二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
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- 君が教えてくれたこと〜思い出というキーワード〜
- 日時: 2011/08/10 00:10
- 名前: 宇野沢千尋 ◆pcUHgqcj4Y (ID: SkGQb50P)
これは、自分用の小説です。
コメ来たとしても、返信できません。すみません。
〜各物語の目次〜
【君に出会えてよかった】>>2〜
- Re: 君が教えてくれたこと〜思い出というキーワード〜 ( No.21 )
- 日時: 2011/08/21 15:48
- 名前: 宇野沢千尋 ◆pcUHgqcj4Y (ID: SkGQb50P)
—第6章—『消えた人』
—行方不明—
田島が退院して、早くも1週間が経とうとしていた時だった。
もう、何事もなかったかのように、
俺らはそれぞれを過ごしていた。
田島、水谷はもちろん。
違う学校の泉、
そして、あの事件をきっかけに知り合った、西広と三橋とも、
連絡を取り合ったり、時々会ったりもしている。
そんなある日の学校の帰り道、
「うっわー!!!今日音楽レッスンの日だー!!!」
水谷が頭を抱えながら大声で叫ぶ。
「そういえば文貴、天才音楽少年だったよなぁ〜!!!忘れてたー」
田島が肩手にアイスクリームを持って、
水谷にちょっかいを出していた。
水谷は、週に5回、音楽のレッスン教室に通っているらしい。
レッスンのない日でも、家で練習しないといけない。
俺は、
水谷はいつも笑ってて、
ケーキばっか食ってて、
気楽でいいなぁ〜って思ってたけど、
本当は全然忙しいんだ。
「音楽のレッスン教室さー、孝介もくるんだ〜」
「え!?あいつ、楽器使えんのかぁ!?」
「だって、孝介、泉財閥のあととりだよ?習い事ならたくさんしてるでしょ」
「うおっ!!すげぇ!!!」
「ついでに、この前はピアノ弾いてた!俺が、‘青春ライン,弾いてっていったら、顔真っ赤にして弾いてくれてさ〜‘べ…別におまえの為に弾いたんじゃねぇし…///,って!!!」
「あははは!!!さすが、ツンデレ孝介だよね〜」
こんな風に話していると、
いつの間にか家に着いちゃうんだ。
「んじゃ、また明日ねー」
「明日なー」
「バイバイ」
田島家に着くと、
ここで水谷とはお別れ。
水谷は元気に右手を挙げ
おおきく振って帰って行った。
————————夜7時。
『いっただっきまーす!!!』
今日の夕食は、俺も田島も大好きなハンバーグ。
おばさん特製のデミグラスソースがかかっている。
「おばさんのハンバーグ、やっぱり美味しいよ!!!」
「おー!今日のはチーズ入りだぜ!?」
「お!!!本当だ!!!」
田島と一緒にご飯を食べると、
美味しい料理が自然とまた美味しく感じた。
「なぁなぁーそーいやさー…」
田島がそう言った瞬間、
‘ドラマチック,の着メロが流れた。
この携帯は、俺のだ。
「誰からだろう…?」
携帯を開いて確認すると、
相手は水谷だった。
「もしもし?」
{………。}
電話に出たが、無言で何もしゃべらない。
そして、予想もしない言葉が返ってきた。
{孝介がいなくなった}
孝介がいなくなった…。
こうすけがいなくなった…。
コウスケガイナクナッタ…。
俺は、その言葉が頭いっぱいに泳いだ。
——————気付いたら俺は…
————————————近くの公園のベンチに座っていた。
隣には誰も座っていない。
ただ見えるのは、大人数が、騒いでいる様子。
きっと、泉を探しているんだ。
パトカーの音が怖い…。
あの赤いランプが怖い…。
すると…
ボロボロに泣きじゃくった水谷の姿が目の前に現れた。
「ふみ…き…。」
その水谷の顔は、
下校時に最後に手を振ったあの顔とは、裏と表だ。
「レッスンには…いたんだ…。」
水谷がそう言うと、
そっと俺の隣に座った。
そして水谷は、
ボロボロと涙をこぼしながら、話し始めた。
水谷の話によると、
音楽のレッスンには、普通に来ていたらしい。制服で。
別に様子も普通で、ピアノを弾いていたそうだ。
でも、帰り道、
普通はリムジンが迎えに来てるはずなのに、
リムジンが途中事故に遭ってしまい、迎えに来ることができなかったそうだ。
水谷は家が、レッスン教室から近いから歩いて帰る。だから、泉にもあるいて帰ろうと誘ったらしい。
でも、泉の家は結構遠かったらしく、
途中一人にしてしまったら、帰る途中にあんな事が…。
「俺が、歩いて帰ろうなんて言わなかったら…こんな目に遭わなかったのに…俺が…俺が悪いんだ…!!!」
「文貴っ…文貴のせいじゃないよ!!!自分責めないで!!!そう言ったのは、文貴でしょ!!!」
オキと文貴の喧嘩を思い出しながら言った。
すると、水谷は分かってくれたらしく、
「うん…。」
と、俯いて返事をした。
相変わらず、
騒ぎの声は止まず、
さらに大きくなってる気がした。
「文貴、俺らも探しに行こう!」
「う…うん!!」
俺は、前向きにそう言ったけど、
本当は不安の気持ちでいっぱいだった。
そして、………怖かった。
- Re: 君が教えてくれたこと〜思い出というキーワード〜 ( No.22 )
- 日時: 2011/08/21 14:22
- 名前: 宇野沢千尋 ◆pcUHgqcj4Y (ID: SkGQb50P)
—胸騒ぎ—
「孝介様が行方不明ですって!」
「孝介様って…泉財閥のあととりの…」
「それで、見つかられたの?」
「いいえ…まだ見つかられてないそうよ…」
近所のおばさん達の声がざわめく。
知らないうちに、テレビのニュースも
泉が行方不明になったことでいっぱいだった。
まるで、大地震がきた時のように、
どのチャンネルも、このニュースで埋まっていた。
暗闇のなかを、水谷と共に走り抜けた。
俺と水谷で、泉の写真を持って
近所の人に当たってみた。
「この写真の人、見かけませんでしたか?」
でも、返ってきた返事は、
‘見かけなかったなぁ, とか
‘孝介様行方不明だそうだってね…。, とか
‘早く見つかられるといいね, とか…。
やっぱり目撃者は誰もいなかった。
腕時計を見ると、
針は11時半をさしていた。
暗闇を走り続けて2時間経った。
でも、やっぱり周りの様子は騒がしい。
大通りのところは、
大人たちが泉を探すために、懐中電灯が眩しいほどに輝いている。
パトカーの赤いランプも見える。
その時、水谷は口を開いた。
「もしかしたら、レッスン教室に戻ってるかも…」
「…え?」
「俺…行ってくる…!!!」
「ちょまっ…!!!一人じゃ危ないって!!!」
俺はそう言い手を伸ばした。
追いかけようとしたが、あっという間に見失ってしまった。
この胸騒ぎはなんだろう…。
ただ暗闇に一人残された俺は、
恐怖感に襲われた。
(…もし孝介が恐ろしいめに遭っていたら…)
(…もし文貴がこのまま帰ってこなかったら…)
(もし俺が…ここで知らない人に誘拐されたら…)
そう思っていた時だった。
俺の目の前に、
誰かが現れた。
暗かったからよく見えなかったけど、
俺より、ちょっと身長が高かった。
(…も…もしかし…て…)
俺は、自分が心の中で思っていたことが、
本当に怒ったのだと思った。
だから、大声で叫んだ。
「いや————!!!ゆ…誘拐しないでくださいぃ!!!!!!」
すると、その相手は、持っていた懐中電灯のライトを俺にあて、
「誰も誘拐なんてしないよ〜…」
と言った。
この声…この顔…
西広だった。
俺は自分の言ったことが恥ずかしくなり、
顔も熱くなった。
「孝介…行方不明…なんだってね…。」
西広も、泉を探しているらしい。
西広の話によると、
学校での泉は、特に変わった様子はなかったそうだ。
「そういえば、文貴と会った?」
俺は、レッスン教室に向かった水谷が心配で心配でしょうがなかったから聞いてみた。
「文貴…は見てない…けど、悠一郎なら見た。悠一郎ったら、片手にメガホン持ってチャリこぎながら孝介探してたよ。色んな人に、目撃した人いないかたずねてた。」
俺は、悠一郎はこの夜中一人でも大丈夫だと思ったけど、
水谷は、弱虫だから一人にするのがとても不安だった。
だから、
「俺、水谷が向かった、レッスン教室に行ってくる」
そう言ってその場を去ろうとした時だ。
西広は、俺の右腕を掴んで、
「レッスン教室って、ここから遠いよ? 俺、チャリ持ってるから、俺が文貴探してくるよ!…その代わり…」
西広は、西広の後ろに隠れていた三橋を俺に押し出し、
「廉の事、頼んだよ」
と言葉を残し行ってしまった。
三橋がいるとは思わなかったから、
正直驚いた。
「れ…廉も来てくれたの!?」
「う…うん…孝介くんっが…行方不明だって聞いたから…。」
三橋は、わざわざ10時40分の電車に乗って、
こっちに来てくれたのだ。
俺は、水谷の事は西広に任せて、
三橋と二人で泉を探そうと、三橋の腕を引っ張った。
「孝介を、探しに行くよ!!!」
「う…うんっ!!!」
- Re: 君が教えてくれたこと〜思い出というキーワード〜 ( No.23 )
- 日時: 2011/08/21 15:22
- 名前: 宇野沢千尋 ◆pcUHgqcj4Y (ID: SkGQb50P)
—学ランの少年—
———夜中12時。
腕時計を再び見ると、針はそうさしていた。
近所の人はもちろん、
泉財閥の遣われている、召使い、ボディーガード、ヘリなどが
辺りを探している。
俺と三橋も、必死になって探したが、
見つかりそうにもなかった。
「おい、君たち!ここは、俺達大人が探すから、子供は家に帰って寝な」
体つきのごっつい、おじさんが俺らに言った。
でも俺は、大事な友達をほったらかしにして、
家に帰って寝るなんてこと、できなかった。
だから、
「大切な友達なんです!!!だから、探します!!!」
って言ったんだ。
そしたら、
「こんな夜遅くに子供が外うろついてたら、あぶねーだろうが!!!子供はとっとと家に帰って寝ろ!!!」
と、思いっきり怒鳴られた。
隣の三橋も涙目で震えてた。
俺もさすがに怖かったから、
咄嗟にその場から立ち去った。
「何で子供だからって…ねぇ?」
俺は三橋に声をかけ、
三橋の方を振り向いた。
さっきまで、あんなにおびえていたのに、
三橋は眠そうな顔をして、ウトウトしてた。
「…廉…?」
「………。」
(そうか…わざわざ遠いとっから来てくれたもんなぁ…)
俺は、三橋を連れて、
家に帰った。
おばさんに事情を話し、
今晩は、泊めてもらうことにした。
外の騒ぎと比べて、家の中はとても静かだった。
でも、何かが足りないような…。
「あ!おばさん、そう言えば悠一郎は???」
「あ〜あの子、まだ帰ってきてないのよ。…そういえば、さっき、勇人ちゃん宛ての電話あったわよ。なんか、話したい事があったそうだけど…でも、名前は名乗らなかったし…。」
電話…?
俺は疑問に思った。
俺の友達だったら、普通携帯に連絡くれるはずなのに…。
「…っと、こうしちゃいられない!!!おばさん、廉をお願いしますね!」
「え!勇人ちゃん…また行くの!?」
「はい!!!行ってきます!!」
俺は再び家を出た。
電話の事は、よく分からなかったど…
泉の事で必死だった。
すると…
「勇人…?」
家を出て曲がったところで、後方から名前を呼ぶ声が聞こえた。
俺は、一瞬迷ったが、ただの空耳方と思った。
「勇人…?」
また同じ声が後方から聞こえた。
空耳ではなかったのだ。
…でも、ちょっとつまったようなその特徴的な声は、
聞いた事のない声だった。
だから、恐る恐る振りかってみると…
後方に立っていたのは、
学ラン姿の少年。
でも、この学ランの少年…何処かで見たような気が…
すると、学ランの少年は、
「俺だよ。オキカズトシ!沖一利だよ!!!」
と言った。
そう、以前田島の身体に入ってしまった記憶の主だ。
この黒髪の癖っ毛、そして少しぽっちゃり体系。
病院で白いパジャマを着て、意識不明だった少年が、
今ここに学ランを着て俺の目の前で微笑んでいる。
俺は自然と一滴の涙がこぼれた。
「お久しぶり、勇人。」
俺は、目の前の沖にびっくりして、
その場に座り込んだ。
「さっき、辰太郎にも会ってきた。孝介が、行方不明って聞いたから、俺も探しに来たんだ。」
俺はしばらく、沖と地面に座り話をした。
何故、田島の退院と共に姿を消したのかというと…
沖が目を覚ました当時、
沖の記憶は曖昧ではっきりしていなかったそうだ。
でも、沖の通う中学は
引っ越しでもしないと通えないくらい遠かったらしく、
せっかちな親は、すぐに引っ越しを決めて、沖を連れ引っ越ししたのだという…。
携帯が通じなかったのは、
あの事故により、携帯は壊れてしまったから。
さっきの俺にの電話も
沖からだったらしい。
沖は、俺の携帯分かんないからなぁ。
「俺もびっくりしたよ…文貴と喧嘩して、謝ろうとした次の日に、我に戻っているんだもん。」
沖の言葉に、
あの時の事が、とても懐かしく感じる。
今になってみれば、あの出来事も
こうして色んな人に出会えた思いでだ。
「…でね…勇人…」
沖は、頭の中で、何かを考えながら話し始めた。
「…俺、6時半頃…孝介を見かけたんだ…。」
- Re: 君が教えてくれたこと〜思い出というキーワード〜 ( No.24 )
- 日時: 2011/12/29 15:26
- 名前: 宇野沢千尋 ◆DkObR1jfNg (ID: SkGQb50P)
—攫った人—
「…え…見かけた…って…」
俺は、息を詰まらせながら沖に聞いた。
沖の話によると、
たまたまこの街に来ていた沖は、
6時半頃に、制服姿の泉を見かけたのだという。
「たまたま来たっていっても、記憶をたどって、皆に会いに行こうとしてたんだけどね。………。そんで…孝介が…———。」
沖が口を閉じた。
言いにくそうな顔、
俯いて、体が震えていた。
「…一利…?」
「ごめんっ…」
沖は俺に頭を下げた。
そして続けて、
「俺、孝介が誘拐されるところ…見たんだ…。」
顔を真っ赤にして、
ずっと俯いたまま、話を続ける。
「人気のない、真っ暗な1本道だった。…俺、道に迷ってて………適当に道を進んでたら、孝介の後ろ姿が、見えて…」
沖が震えながら話す。
俺は沖の背中を擦りながら静かに話を聞いていた。
「だから話しかけようと、走って孝介のとこ行こうとしたんだけど…孝介の隣に、黒くて大きい車が止まったんだ…。だから俺、てっきりリムジンかと思って…話しかけるのやめたんだ…。」
沖はずっと下を見、俯いていた。
だから顔は見えなかったけど、
涙がポタポタと落ちるのがわかった。
そして、
沖の涙により、雨が降ったかのように地面が濡れた。
俺は、自分を責め俯いている沖の姿を見て、
胸が締め付けられるように苦しくなった。
誰も沖のせいだなんて思っていないよ。
誰も沖を責めたりしないよ。
だから…顔をあげて。
「…一利…顔、あげて…。」
俺のその言葉で、
ようやく沖は顔を上げた。
目と鼻を赤くして、
沖の涙は溢れ返っていた。
そして俺は沖をギュッと抱きしめて、
「皆で…皆で孝介を見つけよう…」
と言った。
沖は、うんうんと頷いて、
俺をギュッと抱きしめ返した。
沖は漸く涙が止まったようだ。
「ありがとう、勇人。…そんで、俺、思い出したことが1つある。」
沖は再び真剣な顔をして、
語り始めた。
「その車から、男の人が出てきたんだ。鍔付きの…キャップを被ってた。そんで、ジャージきてたと思う…。」
「男の人…?」
「うん…。年齢は分からないけど…俺たちより、身長は高かった…。辰太郎くらい…かな…?…髪型と顔は分からない。深く帽子被ってたから。…そんで、帽子に…Mって文字が光ってた。」
「M?」
「うん…。それと…その男の人…マユムラ…って名前…らしい。自分で…なんか言ってた……よく、分んなかったけど…。」
泉を誘拐した人…。
沖によってなんとなくわかった気がした。
西広ぐらいの身長の男———。
帽子を深くかぶってて、Mの文字が光っている———。
ジャージ姿———。
名前は、‘マユムラ,———。
——————————————————。
あの後俺たちは、
警察、おばさん、悠一郎たちにそのことを話した。
近所のおばさんたちにその話が耳に入ると、
話はあっという間に広がっていった。
「…———って一利は言ってたんだよな!?」
次の日、学校での朝の会中に
悠一郎は机の上にドンっと座り込んで言った。
「シ—ッ!!!悠一郎、声でかいって!!!今朝の会なんだからさ…。」
皆の顔は、俺と田島の方を向いていた。
視線が痛いほど感じるのがわかった。
俺はそれが恥ずかしかったから、田島を大人しくさせようと、
椅子に座らせた。
これには先生も困ったように、
コホンっとせき込んだ。
「ほら、悠一郎のせいで皆迷惑してるだろ。」
「ちぇー」
田島が大人しくなったところで、
朝の会が再開した。
「えぇー…皆も聞いたと思うが、泉財閥の孝介様が誘拐されたそうだ。…不審者はまだ捕まっていない、だから、下校の際は一人で下校しないように!!!」
泉の話は大幅に広がっていた。
俺も田島も皆頑張って探したけど、
結局見つからなかった。
「…っと、それと、今日から、このクラスに転校してきた、新しい仲間を紹介する。…転校生入って。」
先生のこの言葉に、
皆は一斉にドアに注目した。
そしてゆっくりとそのドアは開いた。
途端、俺は目を疑った。
まさかとは思ったけど…。
- Re: 君が教えてくれたこと〜思い出というキーワード〜 ( No.25 )
- 日時: 2011/12/29 16:07
- 名前: 宇野沢千尋 ◆DkObR1jfNg (ID: SkGQb50P)
—姿形—
コツンコツンと足音を立て、
奴はその教室に入ってきたんだ。
そして教室は騒ぎ始めた。
「はいはい、静かに!!!」
先生は黒板をバンバンとたたき、
皆を黙らせた。
「んじゃ、自己紹介をして。」
転校生は白いチョークを持ち、
黒板に名前を書き始めた。
そして、
「俺の名前は、清水大河。」
ときっぱりと言い張った。
皆は、それだけ?って感じに奴を見ていた。
緊張しているのか、なんなのか分らないが、
ちょっと怒っているのか…
「先生、俺、この学校ん事よく分らないんで、見学してもいいっすか?」
と言った。
「あ…あぁ…。んじゃ、休み時間に………田島!それと、栄口!お前ら二人で学校案内しろ!」
田島は嫌そうな顔をして、
「えぇー!?なんで俺ー…!?」
と、先生に訴えた。
「お前ら2人、うるさいから!」
先生はきっぱりと笑顔で言った。
…ちょ…俺まで…。
転校生は、その様子につきあってられないのか、
俺の隣のあいてる席に、勝手に座った。
「あ、えぇーっと…俺栄口勇人。よろしくね」
笑顔であいさつしたつもりだったんだけど、
「あぁ、よろしく。」
と、顔も向けないで返してきた。
俺はその態度に、少しいらっときていた。
すると、田島は、
「なぁなぁ、あの転校生、‘大河,っていったっけ???…あいつさ、なんか、孝介に似てね???」
俺も本当に似てると思った。
いや、似ているのではなく、
泉なんじゃないかって疑った。
髪の毛はストレートだし、
少し茶色っぽいけど、髪の毛なんて染められるし。
目もおおきな綺麗な目をしている。
身長も小さい。
この、少しキレ気味なところとか…。
姿形が、泉そのものだった。
俺たちだけじゃなくて、
他のクラスメートも同じようなことを思っていたようだ。
「あの転校生、孝介様に似てない!?」
「いや、もしかして孝介様かもよ!!!」
「ありえる!!誘拐された、っていってたけどさ!!!」
あちらこちらから、そんな声が聞こえた。
——————————。
「んでーここが体育館。」
休み時間、俺たちは約束通り学校を案内していた。
「へぇ〜結構広いな…」
清水は体育館にある野球のバットを手にとり振り始めた。
「これじゃ、遠くに飛ばなそうだな。」
野球経験があるのは、
野球に関して詳しそうだった。
その清水をみて田島は、
「やっぱり怪しいんだよね…あいつ、絶対孝介だって。…あぁ〜黙っていらんねぇ…ちょっと聞いてくる!!!」
といい、勢いよく走って行った。
俺は止めようとしたが、
止められなかった。
…俺も
清水の正体が知りたかったから。
「たーいがッ!!!」
田島はやっぱり直球型だ。
馴れ馴れしいのが嫌なのか、
清水は田島を思いっきりぶん殴った。
「馴れ馴れしくさわんじゃねぇよ。」
こういうところもまさに泉だと思った。
でも、怒っているのに対して機嫌を直してもらわないと
本当の事を言ってくれないと思ったから俺は、
「あ〜ごめんね、あのさ、聞きたいことあるんだけど…いいかな?」
俺は清水にそういうと、
なんだ?という顔をしてこっちを睨んだ。
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