二次創作小説(紙ほか)

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【文スト】夢から醒める
日時: 2017/05/12 05:53
名前: 哀歌 (ID: eH6OJcrU)

夢から醒める話をしようか





初めまして、哀歌です。
今回は文豪ストレイドッグスの二次創作を書いていこうと思います。


注意
○文豪ストレイドッグス
○二次創作
○キャラ崩壊
○シリアス
○腐向け
○双黒or太中


目次
○序章…>>1
○第一章…>>2 >>3 >>4 >>5 >>6 >>7
○第二章…>>8 >>9 >>10 >>11 >>12

Re: 【文スト】夢から醒める ( No.3 )
日時: 2017/05/02 05:30
名前: 哀歌 (ID: eH6OJcrU)

__________魔都、横浜。

目まぐるしくも平穏な日々を過ごす人々の裏で、ある一郭の裏社会では日常の風景でありながら有り得ない光景があった。

「中也、右」
「わかってるっつーの!」

黒い羽織りを纏った集団の中、その集団を意図も簡単に薙ぎ倒していく青年と、それを指示しているであろう青年が二人。
指示を出している包帯まみれの青年、太宰が次々と作戦コードを言うと、亜麻色の髪の帽子を被った青年、中也がその小柄な体躯からは考えられないような力で相手を蹴り飛ばす。
その速さは、最早常人には計り知れない素早さであり、恐らく目で捉えることすら儘ならぬだろう。

「……ったく、キリねぇなこりゃ」

中也は小さく溜息をつくと、ギロリと鋭い視線を太宰に向けた。
自分に向かれている訳では無いとわかっていても、太宰を除くその場にいた者の背筋に悪感が走った。

「それもこれも誰かさんが作戦を丸投げにする様な事したからだよなあ?」
「さあ誰だろうね?私は知らないよ」
「テメェだよこの青鯖!」

態とらしく肩を竦める太宰に、中也は苛立ちを覚えて声を上げる。
と言うのも、この任務では中也が囮で潜入操作をし、ターゲットの首を人刺しして穏便に済ませるつもりだったのだが__________

「私の所有物に手を出そうとするからさ」

低く地を這うような声で太宰はそう言った。
所有物、というのは中也の事だ。
そう、太宰と中也は恋人関係にあたる。
そんな中、中性的な顔をしている中也を狙う輩は少なくない訳であり、手を出そうとする者は太宰が徹底的に排除してきたが、今回ばかりはそうはいかなかった。
案の定を気を緩めたターゲットは中也の腰のあたりを、何も言ってこないことをいい事にヤラシイ手つきで触ってくるのだ。
勿論中也も太宰以外の男に触られるなんて、吐き気を感じるほどの嫌悪感だったが、任務だった為、下手な動きはとれない。
仕方がなく太宰からの指示があるまでそのまま待機していた訳だが、中也の忍耐力よりも先に太宰の方が駄目になったらしい。
いきなりターゲットと中也の間に入ってきては、銃を発砲したのだ。
動揺していたのか、太宰の弾はターゲットの頬を掠める程度であってその後何度か発砲したが、向こうも流石に体術はそれなりだったらしく、あっさりと交わされてしまい、増援が来てしまう事態にまで持ち越してしまった。
そして現在に至る。

「……俺はお前のモンじゃねえ」

所有物、と呼ばれ、中也は思わず反論した。

Re: 【文スト】夢から醒める ( No.4 )
日時: 2017/05/04 06:48
名前: 哀歌 (ID: eH6OJcrU)


太宰はそれにニヤリと笑みを浮かべる。

「へえ……でも私がいなければこの力を最大限に生かす事はできないでしょ?」
「は、な……“汚濁“を使う気か?!」

汚濁。中也の異能力“汚れちまつた悲しみに“の所謂強化形態。
だが、これには欠点があり、自分の意識とは無差別に攻撃してしまう事だ。
目の前の敵だけを的にして周りの物質関係なく破壊していく。そして最後には息絶えるまでそれを止める事はない。
つまり、中也にとって汚濁は死を意味する。

「殺れよ、中也。私の作戦立案が間違っていた事はないだろう?」
「だが、アレは……!」
「私を、信じろ」

珍しく真剣な表情で口調を変えてくる太宰に、中也はその最後の言葉で汚濁を使わざる負えなくなった。
太宰はその事をよく知っている。だからそれを言ったのだ。

「わかった……信じてる、太宰」

そう言って背を向ける。
お互いこれで最後になるかもしれないが、何も言わない。信じているからだ。
中也は身につけていた黒い手袋をゆるりと外す。
そして呪文のような呪いを唱えた。

「汝、陰鬱なる汚濁の許容よ」

じわじわと体温が上昇し、それに伴って痣が浮き上がってくる感覚が、肌を伝う。
段々と視界が歪んできた。もう、理性が持たない。
最後の理性で、中也は小さく唱えた。


「更めてわれを目覚ますことなかれ」


Re: 【文スト】夢から醒める ( No.5 )
日時: 2017/05/05 06:06
名前: 哀歌 (ID: eH6OJcrU)


「おはよう、中也」

目を覚ます。
視界に映り込んできたのは愛しい相棒。
中也は体を起こすと節々が軋むように痛みを感じた。

「いっ……」
「汚濁を使ったばっかなんだから、動かしちゃ駄目でしょ」
「だって、直ぐに報告……っは」

足に力が入らず、その場で膝をついてしまう。
こんな姿、とてもじゃないけれど部下には見せられない。
だが、それでも汚濁を使ったのは太宰を信じたからだ。

「仕方ないなあ、もう」

太宰はそう言うと中也の前で背を向けながら立膝をつく。

「え……」
「何してんの、早く乗りなよ」
「で、でも」

いつもなら、置いていく癖に。
中也はそう言おうとしたが、太宰がそれを遮った。

「私がこんな事するなんて金輪際ないんだからね。有難く思えば」

強がる言い方。太宰らしいと言えば太宰らしいが、耳がほんのり赤くなっている。
ふっと中也は苦笑を浮かべると、覚束無い足取りでゆっくりと太宰の背中に乗る。
細く見え、以外に広い肩幅や背中に身を預けると、太宰は軽々と中也を持ち上げた。

「あー重い重い。君、ちびっ子マフィアなのに重いのだよねぇ」
「あぁん?」

どういう意味だ、と声を荒らげると、けたたましく太宰の笑い声が聞こえてきた。

「だって蛞蝓サイズなのに重いのだよ?」
「だれが蛞蝓だこの糞鯖!」

ぎゃあぎゃあと騒いでいると、いつもの横浜の街が見えてきた。
夜の魔都はそれは美しく、水面に浮かぶ街灯が反射して街を幻想的に色づけていた。
思わず見とれていると、太宰はふいに言う。

「もしも、これが夢だったら、中也はどうする?」

Re: 【文スト】夢から醒める ( No.6 )
日時: 2017/05/06 07:44
名前: 哀歌 (ID: eH6OJcrU)


こちらからは顔が見えなかったが、中也はふいに静かな口調で問いかける太宰を、知っていた。
そんな時、太宰は決まって“死にたい“と考えている。
いつもの“自殺したい“ではなく“死にたい“だ。

「……抜かせ。夢にまでテメェを見るなんてごめんだ」

中也が茶化すようにそう言うと、太宰から苦笑が零れた。
呆れたように、言う。

「私だって中也の顔も見たくないよ。分かってないフリして、私の事、全部わかっちゃうんだもの」

おどけたように、少し悲しそうに、太宰の瞳は揺らいでいる。

(本当は……何も教えてくれないくせに)

中也はチッと舌を打つ。
中也は思う。いつまでこの関係が続くのか、と。
太宰は自分に、自分は太宰に、お互いがお互いに甘えてばかりいる。
この関係が途絶えてしまった時、中也の呼吸は止まる。
本来の力を使えなくなった異能力者なんて、使えなくなった駒も同然。
ポートマフィアに絶対の忠誠を誓う中也にとって、それは有るまじき事だ。
このままでいたいと、中也は太宰の背中に頬をすり寄せる。

「これが夢、なら……俺は醒めなくてもいい」

そこで睡魔が押し寄せ、中也の意識はだんだんと遠くに向かっていく。
視界がゆるゆるとぼやけ、夜の魔都は幕を閉じた。

「おやすみ、中也」

最後に聞こえてきたそれは、呪いのように酷く、甘かった。

Re: 【文スト】夢から醒める ( No.7 )
日時: 2017/05/07 08:25
名前: 哀歌 (ID: eH6OJcrU)


要するに、何が言いたいかと言うと。

太宰治という人間は恐ろしく冷たい瞳をし、冷酷な表情でその頭脳明晰な頭で人を殺すが、時折見せるその表情は実に人間らしく、そして自殺願望を持つ少し変わった人間だ。
彼には愛しい相棒と、とても親しい友人がいるが、その話はまた別の機会にしよう。

太宰治が眠ることはない。
夢を見ることはない。
この世界こそが夢だと思っているからだ。
隣で愛くるしい表情で眠る相棒はどんな夢を見ているのか、太宰にとってはわからないことだ。

「この酸化する世界の夢から、醒めさせてくれ」

今日も太宰は夢から醒めない。


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