二次創作小説(紙ほか)

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イナズマイレブン 異世界の危機・3 お知らせです!!
日時: 2013/03/07 18:31
名前: 桜花火 ◆snFB/WSLME (ID: /HyWNmZ0)
プロフ: http://www.kakiko.cc/novel/novel3/index.cgi?mode=view&no=20610

〜はじめに〜
前回の「イナズマイレブン 異世界の危機・2」では、多くの方に見ていただき、とても感謝しています!!
しかし、管理人の手違いで、スレッドを消されてしまったらしいので、また新しく立て直しました!!
まだまだ、小説は続いていくので、これからも温かい目で見守ってくれたら、嬉しいです♪
                                by桜花火
————————————————————————————————————————

!!重要!!
・前回に消えてしまった「闇の運命編」&「精霊会議編」は長すぎるので、改めての更新はしません。しかし、「最終決戦編」は1〜5話までを、載せるつもりです。続きは、その更新が終わったあとからになります!!!
・スレッドのロックですが、第5話の更新が終わった時点で、解除します!


★注意★
・荒らし&悪口禁止!
・たまに流血あり!
・パラレル、円冬要素あり!
・紙文&更新は亀並み!
以上、許せる方はどうぞ↓↓


☆注意:2☆(上の注意を承諾してくれた皆様へ)
・短編は気まぐれで更新していくつもりです
・人物紹介ですが、前々回のスレ(参照)に登場したキャラは詳しくは書いていません。詳しい設定が見たい場合、そのスレへ!
 ちなみに、このスレで初めて登場した人物は、詳しく&サンボイ付きで書きます

今度こそ、本編へ↓↓
————————————————————————————————————————






———♪更新履歴&お知らせ掲示板♪———
スレッド、解除! 1/05



———♪オリキャラ&設定紹介♪———
設定紹介 >>001
人物紹介1(フェアリー王国)>>002
人物紹介2(他国)>>003
人物紹介3(敵軍)>>004



■本編■
☆最終決戦☆
プロローグ 戦いの前兆 >>005
第01話 「新たな希望と絶望」>>006
第02話 「全ての真実」>>007-008
第03話 「懐かしの場所」>>009
第04話 「新たな加勢」>>010 
第05話 「覚めない眠り」>>011
第06話 「郁斗VSイナズマジャパン」>>012
第07話 「“そら”と“かがり”」>>018



■短編■
*「」
*「」
*「」

Re: イナズマイレブン 異世界の危機・3 ( No.3 )
日時: 2012/12/23 19:20
名前: 桜花火 ◆snFB/WSLME (ID: /HyWNmZ0)
プロフ: http://www.kakiko.cc/novel/novel3/index.cgi?mode

※下に書かれている、「星宮そら」「月風かがり」「ラティア・クラリス」「ティアラ・クラリス」は、夜桜様、姫佳様に貸していただいたオリキャラです。


———ウィンス国———
風を司る国。
国自体は覆っている風の壁が、防御の代わりとなり、魔物が国に入ってくる心配はない。
「風丸一郎太」と酷似している人物、一郎太が国を治めている。


名前【一郎太(イチロウタ)】
性格【真面目だが、たまに夏未と組んで黒いことを吐く
   怒ると無表情になり、口調が変わる】
容姿【「風丸一郎太」同様。髪はほどいてある】
属性【風・光】
魔法【遠距離の攻撃魔法
   防御魔法】
武器【身長と同じ大きさの扇子。使用時のみ、魔法で取り出す】
その他【ウィンス国の王子。前任の王がはやくに亡くなったため、まだ若いが一人で国を治めることになった。】

「それは俺が手に負えることじゃないから…」
「相変わらずだな、守は」
「本当の風の力を見せてやる」


名前【明日香(アスカ)】
性格【ものすごく素直で、思ったことはすぐに口に出す
   うるさいほど元気】
容姿【薄茶色のショートヘアで、黄緑色のリボンを両端につけている
   碧緑色の瞳
身長は春奈と同じくらい】
属性【風・氷】
魔法【遠距離の攻撃魔法】
武器【カード】
その他【あることがきっかけで、修也に惚れてしまい、
    それ以来から彼に会うたびに、抱きつき、片時も離れようとしない。
    春奈と仲が悪い
    一応ウィンス国の神官】

「しゅうやぁ〜、会いたかったよぅ」
「あら?やかましさんには、何を言っているのか分からなかったかしら?」
「いっちー、そろそろ会議だってよぅ〜」


名前【封真(フウマ)】
性格【あまり怒らなくおっとりとしている
   たまに表情が暗くなる】
容姿【スラッとした体系。真っ黒の短髪、前髪は左寄り
   濃い紫色の瞳】
属性【闇】
魔法【物理の攻撃魔法】
武器【湾刀】
その他【ウィンス国、ランク十の兵士
    一郎太の護衛役】

「俺は別にどうでもいいよ〜」
「修也は、明日香さまに目をつけられたんだ、多分死ぬまで苦労するだろうね〜」
「…こうするしか方法がないんだ、さもないと、魔法界は全滅する…」


名前【威真(カイマ)】
性格【基本的におとなしいが、口調が荒くなるときもある
しかし、何気に優しいところもある】
容姿【スラッとした体系で、真っ黒の短髪、前髪が右寄り。
   濃い緑色の瞳】
属性【闇】
魔法【物理の攻撃魔法】
武器【湾刀】
その他【ウィンス国、ランク十の兵士
    明日香の護衛役
    封真の双子の弟】

「明日香さま、お下がりください!」
「ウィンスに手だしするな、ぶっ殺すぞ」
「修也、ごめんな。俺には明日香さまを止められない……」


名前【星宮そら/ホシミヤソラ】
性格【優しく明るい、穏やか。意志が強い
   空気などは読むがはっきり言うことはどんなに酷いことだろうと伝える】
容姿【水色の腰ほどまでの長さの流し。(若干ウェーブがかかっている)
   明るい青色の目】
属性【風・光】
魔法【遠距離の攻撃魔法 治癒、防御魔法】
武器【扇子】
その他【家事全般は得意 接近戦もやろうと思えば出来る
    母親は幼い時に亡くなっている 誰にでも優しく笑顔で接する事を心がける
    一郎太とは幼馴染】
サンボイ
「いつも笑顔でいる事、それが約束」
「怖がることなんてない。周りを見てみなさい?手を伸ばせば届く距離に…ほら。仲間がいるのよ」
「どんなに辛くても笑うの。だって、誰かを笑顔にしたいなら自分が笑わないと。これ、私の信条」


名前【月風かがり/ツキカゼカガリ】
性格【クール。強がりで意地っ張り。優しいのだがあまりそれを見せない】
容姿【藍色のような紫色の腰より長い髪(膝ぐらい)のツインテール
   菫色の吊り目】
属性【闇・水】
魔法【遠距離、近距離の攻撃魔法】
武器【漆黒色の巨大な鎌】
その他【家族なし、弟が亡くなっている
    頭が良く状況判断や情報収集が得意 治癒魔法は使えないが医療は得意
    全ての武術をほぼマスターしている、基本全ての武器が扱える。初めて見るタイプの武器でも多少見れば理解し扱うことができる
    戦闘中に髪を解く、という行為は本気の合図】
サンボイ
「あたしは、あたしが信じた人を守りたい。そのためならあたしはいくらでも強くなる」
「…もしかして、あたしに喧嘩売ってるの?五体満足で帰れるとは思ってないわよね…?」
「いい加減にしてっ!!アンタが傷つくことで傷つく人間がいるの!それを…忘れるんじゃないわよ」





———ダークネスシャイン———
闇と光が混合した国。現在は、アルティスの手に堕ちている。
国は小さく、権力も大きくはないが、魔法界で、この国の最高権力者の双子姫に戦闘で敵う者は、誰もいない。


名前【ティアラ・クラリス】  
性格【天真爛漫で誰とでもすぐに仲良くなれる。
   超マイペース&超天然。戦闘時は毒舌に】
容姿【肩にギリギリつかない金髪に赤色の瞳。
   髪の両サイドに赤のリボンをつけている。
   背は147cm。可愛い系の超美少女】
属性【炎・光】
魔法【物理の攻撃魔法&回復魔法】
武器【炎の攻撃の刀、光の攻撃の刀】
その他【なんでも完ぺきにこなす。
    半年前に死んだと言われていたが、それは偽装だった
    ラティアの双子の姉】

「私はティアラ・クラリス!こっちは妹のラティア!私達、双子なんだ!宜しくね!!」
「クレープだぁ〜!!これがないと、生きていけない!!」
「私達に喧嘩売ってるの?じゃあ、本気で殺すよ。ラティアと私に敵う奴なんか、絶対にいないからね」


名前【ラティア・クラリス】 
性格【クールで毒舌、いつも冷静沈着。人と関わる事を好まない。
   機嫌が悪くなると、すぐに刀を出す。】
容姿【背中の真ん中まであるエメラルドグリーンの髪に青の瞳。
   白のシュシュで2つ結び。髪は下ろしてる時もある。
   背は146cmと低め。綺麗系の超美少女。】
属性【水・闇】
魔法【遠距離の攻撃魔法&回復魔法】
武器【水の攻撃の刀、闇の攻撃の刀】
その他【なんでも完ぺきにこなす。
    半年前に死んだと言われていたが、それは偽装だった
    ティアラの双子の妹】
    
「貴方なんかに教える名前なんてないわ。」
「貴方、殺されたいの?」
「私達に喧嘩売るなんて、命知らずな奴ね。本気で殺すから。私とティアラは最強なんだから、絶対に負けないわ。」


名前…ビアン
性別…♀
性格…クールで大人しい。ラティア以外の人には中々懐かない。
容姿…綺麗な白の体に青の瞳。大人になっても、大きさは人の肩に乗っても全然重くない位小さい。
その他…ラティアと常に一緒にいて、普段はラティアの肩に乗っている。とても頭がよく、ラティアの言う事であれば何でも聞く。耳がとてもいい。


名前:スカイ
種族:鳩
性別:♀
性格:元気でマイペース。人懐っこい性格。
容姿:白の体にティアラと同じ水色の瞳。大きさは、普通の鳩と同じ。
その他:とても利口でティアラの言う事は何でも聞く。いつもティアラの肩に乗っている。別名ティアラの保護者

Re: イナズマイレブン 異世界の危機・3 ( No.4 )
日時: 2012/12/25 12:40
名前: 桜花火 ◆snFB/WSLME (ID: /HyWNmZ0)

☆★☆人物紹介★☆★

———敵軍———
名前【アルティス=スロード】
性格【冷静沈着だが、手に入れたいものは、どんな手段でも手に入れようとする】
能力【未来を予言する力を持っているが、その力は徐々に弱くなってきている】
その他【魔力の器を手に入れるため、行動を起こす】


名前【カリア/(フレイミア)】
その他【フェアリー王国の城に仕えているメイド
    アルティスの手下であり、フェアリー王国へはスパイとして潜入している
    影を使う魔術師】


名前【?(少女)】
その他【アルティスに囚われている少女
    魔力の器に関係する】

Re: イナズマイレブン 異世界の危機・3 ( No.5 )
日時: 2012/12/25 19:45
名前: 桜花火 ◆snFB/WSLME (ID: /HyWNmZ0)

プロローグ 戦いの前兆

「郁斗様が、正気に戻られたようです」
「そう、報告ありがとう」

窓から眺めるのは、暗闇に溶け込んでしまいそうな花園。ちょうど中央にあるのは神秘的な雰囲気を漂わせる噴水だ。風の国、という名前だけであって、そよ風がいつでも吹くここは、とても居心地がいい。
しかし、こんな場所でも、今の自分の不安を振り払ってはくれないらしい。

スーツを着ている紳士的な男性が、一例をすると、音もなく消え去っていった。
そして、部屋で一人きりになると、女性はカーテンを閉めて、ソファに座った。

「郁斗もね……。全員そろって反抗期かな?」

フフフッと小さく笑いながら、写真立てを見つめる。そこには、自分以外に、三人の少年と四人の少女が写っている。七人ともまだとても幼い。全員幸せそうで、あんなに悲惨な過去があったとは思えないほどだ。
この写真は片時も離したときはなかった。あの国を黙ったまま離れてから、残されたあの子達は、必死に自分の姿を探したと聞いている。
郁斗をあと少しで助けることができなかった自分のことが、とても許せなかった。そして、その直後、別の“噂”を耳にした。
まだ幼く、そして、兄弟とも呼べる親友をなくしてしまい、ひどく傷ついていた彼らを置いていってしまった。それが心残りだった。

「ごめんね……。でも、やらなくちゃいけないことがあったから」

ギュッと写真立てをつかむ手に少しだけ力が入った。

郁斗が生きている、それを聞いたとき、心の奥にあった氷が、溶けてしまったかのように、とても暖かくなった。けれども、それだけでは済まされることではない。郁斗を操り、彼の心さえも壊してしまった奴を、叩き潰すまで、自分の戦いは終わらない。

そのとき、ぱぁっと淡く光る一匹の鳥が、目の前に現れた。突然のことにも動じずに、女性はその鳥に触れた。すると、それは一枚の紙となって、手の中に舞い降りた。
伝達の魔法だ。それもかなり高等なものである。よほど自分以外の誰かには知られたくないものなのであろう。
紙には黒い字でびっしりとその内容が書かれていた。

「……まぁ、そろそろかしらね。このまま身を隠すわけにもいかないし」

一通り目を通すと、女性は立ち上がり、もう一度カーテンを開けた。



————「この私(瞳子)の子供たちに手を出しといて、ただで済むとは思わないでよ。アルティス」



一瞬だけ、吹き続けるそよ風が、怯えたかのように吹きやんでいた。

Re: イナズマイレブン 異世界の危機・3 ( No.6 )
日時: 2012/12/25 20:47
名前: 桜花火 ◆snFB/WSLME (ID: /HyWNmZ0)

1 新たな希望と絶望

あの壮絶な戦いから3週間が過ぎようとした。今日の天気も相変わらず、青空は晴れ渡っていて、太陽の光がとても気持ちがいい。開いた窓の隙間から流れ込む微風が、優しく頬を撫でると同時に、部屋のドアが軽くノックされた。
「どうぞ」としか相手に返すことができない自分が少しだけ恥ずかしくなる。足の力がまだ戻っていないのだから、仕方がないことかもしれないが、やはり罪悪感というものは、出てきてしまうものだ。

「ずっと外ばかり見ていて、つまらないんじゃない?」
「そうでもないさ。むしろ、安心できるんだ」
「フフッ、変な人」

少年、“郁斗”が目を覚ましてから、毎日彼女はこの部屋を訪れるようになっている。籐かごの中に手作りの昼食を入れて。
まさか、自分がこの国にいないあいだ、彼女の料理の腕がこんなにも上がっていたとは思ってもいなかった。最初、サンドイッチを渡された時は、買ってきたものだと勘違いしてしまったほどだ。後で真相を知ったとき、なかなか信じることができなかった。

「すげぇ、良い匂いがする」
「食い意地だけは変わらないのね」

もう一度小さく笑うポニーテールの少女は、郁斗の幼馴染の“夏未”だ。スタスタとベッドの横まで歩くと、椅子に腰かけて、籐かごを自分の膝の上にのせると、中から大きな白い布を取り出し、郁斗の前に広げた。そして、テキパキと慣れた手つきで、本日の昼食を彼に手渡す。それはきれいな黄金色に焼けた、円筒形のパイだった。

「アップルパイ、食べたいって言っていたでしょ。秋と一緒に作ったのよ」
「おっ、サンキュー。秋にも礼を言っておいてくれ」

言い終わると同時に、郁斗はまだ暖かいアップルパイにかぶりつく。城が出してくれる料理も美味しいが、やはり出来たてのものには敵わない。サクサクした歯ごたえと、蜂蜜と焼きリンゴの甘くも香ばしくある味が、郁斗の口の中で広がる。
本当に夏未は天才なのではないか、と感心してしまう。

「喉、つまらせないでよ」
「はいはい、分かってるよ」

適当に答えると、郁斗は最後の一切れを口の中に放り込んだ。その次に冷たいミルクを流し込むと、郁斗はほっとため息を吐いた。

「城の料理って、毎日同じ感じだから、あきるんだよな」
「早くアンタの足を治せば、もっと食べさせてあげられるわよ」
「そんなこと言われてもな…」

申し訳なさそうに郁斗は軽く指で頬をかく。フッと最初は微笑みを零した郁斗だが、すぐに真面目な表情に戻って、真剣な眼差しで夏未を見つめた。

「———で、守の状態は?」
「変わらないわ。眠ったままよ」

郁斗は何も答えぬまま、黙って俯いた。自然と両手にも力が入り、拳をつくっていた。
あと、あの戦闘に巻き込まれて、目を覚ましていないのは、“守”だけだ。理由は明白だ。受けたダメージが他の人たちよりも多かったこと、そして、もっとも大きく関係しているのは————彼の体質だ。

昨日の夜のことだった。見舞いに来てくれた修也が郁斗に言ったのだ。「守に関して、知っていることを全て話せ」と。状況が読めていなかった夏未や秋は、訳が分からず、少し動揺していた。そして、郁斗は言ったのだ。「明日の夜、皆を集めてほしい」。
相変わらず首を傾げる夏未だったが、みんなに伝言をしてくると、病室を去っていった。ほかの人たちも彼女の後を追って、次々と出て行き。やっと一人になったとき、大きなため息を吐いて、ベッドに倒れ込んだのは覚えている。

「今日の夜、ティアラとラティアも来るけどいいわよね」
「あぁ。一郎太があの二人を怒らせるなって言ってたけど、結構話しやすい人たちだと思うんだよな」
「まぁ、怒らせなければ、ね」

念を押すようにして、夏未は言った。
すると、郁斗は起こしていた上体を倒して、ベッドに寝転がった。

「うわぁ、暇」
「さっき、自分で暇じゃないって言ってたじゃない」
「さっきはさっき、今は今だ」

幼稚な文句をつぶやいて、郁斗はそっと目を瞑った。
思い返すのは、守と戦ったあの場面。今となっては、あの時の自分の心境がどうしても思い出せない。どうして、あんなにも守が憎かったのか。どうして、故郷である自分の国を壊そうとしたのか。言い訳にしか聞こえないだろう。しかし、本当のことなのだ。

「郁斗、私はそろそろ帰るわね」

そんな郁斗の複雑な感情を読み取ったのか、夏未はそっとしてあげようと、病室を出ることにした。

「夏未、ありがとな」
「……うん」

短い一言を去り際に残して、夏未はそのまま部屋を出て行った。





                     ☆





「やっぱり、まだ目が覚めないの?」
「うん、相当重傷だったみたい」

春奈は低いトーンで小さく呟いた。その背後を、音無や木野達が悲しそうに見つめる。

「面会もだめなんだよな」
「夏未がね、今はまだやめた方がいいだって、だから、ごめんね」

いつもの春奈とは思えないほど素直だった。やはり、幼馴染が傷ついて、心が不安定になっているのだろう。ここ数日もとても静かなのだ。
どうしても面会がしたいと円堂は言っているのだが、なかなか承諾してくれなく、円堂は肩を落とした。

「でも、あいつならすぐに目を覚ますよ!だって、すごく丈夫なんだもん。そんな簡単に死んじゃったら、私が許さない!」

突然大きな声で春奈は言った。無理やり笑って音無たちの方を見る。まるで、心配をするなとでも訴えるかのように、元気に見せていた。

「じゃあ、今日はここで解散ね!」
「あっ、おい!!春奈!!」

軽く円堂たちに手を振ると、春奈は自分の家に向かって走って行った。追いかけようとした円堂を木野が止める。

「そっとしておこうよ…」
「……あぁ」





「はぁ、はぁ、はぁ…」

家に入ると同時に、リビングにいる修也や秋の顔を見向きもせず、春奈は自分の部屋に駆け込んだ。ドアを勢いよく閉めて、その場でうずくまる。

「うっ、ぁぁ……」

双眸から我慢しきれなくなった涙が溢れ出してきた。流れ落ちた涙は、春奈の頬を濡らして、床に一滴ずつ落ちていく。

「まもる……まもる……」

幼馴染の名前を呼ぶたびに、円堂の顔を見るたびに、守の横顔が頭を横切る。
また、自分の弱さのせいで、誰かを巻き込んでしまった。もう二度とこんな悲しみは味わいたくないと決めたのに、またやってしまった。

「あぁ、うぅ……どうして、私はこんなに弱いの……?」

日が暮れるまで、春奈はその場でずっと泣き崩れていた。

Re: イナズマイレブン 異世界の危機・3 ( No.7 )
日時: 2012/12/28 13:22
名前: 桜花火 ◆snFB/WSLME (ID: /HyWNmZ0)

2 全ての真実

———まずは何を話すべきか。

単刀直入に守に関してのことを言ってしまえば、状況が理解できていない人たちは、混乱してしまうだろう。だからと言って、あの時の自分の気持ちを言葉にすることはとても難しい。だったら、実際に守の身に起きたことを言った方がいいのだろうか。
そう考えていると、扉を叩く音が部屋の中で響き渡った。

「よっ、修也。随分と早いな」
「元気そうで何よりだ」

はぁと呆れたようにため息をつく修也は、椅子に腰掛けると、二本のペットボトルを取り出して、そのうちの一つを郁斗に投げつけた。

「貸し一つ」
「えぇ〜これだけで…」

ブツブツと文句を言いながら、郁斗はキャップを開けて、中の飲み物を腹の中へと流し込む。
おいしいレモンが買えた、と舞い上がっていた夏未が作った、オリジナルのドリンク。蜂蜜も入っていて、ここにいるときは、ミルクと水しか味わえなかった郁斗にとっては、感動してしまうほど嬉しいものだ。

「ほかの人たちは?」
「いろいろあるからな」
「そうか、修也って暇人なんだな」

勝手に一人で納得していると、カチャッと金属に触れるような小さな音が、隣から聞こえた。

「退院する前に、その頭を斬り落としてやろうか?」
「あぁ、それはご勘弁を…」

一瞬本気で殺されるかと思った。修也が本当に自分の刀に手を伸ばしたからだ。
少なくとも、自分がまだこの国にいたときは、こんなに凶暴じゃなかったはず、人というものは成長すると共に変わっていくのだと、改まって思い知らされた気がする。

「あら、修也ってば早いのね」

もうノックするのが面倒になって、直接部屋に入ってきている。そのあとに数人が遠慮がちに夏未の後を追ってきている。

「まっ、このくらいかしら。残念ながら、嵐王と悠也さんは、どうしても忙しくて、手が離せないんですって」
「了解。じゃあ、話を始めようか」

小さく深呼吸をしてから、郁斗は周りを見渡した。

「まぁ、俺が知っているのがどれくらいかは分からないが…」

そう言うと、郁斗は話を始めた。



「俺との戦闘中に守は様子がおかしくなった。という表現はおかしいな、“本性を現した”と言ったほうがいいか」
「本性?」

夏未が聞き返すと、郁斗は小さく頷いた。

「まず、一緒に暮らしてきたお前たちに聞きたいことがある。たまに、守の体に“異変”が起きたりしないか?」


「………左目の痛みね」


「「「えっ?」」」

後ろの方に立っていたラティアが、数人を押しのけて、郁斗の前までにやって来ると、彼の顔を強い目つきで見つめた。

「そうだ。それが唯一無二の証拠だ。—————守が“完全な人間ではない”ということの」
「どういうこと!?守が人間じゃないって言いたいの!?」
「おい、春奈。落ち着け!!」

今にでも郁斗に殴りかかろうとしそうな勢いで、春奈は大声で怒鳴った。それを修也と秋がギリギリで抑え込んでいる。しかし、春奈は郁斗を睨みつけて、彼に対して怒りをぶつけた。

「ふざけるんじゃない!!勝手に冬花を攫っておいて!私たちを傷つけて!!!それで何事もなかったかのように、国に戻ってきて、守を人間じゃないって言い張るの!?お前はどこまで、守を壊したら気が済むんだ!!!!」

突然、国の戻ってきた郁斗を、春奈は受け入れることができなかった。過去に自分が彼と同じようなことをした事実に対して、目を背ける気はない。自分だって、国や冬花に大きな傷を与えてしまった。
しかし、それでも無理なのだ。郁斗の守に対する劣等感が大きく影響しているかもしれない。それとも、自分と同じような罪を犯した郁斗の姿が、かつての自分を映していた感じがしたからかもしれない。だからこそ、それがとても悔しくて、抵抗してしまった可能性だってある。

「守は悪い人じゃない!!!守がこの国に来てから、私たちはまたあいつから元気をもらったんだ。それをお前が一瞬にして壊した!!許されるはずが—————」


「そんなの最初から分かってんだよ!!!!」


あの戦闘以来、初めて聞く郁斗の怒鳴り声だった。しかし、それは春奈に対するものではなく、今の自分に言い聞かせるような叫びだった。

「守を傷つけて、お前たちも殺そうとして、それで、冬花をアルティスの下へと連れ去ろうとした!!俺は最低だ、そんなの分かってる!どうやってこの罪を償えばいいかなんて、考えられない……。だから、俺は自分の体が治ったら—————」

そこで郁斗は口を閉じた、両手を強く握りしめて、春奈を射抜くように強く見つめる。

「なんでもない、忘れてくれ……。お前が俺を受け入れられないなら、それでも構わない。だけど、この話だけは……」



———「ごめん、頭を冷やしてくる……」



郁斗の言葉を遮って、春奈は部屋を駆けだした。それを追いかけようとしたティアラを、後ろからラティアが首をゆっくりと横に振って、そっとしておくようにと静かに伝える。

「郁斗、ごめん。春奈、最近ちょっと心が不安定なのよ。でも、心配しないで、すぐにまた元気になるでしょうから。だから、話を続けて」

夏未が優しく言うと、戸惑いながらも郁斗は頷いて、話を続けた。


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