二次創作小説(紙ほか)
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- 七色の人形師は蛇寮で何を学ぶのか
- 日時: 2018/04/11 19:12
- 名前: 未碧 (ID: eD.ykjg8)
七色の人形師は蛇寮で何を学ぶのか 目次
第一章 アリスは外の世界の魔法が知りたい
いつもの幻想郷 >>01
魔法界調査? >>02
ホグワーツからのの来訪者 >>03
ハリーポッターとの遭遇 >>04
グリンゴッツ魔法銀行は顧客満足度が低い? >>05
マダム・マルキンの洋装店と純血主義者発見 >>06
オリバンダーの店 魔法史と道具熱? >>07
118冊のリスト >>08
薬問屋と陰気なコウモリ >>09
一時帰宅とさようなら >>11
種の無い手品 >>12
- いつもの幻想郷 ( No.1 )
- 日時: 2018/03/26 22:40
- 名前: 未碧 (ID: eD.ykjg8)
日本のどこか、結界に囲まれた楽園、幻想郷。
その中、毒茸の胞子が飛び交う魔法の森。森の中、人と妖怪が共存する幻想郷で人間が多く集まる人里に近い場所。そこには一軒の家が建っていた。
そこに住むのは人形の様な少女。彼女の名を、アリス・マーガトロイドという。その彼女は今、交渉の真っ最中だった。
相手は幻想郷の妖怪の賢者であり管理人、八雲紫。
アリスは上海人形にお茶をつがさせると、小さくため息をついた。
「完全自律人形を作る目的も、意味が分からなくなってきているわ。」
最近、完全自律人形は生き物と変わらないのではないか、と思うことが多い。それに反対に使いにくいかもしれないと思うこともある。
紫は上品な仕草でティーカップを傾けると言った。
「つまり、貴方は自分の目的が詰んでいるから、一旦魔術の研究に戻って、外の世界の魔術を学びに行きたい、とおっしゃるのね。」
アリスは紫を見ると、頷く。本当に、この妖怪は考えていることが分からないから苦手だ。
「ええ。」
紫は口を開いた。
「そう。申し訳ないけれど、ここの住民をそう簡単には外の世界に行かせることは出来ませんわ。」
アリスはその返事を予想していたため、小さく肩を竦めた。
「何か条件付きでなら、どう?」
紫は一瞬考え込んだ。
「それでも、貴方を外に行かせることはできません。でも、そうね。幻想郷に外の世界の調査として行ってくれるのなら許可しますわ。」
アリスは暫くの間紫の考えを読もうと首を傾げていたが、頷いた。
「それで良いわ。ありがとう。」
紫は扇をぱっと広げるとゆったりと扇ぎながら胡散臭い笑みを浮かべた。
「それでは、宜しくお願いしますわ。次の新学期、貴方にはイギリスのホグワーツ魔法魔術学校に入学してもらいます。詳しい事はまた後日、お話いたしますわ。それでは御機嫌よう。」
紫はくるりと後ろを向くと端をリボンで結ばれた目玉がうごめく空間、
スキマに入っていった。
アリスは気持ちを切り替え、蓬莱人形にティーセットを片付けさせると言った。
「さてと、交渉も終わったことだし、霊夢のところにでも遊びに行きましょうか。上海、戸締りをして頂戴。」
本当はいきなり調査をするのならと、許可した紫がどういう思惑で自分が外の世界に出るのを容認したのかが気になったが、彼女の言動をいちいち考えていても結果は出ない。
アリスは立ち上がるとスカートの皺を払い、家の外に出た。鬱蒼と木が茂る森の中を抜け、人里を歩く。暫くすると知人の銀髪の三つ編みが見えてきた。
「こんにちは、アリス。買い出しに来たのかしら?」
丈の短いエプロンドレスにホワイトブリム。吸血鬼、レミリア・スカーレットに仕えるメイド長の十六夜咲夜だ。
アリスは首を振った。
「いいえ。適当に霊夢の所にでも行こうかと思っていたのだけれど。パチュリーは今、空いてるかしら?」
偶然咲夜に会ったのだから、紅魔館に行ってパチュリーに外の世界に調査に行くことを報告しておこうと思ったのだが、今日も魔理沙に振り回されているのだろうか。
咲夜は頷いた。
「ええ、でも魔理沙が一騒動起こした後だからお休みになっていると思うわ。」
予想は当たっていた様だ。パチュリーが気の毒になってくる。でも報告はしておきたい。
「そう。ついて行っても?」
咲夜は快諾した。
「ええ、ご自由にどうぞ。」
アリスは咲夜の右側を歩きながら思案した。
一体どんな魔術が普及しているのかしら。画期的な技術は存在する?紫は私にどんな調査をさせようというのかしら。
- 魔法界調査? ( No.2 )
- 日時: 2018/03/26 22:40
- 名前: 未碧 (ID: eD.ykjg8)
紫が心を読んだかのように言う。
「それで、ハリーポッターがどう関わっているのかをお話ししますわ。今お話ししました純血主義を過激に支持している人達が存在していますの。その人達は闇の魔術と呼ばれる法律で禁止されている危険度の高い魔術を使用し、純血ではない者は撲滅するべき、又は魔術を学ぶ資格が無い、と考えていますわ。その代表的な人物がヴォルデモート。彼は死喰い人と呼ばれる部下を駆使して純血ではない人達を虐殺していますわ。」
嫌な世の中になっているのね。これはのんびり研究している暇がないかもしれないもの。
「魔法界には死の呪文という者が存在しますわ。魔法界の人達にとって不可抗力で、人に対して使用することが禁じられている呪文ですわ。今まではヴォルデモートのその呪文に対抗できる人は居なかったのだけれど、ハリー・ポッターは対抗しました。そしてヴォルデモートを倒したと言われているけれど怪しいわね。貴方にはヴォルデモートが倒されることによってその純血主義の人達がどれくらい忘れられるのかや純血主義者の状態を偵察して貰うわ。それから出来るだけハリー・ポッターと関わりを持つこと。」
紫が続ける。
「転入生になって遅れるとハリー・ポッターとの接触が失敗するかもしれないから今から急いで入学準備をしてほしいの。ホグワーツ校長には貴方が魔法使いだと話しておいたから職員が来ている筈よ。パチュリー・ノーレッジには私から知らせておいたから大丈夫ですわ。それからこのイアリングをずっと付けておいてくださる?これは私とパチュリーに連絡できるようになっています。このサファイアを押すと私、ガーネットを押すとパチュリーに繋がるわ。こちらからは勝手に繋がっているから大丈夫よ。大まかな説明でごめんなさいね。詳しい説明は職員に聞いてくださる?では、さようなら。あんみつ、美味しいでしょう?」
あんみつは美味しかった。イアリングもなかなか便利ね。でも、調査内容がかなり重要だから結局のところ余り研究できないわね。騙された気分。
「ええ、美味しかったわ。御馳走様。」
アリスは甘味処を去ると、魔法の森に入っていった。
- ホグワーツからの来訪者 ( No.3 )
- 日時: 2018/03/26 22:42
- 名前: 未碧 (ID: eD.ykjg8)
家に帰ると、戸口の前に女性が立っていた。彼女がホグワーツ魔法魔術学校から来た職員の方かしら。
エメラルド色のローブを着て、背筋をしゃんと伸ばした眼鏡を掛けた老婆がいた。手を×にして留守を知らせている蓬莱を興味深そうに見ている。声を掛けるのが憚られて静かに歩いていたけれど、蓬莱が私に気づいたのかやってきた。蓬莱に声を掛ける。
「ありがとう、蓬莱。」
「ホラーイ」
蓬莱との会話を見ていた老婆が聞いてくる。
「失礼しますが、貴方がミス・マーガトロイドで間違いありませんか。」
私を探していると言う事はやはりホグワーツの職員の人みたいね。
「ええ。」
老婆は挨拶をする。
「そうですか。私はミネルバ・マコグナガルと言います。ホグワーツ魔法魔術学校から貴方の入学案内にやってきました。」
来てくれたからには歓迎しましょう。
「そう。家へご案内します。上海、お茶の準備をお願い。」
私はドアを開けるとミス・マクゴナガルを家に入れた。棚に並んでいる沢山の人形たちを見て驚いているけど、初めて家に入った人にはいつものことだもの。
「どうぞ。」
居間の椅子を示してからキッチンに行くと上海がティーカップを二つとポットやお茶を準備してくれていた。
「ありがとう、上海。」
ティーカップを魔法で温めて、その間にお湯を沸かす。そっとポットに注ぎ入れてお茶が出るまで待つ。
「砂糖はいかが?」
ミス・マコグナガルが首を振る。
「結構です。さて、申し訳ないのですが、入学まであと三日しかありませんので簡単な説明だけさせて頂きます。」
私は蓬莱が注いでくれた紅茶を一口飲んだ。
「ミス・マーガトロイド、貴方にはこの手紙をお渡しします。」
___________________________
ホグワーツ魔法魔術学校 校長アルバス・ダンブルドア
マーリン勲章、勲一等、大魔法使い、魔法戦士隊長、最上級独立魔法使い、国際魔法使い連盟会長
親愛なるマーガトロイド殿
この度ホグワーツ魔法魔術学校にめでたく入学を許可されました事、心よりお喜び申し上げます。教科書並びに必要な教材のリストを同封致します。新学期は九月一日に始まります。七月三十一日着で梟便にてお返事を御待ちしております。
敬具 副校長ミネルバ・マクゴナガル
___________________________
アリスは校長の経歴が随分と立派だ。国際魔法使い連盟会長が学校長などをやっていていいのだろうか。
そしてどうやらこの老婆は副校長だったらしい。わざわざ副校長が入学案内に来るような理由でもあるのだろうか。幻想郷という外の世界からしたら特殊な場所に住んでいるからだろうか。
「そうね。外の世界の魔術には興味があるので入学します。」
ミス・マクゴナガルが驚いたように目を見開く。
「そうですか。人形を操るほどの魔法の使い手のあなたなら入学しないものと思いましたが。」
「魔法界の魔法は私の魔法と理論が違いますから。私はこの理論の魔法では初心者と変わりないの。」
ミス・マコグナガルが頷く。
「分かりました。梟便の利用方法はご存知ですか?」
アリスは首を振った。上海がお茶のお代わりをに入れてくれる。
「いいえ。知りません。けれどきっと博霊大結界を梟は超えられないと思うので紫に頼みます。」
ミス・マコグナガルが頷く。
「分かりました。ミス・ヤクモに聞いておきます。それでは、今からダイアゴン横丁に行って教科書を買いに行きますよ。」
その時、いきなり耳の中に紫の声が響いてきた。どうやらイアリングの通信機能らしい。
「アリス〜、聞こえるかしら?ダイアゴン横丁へはスキマで行くわよ。幻想郷内では姿くらまし出来ません。それと入学承諾書、校長室に送り返しましたわよ。ああ、アリスは姿くらましを知らないのね。姿くらましは瞬間移動魔法みたいなものよ。失敗すると身体がばらけてしまいます。それに幻想郷に帰ってこれなります。そうそう、貴方の保護者はパチュリーという事になっていますわ。では、ミネルバに挨拶しておきます。今からスキマで行くわよ。」
私の横でスキマが開くと紫が出てきた。全く、いきなり出てくるとびっくりするじゃない。
「御機嫌よう、ミネルバ。お久しぶりですわ。」
紫は見事なカーテシーを見せるとすらすらと英語で話し始めた。紫は、ミス・マコグナガルと知り合いなのかしら。
ミス・マコグナガルは驚いたのか一瞬固まっていた。確かに、紫のスキマは不気味ね。
「...ミス・ヤクモですか。」
紫は胡散臭い笑みを浮かべて言った。
「幻想郷では姿現しができませんの。ですから貴方方お二人は私がスキマでお連れしますわ。」
ミス・マクゴナガルは礼儀正しく頭を下げた。
「ありがとうございます。」
紫は表情の読めない笑みを浮かべて扇子をぱちん、と閉じた。
「では、参りましょうか。」
紫が指先を動かすとすっとスキマが開いた。目玉がぎょろぎょろと蠢く空間にミス・マクゴナガルはゆっくりと首を振ってスキマに入っていく。私も入ったけれど、何回か入ったことはあっても不気味なことには変わらないわね。
紫がちらりとミス・マコグナガルを見た。
「では、行き先はダイアゴン横丁で宜しくて?」