二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
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- LILIN
- 日時: 2011/12/09 00:48
- 名前: そう言えばこしょうの味知らない (ID: 1kkgi9CM)
ロサンゼルス(Los Anjeles)はカルフォルニア州の一部だそうです……この小説の本来の舞台は本州のナパバレー(←実はテキトーに決めた)だったのですが、確か今のところ小説内では仄めかしはいない様な気がします。
ちなみに、Los はスペイン語の男性冠詞だそうで、ロスの由来はそのまま「天使」という意味だそうです。
……設定おいし過ぎはしませんかw
〜 小説世界観〜
EVAシリーズの開発は日米で検討されていた。しかし、当時の科学ではEVAシリーズ構築の礎をはっきりすることはできなかった。
ちょうど、その時代、アメリカでは数々の異星人目撃情報あり、偶然、米軍事衛星からもその姿はとらえたれた。
その現場は南アメリカのアマゾン湿地帯。ただちにアメリカは例の異星人確保のため、軍隊を投入した。
その過程で発見された異星人は後にアダム以来発見されてかった使徒だと判定され、体長が約15メートルもあり、肉眼ではほぼ半透明で月の光でないと輪郭は捉えられないと報告書にかかれた謎に満ちた生命体だった。これに目を光らせたアメリカはこの異星人を上書きしてEVAの礎とし試作機が完成。
そして世界初試作機はアメリカが一足先に開発したと思われた。しかし、相次ぐ実験の失態に、このEVA試作機は学者たちに丸投げされてしまい、ついには試作機のことは極秘とされてきた。
のちにEVA初号機、零号機か日本で開発され、アメリカのEVA試作機はその阻害にならないように、後のEVAの名づけや、非戦闘機の所以を含め、虚数単位を用い“EVAi号機”とされた。
注*)
・基本内容とストーリーは{新世紀エヴァンゲリオン}を参考にしてます。
・本編では新たにEVAi号機が登場←本編オリジナル設定故グーグルで検索しても出てきません(泣
・もちろん、本家の登場人物も抜擢してますよ〜
〜登場人物〜
鳥居 雄 (トリイ スグル)
・15歳の少年。愛読家。
・アメリカ在住の日系人、両親が行方知らず、祖母だと名乗り出た老婆に育てられることになったが……?
・再開発された“EVA_i号機”のパイロット候補生の一人。
驫木 零時 Sanchez (トドロキ レイジ サンチェス)
・ネルフカルフォニア支部戦闘指揮官の好青年
・加減を知らず、頭ごなしや出任せが多いトラブルメーカー
・スグルと同じ境遇にあり、できる限り彼の良き理解者となろうとする。
市井 スミレ (しせい すみれ)
・零時の秘書かつEVA_i号機の開発責任者
・健康管理のため、スグルと同居することに!?
・言動が少しばかり男勝り
Jack Hernandez (ジャック ヘルナンデス)
・スグルと同じくEVAのパイロット候補生となる少年
・スグルのことを新入りと呼ぶが、実は自分もそうだったりしている
・涙もろく、感動巨編では必ずハンカチをご用意
☆以下、エヴァンゲリオンのレギュラーメンバー方々☆
>>1 プロローグ
第一章
>>2キオクノウミ
>>3始まりの末端
>>4願望への案内人
>>5いたずら女の粋な計らい
>>7アブナイ花を摘もう☆
>>8A−11地区
>>9ブレイクファースト
>>10ブレイクファースト2
>>11ブレイクファースト3←NEW!!
>>12QUEEN pece←NEW!!
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- Re: LILIN ( No.6 )
- 日時: 2011/09/05 00:46
- 名前: そう言えばこしょうの味知らない (ID: PDV9zhSY)
要するに、派閥争いに近い。私がこの小説を書こうとした理由はただそれだけでした。
こしょうブランドを取るかEVAブランドが先か。問題はそこにあったのです。。。
えっと、何が言いたいかといいますとごにょごにょ。
世の中には銘柄と言うもんがございます。もちろん大抵はモノを見て良しとするのが需要への重点なのでしょうが、そいならブランド物を他のと等価値で見ることができるか? と言われればそうでもない。そんな人の心理を利用してみようかと思って始まったのでした……。
さて、何、夏休みの宿題もロクにこなしていない人間が語っているのか? といいますと……確かに今言われると困ってしまいますが、そーゆーことなのです。
つまり、銘柄EVAか銘柄こしょうか!? の審議をさせていただきました。
結果は案の定なのでまぁそんなとっかぁ〜と思っている今日この頃です。
EVAファンの皆さんごめんなさい。そしてほおって置いてくれてありがとう。
これでもうすこしこの小説を書けるよ! 今は忙しいけど。
- Re: LILIN ( No.8 )
- 日時: 2012/02/28 00:56
- 名前: そう言えばこしょうの味知らない (ID: 2ft.mOaW)
「「はぁ〜」」
お互いに疲れ切ったのか、溜息をほぼ同時にしながら、俺とヘルは夕日の差し込んでくる側の席に隣合わせで座った。
一見、職業体験みたいなものだが、慣れない仕事となれば流石に肩が凝る。
同時に、今回の職場案内で俺たちは歩き廻ったのだろうかと自問する。そもそもこの疲れは、スミレさんのの意欲的な健康志向が俺たちを1階から5階、5階から7階、7階から2階と連れまわした結果なのだ。
スミレさんがあぁ、そうだと思いつけば上下左右振り回される。刑事コロンボ氏みたいに振る舞うのは些か人生の合理性をご理解していないように思われた。
しかしながら、普段からあのような要領の悪さを利用し、脂肪消化に当てているあたり、流石は侮れないとも思えたのでした、まる。
「歩き疲れるなんて久しぶりかも。ここいらの砂浜で散歩しまくっていた自分がウソみたいだよ」
「砂浜? お前、地元出身なのか?」
身を捩って窓の外を見つめる。現在この電車ジオフロントを抜けて、住宅街や、そびえ立つビル群がの奥の海が丸ごと見渡せるような高地に差し掛かっていた。
あの赤い海は夕日のオレンジ色に溶け込むように、その鋭い鮮血を思わせる姿を落ち着かせている。
「こっから見えるかなぁ……あった。あの左っかわの奥に鐘っぽいやつがあるじゃない?」
「左ってことはA−11地区あたりか? あそこで鐘って……あの教会ことか」
「うん、あそこで俺はまぁ、7年間くらいだけども育ったんだ」
視線をヘルに向けなおしてみると、彼は窓を見ていなかった。
それどころか、ふ〜んと息を吐いて今のところは興味を示していないようだ。
「で、この間その7年間の別れを惜しみながら、ここへ……ネルフっていう最高峰の国営企業に俺がスカウトされたって“おばば”が」
「あの熟年シスターか」「それは、可笑しいなぁとは思ったけど。世の中どんなことでも起こるものなんだって教わったから信じるしかなくて」
俺が両親に捨てられ、そのまま孤児暮らしを平然と送って来れた事がその例だ。あまり実感はないけど、実際にはすごい事なのだろうとは分かる。
ホント、よく生きて来れたものだ。少しは両親や祖母-------家族の事を思って泣くべきなのだろうが、生憎今までそんな感情に押し流されたことがないのだし。
「そしたら、来たら来たで、設備投資の穂先が最先端過ぎて笑える、というね」
なんだか、恵まれているのか、単に目の前に爆弾がチラついてるだけなのか、よくわかったもんじゃなかった。
「俺もここに来て2週間ぐらいだからまぁ、今でもお前みたいに驚かされてばっかだな。この前なんかスミレさんにコーヒー買ってもらった時、明日あたり初CMのゴールデンマウンテンが既に自販機にあってよ」
「それはちょっとベクトルが違う気がする」
「良い所に来たなぁと思ったな」「それだけで(笑」
お互いに、微笑しながら。また、流れゆくA−11地区を見つめる。
あの場所での思い出はもうすでに褪せたものだから、たまに回顧に浸ればいいのかもしれない。そのためにこの電車に乗って通って。帰りにこの風景をまた一度見られれば、それだけで満腹だろうと思う。
俺がそんな風に考えていると、閑話休題というように、ヘルがこんな話題を振ってきた。
「とこでよ。お前はさ、あれ見てどう思ったんだよ?」「あれ?」
「EVA……見たろ」
縮こまった腰を伸ばし、捻り、声を絞り出すようにヘルが言う。声の質が先ほどと変わらないのに、どこか重みを感じる質問だった。
「一言で言うなら、まじかよぉーって感じかな」「ハハ、同じく」
彼は渇いた笑い声で肯定してくれた。
「ありゃゼッテー夢に出てくると思われる代物だ」
「俺なんか昔受けた健康診断先の病院で、巨大MRIから逃げ回ったのを思い出したよ」
「どうにしろトラウマの種か、あれは」
「でも、使徒ってやつが来れば乗るんだよね、やっぱり」
あの場所に通う、その意義。業務内容、EVAパイロットであるから。それだからここに俺たちは居る。
これから一体、職務内容に対し、どんなに不安にさいなまれることなのだろうか。
昔、俺が教会の前に置いて行かれた時とまた同じような恐怖を味わうことになるのかどうか。それは、まだまだ定かではない。
- Re: LILIN ( No.9 )
- 日時: 2012/01/04 22:42
- 名前: そう言えばこしょうの味知らない (ID: TQ0p.V5X)
気分が沈んでいる時、彼は大抵この場所に来る、という事をスミレは知っている。
別に彼自身の特別な場所ではない、単に外気に身の苦悩を溶かしてしまおうという謂わば“人が黄昏ていたい”という感情によるものだろうとスミレは考えている。それは良い。だが、自社ビルの屋上であろうことか缶コーヒー片手に仕事をサボりやがる輩にはさすがの彼女もあまり合点が出来ないでいた。が、それでもたぶん許している部分があるのかもしれない。
「これ、こんなとこで何遊んでいるんだ?」
屋上の扉を開けるのと同時にスミレは声を放った。その場所に居るであろう彼に。
--------案の定、零時はすぐに彼女の声に反応した。
「仕事抜け出して、秘書に託すようになったら最後。次期司令官は貰ったな」
「スミレ……あぁ、すまない。すぐに戻る」
腰程度の高さである鉄柵にもたれ掛り、零時は答える。
予想通り、ゴールデンマウンテンを右手に腕を組んで置き、それを支えに腰を落としている。その姿を傍から見れば、いやスミレから言わせてもらえば、
「毎回このシチュエーションのたびに思うんだけど。よくそんな背中縮こまるもんだわ。物理的にも」
「これは猫背なんで、デスクワークもあながち侮れないものだな。お前も飲むか、コーヒー奢るぞ」
結構、スミレはそう言ってため息をし、零時に寄って同じく鉄柵に重心を預ける。
……こりゃ、しばらく動けない姿勢だろとか思いながら。
「止めといたほうがいいぜー、他人にそこまで気を遣うの。今回の臨時会議でも、先の要求こそ通せど、零時自身結構な譲歩したって……ダメだっていえば考えたのに」
普通に予算不足なら、先ほどの部品調達の件を断ればよかったのではないだろうかと彼女は思う。無理に自分だけ悪人になるかたちで振る舞われるとなんだか、逆にこちらが心配になってしまう。
「考えたって湧いて出てくるようなものではないだろう? いいんだこれで」
部品、用品、を気にする暇があるなら仕事しろ。ということにスミレは聞こえたような気がした。
「……あのねぇ、ぶっちゃけ私の仕事わかってる? 魂が抜かれているから暴れない、とか非科学的な言い訳に押し付けられて、どこの馬の骨なのかもわからない嫌に生々しい有機物にモーター類を突っ込む作業なんだぜ? 普通におもちゃ会社に勤めた方がましだったわ」
スミレの頬が膨れ上がり、ふてくされる。しまったとも思ったのか、零時はすぐに話題を変える。
「それにしても臨時会議があるたびに落ち込んでいるのか、俺は」
「何よりも、ここに来てる時点で、また何か阿呆なことした様にしか思えないってのが私の推測。てか、その前に司令課の連中から電話で、大変っすスミレさん! 零時さんが------のとこでヤツはやらかしたのだろうと」
「あぁ、もはや、やらかした方で愉しんでいるのだなお前は。それで?」
「その後、“それでもテキトーに仕事やっときな”って言っておいよ。失敗しても矢雨が降ってくるのは上司の方だし」
「おい、待て。それではお前が原因なこともあるのか」
「今年の新入社員にも社訓の一つとして教えといたよ。しっかし、呑み込みが早いのかもう3例とんでもないことが」
「そうか……お前に近づくたびに屋上フラグが増えているの……だな」
今の一言は涙声が混じっても可笑しくないだろう。
“アメ”を入れ込むには、ちょうどいい頃合いである。
「まぁまぁ、そんなヒステリックになりなさんな。ほれ、アメ舐めな」
まぁ、そのままなのであるが。ポケットから彼女は取り出す。
「えっと。今回もありがとう、零時。毎度ですがお礼です」
「……こりゃどうも」
「ついでに今回は何について慰めてほしいよ?」
「うむ、そんなことよりも、俺を筋肉隆々の輩に育ててくれ」
零時が手の中のアメを強く握る。
「却下、またそんなことなの?」
「…………………」
「あ〜、分かった分かった、だから無言で黄昏るなって。何? どーゆーこと?」
「聞いてくれ、上層部のほとんどの連中が休日に合同ボディービルディングを……ってなんだ、それがイマドキ接待なのか? 全面的に私に喧嘩売ってるとでしか思えないだろう。喧嘩? いや違う、威圧だ そうだそうだ上からの威圧以外の何物でもない」
「どこに避難する要素があるんだか……大体そうゆう人たちに物言いできなくて、何がせ・ん・りゃ・く指揮官さ。何もそこまで押し込まれるような身分でもないんだし。もっと前にでるべきなんじゃないの?」
「もう、死にてぇよ」
首をがっくりと落とし、零時が俯き始めてしまう。
何と間抜けなことで勤務時間を……と、スミレは呆れた。
顎を鉄柵にくっつける。
屋上から見える、夕日のオレンジ色に染まったジオフロント内。実際のところ、天井となる特殊装甲の仕様でこの地下施設に、本来の空の色を70%まで影響させることが可能になった。
ついこの前まで、ここは夜一色。月明かりもない闇の地下世界に地上の光が入るきっかけになったのは零時の決断故だったのを思い出すと、その前にスミレが彼にここの外はいつも暗くて感覚が狂うと言ったことも思い出した。
「ところで、スグルたちはどうした?」
「ちゃんとエントランスの改札まで送ってきたぜぇ。あとは自分たちで帰るからスミレさんはお仕事に戻ってくださいって……殊勝だと思うなぁ」
「うるせぇ。 こっちだって色々ある」
「相変わらず子供だな」「だから言うなよ」
夕焼けの色に溶け込んでしまうほど薄い困り笑みで零時が放つ。
案の定、二人はまだ屋上の鉄柵に乗り出したまま。先ほどから一歩も動いていない。
「仕事ねぇ……何しているのかも分からないのに。嫌なとこだけ鮮明に分かっているんだ。ほら、あの生々しいロボットの内部構造とか」
知覚ピントが外れてるって、全く。そう呟いたスミレは同時に目を虚ろにする。
「あの例の上層機関が何をたくらんでいるのかも」
「親会社に対して酷い言い分だな」
「違う、そんなつもりはないけど……どうにも納得できない節がある」
零時は目の前の夕日色に染まった3kmくらい遠くの地下壁面からスミレに目の焦点を合わせる。オレンジに塗られたそのまだ幼さを残す顔だちをまじまじ見ると、零時はなんとかはぶらかそうと口を開く。
「まぁ、あのようなの物を作らされているのだから確かにそう思うだろうが、思う価値すらないと思うぞ」
「何ぃ言ってんだ。価値がないものを作ってはしょうがないぜぇ?」
「いや、それを気にする人物が少ないという点でたぶんお前にも意味がないものだろうと。そーゆう事だ」
なんのこっちゃ。とでも言うようにスミレは彼の言葉を無視する。
「イマイチうちの業務内容が分かれてない気がするんだって、それだけさ〜」
さも詰まんなさそうに語尾を伸ばす。
確かに、スミレの訴えには零時自身にも覚えがある。彼もまた、彼女と同じ疑問を持っていた時があった。もちろん、今も“全て”をわかっている訳ではないが。
「どうだろうが、給料もらえりゃいいからな、俺」「嘘付け」
誤魔化すどころか惨敗にあった零時はバツの悪そうな顔する。
寄りかかった鉄柵や流れる冷気が体温を奪っていく中、二人はずっと寄り添っていた。
- Re: LILIN ( No.11 )
- 日時: 2011/12/05 13:24
- 名前: そう言えばこしょうの味知らない (ID: 1kkgi9CM)
「教会?」
自分でも素っ頓狂な声を挙げたと思った。
その声色の意図を理解したのかスミレも少々訝しみながらもその続きを話した。
「あぁ、A−11地区にある教会で育ったと本人がさ。本来なら孤児院って意味合いで言いたかったんじゃないかな?」
それもそうだ。地上の装甲の大規模工事が始まったのは、見積もって十数年前のことだ。差し当たり、債権のたまった建物や、歴史ある建造物すら全て一掃されているのが事実だった。そこに歴史ある建造物とされるような古い教会が存在するなど、そう容易いことではない。
それにしても……
「孤児院か」
ふと、昔の事を思い出してしまう。
今となっては、本当にどうでいいと傷つけていた自分がいたこと。いつも無表情で、喧嘩ばかりして、ついに成長してみれば周りが筋肉だらけで勝ち目がなくなり、委縮していた愚かな自分。半分笑って、半分あきれ顔になって俯瞰する。馬鹿め。お前にはちゃんと----------
「……なんか思い当たる節があるみたいだな」
「あぁ、いや違うんだ。つい自分のことを、な」
……あ。
どちらのものか、不意に声がもれた。
「そうか。ごめん、変なこと思い出させて」
「そんな、別にいいんだ。今となって変な心地でまとめ上げられているちっぽけな過去にすぎないんだから」
気にすることはない。そう弁解しながら宥めようと……ん。
胸元に入れておいたケータイが突然震えだし、着信音の讃美歌が高々と屋上にこだました。
「電話?」
同時にスミレが着信を知らせる。
「あぁ、きっと司令部。そろそろ戻るとするよ」
「そう、じゃぁあたしもそうすっかな」
「そうしろそうしろっと」
とりあえず、俺はポケットから取り出し……取り出し……
………………。
「何やってんの?」
またしても訝しぎみに声を掛けられる。
「あぁ、えっと。これ……どう……すればいい?」
「……は?」
既に冷え込んだ来た屋上で、長々と。マリアは静寂を包み込み、優しく、そして一人寂しく歌っていた。
- Re: LILIN ( No.12 )
- 日時: 2011/12/09 00:44
- 名前: そう言えばこしょうの味知らない (ID: 1kkgi9CM)
昇降機から降り、一本の細長い廊下に出る。この廊下は側面に幾つか応接室へ通じる通路に枝分かれしていて、ここ最近ではよく来ている場所だった。
季節によって社内で名称、彩りが変わる変幻自在の魔境だったりするこの空間。
春では新入社員歓迎の紅白。夏では主に商談が行われ、そして年末の今頃は----------“示談室への棘道”と早変わりする。そう、唯でさえ底をつきそうな予算を、名も知らないような夜間業者がせっせと口実を作ってやって来る。蓄えておいた高床の米が知らぬ間にネズミどもに齧り付かれているのだ。お蔭で近頃ここに来るだけで胃がキリキリ痛むようになってしまったのも言うまでもないだろう。
閑話休題。
さて、そんな魔境の巣窟や根源のごとく怪しく居座る奥の両開きの、これまた謎すぎる蛇やリンゴのような意匠の扉。どれほど悪趣味なのか人間の目もレリーフに含まれ……どうにもうちの上層機関は分からん。どっかの○ッ○ル社にでも強引に版権を訴えられてくればよいのだ。そもそもこんなロゴに需要があるものか。
息を整え、深呼吸。それからやっと、無駄に重そうに見える扉を片手で開け、副司令室に足を踏み入れた。
「呼びましたか?」
「ん……来たか。サンチェス」
彼はこちらに一瞥もやらない、手元のチェス盤に没頭しているようだ。
「電話してもすぐに出てくれないだから。僕は相当君の目に届かない所まで追い出されてしまったのかと思ったよ」
「そんな、ただ……」
「ただ?」
「いや、ケータイの使い方が未だに……」
ほう。そこで一旦会話が遮られた。
一つまみの沈黙の後、副司令は顔をほころばせる。と、同時に席を立ち、硬い絨毯を歩き出すと茶箪笥からしゃれたティーカップを二つ取り出し、コーヒーメーカーに。
「ハハハ、そうかそうか」
「えぇ……それで用とは?」
「用か……相手を頼むかな?」
にこやかに彼が指す先にあるのは、先ほどの熱戦で戦禍が残るチェス盤だった。
この人は全く。天下ってからというもの毎日このような平穏を過ごしていたら、ほんの数年でボケ始めるだろうよ。
一応勤務中なので、と断っては見たが。
「まぁまぁ、現場監督なんてものは“いざと言う時”にいればいいのだから。君もそれを見越してサボっている癖して」
と、痛い所を突かれてしまったからには仕方なかった。
しかし、思いのほか相手も手練れのようで、瞬く間に数十分が過ぎた。お互いに陣駒がハゲ始めているのだか、俺の前線ではポーンがクイーンに喧腰だった。アホめ、お前では真ん前のジャジャ馬姫は狩れないんだ。
ここの副司令は先ほどから手先を間違えたやら何とやら言うが、結局は何かしらの用のためにここに私を留めているに違いないはず。
「そう言えば今日、臨時集会でこっぴどくしごかれたそうじゃないか、仲間内で聞いたぞ、二個隣のラウンジにまで怒声が響いたってね」
「全て私の誤謬故----------」
何食わぬ顔でビショップを突き立てる。クイーンかナイトの弐者択一。
うぬ。と目の前の彼もこの手は効いたようだ。ざまぁみやがれ、と心中で揶揄。
「淡泊だね、今日は。あの時と同じで」
「ん、私はただ」
「ただ?」
珈琲を一口、口に含み彼は笑みを笑みを浮かべ、戦況を見守る。
「ただ……貴方に濡れ衣を着せるわけにはいかないと」
「……嬉しいねぇ。そこまで僕に気を遣ってくれていたなんて」
下げろ、下げろ。ジャジャ馬なんぞ下げておけ。
しかし、彼はそんな邪険を一蹴するか如く、クイーンの位置を手早く変えた。しかし、依然としてポーンと睨みあう形になった。
「さて、ゲームが佳境を迎えたことだし。そろそろ本題に入ろう。臨時集会の情報提供を求むよ」
-------- つづく
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