二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
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- ヴィンテルドロップ
- 日時: 2012/08/04 20:31
- 名前: めた (ID: UcmONG3e)
さあおいで。
昔話をしてあげる。
だれも知らないお話だよ。
それは冬の終わりのお話だよ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「お母さんお話して!」
というと、ほとんどの親はこのお話しをする。
ヴィンテル王国の一番有名なお話にして、実話とされている不思議な話。
このヴィンテル王国を建国した女王様のお話である。
『冬の厳しい気候を持つヴィンテル王国。
建国したときからどの季節もふゆでした。
なので、冬と言う名をイリジウム女王はつけました。
そんなある日、イリジウム女王が谷を歩いていると、
真上で太陽と月が喧嘩した。
それまでは月と太陽は一つで、交互に夜と昼とを照らしていました。
けれど、このときからばらばらになりました。
そのとき、しずくが一つイリギウム女王めがけて落ちてきました。
うけとると、それは太陽と月の涙でした。
片面は静かに燃える月の、もう片面は激しく燃える太陽の涙。
女王がそれをなでると、たちまち虹色の宝石となり王国の雪は解けて
冬は消え去りました。
そして3つの季節が出来上がったのです。』
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- Re: ヴィンテルドロップ ( No.80 )
- 日時: 2012/12/18 22:19
- 名前: めた (ID: UcmONG3e)
ロイは思わぬ収穫に戸惑いつつも、母親になら何か伝えてあるだろうとにわかに上を目指す。
兄らしき人物のいうとおりだ。顔を出さないと。
「兄にも言わないなんて、よっぽど用心深いか、兄が嫌いらしいな、このブランド皇子は」
そんなこと口走りつつ、階段を上る。
「はぁ、ブランド?」
そのころ、ルクリスはジャックルの元に行って、先ほどブランドにあったことを伝えた。
ジャックルは机にゆったり座りながら珍しく緩やかな声で。
「それがなんになる?クローロスが死んだ証拠にか?」
バカにするような響きを感じ取り、ルクリスは若干醒めた目つきになった。
「兄さん、少しはブランドを監視したらどうかな」
兄の無能さに感服しながらもルクリスは殺されないためにしたがっていた。
兄に逆らい、首を絞められて死にかけたあの教訓は忘れもしない。
その言葉にジャックルは興味なさ下に頷いた。
「じゃあ、おまえにまかそう。提案したんだから自分でやるんだ」
- Re: ヴィンテルドロップ ( No.81 )
- 日時: 2013/02/01 17:46
- 名前: めた (ID: g7gck1Ss)
めちゃくちゃ放置してました・・・
ルクリスは兄にブランドの監視を命令されて、仕方なく従った。
だがブランドは城のどこにもいず、メイドたちも上に上ったきり戻らないと言い張る。
そこで母上に顔でも出したのだろうと、ルクリス自身も最上階の母親の部屋を目指して階段を上った。
そのころ、イオーデス女王のドアをノックしたロイはお入りなさいといわれて、大人しくドアを開けて中に入った。
そこは赤い絨毯を所狭しとひかれた比較的広い部屋。
きっと背後にある扉も、イオーデスの部屋に違いないとロイは思っていたが、そこはまぎれもなく次期女王クローロスの部屋だった。
そんなこといらずにイオーデスの部屋に足を踏み入れたロイはビックリする。
ヴィンテル王国の噂はよく耳にした。
歳を取らない美しきイオーデス女王。
そして女王が触れれば虹色の光を放つ幻の宝石。
この二つの噂はしかく有名であり、その女王は色濃い金髪としわ1つない謎に包まれた人物だと歌われている。
だが赤い絨毯の奥に置かれた赤と金をふんだんに使った肘掛け椅子に腰掛けていたのは、ひどくくたびれた様子のやつれた女王だった。
豪奢な金髪は輝きを失い、意志の強い目は光を失っている。
肌は青白く不健康で、疲れたように椅子に寄りかかってしまっている。
威厳など、皆無だった。
(噂はウソだったか・・・)
残念極まりないと目を伏せたロイに、女王は力なく言う。
「ブランド・・・ではないね。誰かしらあなたは」
一瞬だけ瞳に鋭い光がきらめいた。
- Re: ヴィンテルドロップ ( No.82 )
- 日時: 2013/02/01 18:15
- 名前: めた (ID: g7gck1Ss)
ばれた。こんなやつれた女王ごときに・・・!
ロイは驚愕の表情のまま黙っていた。
「大方、娘と息子の行方を追っているのでしょう?」
イオーデス女王はゆったりとした口調のままそうつぶやく。
相変わらず目はぎらぎらと光っており、以前の風格を取り戻したかのように見える。
「・・・おや、しゃべれないの?」
噴出す汗を流しながらたたずむロイに、イオーデスはふっと笑みをこぼした。
「それともこの私を、殺しに来たのかしら?」
「だとしたら・・・?」
ロイはやっと口を開き、相手が衛兵を呼ぶつもりがないのをさとる。
(一体なに考えているんだ、この人は。殺されるかもしれないのに悠長に問いかけているだけなんて)
相手の意図が読めず、ロイは急激に不安に駆られる。
「ふん、もうどうでもよい。涙の宝石が消えた今、この途切れぬ血も意味などなさない」
ロイの答えにイオーデスは自暴自棄のようにもう一度肘掛け椅子に身をうずめて言い放った。
「宝石を奪われた今、わたくしの命ももはや惜しくはない」
その言葉に、ロイは困惑する。
そしてどうすれば良いかわからないこの状況を利用しようとした。
「じゃぁ、娘の命も惜しくはない、そうだろ?居場所を教えてくれるとありがたい」
ロイの言葉に、女王は黙っているだけだった。
だが別に断るわけでもなく、ただこういった。
「それを教えて私に何の得が?」
冷たい視線で見られて、ロイは笑うしかない。
(娘の命も交渉しだいってわけか・・・なんて親だ)
あきれながら、予想よりも早く次期女王暗殺が出来ると喜んだ。
「じゃぁ、宝石のありかを教えてやるよ。あんたの娘の居場所と交換に」
- Re: ヴィンテルドロップ ( No.83 )
- 日時: 2013/02/01 22:12
- 名前: めた (ID: g7gck1Ss)
ロイはゆっくりと女王の部屋の扉を閉めた。
そしてすばやく階段を下りて、仲間の元へ急ぐ。
今しがた女王の口から聴かされた言葉を脳内で繰り返しながら、二度と忘れぬようにシナプス(脳細胞)と海馬(記憶中枢気管)に焼き付ける。
「そう、娘はとある大学に行ったよ。秋だけの街にある、緑の多い大学で研究してる」
その見返りとして、女王に宝石のありかを教える。
「あの宝石は山脈のずっと奥、極寒の地にあるよ」
そしてすばやくドアを閉めて出て行ったのだ。
階段を駆け足で下りながら、ロイは内心ほくそ笑んでいた。
(ほんとに娘を売りやがった。あんな簡単に、ウソをつくかもしれなかった相手に)
そして心はだんだん怒りであふれてくる。
(この国のヤツだってそうだ。誰だってそうだ。子供を者としか扱わない・・・!!)
激しい形相で城の門を出て、神殿のトイレで貴族に成り代わり、やがてどんどんと城下町に出て行く。
そしてロミとレノのいる駅口につくと、怒りを無理やり押さえ込んだ笑顔で、告げた。
女王が子を売った情報を。
「—ロイ、なんか怒こってる?」
情報をすべて伝え終わると、双子の片割れロミが声をかけてくる。
黒服に良く映える少し赤みが掛かる茶色の短い髪を揺らして、顔を覗き込んでくる。
「いや・・・別に。レノ、次の列車見つかった?」
はぐらかしてその場から離れる。
「あぁ、今日の昼から出る列車にのりゃぁ、早朝にはつく」
- Re: ヴィンテルドロップ ( No.84 )
- 日時: 2013/03/15 14:20
- 名前: めた (ID: FY5Qqjua)
ルクリスはブランドの後を追っており、ソレが変装をした誰かであると見ていた。
ビックリしてあとをつけると、そいつは黒服の二人組みと合流していた。
そしてイオーデス女王が実の娘を売ったという情報を聞いて陰に隠れながら激しい動悸を抑えようと胸を押さえていた。
—昼の列車って何自発ー?
—あぁ、一時半からだな。なんだ、用事でもあるのか?
—いやさぁ、久しぶりの王都でしょ?いつも辺境の地にいるから観光していこうよ、ロイ、レノ!
—しょうがないなぁ、ロミは・・・
そんな会話が聞こえてきて、ルクリスはごくりとつばを飲み込んだ。
若い娘と変装をしていた青年と、25くらいの男の三人組がクローロスとブランドの行方を手に入れた。
行き先は秋の季節が続く街。弟妹は大学にいるらしい。
そしてその街に行く列車は今日の昼一時半に発車する。
これだけあれば十分だと、ルクリスは城へ引き上げた。
そして部屋に込もうと、情報を整理した。
「あの三人組は一体何なんだ・・・?辺境の地に住んで王都が珍しいって行ってたな・・・そしてクローロスの足跡を追うもの。まさか暗殺団かな?」
涙の宝石を盗む依頼の後、追加で出した次期女王暗殺以来がまだ友好であったことに驚くルクリス。
だがその口元に笑みを浮かべて、兄をもしのぐ狂気をまといながら兄の部屋に報告に行った。
兄の部屋に入った途端、ルクリスは口角を上げていった。
「兄さん、何事も順調だよ」
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