二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

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ポケモン不思議のダンジョン 昼*夜の探検隊 あけおめ^^
日時: 2010/01/01 21:07
名前: 亜璃歌♪ ◆P2rg3ouW6M (ID: NihAc8QE)

*A HAPPY NEW YEAR* 今年もこの小説をよろしくお願いします。

こんにちはぁ! クリックしたら、戻らずに小説を覗いてみて下さい! それでおもしろくなかったら、「戻る」を押してもらって構いません^^
ポケモンを知らなくても描写を入れてあるので、「戻る」を押さずに少しは覗いてくださいね^^

元ラピスラズリです。(その前は癒李歌、その前は亜璃歌、その前は霜歌)
やはり、名前を変えまくった中でも、「亜璃歌」が気に入ったので戻しました。
改めまして、亜璃歌と申しますvv
何度消えても、頑張ってコピーするので皆さん応援よろしくお願いします♪

本題に入りますが、ポケモンダンジョンは主人公とパートナーの友情が命!! そこらへんをうまく表現できたらいいなーと思います。あらかじめ言っておきますが、これはポケダン(探検隊)沿いの話ですvすべて沿ってるわけではありません。

ミーシャ&ミニリュウ「みなさん、ぜひドキドキしたりしんみりしたり、感動したり、心をたくさん働かせてください!」

ポケモンダンジョンは、私が騙されたり泣かされたりしたりしたすっごくいいゲームなので、皆さんが感動できるような小説にできるように頑張ります!

=注意=
・ここは小説を書くスレなので、雑談は控えてください。
・真似・荒らし・喧嘩は禁止。(常識の範囲で)

〜ポケモン不思議のダンジョン 探検隊のテーマ曲〜
http://www.youtube.com/watch?v=Neila0J3L0E

詩 〜君がいてくれたら〜
>>1

Memory1 必然の出会い    Memory2 ギルドの丘
>>2-4               >>5-9
              
Memory3 キセキの探検隊    Memory4 光のささやき
>>10-14              >>15-17 >>19 >>21-27 >>29-30 >>32-33

Memory5 初の探検と仲たがい        
>>34 >>36-37 >>43 >>48

☆作者の心のささやき☆
結局また名前を戻すことに。霜歌→亜璃歌→癒李歌→ラピスラズリ→亜璃歌です。はあ、新年早々、小説が消えている人もいるみたいだし、恐ろしや〜。

☆大事な大事なお客様☆
・ミニモネさん ・レッドさん ・サジタリアスさん ・美弥さん ・大庭さん ・黒魔ちゃん 
・べっかさん ・ツナいちさん ・ルビーさん ・キョウさん ・瑠美可さん ・ピクミンさん
・おんぷさん
—いつもコメントありがとうございます^^そして、これからもよろしくお願いしますb
コメントはしていないけど、クリックしてくれている人もありがとうございます^^

※↑に自分の名前が載ってない! っていう人は言って下さい^^;ただちに載せます。

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Re: ポケモン不思議のダンジョン 昼*夜の探検隊 ( No.15 )
日時: 2009/12/31 20:07
名前: 亜璃歌♪ ◆P2rg3ouW6M (ID: IoxwuTQj)

Memory4 光のささやき

「お————い! 起きろぉぉ! 朝だぞ———!」

 頭がぐわんぐわんするような、馬鹿でかい声が響く。この声はどこかで聞き覚えがある。確か……えーと、誰だっけ……。それにしても、うるさい。もう朝? 起こすならボリュームが「小」の目覚まし時計で起こして欲しいな。まだ眠いのに……。

「おいぃぃぃぃ! 起きろー!」

 耳がおかしくなるようなこの声に、うっすらと目を開けるとミニリュウが隣で寝ている。ミニリュウも、この声で目が覚めたようだ。薄目でぼんやりと周囲を見ている。

「なんだよぅ、この声は……」

 ミニリュウは、まだ寝ぼけ眼でぼけーっと言った。
 私も重いまぶたを開き。誰の声かを確かめようと体を動かすと、わらがカサッと擦れる音がした。起き上がると、ドゴームがイライラした表情で立っている。あのうるさい声は、ドゴームだったのだ。

「おまえたち! さっさと起きて朝礼に参加しろよ! おまえたちが遅れて、あの親方様の“タアアアア”をくらうなんて、恐ろしくて、ああ……。とにかく! おまえたちが遅れるせいでこっちまでとばっちりくらうのは嫌だからな! さっさと起きろよ!」

 ドゴームは言うと、テントの中からするりと出て行った。あのうるさい声が聞こえなくなっても、まだ頭がキーンとしている。鼓膜が破れるかと思った。
 私は、ゆっくりと水の入った石の前へ行った。そして、一気に目が覚めてしまうほど冷たい水を顔にかける。目がぱっちりと開いた。

「何であんな風に怒鳴られなくちゃいけないのかな、まったく」

「さあね。……って、私たち、ギルドに入ったんだよ、ミーシャ!」

 朝食をかじりながらミニリュウがのっそりと言う。相変わらずグミを食べているが、次の瞬間はっとする。私も、あっと声を上げてりんごを手に取った。ギルドに入ったからドゴームが起こしに来た。ということは……。

「そうだよ! ギルドだ! となると……遅刻だよ、ミニリュウ! 朝食を早く食べないと。でも、残すとチリーンが怒るし……」

 私たちは必死に朝食をガツガツと食べ、平らげるとテントから転がるようにして出た。辺りを見ると、プクリンとぺラップのテントの前にギルドのメンバー全員がきっちりと整列している。あわてて私たちも整列した。ギルドのみんながいっせいにこちらを見る。

「遅いぞ、おまえたち!」

 と、ドゴームに怒鳴られた。やはり、うるさい。そのドゴームをぺラップが怒鳴る。

「おだまり! おまえの声はただでさえうるさいんだから、怒鳴るんじゃないよ! ……さて、では親方様。朝の一言をお願いします」

 ドゴームは怒鳴られて肩をすくめた。そんなことは気にせず、ぺラップは整列したみんなの前に立っているプクリンを見る。プクリンは朝の言葉らしき事を言った。

「……ぐうぐう……ぐうぐう……」

 なんと、プクリンは目を開けたまま眠っているらしい。おまけに鼻ちょうちんまで出している。今にもパチンッと割れそうに縮んだり膨らんだりしている。それも当たり前のことらしく、ギルドのみんなは平然としていた。しかし、何もかもが初めてな私たちには、すべてのことが不思議でならなかった。

「ありがたいお言葉ありがとうございましたあ! では、朝の誓いの言葉はじめ!」

 ぺラップの声で、みんなが同時に誓いの言葉を言った。みんなが同時に息を吸ったので、スゥッという音が聞こえる。息の音の後、静かな丘に声が響いた。

「ひとーつ、仲間を思いやる! ふたーつ、仕事をしないと夕食抜き! みーっつ、笑顔を忘れずに!」

「今日も仕事、張り切っていこー!」

「お———!」

 天高くみんなは手を振り上げると、いっせいに散らばっていった。
 私たちは、何をしていいかわからなくて昨日のようにぼけーっとしている。まだ頭が寝ているのか、いまだに誓いの言葉が頭にこだましていた。瞼が重い。
 すると、ぺラップが私たちを呼んだ。

「おまえたち! こっちだ♪」

 その声ではっと目が覚めた。
 ついて行くと、ギルドの地下二階だった。そして、二つあるうちの掲示板のうち、今度はポケモンの絵が張ってあるほうの掲示板の前に来る。かっこいい顔のポケモン、勇ましい顔のポケモン……いろんな顔がある。

「ねえ、昨日はもうひとつの字が多い張り紙が張ってある掲示板じゃなかったっけ?」

 私が質問をすると、ぺラップは「そうだ♪」と答えた。羽をバタつかせて説明する。

「昨日の掲示板は、落し物とかポケモンの救助の依頼の掲示板さ。こっちはお尋ね者の掲示板」

「わあー。いろんなポケモンの絵が張ってある! みんなかっこいいなー。これって、一流の探検隊のポケモン?」

 ぺラップの話を聞いていないミニリュウが、感心して言った。完全に掲示板の絵に夢中になっている。
 そんなミニリュウを見て、ちょっとイライラしながらぺラップが言った。

「かっこいいなんて、そんな事言っている場合じゃないよ! このポケモンたちは、みんな悪いことをしたお尋ね者なんだ。だから、捕まえれば賞金がもらえたりするんだけど、凶悪なポケモンが多くてね。みんな、手をやいているんだ」

「えー! お尋ね者!?」

 ミニリュウが震え上がった。私もびっくりして、体中の毛が恐怖で逆立った。フワフワした体が、ハリネズミのようになってしまった気がする。深呼吸をすると、私はぺラップに恐る恐る聞いた。

「そ、そのポケモンたちを私たちに捕まえろと……? む、無理無理!! 絶対無理!」

「ハハハハ♪ お尋ね者って言っても、凶悪なやつもいれば、ちょっとしたやつもいる。凶悪なやつを捕まえてくるなんて、新米のおまえたちに言うわけないじゃないか♪ フフフッ♪ さあ、この中からポケモンを選んで捕まえてくれ♪」

「そ、そんなあ。でも、悪いポケモンは悪いポケモンなんでしょう?」

 ぺラップの話を聞いて、私はうなだれる。探検隊って、探検するだけではなかったらしい。お尋ね者なんて、警察に任せておけばいいのに。
 ミニリュウもブルブル震えながら言った。

「怖いよう」

「しょうがないねえ。ま、選ぶ前に戦う準備でもしておきな♪ ビッパに施設を案内させるからね♪ お——い、ビッパー?」

「はいー! お呼びでゲスかー?」

 呼ばれたビッパ、すぐにやってきた。ビッパは、茶色いタワシのような体に、はっきり言ってまぬけそうな目をしている。出っ歯も目立っていた。
 ぺラップは、そんなドンくさそうなビッパに命令する。

「いいかい。新米のキセキーズたちに、トレジャータウンを案内するんだよ♪」

「はいー! わかりましたでゲスー!」

 トレジャータウン? 
 どこかで聞いたことのある名前だと思った。そういえば、このギルドの丘に来る前に分かれ道があったような気がする。確か、初めてミニリュウに会った日だ。海岸から道を進んだとき……。

———「この交差点をまっすぐ行けば、ギルドがある丘に行けるよ。右に行けば、冒険に行けるけど、それは後で説明するね。で、左に行けば“トレジャータウン”」

 トレジャータウンはいろいろなお店があってポケモンたちの広場のような場所だと、ミニリュウが言っていたような気がする。そこにこれから行くのだとすると、お尋ね者のことなど忘れて気分が楽しくなってきた。

「さ、トレジャータウンで冒険の準備をしに行くでゲスよー!」

 ビッパは聞くところによると、私たちが入るまではこのギルドで一番下の弟子だったらしい。確かに見かけから、とろい後輩というイメージがしていた。失礼だが。だから、私たちが入ってきて後輩が出来て嬉しいようだ。

 そんな先輩のビッパに連れられ、私たちはトレジャータウンへ行くことになった。

〜つづく〜

Re: ポケモン不思議のダンジョン 昼*夜の探検隊 ( No.16 )
日時: 2009/12/31 20:07
名前: 亜璃歌♪ ◆P2rg3ouW6M (ID: IoxwuTQj)

「ここがトレジャータウンでゲスよ」

 ビッパに案内されて、私たちはトレジャータウンの入り口までやってきた。
 トレジャータウンは、私の予想を超えるほどの場所だった。商売をしているポケモンたちが招き声をあげている。散歩や買い物にしに来たポケモンたちは、周囲の仲間としゃべったり、楽しく商品を見ていた。ポケモンたちの賑やかな雰囲気とは裏腹に、風や雲はゆっくりと動いている。広葉樹の木がサワサワと、トレジャータウンのBGMのように音を立てていた。

 私は驚きと興奮が隠せない。ビッパとミニリュウはトレジャータウンをスタスタと進んでいくが、私はお店を見ているので二匹から遅れてしまいそうだ。

 ポケモンたちは、ギルドの丘と同じく自分の絵が描いてあるテントを屋台にしていた。しかし、そのテントはギルドの物より質がよさそうだ。しかも、売れている店と売れていない店とでテントの高級さが違う。
 あちこちから「いらっしゃーい」などと声が聞こえてきたり、ポケモンたちが楽しそうに話している声が聞こえてきた。

「ささっ、どのお店から案内するでゲスかねー。……やっぱり、ダンジョン前なら“カクレオンの商店・専門店”からでゲスよねー」

 ビッパが二匹のカクレオンの絵の描いてあるテントの前で立ち止まった。
 私とミニリュウは、商売をしている二匹のカクレオンをじっと見る。カクレオンは、カメレオンのような姿をしていて体中にギザギザの模様が入っていた。その口から出る舌は、いかにも長そう。一匹のカクレオンは緑色、もう一匹のカクレオンは紫色だ。二匹並ぶと、葡萄(ぶどう)に見えなくもない。愛想良く笑いながら声をかけてくる。

「いらっしゃーい! ダンジョン前に、ここで食料やスカーフ、技マシンなどをいかがですかー?」

 緑と紫の二匹のカクレオンが同時にニッコリ笑った。容姿は色が違うだけで後はそっくりだ。声や話し方も似ている。
 そういえば、剣風の森の時にキマワリがスカーフやバンダナを持っていた。あれは、この店で買ったのかもしれない。キマワリが買う店なら、きっといい店だ。

 そんな事を考えていると、緑のカクレオンの方が私とミニリュウをじーっと見つめた。

「あなたたちは……新米の探検隊ですかい?」

「あっ、はい。キセキーズと言います。」

 私は新米と見抜いたことを不思議に思いながら、ペコリと頭を下げた。ミニリュウも慌てて頭を下げると緊張気味に言う。

「ダンジョン前に買い物がしたいんですけど……」

 カクレオンたちもいったん後ろを向き、小さくガッツポーズすると頭を下げた。そして、また同時に言った。

「どうぞどうぞー」

「……もう大丈夫でゲスよね。じゃあ、あっしはギルドの地下一階にいるでゲス。準備が終わったら報告にしにきてくださいー」

 私たちの様子を見ると、ビッパは安心したのかギルドに戻っていった。私たちはビッパの後姿を見送ると、カクレオンに向きなおる。

「カクレオンさーん!」

 幼い声がした。
 見ると、幼い二匹のポケモンがハアハアと息を切らして走ってくる。一匹は、丸く青い体に半円の耳を持つマリルだ。もう一匹は、同じように丸く青い体のルリリ。尻尾が体と同じ大きさで、その尻尾に体を乗せ、バネのように飛びながらこっちに向かってきている。

「グミを二つくださいー」

 マリルが荒い息を吐きながらカクレオンに注文した。そして、小さな手でお金を差し出す。
 カクレオンたちは、にっこり笑ってお金を受け取ると、グミを差し出した。

「まいどありー」

「ありがとうございました」

 マリルとルリリは可愛らしくお辞儀をすると、グミを受け取って走り去って言った。走り去る後姿は、まるで二つの青いビー玉が転がっていっているようだ。
 その様子を見ていた私たちに、カクレオンがマリルたちの背を眺めながら言う。

「あの子達は兄弟なんだよ。マリルちゃんがお兄さんで、ルリリちゃんが弟さん。お母さんが病気がちでね、いつもああやってグミを買いにくるんだよ。まだ幼いのに、偉いよねー」

「カクレオンさーん!」

 帰ったと思ったマリルたちが、また息を切らして戻ってきた。グミを抱えたルリリが慌てて言う。

「カクレオンさん! グミの他にりんごが入っています!」

「いいんだよー。二人で仲良くお食べ」

「わあ! ありがとうございます!」

 カクレオンたちの言葉に、ルリリとマリルはきゃっきゃと嬉しそうだ。そして、スキップしながら帰っていく。
 ……とそのとき。グミとりんごを小さな手では持てなかったのか、ポロリとルリリがりんごを落とした。真っ赤なりんごはコロコロと転がり、私の足元でとまった。
 私はりんごを拾い、ルリリに返す。よく熟したりんごだった。

——その時だった。

 私は大きなめまいを感じた。まるで頭の中で波が押し寄せて来ているかのようだ。頭がぐらぐら揺れている。空を見ると、雲が動きを止めているように見えた。風の音もしない。何も聞こえない、感じない。見えている空が不意に暗くなった……いや、私の視界が徐々に暗くなり、頭の中で光が弾けた。

『や、やめてっ! 助けて!』

〜つづく〜

Re: ポケモン不思議のダンジョン 昼*夜の探検隊 ( No.17 )
日時: 2009/12/31 20:08
名前: 亜璃歌♪ ◆P2rg3ouW6M (ID: IoxwuTQj)

 誰かの悲鳴が聞こえた。しかも、まだ幼い声だ。そう、ルリリのような……。
 はっとすると、視界は戻っていてルリリが不思議そうな顔で私を覗き込んでいる。悲鳴を上げた後のような顔はしておらず、きょとんとしている。

「あっ、あの、どうしたんですか?」

 ルリリがりんごを抱えなおすと、心配そうに聞いてきた。
 心配してくれるのはいいけれど、まずは自分の心配をした方がいいと思う。悲鳴を上げるなんて、どうしたのだろうか。私はどうしても声のことが気になってしかたがなかった。

「今の叫びは君が言ったの?」

 私がそう聞くとルリリは体を尻尾からおろし、尻尾をいじりながら首を傾げる。どうやら、あの声はルリリではなかったらしい。

「おーい、ルリリー! 行くよー!」

 トレジャータウンの向こうの方からマリルがルリリを呼んだ。ルリリは慌てて私にお辞儀をすると、マリルの方へ駆けていく。虚しい私を慰めるかのように、風が一筋、私を撫でていった。

「ホント、いい子ですよねー」

 紫のカクレオンが、優しげな目でつぶやいた。
 そうだ。もしかしたら、ルリリじゃなくてさっきの声はカクレオンか、ミニリュウだったのかもしれない。幼い声だったけれど、カクレオンかミニリュウと思えなくもない。悲鳴を上げる理由はわからないが。

「ねえ、ミニリュウ。さっき、助けてって言わなかった?」

「え? 何も言っていないよ」

「じゃあ、助けてっていう声が聞こえなかった?」

 私が聞いても、ミニリュウは頑固に首を振り続ける。
 おかしいなあ。じゃあ、あの声はカクレオン?

「なあんにも聞こえなかったし、言ってないよ。ねえ、カクレオンさん。さっき声が聞こえた?」

 ミニリュウは、カクレオンにもたずねた。
 二匹のカクレオンは、顔を見合わせると舌を出して首を振る。

 さっき、確かに声がしたのに。あれは誰? 
 トレジャータウンを見てもポケモンたちは楽しそうに商売、話をしている。空を見ても、雲は同じようにゆっくりと流れているし、木々は風に揺らされている。普通だ。何もかも。私がおかしいのかもしれない。そういえば、悲鳴が聞こえる前に雲が動きを止めているように感じた。今、雲は動いているから、やはり私がおかしかったんだ。そうだ。きっとそうだ。そう思わなくちゃ。

「ミーシャ。ビッパの所に行かなくちゃ」

 私の異変に気づいたのか、ミニリュウがせかした。ビッパがギルドの地下一階で待っている。私だって、これ以上ここにいたらおかしくなりそうだから、ちょうどよかった。さっきの事は、忘れよう。

「じゃあ、カクレオンさん。またね」

 ミニリュウがにっこりと笑いながら言うと、カクレオンはまた愛想よく笑って手を振った。笑うのは、商売をやっていたら慣れるらしい。私はミニリュウに押されるようにカクレオンの店を後にする。

 ギルドに戻る最中、トレジャータウンの広場のような所に来た。中心には噴水があり、まわりをベンチが取り囲んでいる。見ていると、ちょうど噴水の水がザバッとふき出した。水しぶきが飛び、それが太陽の光に反射して小さな虹が出来る。
 その噴水の周りのベンチに、マリルとルリリがりんごを食べながら仲良く座っていた。誰かといっしょだ。見ると、黄色い二匹のポケモンで目つきが両方とも悪い。このポケモンはスリープとスリーパーだ。

「あっ、さっきのマリルたちだ。ミーシャ、行ってみようよ」

「うん、そうだね」

  ちょうどいいタイミングだった。私もルリリにさっきの声のことを聞きたいと思っていたところだ。
 私たちがマリルたちのそばに行こうとすると、マリルたちが私たちに気づいてこちらに寄ってきた。何やら嬉しそうに寄ってくる。スリープたちともいっしょだ。

「なんか嬉しそうだね」

 寄って来たマリルたちにミニリュウが言った。すると、マリルが本当に嬉しそうに尻尾を振る。青い尻尾が光に反射して光った。

「そうなんです。スリープさんたちが病気がちなお母さんのためにいい薬があるところを教えてくれるって。ぼくたち、嬉しくて」

「本当に嬉しいんです!」

 ルリリも、丸く柔らかい尻尾に小さな体を乗せぴょんぴょん飛び跳ねる。そんなマリルとルリリは太陽の光を浴びて、いっそう可愛らしく嬉しそうに見えた。思わず見ている私たちまで嬉しくなる。

「よかったね」

 私はそんなマリルたちの笑顔を眺める。幼い子達の笑顔を見ていたら、さきほどの妙な出来事なんて忘れちゃいそうだ。幼いっていいな、と改めて思う。

「じゃあ、ぼくたちは薬を探しに行きますので」

 マリルとルリリは言うと、スリープたちといっしょにスタスタと歩き始める。

 ドンッ!

 そのひょうしに、私とスリーパーの体がぶつかった。私より大きなスリーパーにぶつかって、私はしりもちを付いてしまう。スリーパーは、「これは、失礼」と手短に謝ると、マリルたちについて行く。

「世の中悪いポケモンがいるのに、いいポケモンもいるんだよねー。偉いなー」

 ミニリュウがうんうんと頷きながら言った。
 でも、私はそんな事を聞いている場合ではない。また……だ。めまいが津波のように押し寄せ、視界が暗くなる。世界が、時が一瞬止まった。そして、頭の中で光がはじけた。

 どこか岩場のようなところで、スリーパーとルリリがいる。あれ、マリルとスリープはどうしたんだろう。いっしょにいない。そう思っていると、スリーパーがニヤニヤしながら言った。

『おとなしく協力するんだ。でないと、どうなるかわかっているのか』

『や、やめてっ! 助けて!』

 ルリリが涙声で叫ぶ。その目から、大粒の涙が零れ落ちた。幼い子を泣かすなんて、ひどい! なんてやつだ! 
 そこで映像がぷつりと途切れた。

 やっぱり! やっぱりあの声はルリリの声だったんだ。私は正しかった。

「ミーシャ! どうしたの!」

「ささささささ、さっき!! ルリリがスリーパーに岩場のようなところで襲われていて!」

 助けなくちゃ、という焦りと不安の思いでいっぱいでうまく話せない。心がぐちゃぐちゃだ。焦れば焦るほど、心の糸はさらに絡まっていく。
 ミニリュウは、さすがに私の異変を見てうーんと首を傾げた。

「スリーパーって、さっきのマリルたちといっしょにいたポケモン?」

「そうそうそう!」

「でもさ、ぜんぜん悪いポケモンには見えなかったけど。きっと、ミーシャは幻覚か幻でも見たんじゃないのかな」

 にこやかに言うミニリュウを見ていたら、よくわからなくなってきた。確かに、よく考えればおかしな話だ。でも、夢とは思えない。夢にしてはリアルすぎる。気がつけば、私の顔には冷や汗がびっしょり。息も荒いし、心臓はドクドクと鼓動が速い。この事は、あれが夢ではないということを暗示していた。

「行こうよ、ミーシャ。ビッパが待っているんだから」

 ミニリュウは怖いくらい普通に歩き始めた。やっぱり、私がおかしいのかもしれない。きっとそうだ。そう思っておこう。思わなくちゃ。でも、さっきから忘れようと思っていても忘れられない。それどころか、不安が次々と湧き上がってくるのだ。それでも、忘れなくてはいけない。自分のためにも。

 私は自分にそう言い聞かせると、ミニリュウの後について歩き始めた。

〜つづく〜

Re: ポケモン不思議のダンジョン 昼*夜の探検隊 ( No.18 )
日時: 2009/12/31 20:09
名前: レッド ◆mAzj/Mydf. (ID: ZxuEMv7U)

霜歌、おめでとう!あんた、小説の殿堂入りだってよ!!今、小説大会の結果発表を見たよ!!(笑)

あ、私・・・2日前から復帰したので、これからもよろしくね!!(笑)

ルーク青年シリーズの最新作を書き始めましたので、これからも仲良くしようね!!♪

Re: ポケモン不思議のダンジョン 昼*夜の探検隊 ( No.19 )
日時: 2009/12/31 20:09
名前: 亜璃歌♪ ◆P2rg3ouW6M (ID: IoxwuTQj)

「おかえりでゲスー。遅かったでゲスねえー」

 ギルドの地下一階につくと、お尋ね者の掲示板の前でビッパが待っていてくれた。ビッパの背景にはお尋ね者の掲示板に張られた凶悪な顔のポケモンがいて、にこやかなビッパが恐ろしくも思えてくる。ほら、絵の中のお尋ね者がこっちを睨んでいる……。

「遅くてごめんね。ちょっと色々あったから……」

 私はうんざりした。
 まったく、トレジャータウンで買い物するだけなのに何であんなに疲れなくちゃいけないんだろう。やっぱり、あの声と夢が原因としか思えない。今でも頭がキーンとしている。

「じゃあ、この中からお尋ね者を選ぶでゲスよ」

 無神経なビッパだ。お尋ね者を選べって言っても、そう簡単に選べるわけが無い。相手は、悪いポケモンなんだから。こっちは、バトルが得意でもないし。捕まえろって言っても、相手ポケモンに負けたら終わりだ。
 私たちが困った顔で掲示板を眺めていると、ビッパはかっこつけて咳をする。

「ウォッホン。じゃあ、こういうときはあっしがアドバイスするでゲス。えっとおー」

 ウ——ウ——ウ——!!!

 サイレンがギルド中に響いた。私は驚きすぎて、尻尾がピクンと立った。危ない、もう少しで電気を放射するところだった。尻尾の先に付いた透明な珠(たま)は電気技を出す時に光るが、今も電球のように光りかけている。

「掲示板の更新をします! 掲示板の更新をします!」

 突如地面がもっこりと盛り上がり、ダグドリオが掲示板の前にひょこっと出た。ダグドリオの周囲の土が跳ね上がる。あまりに突然に現れたので、私はビックリしてしりもちをついてしまった。きっと寿命が縮んだだろう。それくらいびっくりした。
 ダグドリオは、掲示板に張られているお尋ね者の紙を取ると、新しいものに張り替えていった。凶悪な顔が、さらに凶悪な顔に張り替えられていく。

「あっ、お尋ね者が更新されたでゲスよー。少しは選びやすくなったでゲスかねえー」

「でも、やっぱり悪いポケモンでしょ? 怖いなあ」

 ミニリュウがうんざりと言った。
 確かに、張り替えられて、より恐ろしいポケモンが増えたような気がする。顔に傷のあるマニューラ、目つきの悪いストライク、牙の大きいヘルガー、右上の黄色いポケモンは……誰だろう。ぼやけてよく見えない。

「更新終了! 更新終了!」

 ダグドリオはすべてを張り替えると、またにゅっと地面にもぐって消えてしまった。掲示板の更新など一分もかからなかったが、私にはすごく長く感じた。私はふっと息を吐くと、立ち上がる。そして、尻尾をうまく使って体に付いたホコリを掃った。

「さ、早く選ぶでゲスよ。……ミニリュウ、どうしたんでゲスか?」

 ビッパはミニリュウを見た。
 ミニリュウは、掲示板の方を見て震えている。もしかして、更新されて怖い顔のポケモンがいっぱいになったのかな? ミニリュウったら、怖がりだ。こんなんで、これからお尋ね者と戦えるのだろうか。私も他人の事を言えないのだが。

「ミ、ミーシャ……。掲示板……見てよ……」

「え?」

「ほ、ほら……右上のところ……」

 ミニリュウが見ているもの。そして、掲示板に張ってあるお尋ね者のポケモン。私がさきほどぼやけて見えなかったポケモンだ。凶悪な顔、冷たい目つき、黄色い体……。
 ——私は見て言葉を失った。
 そこに張られていたのは、確かにさきほど会ったスリーパーの顔ではないか!!!

「スリーパーだよ! あいつ、お尋ね者だったんだ! ミーシャの夢は本当だったんだ! ルリリが危ない!」

 ミニリュウと私は叫んだ。
 そしてビッパをおいて、ギルドの丘からすぐさま出る。丘を出る時に、レンゲの花を一輪踏んでしまったが、気にしている場合ではない。花を踏んだため、後ろからキマワリの声が聞こえたがこちらも気にしている場合ではない。

「あっ、ミニリュウさんたち!」

 トレジャータウンと海岸、ギルドの丘、冒険への道へ続く交差点。そこで、マリルが落ち着かない様子でウロウロしていた。青く目立つのですぐにわかる。食べかけのりんごを手にしていた。私たちが来たのがわかると、不安そうな顔で言う。

「さっき、スリーパーさんがルリリをつれてどこかへ行っちゃったんです! 呼んでも戻ってこないし、僕、どうしたら……」

「落ち着いて。それで、スリーパーといっしょにいたスリープは?」

 私はマリルを落ち着かせようとゆっくり言った。そして、じっとマリルの目を見つめる。マリルは深く息を吸うと話し始めた。目が恐怖の色をしている。

「スリープさんはわかりません。ただ、スリーパーさんがルリリを……」

「わかったわかった。それで、ルリリたちはどこへ?」

「こっちです!」

 マリルはルリリたちが消えた所へ案内してくれた。
 そこはダンジョンだった。しかも、私が夢で見た岩場……。地面のあちこちから尖った大きな岩が突き出している。岩の隙間からは、生命力溢れる小さな雑草がひょっこり顔を出していた。見たこともないどす黒い紫の花まで咲いている。小さな石も地面に転がっていて、足場が悪い。

「ルリリたちはここでいなくなったんだね?」

 ミニリュウが厳しい顔で言うと、マリルは頷いた。
 私とミニリュウは顔を見合わせる。これはもう、助けるしかない。これが私たちの初めてのお尋ね者の逮捕だ。

「行こう、ミーシャ!」

「もちろん!」

 私たちは互いに言うと、ダンジョンへ足を踏み入れた。後ろを振り向くと、マリルが心配そうな顔で小さく手を振っている。安心させるために、私たちは笑って手を振った。

 コロコロ……カラカラ……。
 風に吹かれて小石が地面を転がる音が聞こえた。

〜つづく〜


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