二次創作小説(紙ほか)

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ill at ease
日時: 2018/08/08 05:56
名前: まるき (ID: RO./bkAh)

白石蔵ノ介

Re: ill at ease ( No.6 )
日時: 2018/08/10 23:06
名前: まるき (ID: RO./bkAh)

続いてのニュースです。昨晩の深夜、都内の地下通路にて3人の死体が発見されました。亡くなった3人は未成年でしたが、殺される前に女子に強姦未遂をしたとみられ、その際に3人は被害者以外の誰かに殺されたと見られています。死因は…

梓は病室のテレビを消した。どうしよう、学校にバレてる、もしかしたら友達にも。

Re: ill at ease ( No.7 )
日時: 2018/08/10 23:41
名前: まるき (ID: RO./bkAh)

耳を塞いでも他の病人のテレビから音が聞こえてきた。

しかしー、こういったような若者が逆に被害に合ってしまうことは最近多発しているようですね。はい。先月から都内で起きていた強盗事件とひったくりは全て未遂で終わっていますが、その間に未遂事件の加害者は殺されています。

私も、誰かにこの人に、殺されかけたのか。でもあの人は私の命を救ってくれたのかな、いや、こんなになるんだったら…死んだ方が良かった。素直に梓は思ってしまった。

Re: ill at ease ( No.8 )
日時: 2018/08/11 10:16
名前: まるき (ID: RO./bkAh)

とにかくまずは睡眠を取りましょう、と医師からの判断で寝る前に睡眠導入剤を飲んだ。夢なんか見たくない、見たら多分またあの光景が鮮明に蘇ってくる。だから眠れないのだ。今はSNSは怖くて開けないし、テレビも見たくない、吐き気が止まらないのに胃に食べ物がなくて吐けない。そのうちに梓は泣き疲れたのと、薬が効いてきて眠りについてしまった。

「消しとけ」

梓の頭の中で響いた声。聞いたことのない声。その人は私を助けてくれた、誰なんだろう。お礼がしたい、あの人が世間から嫌われても罰を科されても私はあの人に会わないといけない。恐怖の対象であるが、自分を救ってくれたことは紛れもない事実なのだ。

Re: ill at ease ( No.9 )
日時: 2018/08/11 23:15
名前: まるき (ID: RO./bkAh)

白石は街に大きく飾られた広告の看板を目にした。清涼飲料水のコマーシャルには今をときめく若手俳優·財前光の横顔があった。

「先輩」

肩を誰かに叩かれて振り返ると、財前光がいた。大きな縁の着いた帽子にマスクを被り、夏なのにロングカーディガンで高そうなスニーカーを履いている。上京しているとは聞いていたがここまでとは。

「久しぶりやな」
「今、撮影中で2時間の休憩なんすわ」
「飯でも食い行くか」

財前の方が都内にいる時間としては長い。テニス部を引退した中3の秋、難波でスカウトされた。財前は当初興味がなかったが、ブログの知名度が上がると言われて俳優デビューを果たした。可愛らしい顔立ちに反した派手なピアスや服装、また毒舌で「ツンデレ」なところがファンにはたまらないらしい。

「やっぱおしゃれなカフェより丼や」
「そないな格好してよく言うな」

白石は珍しく笑った。若干小汚いが賑わいのある店内は、中学の部活帰りを彷彿とさせる。洒落た見た目に似合わずカツ丼に食いつく財前を見て、なんだか懐かしい気持ちになった。1番無口でロクなことを言わないやつだけど、行動力と技術がある。おさむちゃんが言っとった。

「先輩はどうなんですか」
「楽しくあらへん、学校は無駄や」

白石の口から無駄というワードが聞けて、財前もホッとしたような気がした。テレビからはあのニュースが流れてきた。財前は目をやる。

「あ、これ襲われた女の子、先輩の学校の人やないんですか」
「ほーなん?」
「ホンマらしいです、ソースは掲示板なんですけど」

誰やろ。白石は心当たりのある人物を探ってみた。クラスメイトさえも認識してないことに気がついた。あ、2日間休みの奴おる。名前はわからんけど、ポニーテールだった気がする。

「あんまり広めると可愛そうですから、言わんですけど」

白石は頷いた。

「あ、先輩。東京でもやってるんですか」

財前は目を輝かせた。

「もうやらへん」
「かっこよかったのに」

どうやらテニスの話ではないようだ。その後は昔話で盛り上がり、2時間はあっという間だった。白石は財前の分まで食事代を払い、1500円で済ませた。

「頑張り」
「あざす」

財前と白石はそれぞれの方向に別れた。

Re: ill at ease ( No.10 )
日時: 2018/08/13 22:07
名前: まるき (ID: RO./bkAh)

梓が病室のベッドで身を起こしていると、ガラガラっとカーテンが開いた。

「来ちゃった」

同じバスケ部の末田莉沙。莉沙は短い髪を縛っている。病院に皆来たら病状の嘘がつきようがない。ましてや、男性に襲われかけてそれが怖くて、トラウマで、怖くて、普段の生活に支障が出てるなんて言えない。莉沙は一体どこで知ったのか、わからない。

「梓のお母さんに聞いたの…ごめん、梓に何回も電話かけたりLINEしたりしたんだけど。やっぱり気になって、梓のお母さんに家電かけて聞いちゃった」

折角、お見舞いに来てくれたのに莉沙は私より俯いていた。

「ううん。ありがとう、ごめんね」

ただ、ありがとうとごめんねとしか言えなかった。1番一緒にいる友人である莉沙には…返事をした方がよかったのか。

「…大丈夫なの?、なわけないよね」
「大丈夫だよ。莉沙が来てくれたから」

莉沙は顔を上げて、梓に安堵した表情で微笑んだ。私はこの顔をよく知っている、辛いことがあったとき励まし合うと最後はこの顔で笑ってくれる。

「なんか、詳しくは梓のお母さんからは聞けなかったんだけど…理由聞いてもいい?」

梓は悩んだ。引かれたり、莉沙の自分を見る目が変わったり、莉沙を信頼してないとか他人だからで判断してる訳じゃない。言い出しにくいんだ。私が。

「言えない理由とかだったら全然言わなくていいよ」
「…ごめん」
「梓、痩せた?」
「え?」
「うん。クマとニキビすごいよ」

寝不足と栄養を取ってないことでかなり体の調子が乱れている。莉沙に鏡を貸してもらうと、たしかに自分はひどい顔をしていた。まさに病人の顔とは梓のかおである。

「食べないと、梓あんなにいっぱい食べるんだから」
「じゃあ…今度食べ放題付き合ってくれる?」
「もち!私はいつでも、梓といるから」

そう言って莉沙はリュックから飲むヨーグルトやらチョコやらお菓子を取り出した。いきなり胃に入るか分からないけど、梓はとりあえずチョコボールを口に含んだ。カラカラと渇いた口の中にチョコが溶けだした。

「甘いね」

ただそれだけ。莉沙といるとやっぱり落ち着く。

「いつまで入院するの?」
「多分今月中には」
「じゃあもうすぐじゃん!」

そしたら莉沙は学校であったことをすごく饒舌に話してくれた。イケメンの転校生の話が大概だった。

「白石くんって言うんだけど、いつも窓の外をぼーっと眺めてるんだけどね。横顔のEラインが超綺麗なの!しかも、体育でサッカーやってめちゃめちゃ瞬足でドリブル速くてシュートバンバン決めるし!授業で当てられると、関西弁でちょっと答える感じもギャップ萌えだし!やばくない!?」
「う、うん。白石くんすごい人なんだね」
「でもね隣のクラスの小早川咲奈が白石くん狙ってるんだって」

あぁ、あの読者モデルの子か。なんだか女子小中学生向けの雑誌のモデルやってたらしい。顔が小さくてお人形さんみたいな子。

「咲奈ちゃんぐらい可愛いかったら、白石くんとお似合いだよ」
「白石くんはみんなのものだよ…?」

莉沙があまりに泣きそうな顔をするのが面白くて、久々に笑った。


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