からずっと。今思うとそんな悪い環境の中で何故わたしが生きていられたのかは疑問だ。むしろ、その時死んでいた方が良かったのではないかと思う。

 ただしこれはわたしが不幸だったころの最後の記憶だ。ある日を堺に母の態度は和らいでいった。ベランダに出されることもなくなった。母は何処へも出掛けてはいかなくなった。ずっとずっと、優しく手を握りながら眠る前は子守唄を歌ってくれた。果てには手を繋いで遊園地に連れて行ってくれたり、旅行に行って美味しいものを食べたりした。
そんな母の豹変ぶりに最初は驚きを隠せなかったが、楽しく暖かい日々を過ごしているうちに、それはどうでも良くなった。そしと同時に、「あの頃」の記憶だって薄れ始めた。学校へ行って、友達ができて、当たり前のようにこの幸せが続いていくのだと思っていた。

————だって、ぜんぶぜんぶ、夢だったものね。

 ぱちん、と何かがはじけるような音がした。其れは正に、白昼夢の終わりだったといえよう。さっきまで、白熱灯の灯っていた、炬燵があって、できたてのシチューが置かれていたその部屋。なのに。消えかけの蛍光灯が耳障りな低い音を鳴らす。消えては時折思い出したかのように光る。この広く暗いリビングルームの光景ほど、幼いわたしが恐れたものはなかった。視点が低いと思えば、掛けていた眼鏡もどこかへ消えている。そうして手を見てから、ああ「戻ってしまったのだ」と。違う、戻ってしまったのではない、だって今までの事なんて、最初からありもしなかった絵空事なんだから。

母が立っている。わたしの目の前で。金色できれいな髪をしていて、そして特別蔑んだ目で、死ねとも言わんばかりのその形相で。

「お母さんはなんでわたしを産んだの?」
「お母さんなんて呼ぶな!」
「お母さんはわたしのことが嫌いなんでしょう、だから憎いのも酷いことするのも当然だとわかるけど、わたしは今までずっと優しい夢の中のお母さんが大好きだった」

「黙れ!お前なんか生きてても何の役にも立たない、私を苦しめるだけ! ただの重荷なのよ! 私はあんたなんかいらない! 」

「夢の中のお母さんは、わたしを世界で一番愛してるって言ってた。だから勘違いしてたの。お母さんはきっとわたしを愛してくれているって。でもね、そんなのお母さんじゃない。お母さんの言葉じゃ、ない。」
「わたしのお母さんは、今此処にいる、お母さんしかいない。だから、」
    
「お母さんなんて、大嫌い」
     
 生暖かいものが頬をつたう。途切れてしまった何か。大切だったはずの何か。次第に感情は消え失せて、あたたかかった夢の中の母でさえもきえてしまった。わたしにははじめからなにもなかったのだという虚無感と、ただただ朝もやのかかったような悲しみだけが残された。

——最初からわかっていたのに、おかあさんは、あのひとは。

重荷で、不要で、邪魔で、痛くて、憎悪と嫌悪とかなしみの他に、わたしにひとつたりとも他の感情を抱いたことなんてなかったって。人生の中で最初で最後の、最愛の人は何処にも居はしなかったって。


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