二次創作小説(紙ほか)

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イナGO霧野くんと甘い休日【完結!】
日時: 2016/02/26 08:00
名前: モンブラン博士 (ID: MQ1NqBYl)

イナズマイレブンGOの霧野蘭丸くんと「私」が休日を過ごすだけのお話です。

Re: イナGO霧野くんと甘い休日 ( No.1 )
日時: 2016/02/18 11:43
名前: モンブラン博士 (ID: MQ1NqBYl)

会いたい! いますぐ会いたい!
愛する霧野蘭丸(きりのらんまる)くんに。
霧野くんは名前からわかるように、男子だ。
だがそれは小さい問題でしかない。
なぜなら私の彼に対する想いはすでに性別という壁を超えているのだから!
雷門中のグラウンド。
私の通っている中学から二〇キロも離れているが、小さいことだ。
想い人に会えるのならば電車賃も足の疲れも何でもない。
それほど私にとって、彼の存在は大きい。
仲良く下校していく女生徒たちを、ボクシングのフットワークの要領で避けていく。
女子たちはなぜ会話に夢中になって前方を確認しないんだ?
いや、そんなことはどうでもいい。今は霧野くんを探さねば。
ちょうどいい所に男子生徒がふたり、校舎から出てくるのが見えた。
ひとりは天然パーマで、もうひとりは幼稚園生と思えるほどに小柄だ。
よし、これはチャンスだ。
彼らに声を掛ければ、あの子がどこにいるのかわかるかもしれない。

「あの、すみません。あなた方にお訊きしたいことがあるのですが……」

初対面であるためいつもの態度を隠し、できる限り低姿勢で訊ねる。
相手に不信感を与えては厄介なことになるからだ。

「はい、なんでしょうか? 俺たちにできることがあれば何でも協力しますよ! ね、信介!」
「うん、天馬!」

よかった。ふたりの態度を見る限り、彼らは善人だ。間違っても嘘の情報を教え、私が困り果てる様を見て楽しむような外道ではない。
己の抱いた印象を信じ、彼らに霧野の居場所を訊く。

「霧野先輩ですか? 先輩でしたらまだ二年生の教室にいると思います。よかったらそこまで案内しましょうか」

せっかくの申し出だが、ありがたく気持ちだけ受け取る。
彼らにこれ以上迷惑をかけるわけにはいかないし、教室まで案内してもらって私と霧野の仲を察し、後日これをネタにしてカツアゲでもされたら困るからだ。
見た感じ優しそうな少年ではあるものの、かつて年下に金銭せびりをされた経験があるため、警戒心を解くことはできなかった。心の狭い私を許しておくれ、少年よ。
少年と別れ、校内に設置されてある案内掲示板を瞬時に記憶し、校舎の中を把握する。人並み外れた記憶力を誇る私は、三歳の頃に母が私の大切な誕生日ケーキを落としたことまで記憶している。食べ物の怨みは恐ろしいというが、今でもケーキを見るたびに当時の哀しみが思い出される。記憶力の良さというのも、使いようによってはよくも悪くもなるものだ。
昔の出来事を懐かしみながら階段を上がり、2年の教室へと足を進める。もう少しで愛しの人に会える。
自然と足が軽くなり、気が付くと彼のいる教室へとたどり着いていた。
空いている扉から中を伺うと、クラスの担任はいないようだった。
これは幸運だ。仮にも部外者である私がクラスに侵入したとなれば担任が騒がしくなるからだ。これで麻酔薬を染み込ませたハンカチを使う手間が省けたのだから神様に感謝しなくては。
さて、肝心の霧野くんはどこにいる?

Re: イナGO霧野くんと甘い休日 ( No.2 )
日時: 2016/02/18 11:49
名前: モンブラン博士 (ID: MQ1NqBYl)

教室を見渡すと、ピンクのツインテールが目に飛び込んできた。
あの長髪は紛れもなく霧野くん本人だ。女子に間違えられるほどの美形ではあるが、れっきとした男子だ。細身ではあるが、雷門男子の制服を着ている。カメラを持っていれば写真が撮れたのだが、うかつだった。
待てよ……確か一階にカメラを所持していた女子がいたはずだ。彼女を麻酔薬で眠らせてカメラを奪い取ろうか? 
だが、そうしている間にも霧野くんは遠くへ行ってしまうだろうし。うーん、どうすればいいだろうか。

「ドアの前に立って邪魔なんだが、通してくれないか?」

今はそれどころではない、人生の重大な選択を誤りそうなんだ!
霧野くんの学生服姿なんて滅多に見れない代物だ。
それを前にしているというのに何が「通して欲しい」だ。空気の読めん愚か者めが。
癪に障る奴の顔を見てやろうと閉じていた目を開ける。

「君は誰だ?」
「それは俺の台詞なんだが、まあいい。俺は神童拓人(しんどうたくと)、悪いがどいてくれないか。通行の邪魔だ」

神童拓人と名乗る少年は、茶色のウェーブがかかった、モップかワカメを彷彿とさせる髪型をしている。どこかで見たことがあるような気もするが、言い合いをしている場合ではない。
この場は穏便に彼を通したほうが賢明だろう。

「これは失礼しましたね神童くん、どうぞお通りください」
「……すまないな」
「いえいえ。お気になさらず」

早くここから出ていけ。
霧野くんとふたりっきりで会話したいのに、その時間を奪うつもりかこのワカメは。
ようやく神童が去ったあと教室に入る。
そのとき、下校支度をしていた霧野くんが振り返った。
色白の肌に大きな、そして鮮やかな青緑の瞳が美しい。まるでエメラルドのようだ。鼻もすっと通っているし、細い顎と唇も色気が漂ってくる。いますぐ抱きしめたい衝動にかられるが、ここはぐっとこらえなければ。欲望に動いて拒絶されては、私の人生は終わったも同然になるのだから。

「久しぶりだな」

ふわっと微笑む霧野くん。彼の口から発せられるのは、男にしては若干高くも凛々しい声。
この声で語りかけられる度に、全身が喜びに震える。
彼の声色はまるで甘い蜂蜜そのもの。
少し前にふたりきりでカラオケに出かけたが、そのときの歌声などは完全に心を奪われた。甘くこぶしの利いた魅惑のボイスは少し聴いただけでメロメロになってしまう。

「お前の学校からだと、この雷門まで来るのは大変じゃないか?」
「それはそうだが、君に会うためだ。それぐらいの苦労はするさ」
「なんだか申し訳ないな。お前のところに遊びに行けなくて」

霧野くんはサッカー部で忙しい。月曜から金曜日まで毎日練習をしている。運動嫌いの私からすれば、可愛い外見とは裏腹に結構な根性の持ち主に見え、尊敬の念を抱かざるを得ない。もしも彼が星一徹のもとに生まれていたら、やはり巨人の星を目指すのだろうか。

「ところで霧野くん、部活には行かないのか」
「今日はせっかくお前が来ているから部活は休むよ」
「でも大丈夫なのかね?」
「さっき神童に監督に伝えておくように頼んでいたから、心配ないよ」


霧野くんは本当に優しい。
こんな私のために部活を休んでまで付き合ってくれるだなんて。

「行こうか」

鞄を持ち、教室を出ようとする彼を慌てて追いかける。
サッカー部だけあって、普通の速度でもかなり早い。
早くも息が切れそうだ。
だが、そんなことより気になることがひとつある。
校舎を出て、ふたり並んで歩く。
今は前や後ろを誰も歩いていないので、並んで歩いても問題はない。
彼の柔らかなツインテールが風にふわりと靡き、私の顔に触れる。
すると、爽やかな香りが鼻孔をくすぐってきた。
柑橘系……これはレモンだ。
鋭い嗅覚で導き出した分析を伝えると、くすりと彼は笑う。

「よくわかったな、最近は石鹸とレモン水で洗っているんだよ。その方が石鹸だけで洗うよりも髪がサラサラになるから」
「なるほど。今度私も試してみようかな」

愛する人からの助言は試してみる価値はありそうだ。
霧野くんのようにサラサラ髪になったら彼も自分のアドバイスを聞き入れてくれたと喜び、うまくいけば距離がもっと縮む気がする。
そうなれば彼の唇を奪うのも時間の問題かもしれない。

Re: イナGO霧野くんと甘い休日 ( No.3 )
日時: 2016/02/18 11:52
名前: モンブラン博士 (ID: MQ1NqBYl)

どこに行くかと話し合った結果、カラオケ店に決まった。
最近になって霧野くんの家の近くに、学生でも財布に優しいカラオケ店が出来たんだそうだ。
その前に制服のままだと色々困るから着替えるという理由で、彼の家に寄ることにした。
辿り着いた彼の住居はごく普通の三角屋根が特徴の一軒家だった。
私も同じ一軒家であるため、親近感が湧いてくる。
玄関を通りすぎ二階へ続く階段を上がると、そこには『蘭丸』とネームプレートがされた部屋があった。
さて彼の部屋はどうなっているのだろうか。
ガチャリと外開きの扉を開け、「先に入っていいよ」と爽やかな笑顔を向ける。
自分ではなく私を優先させるなんて、そのさり気ない心遣いが胸に染みる。
ドアを抜けたむこうに広がっていたのは、綺麗に整理整頓されたプライベートルームだった。
どうやら綺麗なのは顔だけではなく、部屋も同じのようだ。
と、硬直していたのが気になったのだろうか、彼は心配そうな表情で顔を覗きこんできた。美しい顔が十数センチのところに位置しているため、どきりと心音が高鳴る。
自分ではわからないが、おそらくいまの私の顔は真っ赤になっているのだろう。

「ん? どうしたんだ」
「いや何でもない……」
「そっか」

彼が空気の入れ替えのために窓へと向かったので、ほっと胸を撫で下ろす。危ない危ない。
ここで気づかれては想いを伝える楽しみがなくなる。
だが冷静沈着で勘のいい彼のこと、あるいは私の気持ちを既に察しているかも——否、余計な詮索は不要だ。
今はこの夢のような時間を楽しむのを優先させよう。
窓が開かれ、新鮮な空気で部屋が満たされていく。外が肌寒いことも手伝い、入ってくる空気がいつもより気持ちよく感じられる。それはきっと霧野と一緒にいるからだ。


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