二次創作小説(紙ほか)

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RNW (Right Novel World)3ー零落百夜ー
日時: 2013/12/27 17:04
名前: 牙鬼 悠登 (ID: 3UNlfhyM)

こんにちは、牙鬼です。今回で3ツ目となります。
前回の「DOG DAYS」に続いて、今回のは私のお気に入りの作品です。なんせ、この作品好きですから。
ではどうぞ。



RNW (Right Novel World)3ー零落百夜ー

ー6、絶対兵器(アイエス)ー
 やっぱり不思議な空間だ。無重力のように体が浮いていて、まっすぐに次の世界へと進
んでいた。
「おっ、出口が見えてきた!」
 視線の先には白い光が見えてきて、俺たちは1目で次の世界の入口だとわかった。
「さて、次の異世界は何の世界なのかな?」
「真斗!突っ走らないで!」
「平気平気。問題ないよ」
 そう言いながら真斗がスピードを上げてきた。
「それじゃサト兄、先行くから」
 そう言いながら真斗は俺を追い越し次の世界へ一番乗りに入った。
「うわあああぁぁぁぁ・・・」
 途端に真斗の悲鳴が聞こえた。
「真斗くん!?」
「なにかあったのか!?」
 俺たちは急いでその世界に入ってみると、そこは・・・。
「「「・・・へっ!?」」」
 そこは空の上で、下には1つの孤島と海が見えていた。
「「「うわああああああああ!?」」」
 そこから俺たちは自由落下していった。
「おう、サト兄たちも落ちたか」
「何いつもどおりに振舞っているんだぁ!?」
「このままじゃ、あの島に頭ぶつけて死んじゃうよぉ!!」
「しょうがないなぁ。『天槍メリクリウス』!」
 真斗が叫ぶと、いつ出したのか、真斗の武器「白虎」が光り、そこからあの空飛ぶ絨毯
が出現し、真斗はそれに乗り込んだ。
「姉貴、乗れ!」
 麗さんはためらいなくその絨毯に乗り、俺とハルもそれに乗ろうとした。
「サト兄、パラディオンを出して、輝力武装を出すんだ!」
「輝力武装!?」
「いいから!パラディオンを出して空飛ぶ感じをイメージして!」
「わ、わかった!」
 真斗に言われるがままに俺は「青龍」を出して、「『神剣パラディオン』!!」と叫ぶ
と、俺の体は光に包まれ、あの赤と白の勇者の姿に変身して、空を飛ぶ鳥のようなものを
イメージしてみた。すると足元に炎が舞い、2人くらいが乗りそうな巨大な白いボードが
現れた。
「これは!?」
 俺がそれに立とうとすると、逆さになっていた体がひっくり返り、ボードに乗ることが
できた。
「ハル!!手を出して!」
 俺が手を出しながら呼ぶとハルはすぐに手を伸ばしてきて、俺の手を握った。その時、
俺たちは既に上空10メートルにまで落ちていた。
「智志、このままじゃあまずいよ!」
「くそっ!掴まれハル!」
「へ?キャッ!?」
 俺はすぐさまハルを抱えて足に力をかけた。するとボードは赤い炎をまとい、凄まじい
突風により俺たちの落ちる速度は一気に落ち、ゆっくりと着地した。
「よかった〜。あれ?ハルなんで顔赤いんだ?」
「さ、智志・・・、この格好、恥ずかしい・・・」
「へ?」
 するとその横に、絨毯から真斗と麗さんが飛び降りてきた。
「いやぁ、見てて飽きないね、サト兄」
「お姫様抱っこで着地する。なんか2人がどっかの王子様と姫様に見えてくるわね」
「なっ!?お、王子様と姫様!?」
「ちょと待て!いきなりなんでそんなことになるんだよ!」
「いやぁ、お似合いでしたから、ノリで」
「ノリで、じゃねえ!」
 そんなやり取りをしている場合ではなかった。俺はこの世界について理解し、この世界
のコア・ヒューマンを探さないといけないのになにしているんだ俺は!
 すぐさまハルを下ろして周りを見渡すと、そこには巨大な建物があった。どうやらスタ
ジアムらしい。さらにどこからか女子の姦しい声が微かに聞こえてくる。
「真斗、この世界はなんなんだ?」
「いきなり質問されても・・・。まずは情報収集が先決だ。行こっか」
「そうね。晴香ちゃん、そろそろ・・・」
「王子・・・姫・・・王子・・・姫!?あぁ・・・」
「ダメだこりゃ」

RNW (Right Novel World)3ー零落百夜ー ( No.1 )
日時: 2013/12/27 17:07
名前: 牙鬼 悠太 (ID: 3UNlfhyM)

 麗さんは呆れ顔でハルの方に向かい・・・。
「行くわよ、晴香ちゃん」
「ハッ!」
 やっと我に返ってきたらしい。
「何考えてたんだ、ハル?」
「ななな、なんでもないよ!」
「?」
 顔を赤くしながらまず手始めに、すぐ近くにあったスタジアムに俺たちは入ってみた。
「意外と広いな」
「そうね。ん?」
「何か見つけたんですか?」
 麗さんの見ていたところを覗いてみると、そこには何かの紋章にようなものがあった。
盾のようなものを後ろに、真ん中には大きな4枚の羽を持った天使のような人が描かれて
いて、これが何を意味しているかは俺には分からなかった。
「真斗、これ分かる?」
「う〜ん、どっかで見た覚えがあるんだけど・・・。やっぱ分からんわ」
「今は時間がないから、とにかく後で思い出しておきなさい」
「りょーかい」
 次に俺たちは少し他の部屋より大きな扉のある部屋に入ってみた。
「ここって・・・」
「格納庫かしら?」
 その部屋は周りは少し暗く、様々な機材があってまるで秘密基地のようだった。
「ん?なんかあそこにある」
「え?」
 暗くて見えないが、確かに俺は目の前にある何かに気がついた。
「おっ、スイッチがある。これで少しは見えるはずだ」
 俺の後ろの方で真斗がスイッチを押すと、突如眩しい灯りが俺の目の前を照らした。そ
こにあったのは巨大な鋼鉄の鎧のような機械だった。スカートのような下半身の鎧に、袖
のような形のユニット、巨大な籠手に機械の手がついていた。
「真斗、これってなんだ?」
「ん?」
 真斗は振り向くと、驚愕した。俺は真斗の顔の表情からそう考えた。
「こここ、これは・・・」
「真斗、知っているの?」
「あぁ・・・」
 真斗は眼鏡をずらして、言葉を続けた。
「これは、量産型IS、『打鉄(うちがね)』だ」
「うちがね?」
「あいえす?」
 俺とハル、もちろん麗さんも真斗の言葉が理解できなかった。
「IS(アイエス)、正式名称インフィニット・ストラトス。この世界の究極の兵器とも
いえる飛行パワード・スーツだよ」
「きゅ、究極!?」
「インフィニット・ストラトス、直訳すれば『無限成層圏』。名前的には永遠って感じか
しらね」
「様々な武器を使いこなし、巨大な大剣すら片手で持てるしシールドエネルギーってもん
で操縦者は決して死なない。それに加えて機動力もいいし、まさに究極の機動兵器といっ
てもいいんだよ」
「おぉ、確かに最強だな。俺もちょっと動かしてみようかなぁ」
「ただし動かすには1つ条件が・・・、ってあれ、サト兄?」
 俺は真斗の説明を無視し、早速その打鉄に乗ってみた。
「智志くん、勝手に乗っちゃあダメだよ!」
 お約束のように、しっかりものの麗さんが止めに来た。
「平気平気、そこまで悪さするんじゃないんだし」
「智志、降りなよ。そんな場合じゃあないでしょ?」
「待ってくれ、サト兄にはそいつは動かせないよ!」
「何言っているんだよ。これをこうで・・・、こうか?」
 空中投影ディスプレイのボタンの1つを押すと、「ロックが解除されました」という電
子音と同時に、打鉄についていたコードのようなものが自動的に外れた。
 俺が立とうとすると、それに合わせ打鉄も動きだした。
「まさか・・・」
「おぉ!真斗、これすごいなぁ。兵器にしては武器は腰の太刀しかないようだけど、思い
っきり戦えそうだな」
「智志くん!早く降りなさい!」
「あ、そうですね」
 俺はすぐさま空中投影ディスプレイを操作しながら座り込むと、打鉄は動きを止めた。
「いやあ、確かに最強の兵器っていうし、よく出来てるなぁ。特にこのスタイルが武士の
鎧みたいで、誰かとサシの勝負みたいなのしたいなぁ」
 俺が打鉄から降りると、真斗は真っ青な顔で俺を迎えた。
「あのう、サト兄・・・」
「?」
 その時、真斗の口からは驚きの言葉が出てきた。

「本来ISは・・・、女にしか使えないんだよ」

「・・・・・・・・・、へっ?」
「「「えええぇええぇぇえー!?」」」
 しばしの沈黙、そして驚きの声が響いた。
「それじゃあ、俺が動かしたのは、どう説明すればいいんだ?」
「特殊な例だよ、現にこの世界にも1人だけ『世界で唯一ISを使える男』がいることだ
しね」
「そいつがこの世界のコア・ヒューマン?」
「そういうことになるね」
「じゃあ、早くそいつに会いに」
 俺が部屋を出ようと扉を開けると、そこにいたのは俺より背が低い眼鏡をかけた女性だ
った。
「へ?」
「あなたたち、どこから入ってきたんですか!?ここは許可された生徒以外立ち入り禁止
ですよ!!」
「真斗くん、この人は?」
「や、山田真耶(やまだ まや)先生・・・。この『IS学園』の先生だよ・・・」
「「えっ!?」」
 山田先生の顔は怒っていた。まあ、そりゃ関係者立ち入り禁止のような場所に人がいる
んだから、そりゃ怒るわな。
「4人とも取り調べのために、同行してもらいますよ!」
「と、取り調べ!?」
「サト兄、走れ!!」
「お、おう!!」
 俺は真斗に言われるがまま、別の扉めがけて走り始めた。その後をもちろんハルたちも
後を追いかけてきた。
「待ってぇ!」
「コラッ!逃げちゃダメですよ!待ちなさあい!」
 扉を開くと、外につながる大きな空間に出た。俺は迷わず出口を目指して走った。
 外に出ると、アリーナは既に戦場だった。4つの青いビットによるレーザーの雨が降り
注ぐ中、赤み掛った黒い機体が青い機体向かって突っ込んでいた。
「さすがね、セシリア。ここまでの正確な射撃、流石じゃない」
「あらあら鈴さん、まだ私と『蒼い雫(ブルーティアーズ)』のワルツは始まったばかり
でしてよ」
「あらそう。じゃあこっちもそろそろ本気で行くわよ!!」
 そう言いながら「鈴」と呼ばれている少女は背中にかけていた大型の剣を2つそれぞれ
片手で持ち、レーザーの雨の中を突っ込んでいった。
「な、何だこりゃ・・・。これがISの力・・・」
「何のん気にしているんだサト兄!追いつかれるぞ!」
「えぇ!?この中を走るのか!?」
「また輝力武装を使うんだよ!!」
「あっ、そうか!」
 俺は咄嗟に駆け出し、青龍を掲げながら盾をイメージすると、炎が白い盾を作り出し、
脳天に構えると、盾はレーザーを全て跳ね返してしまった。
「これでなんとかなりそうだな。みんな俺の後ろについてきて!」
 こうして俺たちは、なんとか山田先生から逃げ延びることが出来た。

「今の・・・、誰だ?」
 2人の模擬戦を見ていたが、その人の視線はその中を盾を持って走っている4人の男女
に向けられていた。
「見かけない顔だな。って、あそこにいるのは男、なのか?」
「どうした?」
「あ、ちょっとね。すまんが少し席を外すよ」
「ど、どこへ行く!」
 引き止める声を聞かぬまま、その少年は出口へと走っていった。

RNW (Right Novel World)3ー零落百夜ー ( No.2 )
日時: 2013/12/27 17:09
名前: 牙鬼 悠太 (ID: 3UNlfhyM)

「みんな・・・、大丈夫か・・・?」
「平気・・・。智志のおかげでなんとか・・・」
 俺たちは思いっきり走ったせいで息切れになっていて、今はへ垂れ込んで休んでいた。
「真斗、さっき山田『先生』って言ってたけど、あの人本当に先生なのか?」
「ああ。ここ『IS学園』の先生で、意外と強いんだよ」
「へえ。で、『IS学園』って何をしているんだ?」
「IS操縦者育成のための特殊国立高等学校だよ。敷地内にはアリーナや学生寮に食堂、
大浴場まであるというすんばらしい学校だよ」
「そりゃすごいや・・・」
「お前ら何しているんだ?」
 俺たちがこの世界のことを話していると、後ろから声をかけられた。振り向くとそこに
いたのは麗さんくらいの身長の男子だった。髪は黒髪、服装は制服らしい白と黒を主体と
した赤い線の入った格好をしている。
「あれ?何で俺以外の男子がここにいるんだ?」
「真斗、この人ってまさか・・・」
 真斗はこっちを向くと頷いた。ということは・・・。
「あぁ、自己紹介しとくよ。俺、織斑一夏(おりむら いちか)な。よろしく」
「あぁ、海原智志です。こっちは旭泉晴香」
「こんにちは」
「わたしは西園寺麗こっちは弟の真斗」
「こんちわー、織斑くん。俺は自称『1回見ただけで女子のスリーサイズを完璧に当てて
みせる男』の」
 ガンッ!!!*2(俺と麗さんのげんこつの音)
「いい加減にしなさい、このバカ弟!」
「なんでだよ、姉貴・・・」
「ったく・・・」
「あははは・・・」
 そんなアホらしいことをしていると、いきなり、背後に何者かの気配を感じた。
「何をしている、このバカ者どもが」
「「「「!!!?」」」」
 声をかけられ、俺たちは振り向こうとしたが、体がこわばって動かなくなっていた。何
だ、この気配は!?これは・・・とてつもない殺気!?
「どうした?なぜ振り向かない?」
「あの・・・、体が動かなくなってしまって・・・」
 すると後ろから腕が伸びて俺の顔を持つと、首が180度回った。グキッ!という音が
聞こえて、すごく痛い・・・。
「これでいいだろ?」
「すごく首が痛いです・・・」
「ならシップでも貼っていろ」
 声の主は黒のサマースーツをしっかり着こなしたいかにもしっかりものといった雰囲気
を醸し出している女性だった。それに目つきがすごく厳しい・・・。
「ゲッ!?」
「真斗、どうしたんだ?」
「サト兄、無事を祈る!!」
「は?」
 そう言い残し、真人は一目散に逃げようとしたが・・・。
「見つけましたよ!全く・・・」
「山田先生!!」
 2人にはさまれ、俺たちは逃げ場を失った。仕方なく、俺たちは抵抗するのを諦めた途
端、
ガンッ!!!*4
 頭を思いっきりげんこつで叩かれた・・・。人の拳とは思えない衝撃が俺たちの脳天に
響き、俺は意識が一瞬。さっきからひどい目にあってばっかりだな。
「山田先生、こいつらは?」
「はい、IS格納庫に入っていたようだったので、取り押さえようとしたんですが逃がし
てしまったのです」
「えっ!?つまり、お前ら不法侵入者ってことかよ!?」
「なるほど・・・。10代は確かに様々な事に興味を持つ。だがな・・・、」
 ガンッ!!!*4
 またぶたれた・・・。なんか意識が朦朧としてきた・・・。
「不法侵入とは見逃せないな。山田先生、こいつらを特別室に」
「は、はい!」
「ちょっと待ってください、織斑先生」
「? なんだ?」
 全員を止めたのは真斗だった。もうあのげんこつから回復するとは、やっぱすごい回復
力だな。さすが麗さんの弟だ・・・。
「こちらにおります我友人、海原智志は男なのにもかかわらず、先ほど格納庫に侵入した
際、IS『打鉄』をサポート無しで起動しておるのです」
 おいっ!そんなことなんで今話すんだよ!?
「おぉ、俺と同じやつがいたのか!」
「あ、ISを勝手に!?」
「ほう・・・。山田先生、格納庫にある打鉄が本当に動かされたのか確認してきてくださ
い。このバカ者たちは私の方で話を聞きますので」
「は、はい!分かりました!」
 「バカども」って・・・。
 そう言い残し、山田先生は元来た方に走っていった。
「助かった・・・。」
「真斗・・・、これから俺どうなるんだ?」
 俺はまゆをヒクヒクさせながらいつもより声を低く一応聞いてみた。
「そりゃ多分、織斑くん同様このIS学園に入ることになるだろうね」
「「えっ!?」」
「ふざけるなぁ!!!」
 すぐに俺の口からは怒号が出た。
「いいじゃんいいじゃん。女子だらけのこの学校で少しの間でもいい思いしとけば」
 バシッ!(俺が張り倒した音)
 グキッ!!(麗さんが蹴り飛ばした音)
 ガンッ!!!(織斑先生の特大のげんこつの音)
「「「バカもんが!!!」」」
「どんだけぇ〜・・・」
 そう言いながら真斗は気絶してまった。こりゃ起きるのはいつになるのやら。
「そういえば、織斑くん、だっけ。でこっちが・・・」
「織斑先生・・・ってあれ?もしかして・・・」
 俺とハルは恐る恐る聞いてみた。
「「兄弟・・・、なんですか?」」
「まあ、そうなんだけど・・・」
「・・・」
「「えええええ!?」」
 即答とは・・・。言われてみれば、確かに似ているなぁ。意外だ。
「何をしている。織斑、気絶しているやつを担いできてくれ」
「分かりました」
 そんなこんなで、俺は気を楽にして織斑先生についていった。
 しかし・・・、甘かった。
「お前はどこ出身で、どこの何だ?」
「あのう、先程から言っているように俺は」
 ベシッ!(織斑先生のチョップの音)
 チョップってこんなに痛いもんだっけ・・・?
「教師に口答えするな。答えろ」
 もう嫌だ・・・、こんな学校早く出たい・・・。

「疲れた〜・・・。」
「智志、大丈夫?」
「もう夜だし、早くご飯にして、休んだほうがいいわよ」
「そうしたいです〜・・・」
 織斑先生の取り調べ、というか尋問は7時まで続き、俺はもうヘトヘトだった。
「智志、食堂あったよ。」
「よかったぁ。これでやっと楽になるぅ。」
 しかし、扉の向こうは新たなる試練の幕開けだった。
「・・・・・・・・・・・・」
 右に女子。
 左に女子。
 前には女子の大群。
「もう、楽にさせてくれ・・・」
「これは智志君には苦行かもね・・・」
「男の子だったらそろそろ色欲も出てくるはずなんだけどね?」
「バカにしているんですか、麗さん?」
「智志、少しは女子の大群に慣れたら?」
 思わず俺はため息しか出せなかった。
 実は俺、過去のトラウマで女子の大群が苦手なんだ。見るだけで悪寒が走り、逃げてし
まう。
 そんなこんなで俺たち(真斗は気絶しているので除く)はそれぞれ注文した後、空いて
いるテーブルに座った。
 ちなみに俺は鰆の塩焼き定食、麗さんはホワイトシチュー、ハルはかぼちゃの煮物定食
だ。すごく美味しそうだが、今の俺にはぼんやりとしか見えない。
「ねえ、智志。もしかして、女の子の大群が嫌いな理由って・・・」
「そうだよ。いつかに真斗がつっぱして女子の反感買って、ついには俺にまで火の粉が掛
かってボコボコにされて以来だよ」
「あのことは、智志くんには未だに辛いようね」
「はい・・・」
 俺はゆっくりと食事を始めた。しかし鰆の旨みは疲れている俺に生きる気力を与え、ふ
っくらとしたご飯は食欲を掻き立て、徐々に俺の食べるスペースは早くなっていった。
「どうやら、元気になったようね」
「こ、ここの定食うまいなぁ」
「智志、このかぼちゃの煮物美味しいよ。食べてみて」
「えっ、どれどれ?」
 すると、ハルは箸で持ったかぼちゃの煮物を俺の口に持ってきた。それに俺はすぐさま
大口を開け、一口でかぼちゃをほおばった。
「ど、どう?」
「うん。確かにちょうどよく汁の味が染み込んでいるね。うまいよ」
「そ、そう・・・」
 それにしても、ハルはなんで顔を赤くしているんだ?
「ね?もう一口どう?」
「お、じゃあ」
「あれ、もう大丈夫なのか?」
「おぉ、織斑くん」
 俺たちの席に来たのは、ISを動かせる男こと織斑くんだった。こんな優しそうな男が
先程、俺の体力をほとんど削り取った人の弟とは思えないなぁ。
「あれ?どうしたんだ?」
「いやぁ、すごい違いに驚いてさ」
「?」
 すると、織斑くんの後ろから、ぞろぞろと5人の女子が現れた。
「一夏、コイツは?」
「あら、男の方?」
「なんでIS学園に男子が?」
「そういやあ、みんなには話してなかったっけ。この人は海原くん。俺同様ISを動かせ
る男だそうだ」
「・・・え?」
「「「「「えええ!?」」」」」
 俺の代わりに織斑くんが説明すると、少しの間の後いきなり5人が大声で驚いた。そこ
まで驚くとはISが使える男ってやっぱそんなにすごいもんなのか?
「い、一夏。つまりそれって、IS学園に入ることになったってこと?」
「まあ、そうなるんじゃないか?」
「俺は少し嫌なのだが・・・。そういえば君たちは?」
 そういえば、金髪のブロンドの子と、ツインテールの子はさっき顔だけは見たなあ。
「こ、こんにちは・・・」
「あれ?どこかで会いました?」
「あら、では自己紹介をしなくてはいけませんわね。わたくしはイギリス代表候補生のセ
シリア・オルコットです。よろしくお願いいたしますわ」
「西連寺麗よ。よろしくね」
「こちらこそ」
 そう言葉を交わしつつ、2人は握手を交わした。麗さんとセシリアさんって、なんか相
性良さそうだなぁ。
「あたしは凰 鈴音(ファン・リンイン)。あぁ、鈴でいいから」
「あっ、さっきの赤いISの人じゃないか!」
「そうか。さっきの侵入者って、あんたたちだったのね」
「まあ、よろしくお願いします」
「そう、よろしくね」
 すると、今度前に来たのはセシリアとは違う金髪の子だった。
「はじめまして。僕はシャルロット・デュノア。よろしくね」
「海原です。こちらからもよろしくお願いします」
「こちらこそ(ニコッ)」
 うわあ、綺麗な笑顔だなあ・・・。
「智志君、顔赤くなってるよ」
「えっ!?そうですか?」
「智志の可愛い人好き・・・」
「ハル!何言っているんだ!ていうか、なんで怒っているんだ!?」
「別にぃ?」
 なんだなんだ、さっぱり分からないな、女子の心の内って。
「まあ、シャルは可愛いし、そりゃ見とれるのも分からなくもないな」
「か、可愛い!?」
 すると、シャルロットさんは一夏の方を顔を赤らめながら素早く向いた。
「う、嘘言ってないよね?」
「嘘で人を褒めたりするわけないだろ?」
「そ、そうだよね。可愛いかぁ・・・」
「?」
 一夏がわかってないような顔をしていると、一夏の足を2人の女子が踏んできた。
「痛ぇ!!」
「一夏、いつもシャルロットばかり褒めすぎだ!」
 と右手は長い髪のポニーテールの子。
「シャルロットを褒めるのなら、もっと私を褒めろ!」
 と左手は眼帯をはめた銀髪の子だった。
「ちょっ、箒、ラウラ!痛いんだけど・・・」
「えっと・・・、その人たちは?」
 俺が問いかけると、2人はひと夏の足からかかとを外し、自己紹介を始めた。
「自己紹介がまだだったな。私は篠ノ之箒(しののの ほうき)だ。よろしくな」
 しっかり目を見て自己紹介はしてくれているが、なんか少し怒っているような・・・。
「なあ箒、少し怒っているように見えるんだけど・・・何かあったか?」
「こ、これでも普通にしていたはずなのだが・・・」
 普通でそんなに仏頂面なのかぁ。それなら少し勘違いされても仕方ないなぁ。
「ラウラ・ボーデヴィッヒだ」
 銀髪の子は仁王立ちでそう自己紹介したのだが・・・。
・・・・・・・・・
「・・・あれ、それだけ?」
 そう俺が尋ねると、ラウラさんは少し考えこんでから、再び口を開いた。
「一夏は私の嫁だ」
「「「「「・・・はあっ!!?」」」」」
「よ、嫁!?」
「いきなり、告白宣言って・・・」
 そこは婿だろ!
 というか俺、なんで冷静に突っ込んでいるんだ!?
 みんなは呆れているし・・・。
「ラウラちゃん!あんまり人前でそのこと言うのはちょっと・・・」
「何を言うか。決定事項なのだから、公表しようとどうしようと私の勝手だ」
「もう、そういうことじゃなくて!!」
「一夏も何とか言ってやれ!」
「だから俺は嫁じゃないって・・・」
「「「アハハハ・・・」」」
「ラウラ、貴様・・・」
「なんであんたばっかり・・・」
「少しはレディとしての嗜みくらいは身につけて欲しいですわ」
「いやそれよりも、デリカシーの問題だと思うんだけど・・・」
 わぁ、これが「姦しい」というものか。確かにうるさいものだ。
「一夏も何か言え!」
「そうよ、大体これはあんたが原因なんじゃない!」
「いやいや、そこは俺に話振られても・・・」
 織斑君も大変そうだな、口論に引きずり込まれって言っているし。
「大変、そうだな・・・」
「いつものことだよ、これぐらい」
「「うわぁ・・・」」
 織斑君のそんな体力の持ちように、深く平伏します・・・。
「何をやっとる、この馬鹿どもが!!」
ギクッ!!!*9
 こ、この声は・・・。俺達は恐る恐る振り向いてみると、そこにいたのは紛れもなく俺
に新たなトラウマを与えそうにした張本人にして、鬼教官こと織斑先生だった。
「海原、お前何か失礼なことを考えているだろう?」
「い、いえいえ!!全然!!」
 この人、まさか人の考えていること全部聞こえているのですかぁ!!?
「ち、千冬姉・・・」
ゴオォン!!!
 げんこつだけでそんな音するかぁ!?この人はやっぱ化物なんじゃあ・・・。
「織斑先生だ」
「は、はい・・・」
「お前らも食堂でうるさくするなっ!食事の邪魔だ」
「「「「「は、はいっ!!」」」」」
 そう言い残すと、織斑先生はその場を横切っていくとカウンターへと並んだ。その場に
いた女子は目を丸くすると、おしゃべりを止め、織斑先生をガン見していた。
 まさかあそこまで騒がしかった全員を来るだけで静かにさせるとは恐ろしいな、織斑先
生・・・。
「ん?(ギロッ)」
「・・・・・・」
 無駄なことは考えないことにしようか。そう決めた俺は直ぐにテーブルに着くと、無言
で食事を再開させた。

 食事を終え、智志たちは特別に用意された部屋に向かっていた。
「いやまあ先が思いやられるけど、この世界を救うためだ。頑張って耐え切ってやるぞお
!」
「そ、そうだね・・・」
 智志の横を歩いている晴香の顔は、ほのかに赤かった。
「ハル、どうしたんだ?」
「えっ!?な、なんでもない・・・」
「?」
 そうしているうちに、3人は部屋の前まで来てしまった。
「じゃあ智志くん、真斗のことお願いね」
「分かりました」
 そう智志に言い残し、、麗さんは扉を閉じると鍵を閉めた。
「で、どうだった?」
「な、なんのことですか?」
 突然晴香が布団に座ったところで、麗さんが質問してきた。
「なんのことって、さっきの『あい、あーん』の感想よ」
ギクッ!?
 晴香の心の中でそんな心の声がした。
「れ、れれ、麗さん!?」
「ふふっ。狙ってたのはすぐ分かったわ。まさか、あんなに自然にやるなんて。うまい作
戦だったわね」
「うう・・・、穴があったら入りたい・・・」
 晴香はそのまま布団に顔を伏せてうずくまってしまった。
「そんなに恥ずかしがらなくてもいいのに・・・」
「〜〜〜〜〜〜」
「ダメだこりゃ」
 こんな感じで2人は布団に入り、目を閉じて眠りの床に就いた。

RNW (Right Novel World)3ー零落百夜ー ( No.3 )
日時: 2013/12/27 17:10
名前: 牙鬼 悠太 (ID: 3UNlfhyM)

ー7、白式(びゃくしき)ー
 時は既に午後3時。みんな授業を終え、俺たちはアリーナにて一夏たちの模擬戦を観戦
しに来ていた。
「あっ、みんなぁ!こっちだよ!」
「あっ、はい!」
 俺たちを迎えてくれたのはシャルロットさんだった。笑顔がとても眩しいや。
「あれ?そこの男子は初めての人だね。こんにちは、僕は」
「シャルロット・デュノアさん。でしょ?」
「あ、あぁ。智志くんたちからもう聞いていたんだ・・・」
(本当は真斗だけがこの世界の情報を知り尽くしているだけなんだけど・・・。)
 そう言いたかったが、ここでそのことを話す時ではないと思いそのまま俺は黙っておく
ことにした。
「それにしても・・・。」
「?」
「シャルロットさんのバス」
ガンッ!*2(俺と麗さんのげんこつの音)
「痛ってぇ・・・」
「危なかったぁ」
「ごめんね。このバカ、いろいろと女の子に迷惑かけているのよ」
「えっと・・・へ?」
「い、今は模擬戦を見ましょ。ねっ?」
 とっさにハルが話を変えてくれたおかげで、助かった・・・。
「じゃあ、行こっか。今、一夏と箒ちゃんが模擬戦しているから」
「おぉ!いきなり楽しみだなぁ」
 そう言い、俺たちはアリーナに入っていった。
「そういえば智志、さっきなんか書いていたようだけど、それは?」
 俺の手には、文字がズラッと並んでいる紙が握られていた。
「あぁ。打鉄の使用願い。これでISを正式に使えるようになったんだ」
「おぉ、それはそれは」
「そういえば、晴香ちゃんたちもIS動かせるの?」
「ごめんね。それはまだやってないのよ」
「じゃあ、こんど適正試験してみてはどうですか?」
「それいいかもね」
 そんなたわいもないおしゃべりをしていると、アリーナの方から金属音が響いてきた。
「す、すごいな・・・」
 アリーナに着くと、セシリアさんに鈴さん、それにラウラさんが一夏くんと箒さんの勝
負を観戦していた。
 織斑くんのISの色は白。武装は右手に持っている剣だけのようだが、左手がやけに大
きいことから、どうやらあれも何かの武装なのだろう。なんか日本風なISだなぁ。
 一方、篠ノ之さんのISは真紅。一夏くんとは対照的な色だが、武装は2本の太刀だけ
と見ると、なんか織斑くんのISに似てるなあ。
「うおおぉぉぉ!!!」
「はああぁぁぁ!!!」
 2人の掛け声とともに、2人の動きが加速していきそこからは斬撃の嵐と化した。こう
比喩するのは、既に俺の動体視力を超えていたからだ。
「どう?」
「は、早いとしか言えない・・・」
 俺はシャルロットにそう答えるしか言葉がなかった。
「まあ、そりゃあ一夏と箒のISは第4世代のものだしね」
「第4世代?」
「ここは俺が。そもそもISは宇宙空間での活動を想定し、開発されたマルチフォーム・
スーツだったんだけど、「白騎士事件」から従来の兵器を凌駕する圧倒的な性能が世界中
に知れ渡ることとなり、宇宙進出よりも飛行パワード・スーツとして軍事転用が始まり、
各国の抑止力の要がISに移っていったんだ。それで、『操縦者のイメージを用いた特殊
兵器の搭載を目標とした機体』が第3世代。『装備の換装無しでの全領域・全局面展開運
用能力の獲得を目指した機体』が第4世代というわけで、簡単に言えば、あれが今の最高
級のISと言うことになるんだ」
「「「「「・・・・・・」」」」」
「あれ?」
 突然俺らが静かになったのがおかしかったのか、真斗はキョトンとしてしまった。
「真斗・・・、それをどこで覚えたんだ?」
「そりゃ、本(原作)からだけど?」
「あんた、記憶力そこまであったっけ?」
「姉貴、俺のことバカにしてねぇか?」
「何も見ずに全てスラスラと言える人は初めてですわ」
「「「「「同感」」」」」
 その時、アリーナの方でドカァンと大きな爆発音がして砂埃が上がっていた。
「あっ。話に気を引かれていて、模擬戦のこと忘れていた!」
「「「「「そういえば」」」」」
 俺たちが見ると、既に勝負はついていた。
「いてて・・・」
「まだまだだな、一夏」
「くそう。エネルギーの調節がうまくいかないなぁ」
 ・・・・・・、ありゃ?
「負けた、のか?」
「やっぱりか」
「真斗、どういう事だ?」
「織斑くんのIS、『白式』の武器である『雪片』はエネルギーを完全に消滅させること
が可能なんだけど、自分自身のエネルギーすら消滅させてしまうという欠点があるんだ。
それに剣は直線的な攻撃でしょ。そのせいで、いろいろと不便なんだよ」
「なるほど。それで負けちゃったのか・・・」
「じゃあ、今度は海原くんの番だね」
「あっ、はい!」
 そう言い、俺はすぐさま席を立ち、打鉄のある格納庫に走った。

 5分後、ISに乗った俺がアリーナに入ると、そこにいたのはセシリアさんだった。
 セシリアさんのISは、どうやら遠距離型の武装らしく、手には巨大なライフルが握ら
れていた。昨日もチラッとは見たが、どうやら遠距離重視なISなようだな。
「相手はセシリアさんか。よろしくお願いします」
「こちらこそ。では海原さん、覚悟はいいですか?」
「もちろん!」
 そう言い、俺は腰から2メートルはあると思われる太刀をだし、剣道の構えをした。
「あら?あなた、剣の腕前がありまして?」
「あぁ。全国3位程の実力だぜ」
「そうですの。では、最高のおもてなしをしなくては、私とこの『蒼い雫(ブルー・ティ
アーズ)』でね」
 そこで言葉をやめ、俺たちはそれぞれ構えたところで、先に動いたのはセシリアさんだ
った。
 ライフルから1線の青いレーザーが放たれた。すぐさま俺は俺はかわしたが、レーザー
はさっきまで俺がいた位置の地面に直撃した。
「こ、こりゃあ・・・、まずいなあ・・・」
「隙は命取りでしてよ!」
 すぐさまセシリアさんは肩のスラスターから4つのビットを発射して、レーザーの雨を
起こしてきた。
「うおっ!ちょま!ぐへっ!」
 レーザーの雨は止まらず、打鉄のシールドエネルギーはどんどん減ってしまった。
 打鉄は近距離だということからもか、どうやら「蒼い雫」と打鉄は相性は悪いようだ。
「くそう、このままじゃあ・・・、あっ」
 俺は冷静になり動きを止めると、すぐさま空中投影ディスプレイを操作し始めた。
「?」
「これだ!」
 俺がディスプレイの中から1つのボタンを押すと、打鉄の腕ユニットを粒子状態に変わ
り、俺の素手の右手と義肢の左腕が現れた。
 意外な行動にセシリアさんは攻撃を止めてしまい、そこを俺はその隙を逃しはしなかっ
た。すぐにセシリアさんの懐へと飛び込み、右手に「あいつ」を呼んだ。
「こい、『青龍』!!」
 俺が叫ぶと、それに答えるかのように魔法陣が現れ、その右手には青い剣、「青龍」が
握られていた。
「そ、それは!?」
「今見せてやる!『神剣パラディオン』!」
 俺の体は炎に包まれ、シールドエネルギーが少し減ってしまった。けど、セシリアさん
が止まっている今が好奇!
 俺はすぐさま距離を縮め、剣を振り下ろした。
「!?」
 青龍はセシリアさんの左肩に当たり、シールドエネルギーをかなり削っただろう。セシ
リアさんは受身を取ると再び距離を取り、ライフルと4つのビットの砲口を一斉に俺に向
けてきた。だが・・・。
「遅い!!」
 ビットが俺がいたところに向いたときには、既に俺はその後ろに着地していた。
「そんな!?」
「行くぜ!!」
 俺が手に力を込めると、小さな紋章が手のひらに出現した。すぐさま俺はビットに近づ
き、4つ全てに手のひらで触れた。その作業が終わったところで、俺はセシリアさんから
かなり離れたところで動きが一瞬止まった。
「止まりましたね」
「どうかな?」
 4つのビットが一斉に俺に向いた。だがその瞬間、
ドオオオオン!!
 ビット全てが一斉に爆破したのだ。
「へっ!?どど、どうなっていますのぉ!?」
「あ、あれって!」
「サト兄、使いこなすのが早いなぁ」
 これもシンクの力、輝力による爆破だ。俺が真斗のアトバイスをヒントに思いついた新
たな戦術だ。シンクくんの輝力は炎を操る物が多いらしく、この技も紋章で相手に触れ、
爆破のイメージを描くことで紋章を起点に爆発させた、という仕組みだ。
 俺はすぐさま動きが止まっていたセシリアさんに近づき、今度は『幻想殺し』を出現さ
せた。
「喰らえっ!!」
「かかりましたね」
「へっ?」
 セシリアさんの顔に笑みが浮かんだ。俺がキョトンとした瞬間、「蒼い雫」の腰の方か
ら2つの砲口が展開し、そこから2つの誘導ミサイルが発射されたのだ。
「げっ!?」
ドカァン!!
 俺は誘導ミサイルをかわせず、そのまま直撃を受けてしまった。
「智志!」
「あちゃあ。サト兄、織斑くんと同じ事してらぁ・・・」
「あいつ、一夏よりも弱い?」
「鈴、その言葉俺までも傷つくんだけど・・・」
「でも、智志くんはまだ倒れてないわよ」
「「「「「えっ?」」」」」
 そう、まだ俺は倒れていなかった。ギリギリだったがシールドエネルギーが残っていた
のだ。
 俺は煙の中からすぐさま飛び出ると、再び『幻想殺し』を突き出した。龍の首は「蒼い
雫」目掛けて伸びていき、そして・・・。
「いっけえええええ!!」
「!?」
 『幻想殺し』はセシリアさんの体に容赦なく噛み付き、地面めがけ叩きつけた。
「うグッ!」
 女子特有のうめき声とともに地面にうつ伏せになったセシリアさんの眉間に、俺は剣を
牙突の位置で構えた。
「どうでした?まだやります?」
「もちろん・・・ま」
 「まだ戦える」と言おうとしていたのか、セシリアさんが立ち上がろうとするとISが
勝手に停止してしまった。
 これはエネルギー切れ、つまり戦闘不能の状態だ。
「えっと、俺の勝ち・・・ですね・・・」
「〜〜〜」
 負けたのがとても悔しいのか、セシリアさんはその場で凹んでしまった。
「お、お〜い。セシリアさん?」
「セシリアぁ!」
 おっ、織斑くんたちが駆けつけて来た。それに気づいたのか、セシリアさんは顔を上げ
てISを待機状態にした。
「一夏さん・・・」
「大丈夫か?ほら、ISのエネルギー切れたんだろ。早く回復させないと」
「あの・・・」
「?」
「実は少し体調が・・・」
「えっ!?もしかして頭打ったのか!?」
「少し目眩が・・・。よろしければ一夏さん、保健室まで連れてってくれませんか?」
「えっ、いいけ」
「「「「「一夏!!」」」」」
 うわっ!いきなり箒さん達の怒鳴り声が・・・。
「目眩くらいで男の肩を借りるな。一人で歩け」
「箒、それは厳しすぎるんじゃないか?」
「一夏は甘やかしすぎるんだよ。セシリアも早く立ちな!」
「もう目眩も治ったろう。さっさと立て!」
「鈴もラウラも厳しすぎだよ!僕らが運んであげよ。それでいいじゃん」
 そんなこんなで揉めている6人を俺たち4人は横から眺めていた。
「なあ真斗、織斑くんって女子の友達多いな」
「サト兄・・・そこは何か気付けよ?」
「へ?」
 一体なんのことだ?
「そういえばさせっかくいい機会だし、ハルと麗さんもIS操縦やってみない?」
「「え?」」
「あぁ、それもそうか」
 真斗は理解したように手を叩いた。
「ちょっと待って!さっきも言ったけどあたしは乗れなくてもいいから。ね?」
 ハルは断ったが、麗さんは・・・。
「あら、面白そうね。乗ってみようかしら」
 すごい乗り気だ・・・。
「智志くん、私も乗ってみたいんだけどいいかしら?」
「じ、じゃあどうぞ・・・」
 そう言い、俺はすぐさまISを降りると、麗さんは華麗にISに乗り込み、ディスプレ
イを操作して、手始めに準備運動をし始めた。
「確かに動きやすいわね。ちょっと智志君みたいに勝負したくなるわね」
「「えっ!?」」
 そう言い、麗さんは織斑くんたちの方を見た。
「じゃあラウラちゃん、お相手できます?」
「「へっ!?」」
「ラウラとやるのか?どうする、ラウラ?」
 一夏の問に、ラウラは深く考え始めた。
「もしかして、負けるのが怖いのかしら?」
 あれ麗さん?何挑発しているんですか?
「うむ、よかろう。貴様のその凄まじいプライドを、今ここでへし折ってくれよう」
 あっ、承諾しちゃった・・・。

RNW (Right Novel World)3ー零落百夜ー ( No.4 )
日時: 2013/12/27 17:16
名前: 牙鬼 悠太 (ID: 3UNlfhyM)

「真斗、ホントに大丈夫なのか?」
「何が?」
 俺の心配は麗さんのことだ。なんせラウラさんは格好からするに元軍人、つまり戦いに
おいては麗さんよりも上手だろう。
 それにISの方もすごい。漆黒のISには大型レールカノンしかないようだが、その周
りには異様な殺気が漂っていた。
「あのIS、なんか怖い・・・」
「『打鉄』は近接型に対し、ラウラの『黒い雨(シュヴァルッツェア・レーゲン)』は軍
事型だぞ。君のお姉さんの勝機が見えないんだが・・・。」
 織斑くんの質問に、真斗の顔はやけに明るかった。それだけ麗さんの勝利を確信してい
るってことか。
「大丈夫だって。油断してると、やばいことになるくらい姉貴はよく知っているから」
「そ、そうだよね。麗さんがこれくらいで怪我する訳」
「いや、そういうことじゃなくてね・・・」
 俺の言葉を遮った真斗の方を見ると、その顔はさっきの笑顔のままだが、その顔は少し
暗くなっていて、頬には冷や汗が流れていた。
「油断してると、酷い目あうのはラウラさんの方だと思うから・・・」
「「「へ?」」」
 その言葉はこのあと、現実と化した。

「貴様、用意はいいか?」
「いつでもいいけど、それよりこうしない?」
「ん?」
「ハンデでラウラちゃんは私に一撃でも入れられたら勝ちってどうかしら?」
 その言葉は、ラウラのプライドに触れたようで、その眉間にしわが寄った。
「どうやら貴様は私を馬鹿にしているのか!」
「あらあら、怖いわねぇ」
 麗さんの言葉遣いはいつもどおりだが、その目はなにか黒いものが蠢いていた。
「ふざけおって!」
 堪忍袋の緒が切れてのか、いきなりレールカノンが火を噴いた。直後、麗さんは爆煙の
中へと消えた。
「「麗さん!」」
「ありゃりゃ」
「ふん。おまえがこれでいいと言ったからその通りにした。これで文句はないな」
「もう終わりかしら?」
「!?」
 煙から出てきたのは、雷光を纏うガントレット『玄武』の拳を突き出して仁王立ちして
いる麗さんの姿だった。しかし、ISをつけているのだからこれでは驚かない。驚くべき
ところは、麗さんの拳に止められていた直径6ミリほどの銃弾が雷光によって止められて
いたのだ。
「なっ!?どういうことだ!?」
「レールカノンを、素手だけで・・・」
「何なんですの!?あのガントレットは!」
「あんなの、反則よ!」
「ラウラ!」
 シャルロットがさけんだが、ラウラの恐怖に侵食された心に聞こえなかったようだ。
「フフッ、まだこれからよ。後言っとくと、私の勝利条件は『あなたのISのエネルギー
全損』だから、それだけは覚えといて」
 そう言い、麗さんは直径6ミリの弾丸を握りつぶした。どんな握力なんだ・・・。
「っ!はああああ!!」
 麗さんの殺気にラウラは今度はプラズマ手刀を展開し、麗さん向かって右手を突き出し
ながら突っ込んできた。
 麗さんも突っ込んでいくが、2人がぶつかる寸前、そこに見えないシールドのようなも
のが展開され、麗さんの動きが止まった。
「「えっ!?」」
「ラウラのAICだ!」
 AIC、アクティブ・イナーシャル・キャンセラー(慣性停止結界)とは対象の動きを
止めることができる、ラウラだけの必殺技である。対象が1体のみと制限はあるが、弾丸
だろうと衝撃波だろうと止められることから、まさに何にでも使える無敵シールドと言っ
ても過言ではない。
「これで、貴様の動きは封じられた」
「へえ、で、これでどうするつもり?」
「こうするにに決まっている」
 ラウラはすぐさまレールカノンの銃口を麗さんに向けた。
 だが、ラウラは気づかなかった。麗さんの今の姿、白黒の服の意味する能力を。その麗
さんの顔に浮かぶ笑みの意味を。
ガンッ!!
 レールカノンは直撃し、そこで麗さんは倒れるはずだったが、少しの間の後いきなりレ
ールカノンの方が爆発した。
「なっ!?」
「姉貴、『一方通行』で弾丸を跳ね返すとは・・・」
「なあ真斗、さっきから何で麗さんはあんなにおかしくなっているんだ?なんかいつもと
おかしいぞ?」
 智志の問いに真斗はため息と共に渋々と答えた。
「あぁ、姉貴はどうやら鎧とか装備品とかつけると、性格が一変して加減の効かないドS
になるらしいんだ」
「ど、どういうこと?」
「まあ簡単に言うと、姉貴は武装すると豹変するってこと」
「「・・・・・・」」
 麗さんの意外な性分に、智志たちは目をぱちくりするしかなかった。
「あら、私を止めているのにあなたが止まっているなんて。おかしいわねぇ」
「グッ!」
 その瞬間、玄武がさらに雷光を放つとラウラに猛攻撃をしかけた。反射的に後退したラ
ウラだったが、その行動は麗さんに更なる隙を見せてしまった。
 その瞬間、麗さんはさらに近づき渾身のパンチを繰り出した。そのパンチはにより、ラ
ウラは壁に体を打ちつけられることとなった。
「これで決めるわよ、『獅子王双牙』!」
 麗さんは叫ぶと、ISごとその体は輝力に包まれ光の爪を持った姿へと変わると、更な
る猛攻をと、ラウラのいる方に突っ込んでいった。
「ま、まだだぁ!!」
 しかし壁に叩き込まれていたラウラだったが、体を起こすと、再びプラズマ手刀を展開
し、さらに今度は背中の6本のワイヤーブレードまで出してきた。
「フッ。甘いわね。」
「!!?」
 言葉にするなら、それは落ちた雷のごとく一瞬のことだった。麗さんはワイヤーブレー
ドを瞬時に避けるだけでなくその姿が消えた途端、6本のワイヤーブレード全てを切り落
としたのだ。
「これで終わりね」
 ラウラは確信した。この人はその内に凄まじい強さを持っているのだと。自分1人では
勝てないということを。
「姉貴、そこまでぇ!!!」
「!?」
 2人の間に走ってきたのは先頭から真斗、一夏、シャルロットに智志たちだった。
「ラウラ、無事か?」
「怪我とかしてない?」
「あ、あぁ・・・。なんとか」
「姉貴、いつも俺にやり過ぎんな的なこと言っているが、これじゃあ姉貴も同じだぜ」
「うっ・・・」
 真斗に注意され、麗さんはすぐにIS降りてきた。
「麗さん、聞きましたよ」
「武装したりすると、性格変わるんですね?」
「ごめん・・・。本当はみんなにも言いたかったんだけど、ほら、こいつ口軽いしね」
 そう言いながら、真斗の耳を引っ張りながら話す麗さんの姿は、やはりいつもどおりの
麗さんたちの日常そのままであった。
 これがいつもどおりの俺達だ。そう思い、智志は笑いがこみ上げてきた。
「智志くん?」
「智志?」
「ごめん、やっぱりみんなといてて、楽しいって自覚してさ」
「フフッ。変な智志」
 そう言い合うと、智志達は大声で笑い合った。


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