二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
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- fortissimo Akkord:参戦者募集
- 日時: 2011/11/27 12:58
- 名前: 冒険者 ◆6ITp4OKtkc (ID: Y8BZzrzX)
- 参照: http://lacryma.info/fortissimo/top_b.php
ととものが詰まってしまいもう新しいもんでも書いて詰まるのを解決しようと言うとんでもない理由で作られた小説がこれでございます。
はじめましてみなさんこんにちわ。気まぐれ初心者痛い子こと冒険者というます。なんでか詰まるたびに新しいもんを作りまくる俺ですが、これはお気に入りの世界観なんで多分飽きないかな……。というわけで、今回はフォルテシモアコルドビーサスフィーアというパソコンのギャルゲーを基にしたオリジナルの小説を気まぐれで書こうと思います。
簡単にいえば、知ってる方は知ってるかと思いますが、フェイト・ステイナイトのようなゲームです。13人の召喚せし者(マホウツカイ)が舞台でバトルロワイヤルをするというお話です。といっても俺は友達の話をのぞいてふむふむ言ってただけなんで詳しくは知りません。原作破壊覚悟してますw。URLにそのホームページを乗っけときましたので行ってみると読みやすくなるかな……できるだけわかりやすく書くつもりですが!用語集はそこにありますのでそこを参考にして下さい。
基本キャラは別行動で、オリジナルの主人公が適当に観戦したり乱入したり遊んでたり特定のキャラに味方したりと色々壊れます。シナリオも後で分岐します。しかも主人公最強伝説を顕現してみたり!というある意味もう暴挙のような小説ですが、それでもよければ読んで下さい。文章力は紙です。雑魚です。底辺です。
ってなわけで、オリジナルの参戦者もう募集しちゃえと。5名ほど。
多少強くてもまぁそういう話なんでもうおk。原作を無視しない程度なら俺の腕で頑張って小説内で暴れて……もとい、活躍してもらいます。
じゃあ早速募集の紙を…。能力とかもHP参考にお願いします。強すぎは制限をかけさせてもらいます。ちなみに死ぬときは死にます。殺されます。それでもよければお進み下さい。
名前/読み
性別
年齢
外見
性格
基本ステータス Sが一番高いが全てSは理論上無理。
破壊力
スピード
射程距離
持続力
精密動作性
魔力総量
成長性
基本能力 詳しく説明。多少現実をぶち壊してくれた方が分かりやすいっす。ですが度が過ぎないように。
アビリティ 特殊な能力がある場合、ここに明記してください。
必殺技 切り札の名前。これも必須に明記頼みます。
戦略破壊魔術兵器 簡単に言うと武器。必ず召喚せし者には存在するので必須。
詳細 その他、用語集などに載っていることで追加したいことがあれば。後はどういういきさつでこれに参加した、などは必要なのでお願いします。
一人称
人間関係 これもあると助かります。必須ではありません。
死んでもいいですか? 死んでも生きてもどちらでも。
サンプルボイス
最後に。ここに参加する方は大体舞台の学校で過ごしている方か、何か用事でこの島に訪れている方になります。主人公はここにすむ家族のところに着ている設定っす。それでは、まずは主人公紹介と行きましょう。
- Re: fortissimo Akkord:参戦者募集 ( No.16 )
- 日時: 2011/12/06 14:17
- 名前: 冒険者 ◆6ITp4OKtkc (ID: Y8BZzrzX)
絶対者
「……おい、汰癒」
「何?」
「これ、どういう効果付与されてるんだ?」
「絶対破壊」
「はい?」
「触れた対象物をぶち壊す」
「絶対にか?」
「そう」
「でもあの斧壊れてないぞ?」
「あれの概念は絶対壊れないこと。概念同士のぶつかり合いの場合、弱いほうが消滅するから、今は始原の斧の概念が消えてる状態かな」
「ほぉ……詳しいな」
「『召喚せし者』の人たちの知識を吸収しただけだよ。説明してるだけで意味わかんないし」
「ダメだろ!」
「無茶言わないでよ!私一般人なんだよ!」
「……何なんだテメエは!?」
巨漢が起き上がる。体のあちこちから出血が確認でき、しかもへろへろのような状態。魔力切れを起こしているようだ。だが巨漢は信じない、己の敗北を。対する青年はケロリとその巨大な塊を肩に担ぎ、虚空と喋っている。もう轟木鋼のことなど目に入ってないように。
「うるせえな」
青年の姿が掻き消えた。一瞬の煌きの後、鋼の絶望の声が響く。
「ぐああああああ!!!」
エッケザックスを持っていた右腕を、当夜が踵落としで骨を踏み砕いた。骨の砕ける鈍い音も僅かにあずさの耳に入ってきた。
「お兄ちゃんは元々感情の起伏が異常に激しいから」
「?」
唐突に真由が独白のように語りだした。視線は鋼と当夜に向いたまま。
「お兄ちゃんは普段なら、争いを好まないし、戦うとしても自分がまず降参するような、人から言えば卑屈とかヘタレとかいう性格だけど……だけど」
とそこで区切り、重い溜め息を吐いた。
「一度感情の沸点に達すると暴走する。
あんなふうに、弱者をいたぶる様なことも平気でする。
自分が味方すると決めた相手には、裏切られない限り敵対なんてしない。
お兄ちゃんは死なないから……自分の命なんてどうでもいいの。というか、お兄ちゃんに『命』なんて概念は存在しない」
と、ここでくるりと振り返る。悲しみを浮かべた微笑だった。
「貴方に味方したのは、貴方のヤミがあまりにも濃すぎたから。
お兄ちゃんにとって、何か自分を動かすようなものを、貴方は過ごしてきたんでしょ?だから、味方するんだと思う。あの人は……あらゆる意味で脆いから……」
悲しみの独白は続く。
「もう、多分終わるよ。あずささん、よく見てて。貴方の『切り札』に匹敵するものを、あの人はやろうとしてる。貴方が自分の信念を曲げて、愛する人を心で殺すように……あの人も、自分の心を殺すつもり」
「……」
もう自分のことをどうして知っているとか、そんなことはどうでもよかった。彼女たちはそういう存在、そして自分たちより常識の外側にいる。
「決着は、もうつく。この『世界』から、全ての世界から、あいつを、消すことで」
真由はもう見ることすらやめていた。呆然と立ち尽くすあずさの手を引き、歩き出す。
「あずささん。もうじきこの空間も消滅すると思う。目の前の現実を見ないほうがいい。あずささん、心が弱いでしょ?壊れちゃうよ、見たら。『あれ』を使う場合、私もお兄ちゃんに協力しなきゃいけない。だから、振り返らずに、待ってて。すぐ終わる。終わらせる、これはその駄賃ね」
と軽く治りきってない怪我あたりに、手をかざす。
「『流れ永るる時すらも』」
それだけで傷がズキッ、と痛んだ。苦痛で顔が歪む。見ると、かざした手が少し光を帯びていた。
「『眠れる万象、おいでませ』」
言葉が終わることには、痛みも光も消えていた。傷が完治している。
「え?」
「今ので全身の傷、内臓の大切な部分も、骨も治した。増血もした。魔力はさっき補充したからそれでいい。だから、『動かないで』」
とだけいい、当夜のほうに走り出す。
あずさの体はぴくりとも動かせない。石のように、硬直したままだった。
- Re: fortissimo Akkord:参戦者募集 ( No.17 )
- 日時: 2011/12/06 14:50
- 名前: 冒険者 ◆6ITp4OKtkc (ID: Y8BZzrzX)
決着(ケリ)
「もうやめようや、三下」
「……っ」
がはっ、と吐血した。内臓を傷めた。随分無理をしているのが分かる筈、なのだかいかんせんやはり轟木鋼という男には知性が足りてない。
まだ戦える、まだ戦えると言うもう狂気とすら言える意思が体を奮い立たせ、主を死に追いやることを許さない。体はボロボロ、重要な臓器は軒並み当夜に破壊され、魔力すら僅かにした残っていない。エッケザックスも、壊れてはいないがあの巨大な塊とのぶつかり合いで細かいひびだとか、傷だとかを拵え、もう限界だ。だが主の意思に健気に応じて、限界以上の力を出している。なのに。奴には届かない。一撃たりともとどかない。
「これ以上は俺が耐えられないんよ。だから、殺すことはしないん。『消したる』」
と、深い悲しみを湛えながら言った。
「鋼んっ!」
遂に剣吾も動く。宙に漂う無数のナイフ、それを一斉に当夜に飛ばした。だが。
『流れ永るる時すらも』」
不思議な祝詞がその場に響く。
「『眠れる万象、おいでませ』!!」
ぴたっと。
空中を舞い当夜に飛来する筈のナイフ。それが一斉に、全て、そのまま、動きを止めた。まるでナイフたちの時を止めたように。
「うるさい、邪魔するな。霧崎剣吾」
空中で静止したナイフを一瞥し、その前を真由が走る。
「なっ!?」
「お兄ちゃん!!」
「真由、来てくれ!」
「はい!『呼ばれ流れるものを従え』」
「『眠れる万象、おいでませ』!!」
走る真由が当夜に飛びつくように抱きついた。その姿が一瞬にして粒子になり、当夜に流れる。
「じゃあ、始めるぞ」
「うん」
「了解」
虚空から、汰癒、真由の声が響く。絶対者は哀れな者を視認して、こう言葉を。いや、これは言葉ではない。言霊。祝詞のように謳い、それらを世界に認めさせ、概念を、人々の思考を全て書き換え、物理的なものを全て消し去る。
『俺たち、水面神の名において願います』
『古により私達に眠る神様方』
『破滅を願い、災を呼びし疫神様』
『天の意思に背く俺たちに力を貸してください』
『私を手助けしてください』
『黄泉の扉を開いてください』
「くっ!?なんでや!?なんで体が動かへんのや!」
剣吾が阻止を企むが、体が硬直して全く動かない。その間に3人の願いの祝詞は機械の如く、正確に進む。
『この愚か者を消してください』
『地神様、あいつを喰らって下さい』
『天神様、黄泉にあいつを送ってください』
「————」
その言葉が終わった途端。
消えた。轟木鋼が。あたかもそこに、いや。世界に存在しなかったように。気に入らないゲームのセーブデータ。それを消してやり直すように。気に入らないなら殺すより手っ取り早く消してしまえばいい。
確かに当夜は人は殺せない。だが消せる。莫大な痛みと尋常ではない心の軋みを耐えさえすれば、どんな奴だって消してしまう。
世界は消された対象をゆがみと判断し、修正する。自動的に。人々は消されたものなど忘れてしまう。物理的など問題ですらない。書き換えは簡単。所詮人の作った玩具のような社会だ。管理するものを変えてしまえばそれでいい。それだけだ。だから。
この『世界』に歪みは必要ない。
「あれ……ワイ、こんなとこで何しとる?」
剣吾が立っているのは彼の通う学校の入り口だった。
「……あれ?わたし、何してるの?」
あずさが振り替えると、そこは単なる道だった。さっきまでここで何をしていたのか、覚えてない。まぁいいや、とあずさは歩き出す。今晩の晩御飯はどうしようと、考えながら。
- Re: fortissimo Akkord:参戦者募集 ( No.18 )
- 日時: 2011/12/06 15:49
- 名前: 冒険者 ◆6ITp4OKtkc (ID: Y8BZzrzX)
贖罪の痛み
「……やっちまったな、俺」
当夜は誰もいない浜辺を一人孤独に歩く。ざくっ、ざくっ、と砂浜を歩く音と波打ち際特有の音だけが静かに鳴る。
「俺は。また罪を重ねた。今度は人のために人を消して。俺は幾度間違いを犯せば気が済むんだろう」
泣きたいのに、泣いても誰も許してくれない。いや、誰も当夜を責めない。責めることなど出来ない。そもそも覚えていないのだから。彼を除いて。孤独で永遠に許さない罪なのに、当夜は何時も繰り返す。
「消しても消しても、その度悪人は生まれやがる。やっぱり、世界自体をぶち壊さないといけないのかな」
他人が聞けば、頭のイカレた戯言かもしれないが、実際に当夜はかれこれもう500年ほど生きている。時代によって、時に神主になって、時に子供のまま半世紀ほど過ごしてみたり。今は二人の少女の兄という『役目』を演じている。
本当は自分はふたりの先祖——しかも途絶えた筈の水面神の尤も濃い血筋の最後の一人。生まれつき神の魂をその身に宿す水面神の一族。
生まれる者は例外なく特殊な力を持ち、時に仁義という間違いに使い、時に言い訳などしない程の悪に墜ちた者を消すのが、最後の一人である自分の使命。
「俺は、汰癒や真由まで騙して生きてるんだな」
最初は悠久の命などいらないと拒絶した。だが、目の前で親しかった、大切だと信じていた者たちを災害と言う形で失い、そして決めた。
——この力は、人々に仇となる者に使う
今はあのあずさという少女のために彼女に仇なすものを消し去った。
だが、体は神でも心は人間。その矛盾が彼を苦しめる。
「正しかったのか、わかんねえ。だけど、死んでいいのはあいつの方だ」
だからといって簡単に消していいのか。この時代にあるゲームというのは簡単だ。消せばやり直せる。だが現実は無理だ。消せても、復活など出来ない。
「神様なら命の価値観なんて関係ないよな……」
彼の不幸は生半可人間の心を持ったりしているから。その心は闇と後悔と行き場のない悲しみの塵で埋まっている。
「俺はやっぱり、このツケを払うべきなんだよな」
視線を水平線に向ける。今この場で海を凍らせて、人々を混乱に陥れてやろうというよこしまな考えが頭を過ぎる。泣きたくなった。
どうしてほしい?どうしてほしいんだ、俺は?
「誰か俺を裁いてくれ……糾弾してくれ……許してくれ……」
彼を許せるものなど、この世にはいないのだ。
- Re: fortissimo Akkord:参戦者募集 ( No.19 )
- 日時: 2011/12/07 15:20
- 名前: 冒険者 ◆6ITp4OKtkc (ID: Y8BZzrzX)
日常
「ん?」
気付けば、朝だった。当夜は六畳和室の居間の壁に寄り掛かって眠っていた。見ると肩に布団が掛かっていた。多分、二人の仕業だろう。当夜は苦笑、二人には自分の苦しんでいることが分かったらしい。だから帰ってきて何も言わずに眠ってしまった自分にこんなことをしてくれた。優しい子達だ。妹には勿体無い。勿論、肉体を書き換えていなければ彼女たちは妹でもなんでもない、単なる子孫だ。だが不死の体を持つ以上、何かしらの責務を背負う。彼の場合、子孫達を見守り、時として力で道を正すこと。彼が虚無の彼方に葬った子孫の数は多すぎて把握しきれない。それだけ道を違える馬鹿が多かったと言うことだ。力を持てば人はそれに溺れる。汰癒や真由のように一族でも破格の力を持ちながら清らかな魂でいられるほうが稀有だ。
「さて……」
今日はやることがない。汰癒や真由の様子を纏めたレポートも送った。これで故郷のじい様ばあ様方は納得するだろう。もっとよこせとせがむだろうが。時刻を確認するため、携帯電話を取り出すと、着信履歴が残っていた。
開くと、汰癒だ。留守録も残っている。聞いてみた。
『お兄ちゃん、ごめんね寝てるとこに……実はお昼のお弁当、忘れちゃって。今日はお弁当だったからお金持ってないの、だからお願い!学校まで届けてください!真由もお弁当忘れたーとか言ってて話にならないからお兄ちゃんだけが頼りです。お願いします……痛っ?!』
最後に悲鳴、みたいな声が聞こえた。多分傍らにいた真由が汰癒の頭を叩いたのだろう。
だが当夜は学校までの地図を知らない。仕方ない、と能力発動。
手元に汰癒の部屋においてあるデジタルの端末を手に出現させる。ここに月読島の地図が詳細に載っている筈。まだ時刻はお昼まで早いため、朝飯を兼ねて外出することにした。
「……」
さすが常夏の島。温かい。熱いとまでいかないし、からっとした空気は湿ってすらいない。当夜は黒いジーンズにワイシャツのような制服に似た格好で出歩く。
学校の名前は星見学園だったか。エスカレータ式の一貫学校で大学まであるとか言っていた。汰癒たちは数少ない高校受験で受かったいわばエリート……になるのだが実際二人の受験勉強を見ていた当夜からすればもう学校など通わなくても長年にたまった知識のみでどうにかなるレベルのものだった。(といっても世間様からみれば難関)
「……」
昼頃。暇を適当に潰した当夜は地図を頼りに学校に足を運んだ。
昇降口に来ると、当夜は素直に驚いた。結構大きい。当夜の去年でた学校よりかなり大きいのでないか、と言える位だ。道筋を辿り来客用の市口に顔を出す。
「あのーっ……すいませーん」
事務室らしき場所には用務員らしいお爺さんがいた。当夜に気付くと「おお、ちょっとまっとくれ」と言って時間をかけてこちらに近付いてきた。
「一般のお客さんとは珍しい……何か用事かね?」
「あ、えと。妹の忘れ物届けに来たんですけど……」
「妹さん?」
「あ、はい。俺、水面神当夜っていいます。この学校の高校二年の水面神っていう双子の女の子の兄貴です」
「水面神?」
おじいさんは何かを思い出すように白髭の生えたあごに手をあて、やがて「ああっ!」と大きい声を出した。
「お兄さん汰癒ちゃんたちのお兄さんか!」
「え?あいつらのこと知ってんですか?」
「しっとるもなにも、いつも仕事を手伝ってくれとるいい子じゃからのぉ。あぁ、いつも話してる自慢の兄貴さんたぁ、お兄さんのことかい」
「……あいつら、一体何言いふらしてるんだ……」
汰癒と真由が用務員のお爺さんを手伝っているのは初耳だが、それはそれでいいことだ。これは纏めて報告、と当夜は決めた。
「ちょっと待っとれ。今呼び出すからの」
と用務員のお爺さんは放送をかけてくれた。
- Re: fortissimo Akkord:参戦者募集 ( No.20 )
- 日時: 2011/12/07 15:55
- 名前: 冒険者 ◆6ITp4OKtkc (ID: Y8BZzrzX)
彼女たちの日常
「お兄ちゃん、待ってたよ!お腹すき過ぎて死にそう〜」
「……ごめんね、お兄ちゃん」
放送からわずか三十秒、ドタバタとやかましい足音が聞こえ、二人が事務室に顔を出した。汰癒は嬉しそうに、真由は申し訳無さそうに。
「……はい、弁当。もう忘れんなよ?」
当夜は優しく笑いながら二人に弁当を渡した。ぽんぽん、と頭を軽く撫でるのも忘れない。嬉しそうにする彼女たちの反応が当夜の苦悩を一時的に消し去る。
「あー……よかった。今日の昼ごはん無くなるところだったよ」
「全部汰癒のせいだけどね」
「何で!?真由が寝坊するからいけないんでしょ!?」
「お弁当の材料を買い忘れて挙句夜更かしして私に迷惑かけたの誰?」
「うっ」
「それに寝坊したのは汰癒だって一緒。だから自業自得」
「……お兄ちゃん真由がいじめる〜!」
「……お前等いい加減にしろよ」
じゃれあいからなぜか喧嘩に発展、汰癒が負けて当夜に縋りついた。真由は何だか拗ねたような怒ったような顔で当夜を見る。
「汰癒。もう少し自分のことも反省しような。で、真由。お前のツッコミは汰癒にはキツメだから優しくして」
と苦笑しながら用務室の椅子に座る。すぐに帰ると言ったら二人が学校を案内したいとせがみ、用務員のおじいさんも賛同したので仕方なく、二人が文句を言いながら食べ終わるまで失礼させてもらっているのだ。
その間、お爺さんと軽く世間話。二人が食べ終えると両手を引っ張られ校内を案内された。色々な意味で高校生のやることじゃない。が、当夜は甘いので結局了承。
「ここが、私のクラス」
「一個向こう側にあるのが私のクラスなんだ」
二年のクラスに案内されたときはさすがに後悔した。クラスメートたち二人に引っ張られ、連れ回されているこの人は誰?的な視線が当夜に集まる。
「でね、ここが……」
「お、おいストップ汰癒。俺、そろそろ時間が……」
「ダメ。逃がさない」
「そうだよ嘘吐きお兄ちゃん♪」
逃げようとする当夜に笑顔の汰癒と真由はがっちり両手を塞ぐ。おかげで恥さらし状態のようなことになった。
「え〜と……真由、自己紹介するべき?俺」
「しなくていい。私にはあんまり関係ない」
と真由はクラスの連中を見事に無視、そして次の場所に案内しようとして事態は急展開を迎える。
「あーーーー!!!!いましたよ部長!!汰癒ちゃん先輩をみつけました!あ、それに真由っち先輩までいますよ!」
「へ?」
「え?」
きょと、とする二人。視線を向けると数名の女学生が汰癒たちを指差して何か廊下の向こうに叫んでいる。
「ひえっ……」
「うそっ……」
汰癒と真由の絶望の声。視線を戻せば青ざめた二人。こんな顔始めてみた。
「どうした?お前等」
「お兄ちゃんごめんちょっとここで待ってて!!」
「汰癒!また私を囮に使うつもり!?」
「あーっ!部長、汰癒ちゃん先輩が逃走を始めました!」
ぱっ、と手を離し脱兎の如く走り出した。瞬く間に廊下に消えていく二人。その後を追う女生徒たち。その内の一人が当夜をみて声をかけた。
「えと、貴方は?」
「あ、俺?えーと、あいつらの兄貴っす。水面神当夜っていいます」
「……え!?貴方が『あの』当夜さんですか?!」
驚きの声をあげるその子に、当夜は苦笑する。
「どうせあいつらが何か言いふらしてんだろ?やれやれ……」
「はい!よく自慢の兄がいると言っていました!」
「んで、君達は?」
「私達、演劇部と手芸部なんです!」
「演劇?手芸?」
「はい!えーと、二人にはよくモデルをしてもらっているんです。それで今日もお願いしていたんですが……」
女生徒の顔が曇る。当夜が尋ねると。
「えと……先輩たち、いつも嫌がって逃げるんですよ。でもうちの部長たちが先輩たちじゃないと許さないとか言ってて……」
「はぁ」
「だから当夜さんから言ってもらえますか?モデルしてくださいって」
「いいけど……俺でもあの子達聞いてくれるか、保障できないよ?」
「それでもいいです!今度から方法変えますから」
「……そう」
「じゃあ、失礼します!」
と逃げていったほうに走っていた。
「あ」
そいえば。
「何で俺放置されてんだろ……」
この場所でどうするというのか。汰癒たちが帰ってくるまで待つとしよう。
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