二次創作小説(紙ほか)
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- ハク千 その後の物語
- 日時: 2018/12/28 14:03
- 名前: えりかな (ID: rJoPNE9J)
千と千尋の神隠しが好きすぎて、そしてハク千が尊すぎて…
完結目指して頑張ります!
- Re: ハク千 その後の物語 ( No.5 )
- 日時: 2018/12/29 15:39
- 名前: えりかな (ID: rJoPNE9J)
千尋は森の道を進んでいた。
進めば進むほど、この道が懐かしいと感じてしまう。
不思議な感覚だった。
どのくらい進んだだろうか。
赤いトンネルがあった。
だいぶ進んだので家まで戻れるか、少し心配だったが、ここまでの道のりは1本道だから、と千尋は自分に言い聞かせ、安心する。
赤いトンネル。
そして、その前にある、変な石像。
「やっぱり、懐かしい…」
この先に行ったら、どうなるのだろう。
どこに着くのか分からないところに足を踏み入れるなんて、危険なことぐらい、千尋の年齢になれば分かる。
でも、無性に行きたい。
この先に、私が忘れている何かが、心に足りない何かが、ある気がした。
鼓動が早まる。
千尋は、目をつぶり、また、1年前のことを考えていた。
私は、1年前の夏、ここに来た。
そう、来たのだ。
そして、そこにはお父さんもお母さんもいて、それで、
このトンネルに入って、
入って、
あれ?
この先のことがどうしても、どうしても、思い出せない。
確かにここに来たのに。
なんで…。
何度考えても同じだった。
順番に、きちんと思い出しているはずなのに、そこから先は…
分からない。
千尋は再び赤いトンネルに目を向けた。
行こうか、行くまいか…
どれほどの時間がたっただろう。
やはり、母や父に何も言わず、何があるか分からないところに行くわけにはいかない。
そう思い、千尋はトンネルに背を向け、歩き出した。
ただ、先ほどの思いは確信に変わった。
あのトンネルの先に、自分の求めている何かがある、と。
- Re: ハク千 その後の物語 ( No.6 )
- 日時: 2019/01/01 23:40
- 名前: えりかな (ID: .niDELNN)
千尋は家に帰ると、母にトンネルのことを聞いてみることにした。
「ねぇ、お母さん、私たちってさ、引っ越してきたとき、なんか赤いトンネル行かなかったっけ?」
「トンネル…?あ、あぁ、そういえば、道に迷ってトンネルで行き止まっちゃったのよね。お父さんが調子に乗ってナビ無視しちゃうから、大変だったわね」
「あのさ、私たちさ…あのトンネルの中、入ったよね?」
「あら?そうだったかしら?確か、トンネルで行き止まりだったから、すぐバックして国道に出たはずよ」
「そうだったっけ…」
「あんなトンネル、入るわけないでしょ。それより、今日から夏休みでしょ。早く宿題はじめなさい。最終日に泣いても知らないわよ」
「うん…」
母は、トンネルに入ったことを覚えていない…?
というか、私が勝手に入ったと思ってただけで、もしかして、本当にトンネルの前に来ただけなのかも?
うーーーん…
分からない…
って、なんで私、こんなにトンネルのことばっかり考えてるんだろ…
お母さんが言ってたように、宿題しないとね、変なこと考えてないで。
そう自分に言い聞かせたが、胸騒ぎは止まらなかった。
- Re: ハク千 その後の物語 ( No.7 )
- 日時: 2019/01/02 00:02
- 名前: えりかな (ID: .niDELNN)
夏休みも中盤に差し掛かった頃。
日に日に増す暑さに、体のだるさを感じていた千尋だが、毎日6時半に起きなくてはならない。ラジオ体操だ。このご時世に、きちんと集まってやらなくても良いのに、と思いながらも、千尋は玄関を出た。
「おはよー、千尋」
「おはよ!雅!」
雅とは、家は少し離れているが、ラジオ体操の班は一緒なため、毎日話せていた。
千尋はあの日以降、何かとトンネルのこと、そして、自分の胸の喪失感のことを考えていた。
考えても、答えは見つからないのだが…
「…ろ」
そう、いつまでたっても答えが出ない…
「千尋!」
「ふぇっ?!あ、ごめん、雅、何?」
「千尋、大丈夫?なんかすごく難しい顔してたよぉ…?」
「あ、うん、大丈夫大丈夫!ごめんね」
「いや、全然謝らなくていいよ!…あのさ、千尋、悩み事あるの?」
「え、あ、いや、大したことじゃないから!」
「それならいいんだけどさ…」
そう言いかけて、少し戸惑う雅を千尋は不思議そうに見つめる。
「ん?何?雅?」
「いや、これは私の気のせいかもしれないんだけどさ、ていうか、多分気のせいなんだけど…」
「千尋って、たまにすごく寂しそうな表情するよね」
「え…そう、かな?」
「うん、転校してきてから、たまに。なんだろう、うーーん、なんかね、切ない、感じ?かな」
「えー、そうかな」
「何か、あれば、言ってね?」
そう言って、本気で心配してくれている雅。
少し、今の悩みを話してみることにした。
「実はさ…私、何か大切なものを忘れている気がしてるんだ。」
「大切なもの?」
「うん、それが何なのか、よく分からないけど、多分すごく大切なものなの。でも、思い出せなくて…」
「それは…辛いよね…でもさ!一度あったことって思い出せないだけで、絶対忘れないはずだよ!!だから、きっと思い出せる日が来る!きっと!」
「思い出せないだけで、忘れない…」
「そうそう、きっとそう!私が保証する!だからさ、そんなに悩まなくて大丈夫だよ!」
「うん、ありがとう、雅」
「いえいえ!じゃーね!」
雅と別れ、自分の家へ歩き出す。
さっきの雅の言葉が妙に引っかかる。
一度あったことは、思い出せないだけで、忘れない…
そのとき、頭に強い衝撃が走った。
『いち…あっ…こと…ない…おも…せ…だけ…』
誰かの声。
雅じゃない。
私は、雅が言った言葉と同じような言葉を聞いたことがある。
私の大切な何かが、少し見えた気がした。
- Re: ハク千 その後の物語 ( No.8 )
- 日時: 2019/01/04 00:38
- 名前: えりかな (ID: 1Fvr9aUF)
「ただいまー」
ラジオ体操から帰ると、お母さんが朝ご飯を作って待っていてくれた。
パンの良い香りに思わず、お腹が鳴ってしまった。
千尋はそそくさとご飯を食べ始める。
「ねぇ、千尋」
「ん?何?」
「そういえば、新しく髪ゴム買ってきたのよ。千尋、ずーっと同じやつ使ってるでしょ」
「え、あ、これ?今してるやつ?」
「そうそう、流石にそろそろ変えたいかと思って」
「え、嫌、私これ気に入ってるから、大丈夫だよ。でも、買ってきてくれてありがとう」
「へぇ、そんなに気に入ってるとは意外だわ。それ、高かったかしら?どこで買ったんだっけ?」
「えぇー、どこだろう…ていうか、これ、買ったんだっけ?お店に行った記憶ないんだよね」
「買わなかったなら、なんであるのよ?…でも、そう言われてみれば、手作りっぽい感じもするのよね。糸を編み込んでるみたいな」
「たしかに、そうかも」
「まあ、ならいいわ」
ごちそうさま、と言って、千尋は自分の部屋へ行く。
どうも、髪ゴムのことが気になる。
さっきの雅の言葉の時も一緒だ。
自分は何か変なのか、そう思うくらいだ。
髪ゴムを外して、見つめてみる。
鮮やかで、力強いものを秘めたような、見ているだけで吸い込まれるような、美しいピンク色。
「手作り、なのかな?さっき、お母さんが編み込んでるとか言ってたけど、そんなことできるのかな?」
と独り言を言ったそのとき、また強い衝撃が頭に走った。
『みん…紡い…糸…編み…る』
これは、さっきの雅の言葉のときと同じ人の声…
私は、誰かに、この髪ゴムをもらったんだ。
さっきの言葉をかけてくれた人物に。
それが誰かまでは思い出せないけど、でも…
大切なものを
思い出せる。
そんな予感がする。
- Re: ハク千 その後の物語 ( No.9 )
- 日時: 2019/01/12 12:55
- 名前: えりかな (ID: n5JLvXgp)
次の日、予感は
確信に変わった。
母「ねぇ、千尋。夏休みだし、海に行かない?」
千尋「うん、いいよ。雅も誘おうかな」
母「いいんじゃない。…でもさ、不思議よねぇ」
千尋「え?何が?」
母「だって、あなた、小さい頃、川で溺れたのに、全然水とか怖がらないんだもの」
千尋「あ、あぁ…そう言われれば…川…」
また何か引っかかる。
千尋「あのさ、その川の名前って、何だっけ?」
母「え?あぁ、確か…」
母「コハク川よ」
千尋「コハク川…名前…」
考えるより体が先に動いていた。
あのトンネルへ、走り出していた。
もう、もうそこまで。
そこまで来ている。
体が思い出している。
もう、本当に思い出せる。
あのトンネルに行けばーーー
全て。
無我夢中で走って、走って、走って…
あの、赤いトンネルに着いた。
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