二次創作小説(紙ほか)

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ill at ease
日時: 2018/08/08 05:56
名前: まるき (ID: RO./bkAh)

白石蔵ノ介

Re: ill at ease ( No.1 )
日時: 2018/08/08 06:08
名前: まるき (ID: RO./bkAh)

黒板に書かれた文字はすごく綺麗だった。縦書きで「白石蔵ノ介」と書くと、机に座るクラスメイトの方に向き直った。整った顔と爽やかな声に皆、静まり返った。

「白石蔵ノ介といいます。よろしく」
「えー、白石は転勤で大阪から来たんだよな?」
「はい」
「皆、仲良くするように」

白石は一番後ろの空席に案内された。隣には女子生徒が座っている。女子生徒はラッキーと言わんばかりに前の席の女子と、嬉しそうに会話をしている。まだ白石は目にもとめず、ただ席に腰を下ろしているだけだ。綺麗な顔にまつ毛と二重まぶたが無気力に下がっているように見える。

Re: ill at ease ( No.2 )
日時: 2018/08/10 07:35
名前: まるき (ID: RO./bkAh)

立花梓は地下通路へ降りた。いつもは通らない道だが、今日は遊びすぎて夜の9時を回ったところなので近道である。薄暗く、オレンジの街灯が不安定に点滅している。雨はここ数日は降っていないのに脇の窪んだところには水が溜まっている。やだなぁ、梓は足を速めた。ローファーが地面のコンクリートとぶつかってコツコツとなる音が響く。梓は曲がり角に入ったところで上の方に、後方確認のために設置されているミラーを見つけた。ミラーの片隅には誰かがいる。お化け?不審者?振り返ると3人の男が立っている。金髪とか坊主とか明らかにDQNの派手な格好をして、目つきは鋭いが口角はニヤリと上がっていて、気持ちが悪い。

「こんな時間にさぁ、こんなとこ通るのが悪いんだよ」

歯と歯の根が合わず、足も震えて動けない。梓は息が上がってその場に立ち尽くすだけである。

「お嬢ちゃん、いくら持ってんの」
「お金だーして」

リュックを強引に捕まれ、梓はショルダーの部分を掴んで抵抗するがリュックは取られ地面に梓は叩きつけられた。チャックが空けられるとリュックは反対にされ、中のものは無残に地面に散らばった。

「返して…返してくださっ」

財布を取り上げられて、梓も思わず起き上がり財布を取り返そうとする。肩を掴まれてまた顔が地面に当たり、頬に赤いかすり傷が出来た。梓は泣いて男の足にすがりついたが、蹴飛ばされてしまった。

「あー、スニーカーとズボンが鼻水と涙で汚れちゃったやん」
「責任とれよ」
「ごめんなさい、ごめんなさい」

コンクリートに額をつけて謝る梓を見下ろして笑ったかと思えば、男ね1人が梓の後方から、梓の頭をつかんで座らせた。

「脱いで」
「…え?」
「口答えすんなよ」

梓と視点を合わせるようにしゃがんで、梓の頬を叩いた。パチンっと音が鳴り梓の口の中は瞬時に切れて口の端からは血が出てきた。

「ほら、はやーく、はやーく」
「い、嫌だ」
「わかった…やっていいよ!」

金髪の男が叫ぶと、残りの2人の男は梓を抑えた。1人は腰を地面に押さえつけて馬乗りになった。梓は足をバタバタさせることしか出来ず、とにかく泣き叫んでいる。レイプだ…、いやだ、いやだ。梓は制服のボタンが散らばったのが見えて、目を逸らした。口を手のひらに強くあてがわれ息が出来なくなりそうだった。

「うっ」

突然男の1人が倒れた。梓の上半身をまさぐっていた男だ、梓に倒れかかることなくコンクリートにバタンっと無残に倒れた。流血していて既に意識はないようだ。

「なんだてめぇ」

梓から手を離し、残りの2人は立ち上がった。全身黒で覆われて手には革手袋。黒いマスクをしてキャップを被っている。全身黒は殴りかかってくる2人を軽くかわして、壁に1人の頭を勢いよく叩きつけた。壁には釘の先端が飛び出ている箇所があり、そこに男の頭蓋骨を突き破るように釘の先端は刺さる。男は項垂れて動かなくなった。それと同時にもう1人は後ろから羽交い締めにするようにしてきた。全身黒は男に足をかけ、背負い投げるようにして馬乗りになり顔面を力いっぱい拳で殴り続ける。最後に白目を向いた男をすぐそばの水たまりに仰向けにして沈めた。

「あ…」

一瞬の出来事。梓は目の前で見た参事が焼き付いたかのように、目を見開いて小刻みに震えている。全身黒は男が回していたスマホを拾い上げ梓の足元に投げた。

「消しとけ」

梓は震える手で男の携帯の動画を削除した。顔を上げると、全身黒はいない。どこに行ったのだろう。梓は目の前に広がる死体を背に、ショックで意識を失った。

Re: ill at ease ( No.3 )
日時: 2018/08/10 07:49
名前: まるき (ID: RO./bkAh)

目覚めると、陽射しが眩しいのが1番に飛び込んできた。

「梓!」

お母さんだ。梓は母親の顔が見えた。手を握り泣きそうな顔で梓を見つめていた。

「よかった…」

梓を抱きしめた母親は涙を流した。

「梓、あられもない姿で…ごめんなさい」
「…」

昨日の記憶が鮮明になる。何も思い出したくない、梓は無意識に記憶を消そうと思い出してくる記憶をなくそうと、頭の中で何とかしようとした。

「だ、大丈夫?」
「過呼吸ですね」

別の患者を様子見に来ていた看護婦が背中を擦り、袋を手にした。梓はまだ絶望の中にいる。まもなく医者がやって来た。

「梓ちゃん、痛いところは?」
「…な、ないです」

言葉を話すだけでしどろもどろになる梓を見て、女性の医師は頷く。

「梓ちゃんの場合は精神科医に見てもらった方がいいでしょう、今日の午後から診断になります。女医なので、安心してはなしてね」

女医は梓の母親を連れて、病室を出た。看護婦に血圧やら体温やら調べられていた。

Re: ill at ease ( No.4 )
日時: 2018/08/10 08:08
名前: まるき (ID: RO./bkAh)

レイプ犯3人が何者かによって殺される…死因は出血死が2名と頭蓋骨損傷が1名。被害者は未遂であったが、ショックか暴行によるかでその場に倒れており、血痕はついていなかった。被害者による犯行とは考えにくい。

「新道さん、午後9時頃地下通路周辺いた人物を当たったのですが…」
「玉砕か」
「すみません」

笹木勇大はエリート街道真っ盛りの30代の警部補であるが、今年の春に都内と言えどもだいぶ閑静な署に移動になってしまった。とにかく、地下通路での人の目撃情報は皆無に等しい。そのことを20年先輩の新道丞に伝えた。新道は50代だがすらっとしたダンディーな立ち姿である。笹木もおじさんというか、背丈はあるものの幼い顔立ちからお兄さんに見える。

「要は…加害者であり被害者である男3人を、撲殺した犯人を捕まえるということですか」
「胸糞悪いが、仕方ないな」
「本当ですよ」

車に乗り込み、署へ戻る。

Re: ill at ease ( No.5 )
日時: 2018/08/10 08:19
名前: まるき (ID: RO./bkAh)

白石のいる教室に顔を出したのは千石清純。キヨと男女共に呼ばれている。

「俺、千石って言うんだけど、突然ごめん!テニス部入らない?」

るんるん気分で白石の机の前に座る。教科書を机から取り出した白石は手を止める。真顔で千石を見た。

「俺に言ってんのか」
「そうそう。ぜひうちのテニス部に」
「嫌や」

清純はまさかの回答に固まる。他校のテニス部で白石とデカい大会で当たった奴は、気さくでちょっとナルシストだったと言っていたからだ。だから、誘ったらノリよく入ってくれるのではと思っていた。ましてや元都選抜の清純を始め中学から強い選手をかき集めているテニス部だから、白石は自ら入るのではとも考えていた。

「うっそー…」
「ホンマや」

白石は席を立ってふらっと教室を出て言ってしまった。清純がガクッと肩を落とした。

「バカキヨ!ざまぁみろ!」
「うるさいなー、もー」

男子にふざけて絡まれて、女子とも笑いあっていた。ふと立花梓の席を見た。


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