二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
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- 旅の始まりは・・【ポケモンの話】
- 日時: 2010/01/04 17:22
- 名前: 017 (ID: xBFeLqnd)
〜コメントはお控えください〜
『俺、明日行くから』
沈む夕日を背にし、そう告げる。
『え・・・?』
近くを流れる川の音や、周りの草木の音で翔太の声が聞き取りにくかった。
いや、聞き違いだと思いたい。
『明日、行く。』
ゆっくり、だが、はっきりと目を見て言われた。
『・・・ぅ・・そ・・』
『本当だ。』
自分は、まだ行けない。
置いてけぼりに・・・・される。
こういう時に、翔太より4つも年下なのが悔しくなる。
あと2年、いや3年早ければ一緒に行けたかもしれない。
『・・・・。』
ぎゅっと両手を握り、視線を地面に移す。
悔しい、ずるい、一緒に行きたかった。
色々な感情が胸の中をぐるぐるする。
無言で立つ翔太は、ゆっくりと近付いてきてぽふっと
頭に手を置いて、なだめる様に言葉を紡ぐ。
『お前も、あと3〜4年もすれば旅に出れるだろ?ここを出て、俺と会ったら、勝負しよう。』
悪がきにいじめられたり、転んで泣いたときに見せる、安心させるような笑顔で、覗き込まれた。
『・・・・・・・約束。』
『うん、約束。』
翔太は約束を破ったことが無い。
だから、約束させる。
必ず、勝負をするために、また会おう。っと。
『・・・・優の・・・最初のポケモン、翔太がとって。』
『ん・・わかった。』
ぽんぽんっとされる頭を少しあげ、背の高い翔太を見上げて、
『約束、ねっ!』
泣いているような、笑ってるような、そんな顔をして、翔太を見上げる。
翔太は笑ったままこくりと頷き、右手を差し出し
『さぁ、帰ろう。』
いつものように、当たり前にその手を取り、翔太と川原を歩く。
明日には、この村を立ってしまう翔太。
いつもより、少しゆっくり歩きながら、もう殆ど沈んでしまった夕日を見る。
『約束・・・・だからね』
ぽつりと呟いた声は翔太には届かず、風にとけてゆく。
———・・次の日。
まだお日様が顔を出す前に、翔太はこの村から旅立った。
- Re: 度の始まりは・・【ポケモンの話】 ( No.6 )
- 日時: 2010/01/03 22:53
- 名前: 017 (ID: xBFeLqnd)
「・・・・ん〜・・」
首元が寒い・・・
ベットの上でもぞもぞと動く。
「・・・・いっ・・・・」
い・・・・痛い・・
足首が痛いよ・・・
布団の中で痛い方の足首を近くにもってくる。
なんで痛いんだっけ・・・?
足首に触ってみると、包帯が巻かれていた。
あれ・・・?
・・・・・・・・・・あ。
昨日の事を思い出し、がばっと起き上が・・・
「・・・・〜っっ!!!」
声にならない悲鳴をあげ、足首を押さえていると、すぐに2人くらいの足音が階段を駆け上がってきた。
ダッダッダッダッダ・・
バンッ!
力いっぱいドアを開けたのはお母さんだった。
「あ、おは・・・」
「ゆうっ!」
がばっと抱きしめられ、ベットにお母さんと一緒に倒れこむ。
「え?な・・え?」
いきなり抱きつかれ混乱していると、お母さんと一緒にあがってきたお父さんが怖い顔で立っていた。
いつまで立っても抱きついて離れないお母さんを見ながらお父さんが溜め息を吐いて、口を開く。
「・・・・ゆう、昨日あったことを話しなさい。」
怒り声でそう言われ、思わずお母さんの腕の中で小さく縮こまる。
「あなた・・・ちょっとまってあげて。」
私の上から起き上がったお母さんが、ギロッとお父さんを睨み付ける。
私もすぐに起き上がり、2人を交差に見るが、最後にお母さんで止まった。
しゃがみ込んで視線を同じ高さにしながらゆっくりと喋りだす。
「昨日・・・・何があったか話してくれる?」
心配そうに、だが、昨日何があったのか絶対聞き出すまで逃がさない。という目に負け、しぶしぶ話し出す。
昨日山を1人で登っていたら野性のポケモンに会い、びっくりして山から転げ落ちた。
その時足をひねったと嘘を吐いた。
どうしても、あのウインディが気になったからだ。
「・・・・嘘は吐いてないわね?」
じっとお母さんに見つめられ、その視線から逃げるように俯き、頷く。
「・・・・・わかったわ。今日は学校休みなさい?その足じゃ、行けないでしょう?」
許してくれたのか、いつもの優しい声に戻っていた。
お父さんはまだ納得いかないのか、何か言いたげだったが、お母さんに押されるようにして部屋から出て行った。
「・・・・ばれなかった・・・。」
溜め息を吐いて、またベットに横になる。
まだ寝足り無いのか、大きなあくびをつく。
このままもう1度寝ちゃおうか・・・
まぶたをゆっくりと閉じ、寝る体制に入る。
あのウインディ・・・大丈夫かな・・
どこか、怪我・・・・してる・・・の・・・・・・か・・・・なぁ・・・。
- Re: 度の始まりは・・【ポケモンの話】 ( No.7 )
- 日時: 2010/01/03 22:54
- 名前: 017 (ID: xBFeLqnd)
コンコン・・
「ん・・・」
浅い眠りからゆっくりと意識が戻ってくる。
「ゆう?起きてる?」
「・・・うん」
お母さんの声に反射的に返事をする。
あれ・・今何時だろう・・・
ふぁぁ〜っとあくびをし、眠い目を手で擦り起き上がる。
ガチャ・・
お母さんがドアを開け入ってきた。
「これ・・」
そういってテーブルに置いたのはシチューにパン、それにお茶だ。
「・・・美味しそう!」
くんくんと匂いを嗅ぎ、匂いに釣られるようにしてベットから這い出る。
そのまま四つん這いになり、テーブルの前まで這って行く。
「はい、これ。」
そう言ってお母さんが差し出したのはお手拭タオルだった。
「ん〜」
上機嫌でタオルを受け取り、手をぱぱっと拭いてパンを取る。
「じゃあ、お母さんは下にいるからね?後でお盆は取りにくるから。」
立ち上がり出て行くお母さんにふぁ〜いと返事をし、ぱくぱくとシチューとパンを胃に詰め込む。
・・・あっつ・・・・・けど、美味しい!
もくもくと食べ続け、あらかた食べ終わってから視線を上げ、今何時かを確認する。
時間は13時を少し過ぎていた。
私結構寝たなぁ・・・・あ!
「・・・・ウインディ!」
すっかり忘れていた。
少し様子がおかしいウインディの姿を思い出し、立ち上がろうと足に力を入れるが・・
・・・・・っ!
だめだ・・足が・・・・
昨日の今日でまだ足が痛み、立つのも難しかった。
どうしよう・・・
暫し迷った後、足首が痛まないように、膝立ち移動で本棚の前に移動し、ポケモン関連の本を取り出す。
ウインディ・・ウインディ・・・・
ウインディのページを開いてみるが、なぜ苦しそうなのか、わからなかった。
なんで・・・?
ポケモンだけを倒し、人間には手を出さなかった。
洞窟で蹲ったまま動かない・・・・
昨日の事を出来るだけ思い出し、何が原因か必死に考える。
そのまま山道を帰って、途中カゴの木が・・・・カゴの木!
直ぐに木の実の本を取り出しカゴの実のページを探す。
カゴの実は確か・・・・睡眠だったはず。
ポケモンを持ってないから、その分ポケモンの事を調べ、色々勉強した。
木の実もほぼ全種類覚えた。
「・・・カゴの実カゴの実・・・あった!」
上のほうが青色で、下のほうがピンク色のカゴの実の写真。
これだ・・・!
眠ってしまったポケモンを目覚めさせることが出来る木の実。
渋くてとても硬いが、全部食べることが出来る。
でも・・・・
「・・・なんでカゴの実?」
疑問だった。
あのカゴの木は見方によっては、食いちぎったようにも見える。
だが、あのウインディは起きていた。
なのに、なぜ寝てしまったときに使うカゴの木の花や実をあんなに食べたんだろう?
「・・・そもそも、食べたとは決まってないか・・」
どういう事だろう・・・
兎に角、まずしなくちゃいけないことは・・・
「おかああさあああん!」
パタンと本を閉じ、大声でお母さんを呼ぶ。
「どうしたのー?今行くねー?」
少し驚いたような声で返事をしながら階段を上がってくる足音が聞こえる。
お母さんが来るまでに本を全部しまい終え、来た時と同じように這いながらテーブルの前に移動する。
ガチャ。っとあけて顔を覗かせたお母さんに、先に声をかける。
「あのね、足治したいの!」
「・・・え?」
ポカーンとするお母さんに、さらに言葉を続ける。
「どうしても足を治したいの!」
お願ーい。っと言い、甘えるときに使うちょっと上目使いをしてみせる。
「数日もすれば治るでしょ?急がなく・・・」
「早く治したいの!」
お母さんの言葉を遮り、四つん這いになりながらお母さんの足元まで近付く。
視線を合わせるようにしゃがみ込んでくれるお母さんに、抱きつくようにしてお願いをする。
「・・・なんで、早く治したいの?」
真っ直ぐに目を見られながらお母さんにそう聞かれる。
朝、嘘を吐いたばかりだ。
これ以上嘘を言いたくない・・・
「・・・・お願い・・・」
理由は聞かないで・・・・足を治したい。
ぐっと原に力を込め、お母さんを見つめ返す。
そらしそうになる視線を真っ向から受け止める。
「・・・・。」
「・・・。」
- Re: 度の始まりは・・【ポケモンの話】 ( No.8 )
- 日時: 2010/01/03 22:55
- 名前: 017 (ID: xBFeLqnd)
暫し見つめあいながら無言が続き、しょうがない・・という感じでお母さんが溜め息をついた。
「・・・お父さんには内緒だからね?」
いたずらっ子のように片目でウインクして立ち上がるお母さん。
「うんっ!」
やったあ!と声を出しながら喜び、お母さんに・・・正しくは足に抱きつく。
「で・も!」
顔をずいっと近付け、人差し指を立てる。
「・・・・日が沈む前には、帰ってくるのよ・・・?」
本当は、行かせたくない。
だがこの子は行ってしまう。
それがわかってるのか、お母さんは言葉にはせず、夕方までに戻ってくるのを私に約束させた。
「うん。必ず戻ってくる。」
ちゃんと目を見て約束する。
納得したのか、部屋にいなさい。と言い残し、お母さんは下に行ってしまった。
膝立ちのままクローゼットの前に移動し、着替えるための服を出す。
またあの洞窟に行くから、動きやすく、暖かい服装をしなくてはいけない。
それに・・・・
ウインディの苦しそうな姿を思い出し、拳に力を入れる。
服を着替え、靴下を履こうとした時、階段を上がってきたお母さんが顔を出した。
「今から、保健室の先生が来てくれるわよ。」
きょとん。と首をかしげる。
なんで保健室の先生が来るの?
そんな私を見てくすくす笑いながらお母さんが続ける。
「保健室の先生はラッキーを持っているでしょう?タマゴ生みをしてもらうの。」
あぁ!納得。
「うん、わかった!」
タマゴ生みはポケモンにも、人にも使える技だ。
病気は無理だけど、傷を癒すことが出来る。
「・・・・・・あ・・」
部屋を出ようとしてたお母さんが私の声に反応し振り返った。
「どうしたの?」
はっとして首を横に振る。
「ううん!なんでもないの!」
そう?と言いながら下の部屋に行くお母さんの足音を聞きながら、ぼんやりと窓から外を見る。
どんよりと、今の私のような今にも雨が降りそうな空だった。
そう、気付いたんだ。
もしかして、あのウインディは怪我ではなく、病気だったら・・・・。
それに気付くまでは、クラボやモモン、チーゴやオボンの実を摘んで、ウインディがいるあの洞窟に行こうとしていた。
怪我なら、治っただろう。
けど、怪我じゃなくて、病気だったらどうする・・・・?
履きかけの靴下を放り出し、本棚の前に移動し、ポケモンがなる病気の本を取り出す。
ポケモンはまだわからないことが多すぎて、見つかってない病気や、治し方のわからない病気が多い。
人より病気にかかりにくいが、病気になってしまった場合は、治し方がわからなく、大抵死んでしまう。
それは、子供の私でも知っている。
言葉という壁は、それほどまでに高く、乗り越えるのが困難なのだ。
・・・・もしかしたら、あのウインディはもうあそこにいないかもしれない。
ふっと浮かんだ考え。
・・・・もしいたとしても、また私を見逃してくれるとは考えにくい。
醜い、逃げようとする頭が考える。
・・・・足も痛いし、治ってからでも問題ないよね・・?
ウインディが気になるのは事実。
だけど、昨日のような怖い思いをするのは体が・・・・私自身が嫌。
・・・・・うん。
———行くの、止めよう・・・。
- Re: 度の始まりは・・【ポケモンの話】 ( No.9 )
- 日時: 2010/01/03 22:56
- 名前: 017 (ID: xBFeLqnd)
そう考えがまとまり、本を閉じる。
本を本棚に戻そうと持ち上げたとき、電気をつけていなかった部屋が一瞬ピカーっと光った。
・・・・え?
戻そうと本を持ち上げたまま窓から空を見る。
ゴロゴロゴロゴロロロ・・・・
地響きのような、大きな音がした。
「・・雷・・・」
雨は、まだ降っていない。
だが、今にも振りそうな空を見つめ・・・・・・先ほどの考えを変える。
行かなきゃ・・・
ぎゅっと拳に、足に力を入れる。
持っていた本を放り出し、放置出したままの靴下と防水性のパーカーを掴み、部屋を出る。
まだ足は治ってないから、ゆっくり、落っこちないように階段を降り、そのままお母さんがいるリビングまで行く。
「あら?ゆう、部屋にいればいいのに・・・」
言いながらゆっくり振り返ったお母さんが、私の格好を見てそのまま固まる。
どう見ても、外に出かける格好だったからだ。
「先生、いつ来るんだろう・・」
それに気付かなかったかのように話を切り出す。
声には出さず、行くの・・と口を動かしたお母さんになるべく明るく声をかけ続ける。
「雨降りそうだよね!だからこのパーカー着ていくの!」
なにか言いたそうな顔だが、諦めたように笑い、
「そうね、雨が振り出したら帰ってきなさい?」
「はーい!」
お母さん・・・ありがとう。
何も聞かないでくれてありがとう。
我がままを聞いてくれてありがとう。
・・・・何も言えないで、ごめんなさい——・・。
心の中で誤る。
だが、後戻りはしない。
もう行くと決めたのだから。
ピーンポーン・・
「あ!」
「先生かしら・・」
ぱたぱたと玄関に走っていくお母さんの後姿を見ながら、ゆっくり台所に入り、ビニール袋を1枚ポケットに入れる。
何事も無かったかのようにリビングに戻り、先生が来るのを待つ。
「優ちゃん、大丈夫〜?」
白い白衣を着た女の人と、お母さんがリビングに戻ってきた。
「・・・足が・・」
ふふっと笑い、先生がモンスターボールを取り出す。
「おいで、ラッキー」
ぽいっと投げ、中からピンク色のポケモンが出てきた。
投げたモンスターボールが先生の元に戻り、ラッキーが先生の指示を待っている。
「ラッキー、優ちゃんの足首にタマゴ生み。」
こくりと頷きながらラッキーと声をあげ、お腹のポケットからタマゴを取り出し、ぽんっと私の足に投げた。
「あ!」
あんなおっきなタマゴが当たったら痛い!
と思い、咄嗟に目をぎゅっと瞑ったが、痛みは無く、暖かい”なにか”が足首を包み、歩くのも困難だったくらいの痛みが一瞬で引いていた。
「凄い・・・」
ぽつりとでた言葉に先生はふふふと笑い、ラッキーは嬉しそうににこにこ笑っていた。
「ゆう、足の痛み取れた?」
「・・・・うん!」
お母さんの声に返事をし、持っていた靴下を履きながら先生にお礼を言い、返事を待たずに廊下に飛び出る。
「あらあら、優ちゃん治ったら遊びに行くの?」
「ちょっと用事があるの!」
びっくりしている先生にまた明日学校で!と元気よく声をかけ、お母さんに行ってきますー!と一言いい家を飛び出す。
「すいません、先生・・・」
「いえいえ、元気なのはいいことですよ。ね?ラッキー」
- Re: 度の始まりは・・【ポケモンの話】 ( No.10 )
- 日時: 2010/01/03 22:57
- 名前: 017 (ID: xBFeLqnd)
雨が降りそうな空を見上げながら、学校を目指し走る。
すれ違う人はあまりいなかった。
この雨が降りそうな天気で、外で遊ぶ子は少ないだろう。
全速力で村を走りぬけ、やっと学校が見えてきた。
「あ、優ちゃぁぁあん!」
校庭を横切ろうとしたとき、校庭でポケモンと一緒に遊んでいる子達に声をかけられた。
「今日どうしたのー?」
「なんで学校休んだのー?」
学校を休んだ私がここにいるのが不思議なのだろう。
だけど、今かまってる暇はない。
「ごめーん!明日学校でー!」
足を止めず、口に手をあて声を張り上げる。
言った後はもう裏庭を目指すためにまた全速力で走り出す。
早くしなきゃ・・・!!
呼吸するたびに脇腹が痛い。
もう全速力で走れないが、歩みは止めず、なんとか裏庭にたどり着く。
荒れている呼吸を落ち着かせながら木の実がなる木々が生えている場所に近付く。
その中から、クラボの実、モモンの実、チーゴの実を格1個取り、最後にオボンの実を5〜6個取った。
家から持ってきたビニール袋を取り出し、今取った木の実を入れ、そのまま大事に抱えて洞窟がある山まで小走りで行く。
なるべく人に見られないように、家の裏を通り、なんとか山の入り口まで着いた。
「・・・行かなきゃ・・」
無意識に口走り、あの洞窟を目指して歩き出す。
木の実が入った袋を両手で胸に抱き、落とさないように、取られないように、守るようにして山を登る。
ほぼ毎日山登りをしているから、この辺の山の道は完璧だ。
どこに川があり、どこに崖があり、どこに行けば村を見渡せるか・・・・。
足取りはおぼつかないが、真っ直ぐ前を向いて洞窟を目指す。
チョロチョロと小川の流れ、枯れた落ち葉を踏みしめ、ゆっくり、だが確実に洞窟に近付く。
1度休憩をしたが、なんとか洞窟の近くまでやってきた。
ウインディいるかな・・・
もしかして、もういないかも・・・。
不安と期待、恐怖と安堵が混ざりながらも、遠巻きに洞窟の前に出る。
目を細めじーっと洞窟の中を見つめる。
・・・・・いた!
私に気付いているのだろう。
蹲っているが、顔をこっちに向けている。
ウインディの姿を見て、震えだす。
昨日の恐怖がよみがえる。
木の実だけ置いて帰るだけ!
自分に言い聞かせ、ゆっくりと歩き出す。
1歩1歩歩き出すたびに、クシャ、っと落ち葉と砂利の音が当たりに響く。
ウインディがいる洞窟まであと20m。
そこまで近付いて、ウインディがやっと顔を上げ、唸り声を出した。
・・・・もう少し・・・!
1m、2m・・・・洞窟から10m離れてるか離れてないか。
それくらいの距離まで来ても、ウインディはまだ立ちあがらない。
だが、私の足も、もう進まない。
「・・・・こ、これ!」
震える声でウインディに見えるように、両手に持っていた袋を見せる。
ウインディは賢い・・・わかるかもしれない。
袋の中に手を突っ込んで木の実を1個掴み、ウインディに見えるように突き出す。
人間の言葉がわかるなんて思わないけど、木の実は匂いでわかってくれるはず・・・!!
その場にしゃがみ込み、袋の中に入っている木の実を全部出す。
クラボの実、モモンの実、チーゴの実、オボンの実と順に置き、ウインディに見えるように1個1個説明する。
「こ、この真っ赤な赤い木の実がクラボの実で、体が麻痺してるならこれを食べて・・・」
摘んでウインディに見せ、次にモモンの実を掴んでウインディに見せる。
「このピンク色の木の実はモモンの実。毒の状態なら、これを食べてね。」
手が、足が、声が震える。
だけど・・・!!
左手にチーゴの実を、右手にオボンの実を掴んでウインディに見せる。
「この青い色をしてるのがチーゴの実、だよ。焼けどを負ってたらこれも食べてね・・・それでこっちがオボンの実・・・。」
左手に持っていたチーゴの実を地面に置いて、右手で持っているオボンの実を両手に持つ。
「ちょっといびつだけど・・・美味しい・・はずだから、食べてね・・・」
最後の方が風にかき消されてしまったが聞こえただろうか?
唸り声を上げないウインディはじっと私を見ているだけで、動こうとしない。
ゆっくり立ち上がり、後ろに下がる。
「た、食べて元気になってねっ!」
木の実を入れていたビニール袋を握り締め、くるりと後ろを向いて走り出す。
本当は、背を向けて走ったらいけなかった。
学校で習ったことがある。
習性で追いかけたくなるらしい。
だけど、早くウインディに食べてもらって元気になってほしかった。
正直、怖いのもある。
だけど、元気になってほしい。
この思いのほうが、強かった。
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