二次創作小説(紙ほか)
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- OneManLive
- 日時: 2018/02/04 20:21
- 名前: 好きです、RAD。 (ID: .uCwXdh9)
「ねえねえ知ってる? シマウマ。かっこいいのよ!!」
「シマウマぁ? 動物の?」
「な訳ないでしょう。animalsっていうバンドのボーカルよ。シマウマはリーダーでもあって、ソロ活動も活発なの。で、……」
「で?」
「今度彼のワンマンライブがあるんだけど、一緒に行かない? って言うか、来て!」
親友のトモミに誘われて、私は渋々そのライブに行くことにした。ロックなんてやかましいだけで魅力を感じたことは無いが、トモミは既に二人分のチケットを手に入れていて、断りにくかった、というのが本当だ。
それが彼ーー斯馬場ヨウと出会うきっかけだった。
- Re: OneManLive ( No.2 )
- 日時: 2018/02/04 22:26
- 名前: 好きです、RAD。 (ID: .uCwXdh9)
挨拶をして、その人物がステージに踊りでた瞬間、歓声が上がる。
「あれがシマウマ? ずいぶん子供みたい」
「若いのよ。私達と同じくらいだから、高校生?」
「ええっ」
そんな学生のライブになんだってこんなに人が来るんだ? いや、もしかしたら半分くらいサクラだったりして。失礼な事を考えているうち、一曲目が始まった。
丁寧な歌い方で、シマウマが語るようにバラードを歌う。隣でトモミがため息をそっと吐くのがわかった。きっと歌よりもシマウマの顔に見とれているに違いない。金髪の軽そうな髪に涼やかな瞳。彼はトモミの言う通りかっこいいようだ。
- Re: OneManLive ( No.3 )
- 日時: 2018/02/04 22:52
- 名前: 好きです、RAD。 (ID: .uCwXdh9)
そんなことがわかっても、私は彼に苦手意識こそ感じたが魅力的とは思えなかった。シマウマの歌う曲は全て、夢物語に聞こえて現実味がないように感じたのだ。帰り道、興奮のおさまらないトモミに相槌を打ちつつそのことを伝えると、「やっぱりルナには分かんないのかぁー」と残念がっていた。もうシマウマのライブに行くことはないだろうと、私は思っていた。
その日がまるで幻だったかのように、夏休みは塾に通い続けた。塾がない日は図書館で勉強だ。その日もクーラーの効きが強すぎない窓際の席で参考書を読んでいた。向かい側にまさか、シマウマが座ろうとは夢にも思わなかった。
- Re: OneManLive ( No.4 )
- 日時: 2018/02/05 19:17
- 名前: 好きです、RAD。 (ID: .uCwXdh9)
「ここ、良い?」
頭上から声が降ってきた。顔を上げると、高校生くらいの男の子が机をトントンと叩いている。
「窓際全部埋まっちゃってさ」
うんと頷くのとほぼ同時に、彼は向かい側に腰掛けた。
別に気にならないし良いかと参考書に視線を落とすが、頭の中ではちいさな違和感が渦巻いていた。
「うわー、難しそうな本!」
急に身を乗り出してきて彼は言った。
「君頭良いの? ね、そうでしょ? あのさあ、お願いがあるんだけどさあ」
ペラペラまくし立てる、その声。あのライブで、夢物語を語っていた声とよく似ている。
「シマウマ……?」
「え、なんで僕のニックネーム知ってるの? ごめん、同級生だった?」
「ニックネーム?」
何か勘違いをしているらしいのはお互いで、しばらく顔を見合った。やがて、あははは! と向かい側の男子がふきだした。
「ごめんね。僕、斯馬場ヨウ。名前聞いたことある?」
「いえ……。多分あなたの同級生ではないと思います」
「君はなんていうの?」
「……大沼ルナです」
斯馬場ヨウは私と同じ、高校二年生だった。彼は私が頭が良い(と決めつけた)ので、勉強を教えて欲しいと頼んできた。
「部活ばっかやってても、マズイと思ってさ」
照れ臭そうに彼は言い、うるさくても良いように図書館から移動しようと喫茶店へ入っていった。
こんなことになるとは、と肩を落としつつ、彼の問題集を受け取る。どこを教えて欲しいの、と尋ねると、こことこことここ、あとそこもとほとんど全ての問題を指され気が遠くなった。
- Re: OneManLive ( No.5 )
- 日時: 2018/02/08 20:57
- 名前: 好きです、RAD。 (ID: .uCwXdh9)
始めまして、RADWIMPSが大好きな者です。RADの「アルトコロニーの定理」というアルバムの、OneManLiveという曲から構成したお話です!
どうぞよろしくお願いします。
是非曲も聴いて見て下さい。
- Re: OneManLive ( No.6 )
- 日時: 2018/02/11 18:11
- 名前: 好きです、RAD。 (ID: .uCwXdh9)
斯馬場ヨウは本来なら頭の良い人間かもしれなかった。指された所を教えると、「あーなるほどね、オーケーオーケー」とあっさり次に移る。おかげで割とスムーズに進み、夕方には終わった。
「本当〜にありがとう。君教えるの上手いね」
「いえ、別に。……今更ですけど、北高なんですよね?」
「うん」
喫茶店から出てすぐに帰ろうと思った私を、あの違和感が引き止める。
「本当に?」
「なに、なんの質問?」
「部活ってなにやってるんですか」
この人はもしかしたら、シマウマ本人、あのステージにいたシマウマなのではないか。ミーハーな訳では無いが、無性に確かめたくなった。
「軽音部だよ。バンドやってて……。ねえ、もしかして怒ってる?」
「別にそういう訳ではありません」
「そう? 学校にきて、迷惑こうむったんだとか叫ぼうとしてない?」
「なんですか、それ。そんなことしたら私にデメリットしか残りませんからしません。そうではなくて……」
仮にシマウマだとして、なんでこんなところにいるんだ? 何故その辺の高校生を捕まえて勉強を教えて欲しいなどという? 疑問100通、頭が混乱した私は結局、もう少し考えて発言すべきだった。
「あなたはシマウマですか?」
あ、言っちゃった。
「うん、僕のニックネーム、シマウマ」
「いや、だから、あなたはこの前ワンマンライブをしていたシマウマですか」
斯馬場ヨウはキョトンと首を傾げると、ふっと顔を伏せた。肩を小刻みに上下させている。
これは……笑われているのか?
「あははは、あー面白い! そんなに似てるの、僕の声?」
「似てる?」
ケタケタと腹を抱えて笑い続ける斯馬場ヨウを止める事も出来ず、私はただ自分の失敗を思い知り赤面するしかなかった。
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