二次創作小説(紙ほか)
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- 七色の人形師は蛇寮で何を学ぶのか
- 日時: 2018/04/11 19:12
- 名前: 未碧 (ID: eD.ykjg8)
七色の人形師は蛇寮で何を学ぶのか 目次
第一章 アリスは外の世界の魔法が知りたい
いつもの幻想郷 >>01
魔法界調査? >>02
ホグワーツからのの来訪者 >>03
ハリーポッターとの遭遇 >>04
グリンゴッツ魔法銀行は顧客満足度が低い? >>05
マダム・マルキンの洋装店と純血主義者発見 >>06
オリバンダーの店 魔法史と道具熱? >>07
118冊のリスト >>08
薬問屋と陰気なコウモリ >>09
一時帰宅とさようなら >>11
種の無い手品 >>12
- ハリーポッターとの遭遇 ( No.4 )
- 日時: 2018/03/26 22:44
- 名前: 未碧 (ID: eD.ykjg8)
ミス・マコグナガルが頷く。スキマが閉まり、辺りは暗闇と目だけになった。紫の声がする。今はイアリングから話しているみたいね。
「アリス、ダイアゴン横丁は漏れ鍋というパブが入口になっていますわ。パブの裏庭にある塀を三度叩くと横丁への道が開きます。教材を購入後スキマ移動で幻想郷に戻り、荷造りを済ませてから漏れ鍋で宿泊してくださる?当日まで二泊分の料金は前払いしてありますから。」
私はミス・マコグナガルに見えないように頷く。
またスキマが開かれた。スキマから出ると、そこは錆びれた古臭いパブの物陰だった。人が良さそうな顔の店主が大男と話している。大男はがりがりにやせ細った少年と手を繋ぎ、少年はきょろきょろと周りを見渡していた。
ミス・マクゴナガルが大男に声を掛ける。
「ハグリッド、ミスター・ポッターが待っていますよ。」
あの大男はハグリッドというらしい。
「おう、マクゴナガル先生、こんにちは。ハリー、この人がマクゴナガル先生だ。」
少年がハリー・ポッターだろうか。いきなり会うとは思わなかった。声を掛けた方がいいのだろうか。
そこへ久しぶりに聞く友人の声がした。
「ルビウス・ハグリッド、ホグワーツの森番よ。久しぶりね、アリス。」
パチュリーの声がイアリングから流れてきた。アリスは小声で返す。
「ええ。お元気かしら、パチュリー。」
パチュリーが小さくため息をついた。
「いいえ。魔理沙にしてやられたわ。全く、もう。レミィが暇だからって、貴方たちを見ているのだけれど。ハリー・ポッターってあのがりがりの子でしょう?実力があるようには見えないけれど。本当にヴォルデモートの呪文を防いだの?」
確かにやり手の魔法使いという風には見えない。それに漏れ鍋の中を見渡していることからして、魔
法界に慣れてい無さそうだ。
「捨食と捨虫の法を習得したという可能性もあるけれど、服装は魔法使いには見えないわ。それに森番が同伴しているもの。」
パチュリーは考え込んでいるのか何も聞こえてこない。
ミス・マコグナガルがアリスの方を向く。
「彼はホグワーツの敷地内にある森で森番をしているハグリッドです。ハグリッドの隣にいるのが貴方と同じ新入生のミスター・ポッター。」
ハリーはアリスに気づいた。続いて周りを飛び回っていた上海と蓬莱を見てぎょっとしている。
「えーっと...僕は、ハリー・ポッター。君は?」
アリスは上海を一瞥してから言った。
「アリス、アリス・マーガトロイドよ。魔法界は初めてかしら?」
ハリーは頷く。
「そうだよ。君は初めてじゃなさそうだけど?」
パチュリーの声がした。
「という事は本人が自覚していないうちにヴォルデモートの呪文を跳ね返したという事かしら。それとも記憶操作の類を受けているのかしら。」
興味深いわね。他人から護られたという可能性もあるわ。おもしろいのは魔法界ではなくてハリー・ポッターだと思うけれど。
「アリス?」
ハリーが私を不思議そうに見ている。
「あら、ごめんなさい。私は魔法界に関わるのは初めてよ。」
ハリーが蓬莱を目で追う。
「この人形は、君...アリスって呼んでもいい?」
アリスは安堵した。ハリー・ポッターへの接触は成功しそうだ。彼女の体質上、表情にはあまり出ないが。
「ええ、良いわよ。ハリーと呼んでも?」
ハリーは若干戸惑ったように頷いた。どうしたのかしら。
「いいよ。それで、その人形は君のだよね?」
アリスは頷いた。自分の相棒を紹介できるのは嬉しいことだ。特に上海と蓬莱には時間を掛けている。
「ええ、上海と蓬莱よ。二人とも、ハリーに挨拶して頂戴。」
「シャンハーイ」
「ホラーイ」
ハリーは目を見開いた。
「その...シャンハイとホーライ?は魔法で作ってるの?」
アリスは笑みを浮かべた。
「いいえ、上海と蓬莱は半自律人形よ。彼女達には人工知能の様なものが搭載されていて、半分自律しているの。もう半分は私が操っているわ。それは魔法を使っているわね。」
パチュリーが呆れたように言った。
「道具に魔法が掛かっているかいないかも読み取れないのに、呪文を弾き返したのね。」
ハリーが困惑したように聞く。
「でもアリスはさっき魔法界は初めてって言ったじゃないか。」
魔法を使えるのは魔法族だけだと思い込んでいるのね。仕方が無いかもしれないけれど。
「魔法を使えるのは魔法族だけでは無いのよ。」
意味有り気なアリスの言葉にハリーは曖昧に頷いた。
ハグリッドがハリーを催促する。
「んにゃ、ハリー。グリンゴッツヘ行くぞ。」
ミス・マクゴナガルはアリスに言った。
「ご友人ができたようで結構です。では、私たちもグリンゴッツヘ参りましょう。これからダイアゴン横丁への行き方を説明しますから、よく聞いておきなさい。まずは、裏庭に参りましょう。」
アリスはそのまま飛び回っていた上海と蓬莱をドレスの中に仕舞い込んだ。
- グリンゴッツ魔法銀行は顧客満足度が低い? ( No.5 )
- 日時: 2018/03/27 09:32
- 名前: 未碧 (ID: eD.ykjg8)
ミス・マコグナガルは裏庭に来ると言った。
「さて。ミス・マーガトロイド、横丁へはこう行きます。このレンガ壁を、右に二つ、下に一つ。杖で三回叩くと、入口が現れる仕組みになっています。分かりましたか?」
アリスは返事する。
「ええ。」
「よーし、よく見ておくんだぞ、ハリー」
ハグリッドがハリーに言っている。
ミス・マコグナガルがレンガを杖で叩く。壁が歪んだかと思うと、アーチ形の穴ができ、中からは威勢のいい声がしていた。
「さあ、ニンバス社が発売した最新型の箒、ニンバス2000はどうだい?」
通りを歩いていた主婦の一人が愚痴った。
「信じられない。ドラゴンの肝も、毒ツルヘビの皮も、高すぎるわ!」
アリスはあまり人混みが好きではないため、眉をひそめてミス・マクゴナガルの後をついていった。
「まずはグリンゴッツへ参りましょう。グリンゴッツは子鬼が経営する魔法界の銀行です。お金は持っていますか?」
魔法界には独自の通貨があるとは聞いていたけれど、今は無一文ね。紫に聞きましょうか。アリスは耳元で揺れているイアリングを見た。ミス・マコグナガルが見ていないことを確かめてサファイアを押す。ごそごそと物音が聞こえてきて、紫の声がした。
「こんにちは、アリス。何か御用かしら。__藍、藍、来て頂戴。貴方の式が___」
アリスはイアリングから聞こえてきた声に顔を顰める。
全く、紫ったらイアリングで通信中だというのに。忙しない。
「ええ、今はグリンゴッツ、という所へ向かっているわ。私は魔法界の通貨を持っていないのだけれど。」
紫は言う。
「__ごめんなさいね、騒がしくて。そう、本当は子鬼に頼めば両替してくれると思うけれど、幻想郷の通貨はあまり外に持ち出して存在を知らせたくないのよ。だから617番金庫を私の名前で借りているから、そこから取って頂戴。」
そこで、通信が途切れたかと思うとミス・マコグナガルが言った。
「着きました。ここがグリンゴッツです。子鬼は少々神経質ですので、くれぐれも無礼の無いように。金庫の鍵は私がミス・ヤクモから預かっています。どうぞ。」
銀色の何の変哲もない鍵を受け取ると、ミス・マコグナガルがグリンゴッツに入っていく。
扉に何か書かれていたのだけれど、何だったのかしら。別に、質問するようなことでもないわね。放っておきましょう。
グリンゴッツはとても珍しい銀行だった。幻想郷は通貨が統一されているため、両替商などは居ないけれど、ここでは硬貨をを天秤で測ったり、交換している子鬼達がいた。
銀行内は大広間の様で、白いホールは広々としていた。店内のデザインは悪くは無いわね。ミス・マコグナガルが言った通り、子鬼たちは神経質そうにしているけれど。
背の低い子鬼の係員がミス・マクゴナガルの元に来た。
「今日は何の御用でお越しになられたのですか?」
子鬼がキーキー声で聞く。
「こちらにいるミス・マーガトロイドがミス・ヤクモから鍵を預かっています。617番金庫を開けたいのですが。」
子鬼はお辞儀すると言った。
「こちらのボグロッドがご案内します。」
ボグロッド、という子鬼は鳴子を持ってトロッコへ向かう。
ミス・マコグナガルは言う。
「グリンゴッツの守りは固く、金庫破りに成功した者はいません。扉の文字は見ましたか?」
アリスは首を振った。
ミス・マコグナガルはボグロッドに聞く。ボグロッドは不愛想に暗唱した。
「見知らぬ者よ 入るがいい
欲のむくいを 知るがよい
奪うばかりで 稼がぬ者は
やがてはつけを 払うべし
己のものに あらざる宝
我が床下に 求める者よ
盗人よ 気をつけよ
宝のほかに 潜むものあり。」
魔理沙が聞いたら余計にグリンゴッツに侵入しそうな言葉ね。アリスは心の中で笑みを浮かべる。
ボグロッドはそのままミス・マクゴナガルやアリスを見もせずに近くのトロッコへ乗り込む。
「乗ってください。」
どうやら金庫までトロッコで行くらしい。穏やかな道のりだといいけれど、とアリスは思う。弾幕ごっこで飛ぶのには重力のかかり具合も慣れているのだが、アクロバット飛行をする魔理沙の箒は正直、あまり好きになれない。
ボグロッドはトロッコを制御する。トロッコはガタン、と時々大きく揺れながらくねくねと走っていく。今度はほぼ垂直な降下だ。アリスは一瞬浮遊感を味わった後、車輪の激しい音を聞きながら高速で走るトロッコを心配した。
毎回こんなに高速で走れば銀行からお金を引き出すのを躊躇う人もいると思うのだけれど。でも魔理沙の猛烈な縦回転に比べたらましかもしれないわね、とも思う。
エネルギーは何を使って走行しているのかしら。子鬼が手を添えれば発進した事からすると、子鬼の魔力かしら。もしかしたら子鬼は妖力も持っているのかもしれないわね。
車輪が摩擦で減らないのかしら。見た所ゴムの類は無いけれど。乗り心地はお世辞にも良いとは言えないわ。顧客満足度が低そうね。
いろいろなことを考え、車輪の音にうんざりしていた頃、やっと617番金庫に着いた。
「こちらで宜しいですね?」
ボグロッドが聞く。ミス・マコグナガルは頷いた。
さっき渡された鍵を使って扉を開ける。カチリ、と音がして重々しい扉が開いた。中を見て驚く。
直に貴重品を入れておく物なのかしら。床には金貨が散らばっており、銅貨や銀貨が入り混じっている。
ミス・マコグナガルは言った。
「まだ硬貨についてお話していませんでしたね。金貨がガリオンです。銀貨がシックル。17シックルが1ガリオンに当たります。1シックルは29クヌートです。」
覚えにくいわね。十進法で換算すれば良いのに。せめて素数で換算するのではなく、5の倍数で換算できるようにすれば良いと思うのだけれど。
アリスは本の冊数と他の教材費を合わせていくらになるかを素早く計算した。こういう能力は人里で人形用に様々な物を買う時に重宝する。
見た目は捨虫の法で11歳でも、経験は1000年を超えているもの。魔法界にも捨虫や捨食の法の様な魔法はあるのかしら。目分量で硬貨を掴み取るとアリスは鞄に仕舞い込む。
重さからして純金でガリオンを作っているのね。ポンドに換算しても金の価値が低いと思うのだけれど、まあ、いいわ。
また行きと同じくトロッコに乗り込み、アリスはまだ体験したことのない魔法界の魔術に思いを馳せるのであった。
- マダム・マルキンの洋装店と純血主義者発見 ( No.6 )
- 日時: 2018/03/27 09:35
- 名前: 未碧 (ID: eD.ykjg8)
グリンゴッツを出た後、ミス・マコグナガルはきびきびと歩きながら言った。
「さて、次は制服を買いに行きますよ。マダム・マルキンの洋装店です。」
アリスは考える。ローブと冬用のマントなら作ってあるもの、別に必要ないわね。残りを頼みましょうか。
また暫く歩くと、マダム・マルキンの洋装店という看板が見えてきた。ミス・マコグナガルは店の前で立ち止まって言う。
「では、私は待っておきますから、採寸して貰ってください。」
どうやら採寸からして仕立てて貰うらしい。このマダム・マルキンという人も大変ね、と思った。
ドアを開けると藤色の服を着た愛想の良さそうなおばさんがやって来る。彼女がマダム・マルキンだろう。
「あら、お嬢ちゃんもホグワーツの新入生?」
アリスは答える。
「ええ。でもローブとマントは作ったから、残りを欲しいの。」
マダム・マルキンは戸惑ったような顔をしていた。やはり、ローブとマントを手作りする人は少ないのでしょうね。
「そ、そう。じゃあ、この台の上に立ってくれる?頭の周りを測るから動かないで頂戴ね。」
アリスは返事する。
「ええ。」
右の台から声がした。
「また会ったね、アリス。服は要らないの?」
ハリーだった。
「ええ、作ってあるわ。」
左の台からも声がした。
「それじゃ君は彼と知り合いなのかい?ああ、僕はドラコ・マルフォイ。君は?」
彼は服装からして魔法界に慣れている様ね。話し方もどこか気取っているもの。権力者なのかしら。味方につけても悪くは無いわね。
「アリス。アリス・マーガトロイドよ。こんにちは、ドラコ・マルフォイ。」
彼は不思議そうに言った。
「マーガトロイドか...聞いたことが無いが、君の服装からして純血か半純血なんだろうね。」
このドラコ・マルフォイは純血主義の様ね。純血主義の状態を身近に把握しなければいないから、彼の見方に着いた方がいいかしら。
「母なら種族としてのとても偉大な魔女よ。父はいないわ。」
保護者がパチュリーという意味なら、彼女はとても偉大な魔女だと思うわ。父は決めていないけれど、元々魔界神の神崎に作られたもの、いないのでしょうね。
ドラコ・マルフォイは更に困惑したように言った。
「そうか、それは申し訳ない。君の母は純血の家計だという意味かい?」
難しいわね。パチュリーはれっきとした魔女だけれど魔法界の魔女とは全く違う存在だもの。
「私の母はは父、母共に魔女だと聞いたわね。でも魔法界の魔女とは違う存在よ。」
「お坊ちゃん、終わりましたよ。」
マダム・マルキンはドラコ・マルフォイに言った。
「じゃあ、またホグワーツで会おう、マーガトロイド。興味深い話だったよ。また聞かせてくれ。」
ドラコ・マルフォイが言った。
ドラコ・マルフォイが行ってから、ハリーが言った。
「あいつは嫌な奴だよ。魔法を使えない奴らを差別しているんだ。見下したような喋り方をするし。」
「お嬢ちゃん、終わりましたよ。」
マダム・マルキンが言うと、ハリーが手を振って来た。
「じゃあまたね、アリス。」
アリスも手を振り返す。
「ええ。」
- オリバンダーの杖店 魔法史と道具熱? ( No.7 )
- 日時: 2018/03/27 10:55
- 名前: 未碧 (ID: eD.ykjg8)
ミス・マコグナガルは店から出てきたアリスを見て言った。
「早かったですね、ミス・マーガトロイド。さて、次は杖を買いに行きましょうか。ダイアゴン横丁ではオリバンダーの店が一番です。」
アリスはミス・マコグナガルに着いていきながら考える。
純血主義であり権力者の息子と見られるドラコ・マルフォイ。過激な純血主義者を破った「生き残った男の子」、ハリー・ポッター。あまり仲が良くなることは期待できないわね。どちら側に着くべきかしら。
アリスの思惑はすぐに途切れた。ミス・マコグナガルが厳格そうな顔で話題を振って来たからだ。
「ミス・マーガトロイド。一つ、質問しても宜しいですか?」
何かしら。漏れ鍋を出る直前に紫から出来るだけ幻想郷について言わないようにと言われているから質問によっては答えられないけれど。
「これは、私が個人的な興味を持っているだけなので、答えたくない場合は答えなくて結構ですが。貴方の操る魔法について伺ってもいいですか?」
難しいわね。何から答えましょうか。人形について話しましょうか。一番目につきやすいもの。ただ弾幕ごっこなどの戦闘などでは相手に手札を明かすと不利になるわね、あまり話せないかしら。ミス・マコグナガルとは純血主義に味方して捜査した場合敵対するかもしれないもの。
「そうね...この世界では杖を使って魔法を使っていますが、私は杖を一切使いません。また、ラテン語を用いた呪文詠唱ではなく、呪文名を言う事で発動します。魔法族の用いる魔法とは全く理論が異なりますから。」
ミス・マコグナガルは頷いて眼鏡を押し上げると、言った。
「なるほど。実に興味深い話をありがとう、ミス・マーガトロイド。着きましたよ、ここがオリバンダーの店です。」
オリバンダーの店、紀元前382年創業。魔法史という歴史の教科書も手紙のリストに載っていた気がするから、後で紀元前何年に魔法使いが現れたのか見ておきましょうか。魔法族の様な杖に頼って魔法を使っている人達も、案外歴史は長いのかもしれないわね。私はパチュリー程本好きではないけれど、教科書を買うのが楽しみね。費用が余れば呪文集でも買いましょうか。
一通り思考に区切りが着いたところで店のドアを開ける。埃っぽい店内にアリスは顔を顰めた。パチュリーの図書館を狭くして、本を杖の箱に変えたみたい。
すると、老人が箱を避けながら歩いてきた。
「ああ、よくいらっしゃった。お名前を聞いても宜しいかな?」
アリスは老人を見た。この人がオリバンダーかしら。
「アリス・マーガトロイドよ。」
老人はアリスに椅子を示すと自分も椅子に座った。
「オリバンダーの店では主に3種類の芯を使って杖を製作しております。また、それぞれ芯や長さ、材木が違います。ですから一人ひとりに合う違った杖を使う必要があります。他の人の杖では自分の力も半分ほどしか発揮することができませんのじゃ。また、杖は選ぶのは人ではなく杖が人を選ぶのじゃが。」
興味深い話ね。幻想郷では大抵自分で武器を作るもの。使う魔法にも影響するのかしら。この話しぶりは霖之助さんの道具好きに似通っているわね。
オリバンダーは巻き尺を取り出した。
「はてさて、では杖腕は?」
杖を持つ腕かしら。人形は場合によって違う腕で操るもの。それに、杖を使わずに魔法を使っているけれど、両利きかしら。
アリスは困ったように言った。
「両利きだと思うけれど。」
オリバンダーはアリスのガラスの様な青い目を見て言った。
「ほう、実に面白い。では両方の腕で使えるものと言う事ですか?」
オリバンダーが巻き尺を取り出すと巻き尺は自動的にアリスの両腕を測りだした。首回りに巻き付きそうだったもの、捕まえたけれど。
「ほう、ほう。マーガトロイドさん、ではこれをお試しください。柊の木にドラゴンの心臓の琴線、14センチ、固い。絶対の忠誠心。」
アリスの腕に触れるまでもなく、オリバンダーは杖を取り上げた。
「ほう、では次。胡桃の木にヴィーラの髪の毛、27センチ、柔らかい。臨機応変で妖精の呪文に適切。」
アリスが軽く振ると、店の箱が飛び回り始めた。杖は冷たいままだ。
この杖は使いやすいけれど違和感があるわね。
「これも違いましたか。では次。檜の木に一角獣のたてがみ、18センチ。凡庸性が高く、全ての魔法に均等。」
アリスが手を伸ばした瞬間、杖は勢いよくどこかへ飛んで行った。
「実に難しい。では次。白樺の木にユニコーンの毛、32センチ、非常に柔らかい。忠誠心が強く、光の魔法に最適。」
アリスが振ると、3番目の杖よりは手に馴染んだ気がしたが、違和感を主張する様に窓が粉々に割れた。
まだ駄目ね。見た目が11歳より少し上くらいなのに、中身が1000歳以上だからかしら。
その後も52本の杖を試し、いい加減アリスが杖を持つこと自体に呆れてきた頃。オリバンダーは何かを思いついたのか苦い顔で聞いた。
「誠に失礼を承知していますが、マーガトロイドさん。ご年齢を窺っても宜しいでしょうか。」
何才だったかしら。捨食と捨虫の法を習得してから日は浅いけれど、1030歳くらいにはなったかしらね。
「1030歳くらいだと思うわ。詳しくは分からないけれど。」
オリバンダーは暫く固まっていた。
「...少しお待ち頂けますか。」
オリバンダーは小走りで店の奥へ行った。暫く音がしなくなる程奥まで行ったみたいね。
20分程経った頃、やっとオリバンダーは帰ってきた。
「この杖をお試しください。この杖は初代オリバンダーが賢者の為に作ったものと言われております。錫と銀の棒に七色の宝石、1メートル37センチ。丈夫で不屈。如何なる論理も証明できる。」
複雑な幾何学模様と宝石で装飾された細い銀の杖を持ってきた。アリスは立ち上がると、掴み上げる。直径は1センチ弱程。
その途端、手の中には大量の人形と魔力で繋がったかのような暖かい感触が流れ込んで来た。
冷たい銀色の見た目とはとても思えない暖かさね。不思議な気分よ。
アリスが杖を振ると、七色の弾幕の様な光が店の中一杯に広がり、漂った。
「ブラボー!いやはや、まさかこの杖に選ばれる人が私の代で来るとは思ってもいなかった。」
喜んで蘊蓄を話すオリバンダーを見て、アリスは思う。
本当に霖之助さんにそっくりね。
杖の値段を払い、店を出るとミス・マコグナガルは唖然とした顔で杖を見た。
「こんなに長い時間杖を選んでいた新入生は初めて見ました。金属製の杖に選ばれた人を見るのも初めてです。おまけにとても長い。」
店の外、グリンゴッツ近くにまで虹色の光が漂っているのが見えた。
- 118冊のリスト ( No.8 )
- 日時: 2018/03/27 11:43
- 名前: 未碧 (ID: eD.ykjg8)
次はフローリシュ・アンド・ブロッツ書店に教科書を買いに行くみたい。
魔法史と魔法薬学の本、それから心を読まれると困るから開心術、閉心術の本とホグワーツの歴史や偉人、純血主義の本も欲しいわね。
店内に入ると中には沢山の本が売られている。
「杖の歴史、魔法使いの歴史...これは教科書と重なっているわね。それから魔法薬学入門編、薬草図鑑、開心術初級、閉心術ガイドブック単行本版、ホグワーツの歴史、21世紀の闇の魔法使い一覧、近代の偉大な魔法使い辞典単行本版、純血主義とは...これくらいかしら。後は教科書ね。」
会計のおじさんが言う。
「52ガリオンだ。ホグワーツの新入生かい?」
アリスは頷く。
おじさんは金属製の杖を見て唖然としていた。
ミス・マコグナガルの元へ戻る。
「そのリストは何です?」
アリスは苦々しい思いで言った。
「読みたい本のリストです。」
あまり考えずにリストにしていったため、118冊にもなってしまったのだ。
ミス・マコグナガルは微笑んだ。
「何冊あるのかは知りませんが、勤勉なのは良い事です。では次は薬問屋に行きましょうか。」