二次創作小説(紙ほか)

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ポケットモンスター少年の願い星
日時: 2023/09/14 14:51
名前: アプー (ID: lQwcEz.G)

あらすじ

イッシュ地方中心都市『ヒウンシティ』。
 大都市に建築された『ヒウン総合病院』の屋上から一人の少年がその美しい街並みを眺めていた。
 ―トウヤ君、君は長く生きられて後、一週間位だ…―
 その言葉を思い出す度に少年は表情を暗くし、次第に体を蝕んでいく病魔にイラつきと恐怖を募らせていく。
 しかし、一匹の小さきポケモンとの運命的な出会い…'再会'を果たす事で少年の運命の歯車が大きく動き出す。

 ―――少年の抱いた夢への扉が今、開かれる。

【旅立ち編】
第一話から第五話 >>1-5
【カントー編】
第六話 >>6
第七話 >>7
第八話 >>8
第九話 >>9
第十話 >>10
第十一話 >>11
第十二話 >>12
第十三話 >>13
第十四話 >>14
第十五話 >>15
第十六話 >>16
第十七話 >>17
第十八話 >>18

第四話『願いを叶えるとき』 ( No.4 )
日時: 2023/09/12 16:28
名前: アプー (ID: lQwcEz.G)

 side―ヒコボシ―

 月が出ていた―凛々しくも、無慈悲な女神を思わせる冷たい満月が…。
 時間帯も夜中になっており、ヒウンシティの民家やビルなどの照明が消えている。
 その寝静まったイッシュの都市、ヒウンシティ。
 僕はその風景をヒウン総合病院の屋上から見下ろしていた。
 そして、右手に持っていたケータイでカントー地方で有名なポケモン研究家である一人の初老の男性に電話を掛けていた。

 「もしもし、オーキド博士ですか……えっ!? 誰って…僕ですよ、ヒコボシです」
 『おぉ…、ヒコボシか久し振りじゃの』と言うオーキドの悪びれのない声を聞いて、

 オーキド博士、少しぼけてきたんじゃないのか…。
 心の中でぼけを憂いつつあるオーキドに呆れるも、本題へと入っていく。

 「それで今回、オーキド博士にお願いがあってお電話したんですけど…、ここで入院している子―トウヤ君がそろそろ退院するので、その子の分のポケモンもお願い出来ませんか…? そっちのお孫さんも今年で十歳になったと思うのでその子と一緒に…。えっ、なんでそっちで旅をしないのかって、それはこっちのイッシュポケモン協会の理事がポケモンと一緒に旅をするのを十四歳からと決めているからです。はい、お願いします。……どんどんぼけて行くんじゃないのか、あの爺さん」

 電話を終えると、ケータイをポケットに仕舞い、オーキドへの悪態をつく。
 そして、満月を見上げて、

 「少ない時間だけど、良い夢を見させて上げるよトウヤ君」

 冷たい口調で言い放ち、「フフッ」と不適な笑みを浮かべて踵を返して屋上から去っていく。

 side―トウヤ―

 僕たちは七夕のイベントを終え、一緒に行っていたメイとも別れて自室である402号室に戻っていた。
 そして、僕はベッドの上で横になり、隣でスヤスヤと小さな寝息を立てるピカチュウを視界に入れていた。

 「本当、良く寝てるな…ピカチュウ」

 丸まって寝ている幸せそうな表情をしたピカチュウの背中を撫でながら、独り言を呟く。
 先程の四人で過した七夕の時間が今でも頭の中に濃厚になって残っている僕にもそのピカチュウが笑顔を浮かべている理由が理解できる。
 しかし、その気持ちが理解できると同時に一抹の寂しさを感じていた。
 ―トウヤ君、君は長く生きられて後、一週間位だ…―
 ヒコボシ先生の真剣な声がふっと頭を過ぎる。そう、僕がこのヒウン総合病院の屋上からヒウンの町並みを見て、僕自身の心を大波のように飲み込もうとしていた不安を和らげようとしていたあの日―ヒコボシ先生から宣告された一言。

 「なんで、こんな時に…。あぁ、もうっ! 思い出したくなんてないのに!」

 いきなり脳裏を過ぎった言葉に対してイラつきを募らせ、そのやり場のない怒りをどこにぶつければいいか判断できずに頭をただ…簸たすら掻いていく。
 だが、

 「ねぇねぇ、トウヤ。ぼくがきみのねがいをかなえてあげるよ」

 真上をふわふわと悠然に浮かぶ一つの浮遊物体が突然、視界に映ってくるとにたにたと不適な笑みを浮かべて自信ありげに言ってくる。

 「ぼくのゆめをかなえる、…きみが」

 一瞬唖然となり、オウム返しをする。

 「おう、ぼくにまかせればどんなねがいごともかなうのさ―だから、ドンとおおぶねにのったつもりでまかせとけ!」

 そんな僕の信じきっていない表情も気にせずにポンッと小さなお腹を叩き、その表情は自信に満ち溢れていた。

 「フッ…、アハハ」
 「えっ…、トウヤ…? どうしたの、なにかへんなものでもたべたとか…」

 突然笑い出した僕を見て、なぜ笑い出したのかと本気で悩んでオロオロとし始める。

 「有り難ね、なんだか君のおかげで…不安が大分和らいだ気がするよ。気を使ってくれたんだね。あぁー、なんだか不安が消えると眠くなってきちゃった。お休み…」

 僕は笑いと同時に不安を外へ弾き飛ばすと布団を覆って、その僕を元気付けてくれた小さなポケモンが視界から消える。と、代わりに暗闇が視界に広がり、意識が闇へと誘われて行った。
 有り難う、君のおかげで久々に良い夢が見れそうだ…。
 僕の意識が完全に失われる。

 「うそじゃないもん…。ほんとうなんだもん…」

 その寂しげな呟きが小さな病室の中を響き渡った。そして、その小さな瞳にはある一つの強い意志が宿されていた。

 side―なし―

 すでに時間帯は夜中から深夜へと変わり、時計の針も一時を指していた。
 ふわふわと浮かんでいるポケモンはそれを確認してトウヤたちが深い眠りについているベッドから離れ、部屋の中央にピタッと止まる。
 ―幸いトウヤは布団を被って寝ているから少しの光で照らされても起きないだろう…と小さきポケモンは思うと精神を集中するために目を瞑った。
 すると、突然宙に浮かんでいたそれが光始め、お腹の大きな瞼が徐々に開いていく。と同時に、その小さな体が半透明になって透けていった…。

 「トウヤ、いまかなえるよ…きみのねがい。だって、それはぼくのねがいでもあるんだもん―ふたりでいっしょにたびをするって…やくそくしたもんね。そう、ずっとむかしに…」

 小さく今にも消えそうなその灯火は弱い声を放ち、頭上の左側に飾られた短冊には小さく汚くもどこか一生懸命さを感じられる文字で願い事が書かれていく。
 ―とうやがげんきになって、いろんなぽけもんとともだちになれますように…と平仮名で…。

 「でも、なんかさびしいな…。だって、トウヤはぼくのことわすれてるから。でもそれはしかたないんだよね、ぼくたちがともだちになったのは――――」

 ―ずっとむかしなんだから…と言い終えることなく、小さきポケモンは涙を流し、光のちりとなり消えていく。願い事の書かれた短冊とエメラルドの色をした小さな石を残して…。
 眩い光が消え、静寂に支配されたその空間に悲しみに満ち溢れた空気が漂っていた。

 ーto be continuedー

第五話『旅立ちの日』 ( No.5 )
日時: 2023/09/12 17:56
名前: アプー (ID: lQwcEz.G)

 side―トウヤ―

 窓越しに聞こえてくる鳥ポケモンたちの囀りの声、一つの柱となって太陽の光が差し込んでくる。

 「ふ、あぁ…よく寝た…。あれ、なんか妙に静かだな…」

 僕はその光の眩しさに耐え切れず、起きてしまう。そして、病室が静寂に包まれているのに気付くと同時に違和感が心の中で生まれてくる。
 たぶん、彼奴あたりが……あれ、いない。
 一昨日に突然現れたあのポケモンの姿が脳裏を過ぎると苦笑してしまい、周りを見回すも姿が見えないことに一抹の不安を抱く。
 しかし、視界を病室内を彷徨わせていると後姿の一匹の小さな体躯をした鼠ポケモン―ピカチュウが探し物の代わりに映った。

 「ピピカ」

 ピカチュウは背後からの視線を感じ取り、振り向く。擦れたような声で「トウヤ」とポケモン語で言ってくる。うん…、多分そうだ。

 「ピカチュウ、どうしたの…?」
 「ピィーカ、ピィカチュ…」

 ピカチュウに気を使って、なるべく低い声音で問う。すると、ピカチュウは困惑した表情を浮かべる。
 ピカチュウの奴、何困ってるんだ…。
 そのピカチュウの表情に疑問を覚えるも、その小さな手に持たれたエメラルド色に輝く石と何か願い事が書かれてるみたいな感じで沢山の文字が記入された短冊が視界に入る。

 「ピカチュウ、それ…ちょっと見せてくれないか…?」

 僕は妙な胸騒ぎを感じ、ピカチュウに渡すように指示をする。
 ピカチュウはこくりっと頷き、僕の右手に二つの物を渡してくる。

 「ありがと、ピカチュウ。でも、なんでこの石がまた…、それにこの短冊って彼奴の頭についていた奴じゃ…」

 ピカチュウの頭を撫でると「チャァー」と嬉しがる声を上げてくる。そして、エメラルドの石を怪訝そうに見つめ、緑色をした短冊があのポケモンの頭上についていた物だと気づいて妙な胸騒ぎが確信へと変わっていく。

 「願い事って何書いてあるんだろう…」

 相手の願い事を勝手に見ることに罪悪感に追われるも何かの手掛かりになるのではないのか…と考え、読み始める。

 「字が汚いな…。えーと、とうやがげんきになって、いろんなぽけもんとともだちになれますように…って、これって僕の…」

 不安を胸に抱き、再度周囲を見回すもポケモンの姿が見えない。
 ―探し出さないと…と心中で思ったのが原因か、衝動に駆られてしまい、無我夢中になってベッドから起き上がり床の上に立つ。

 「―あ、松葉杖…って、あれ?」
 「―ピカ…?」

 僕は松葉杖を取るのを忘れていたことに気付き、焦るもちゃんと自力で立っていることに信じられずに唖然する。
 ピカチュウも信じられないと言う目で見つめていた…。
 そして、二人揃って驚きの声を上げてしまいそうになるも、グッと堪える。でも、僕は驚きがあるものの、その半分では歩けると言うことに歓喜極まっていた―普通の人にして見ればそれがどうしたと思うだろうがこれまで松葉杖を使って移動することしかできなかった僕にとって、それは大きなことであった。
 感激に浸っていると、

 「ピッカ、ピカチュ!」

 ピカチュウに「あの子、探しに行かなくていいの」と聞かれて、ハッと我に帰りベッドの下などを覗き込む。だが、姿が見当たらなかった…。

 「彼奴、本当…どこに行ったのかな…」

 部屋の隅々まで調べ尽くして確認し終えると、徐々に心配になっていく。

 「ピィーカ、ピカッチュ」

 そんな僕の様子を見兼ねたピカチュウが小さな右手でドアを指す。

 「通路とかにも探しに行けって言うのか…?」

 予想したピカチュウの考えを口にすると、小さな頷きをしてトコトコとドアのある方へと向かって走っていく。
 まぁ…、心配してるだけじゃ…ダメか。まずは行動を起こさないと…。
 自身の頭の中で考えを整理していき、ピカチュウの後を追っていく。
 すると、

 「やあ…トウヤ君、お早う」
 「えっ…、ヒコボシ先生…お早うございます」

 通路に出るとヒコボシ先生と鉢合わせしたのであった。

 「トウヤ君、松葉杖なしで何時から立てる様になったのかな…」

 僕の両足が確りと地についている所を見たヒコボシ先生は表では冷静さを保っていたが、驚いたのか少し上擦った声を上げる。
 僕は「アハハッ」と苦笑しながら、これまでの出来事―不思議なポケモンとの出会いのことなど詳細な部分までヒコボシ先生に説明していく。

 「でも、なんでヒコボシ先生があの石を僕に…」

 そして、何故僕にあの石を渡したのかと疑問になりヒコボシ先生に問うが、

 「うん、唯…綺麗な石を見つけたから、トウヤ君にあげようかなって思って。まさか、ポケモンがその石の中で眠っていたなんて吃驚したよ」

 唯、自分にプレゼントするために置いて行ったことを知ると深い意味は無さそうだと考えて追及することを止める。
 だが、その僕の様子を視界に映したヒコボシ先生の口元が曲線を描いていたことに気付きもしなかった…。

 side―メイ―

 私は今、乾いた喉に潤いを与える為に自動販売機のある四階のロビーへと向かっていた。そう、三階のロビーにも自動販売機はあるが、私が何時も飲んでいるお気に入りのサイコソーダが売り切れであったので態々…ここ―四階まで来ていたのであった。

 「にしても、階段きついなぁー、一段一段…結構高さがあるし、段は狭いし。エレベーターで来れば良かったよ…」

 階段を昇り終えた時の疲れを感じて失敗したと項垂れる。だが、そのゴール地点にはサイコソーダと言う最高級の飲み物(私にとって)が待っている…。
 そうよ、メイ…サイコソーダが待ってるのよ。―だから、…最後まで諦めないで行かないと。
 自分の心にそう言い聞かせ、言葉の鞭で自分自身を叩きながらもトボトボと歩いていく。
 だが、

 「あれって…、トウヤとヒコボシ先生じゃ…?」

 まだ時間帯が明け方だからか…人気が全く感じられない通路でトウヤとヒコボシ先生が向かい合っていた。

 「何だろう…、何か気になるな…。それにトウヤ、自分の足で立ってるし…」

 その二人の姿を見た私からはすでに怠惰な気持ちが消え、身を潜め息を殺して二人の会話を聞くことに集中する。
 何か、私…悪い事してるけど…。
 それが盗み聞きと言う余り良くない行為である事を理解していたが、私にとって大切な友であり、変えてくれた人物でもあるトウヤの事が心配になってしまう為に自然と耳を立ててしまう。

 side―トウヤ―

 「あのヒコボシ先生、僕…今そのポケモンを探してて…見ませんでしたか、ピカチュウと大体同じ位の大きさでふわふわと宙を浮かんでるんです。それに頭上には緑色の短冊がついて羽衣の様な物を羽織ったポケモンを…」
 「う~ん、見てないね…」

 僕が探しているポケモンの詳しい部分まで説明する。が、ヒコボシ先生は悩むもその導き出された答えに期待が裏切られる。

 「はぁー、そうですか…じゃぁ、僕探しに行かないと…。行くぞ、ピカチュウ」

 ショックの余りにがっかりするも気を取り戻してピカチュウと一緒に行こうとする。
 しかし、その歩みはヒコボシ先生のある一言によって止められた。

 「いないと思うよ、多分そのポケモンは…」

 僕は突然のその一言で一瞬驚きを覚えるも、

 「如何して、そんなこと言えるんですか」

 ヒコボシ先生に体を振り向かせ、聞いてみる。

 「多分ね…もしそのポケモンが病院の中をうろついているのなら、誰かに見つけられた場合はナースセンターに送られてその親である人物―詰まり君の元に届けられるんだ。でも、君の所にはまだ戻ってきていない」

 と言うことは…このヒウン総合病院にはいないって事が確定する。
 でも、

 「だったら、どこに行ったって言うんですか…!」

 僕はこのヒウン総合病院にいないと言う真実を突きつけられ、ならこれからどう行動すればいいのか…と判断できなくなり、その怒りの矛先をヒコボシ先生に向ける。
 ヒコボシ先生は僕に睨まれるも全く動揺せず、

 「簡単な話じゃないか。いろんな地方を旅をして探していけばいいじゃないか。そう、今の君になら'それ'ができる」

 自身の考えを口に出し、僕の両足をその視界に捉えた。

 「それって、無断でってことですか…」
 「ピカ!?」
 「まぁ…、そうなるね…」

 僕の怪訝そうな声にすんなりと頷くヒコボシ先生。ピカチュウはその僕の言葉を聞いて、ヒコボシ先生の伝えようとしていた事を理解する。

 「でも、もしここで君が仮にこの病院に残ったとしたら、後数日しか生きられないと医師である僕に宣告されたはずなのに今ここで何事もなかったように元気な姿で立っている所を見られたら…どうなるか想像できるよね…?」
 「それは…」
 「ピィーカ…」

 ヒコボシ先生は何時も真実だけを伝えてくると頭の中で理解していたため、その後の自分の姿が手を取る様に想像できた。少なくとも、この病院に入院している人達や医師などからは注目されるかもしれない―奇異の目で…そして、その後は…。

 「そうだよ、トウヤ君。だから、君はこの地方から出た方がいい。取り返しのつかないことになる前にね。だから、まずはここから旅をしてみてはどうだい…」

 ヒコボシ先生が渡してきた一枚のカントー行きのチケットを貰う。

 「これって…」

 僕とピカチュウはその渡された一枚のチケットを凝視する。

 「探したいんだろう、君の言うその大切なポケモンを…、そして君の夢を叶える為のチャンスじゃないのかい…。マサラタウンに僕の知人がいる尋ねてみるといいよ」

 その僕の迷いを見抜いたのか、それを解き放つために言ってくる。
 僕は決意を固めてこくりっと頷いて見せた。

 「行かせて貰います、カントー地方に」
 「ピッカ!」
 「出航時間は十九時発のロイヤルイッシュ号だから…、この紙を渡しておくよ。後で見て、行き先とかちゃんと書いてあるからさ」

 でも、この話を隠れて聞いていた一人の少女もまたある事に決意を固めていた事に、僕は気付きもしなかった…。

 side―トウヤ―

 水平線に没した太陽と入れかわるように満月が空に出てきていた。空もまた時間が経つにつれてその身に闇を纏っていき、海間を闇色に染め上げていった。

 「いいんだよね、これで…ピカチュウ…」
 「ピィーカチュ…」

 僕とピカチュウは、現在ロイヤルイッシュ号の甲板にいた。そう、僕たちはヒウン総合病院から脱走を計り、見事成功に収めるのであった。
 そして、手すり越しに少しずつ遠ざかっていくイッシュの都市であるヒウンシティの風惰のある町並みを眺めていた。そのビル群から放たれる無数の光が水面上に美しいイルミネーションを描いていく。
 僕たちはその光景を目に焼き付けていく。
 もしかしたら、当分はイッシュ地方ともお別れかな…。
 そう思うと同時に寂しさがぼくの全身を包んで行き、悲しさで胸が一杯になるもグッと涙を堪える。

 「ピィーカ、ピカチュウ…?」

 ピカチュウが心配そうな表情を浮かべて僕の顔を覗いてくると、

 「うん、何だか悲しくなってきちゃって、ごめんね…ピカチュウ。それにメイにもちゃんとお別れの言葉を「別に言わなくていいよ、だって、いるんだからトウヤたちの後ろにね」―えっ!?」
 「ピカ!?」

 背後から柔らかな声がかかり、反応して振り向く。すると、普段の患者服ではなく、Tシャツを着てスカート風のショートパンツと黒色のタイツを穿き、動きやすさを重視した服装を身に纏ったメイが視界に入った。

 「本当、酷いよ。二人共…私の事置いて行こうとするなんて、それでも友達なの…」

 波風が彼女の髪をさらっていく中でむぅーっと頬を膨らませて僕たちへの文句を言うメイ。
 僕たちはまだ状況が理解できず、ただ…呆然とメイを見つめているしかできなかった。
 その数分後に僕たちの驚きの声がロイヤルイッシュ号を揺らす事になる事も知らずに…。

 ―to be continued―

第六話『始まりの街』 ( No.6 )
日時: 2023/09/14 14:54
名前: アプー (ID: lQwcEz.G)

 side―なし―

 これは数年前の話…。
 無窮に広がる青い空が雷雲に覆われ、光を帯びた雷―稲光が雨で柔らかくなった大地へと容赦なく降り注いで行き、北東の町―シオンタウンでは住民の殆どが家の中に避難していた。
 だが、一つの人達の集団が墓地に遺骨を埋葬しに来ていた。
 その全員が正装に身を包んでいる。

 「―――オーキド博士、辛いと思いますが…早く此方に」

 一人の大男がオーキドと言われた男に思いやるように声を放ち、一つの風呂敷を渡してくる様に要求する。

 「……」

 オーキドは両手に抱えていた大きな風呂敷を力一杯に握り締めると何かを悔やむ様な暗い表情を浮かべた。

 「オーキド博士…お気持ちはお察しします。…ですが、早く息子さん達の遺骨を埋葬しないと…」
 「……わかっとるわい」

 少し急かす様な声に促され、観念したオーキドは風呂敷を大男に渡すとその中から出された木製の箱が墓の中へと埋められて行く。
 オーキドは自分の遣る瀬無さに雨で濡れた拳を震わせ、息子達を守れなかった罪悪感に苛まれて行く。
 次第に強さを増していく雨がこの悲しい感情を流し去ってくれれば…と都合の良い事を考えていた。

 「ねぇ…、お祖父ちゃん―パパとママは…」

 オーキドの着たスーツの袖を握った一人の少女が潤んだエメラルドの瞳で祖父―オーキドを見上げてきた。
 今にも泣き出しそうな声でオーキドに尋ねてくる。

 「リーフ」

 ―お祖父ちゃん、パパとママが死んだって嘘だよね…と純粋な瞳で訴えかけられ、どう答えていいのかと迷い、沈黙に陥ってしまう。

 「ねぇ…、お祖父ちゃん…本当にパパ達死んじゃったの、嘘だよね―ねぇ、お祖父ちゃん……如何して答えてくれないの…。それにお兄ちゃんは何でここに来ないの…」

 答えようとしないオーキドにリーフの問い詰めが徐々にエスカレートしていき、オーキドの袖を小さな両手で揺らして行く。その一言一言が鋭利な刃物となり、オーキドの心を深く抉っていく。
 そのエメラルドの瞳から幾条もの涙が頬を伝い、ポタポタと雨で濡れた地面へと落ちていく。

 「リーフちゃん、私と一緒にあっちに行って少し心を落ち着かせましょうか…」
 「嫌だぁ、離してぇ―――!」

 その状況を傍観することに耐え切れなくなったオーキドの助手であるヨキに両肩を握られ、振り切ろうとするも小さな少女の力では到底振り切る事が出来ず、そのまま連れて行かれる。
 オーキドはリーフが居なくなると急に力なく膝を地面につけ、

 「うぐぁ…、ぐぁぁぁ――――!」

 悲しみに耐え切れず、ただ…ただ簸たすら赤子の様に泣いていった…。

 side―トウヤ―

 「やっと着いた…始まりの町―マサラタウンに。なっ、ピカチュウ…後、メイも」

 グレンタウンでロイヤルイッシュ号を降り、マサラタウン行きの船に乗り換えて無事に喉かな風景が広がる南国の町―マサラタウンに着いた僕は歓喜に満ちた声でピカチュウに話しかける。一応メイにも声をかけた。

 「ピッカ!」

 左肩に乗っているピカチュウが楽しげに小さな手を上げ、応える。

 「ねぇ、トウヤ。まだ、怒ってるの」

 その僕の感情の篭っていない平坦な声を聞いてか…、しゅんと捨てられた子犬の様な目で見つめてくるメイ。
 そうだよな、あれだけ怒られれば誰だって…。
 ロイヤルイッシュ号で突然現れたメイに呆然としていたあの後にこっ酷く怒ってしまい、彼女を怖がらせてしまった。
 僕はその事を思い返し、言い過ぎたことを反省するも旅をすると言う事は何時何が起こるのか分からなく彼女を危険に冒したくなかったためについ本気で怒ってしまったのである(旅をした事のない自分が言える立場でないことは理解しているが)。
 だが、僕の中でまだ残っていた微かな怒りもマサラタウンの豊かな自然を眺め…、周囲に満ちていた清純な空気を吸う事によって自然と消えていく。

 「怒ってないから…。ほら、行くよメイ」
 「うん!」

 オーキド研究所へと向かって歩いていく。

 side―メイ―

 「敷地が広いね…」
 「うん、まさかここまでとは思わなかったよ。何だか、迷ういそうだね」

 研究所とは思えない程の広大な敷地―その無窮に広がる緑の中に佇む一つの研究所。
 その視界に広がる大草原に囲まれた研究所に驚愕する。
 でも、緊張しつつもチャイムを押し、一般家庭と同じ呼び出し音が鳴り響く。

 「おぉ…、来たのか案外早かったの…」

 ギィー、ガタンと門の開く音がすると、オーキド博士が研究所から出て来て、私達の元まで来ると歓迎してくれる。

 「トウヤ君と後…君は…」

 オーキド博士は笑顔を浮かべてトウヤの姿を確認すると、今度はその瞳に私を映す。
 でも、私の事はヒコボシ先生から聞いていないのか、年相応の皺が刻まれた額に手を当て、う~んと悩み始める。
 まぁ…私の場合は無断でトウヤについて来たからヒコボシ先生からは聞いてなくて当たり前か…。
 苦笑しながら、そのオーキド博士の対応は当たり前だと考える。と同時に困った表情でトウヤに視線を向ける。
 トウヤは見られているのに気付き、私の視線に合わせて小さく頷いてくれた。

 「オーキド博士、この子も中に入っちゃダメですか…」

 私の気持ちを察してくれたトウヤがオーキド博士に丁寧な口調でお願いする。

 「まぁ…、良かろう。ここへトウヤ君と一緒に来たと言う事は君もまたポケモンと一緒に旅をしたいと言う気持ちが強かったからじゃろ。わしには、そんな気持ちを持った子供を見過ごすような事は出来んしな。さぁ、入ってきた前…」

 何とか入れて貰える許しを得た私は心の中で安堵し、胸をなでおろした。
 オーキド博士の後に続いて研究所の中に入っていく。
 部屋の中には様々な機械が設置され、机の上には書類などが置かれていた。
 
 「お祖父ちゃん、遅いよ。まだなの、ポケモンは…こっちは早く旅に出て、…ってあれ、その後ろの人達は…?」

 すると、部屋の奥から一人の少女がこっちに向かって歩いてくるときょとんとした表情で見つめてきたため、私達も見つめ返す。
 その少女は端整な顔立ちで白い帽子を被り、しっとり艶やかなブラウン色のロングヘアーを腰まで伸ばしている。
 服装は青色のノースリーブを着ていて、十歳にしては服越しに胸のラインが浮かんでいる。下には赤色のミニスカートとルーズソックスを穿いていた。
 そして、脚部の綺麗な柔肌を露出させている。左脚部に火傷の痕がある私はその事を羨ましく思っていた。 
 この出会いが切っ掛けである戦いへと巻き込まれていくなんて今の私達には予想もできなかった。

 ーto be continuedー

第七話『初めてのバトル』 ( No.7 )
日時: 2023/09/16 09:01
名前: アプー (ID: lQwcEz.G)

 side―トウヤ―

 「おぉ…、そうじゃったリーフ。こっちの子達―トウヤとメイも旅をしたくてこのカントー地方にきたんじゃ…」

 オーキド博士が手をこっちに向け、僕達の事をリーフに紹介してくれる。

 「宜しく、リーフ」
 「宜しくね、リーフ」

 僕達は笑顔を浮かべて挨拶するも、

 「えぇ…、宜しく」

 視線を逸らし、愛想の無い声で応じてきた。まるで、僕達に興味がありませんとでも言うように…。
 僕達は突然の相手の対応に困惑してしまい、困った表情になって互いの顔を見合う。

 「じゃぁ…、お祖父ちゃん。私…奥の方に行ってるから、そっちの二人との話が終わったら早く来てね」

 リーフはオーキド博士にそう言い残すと部屋の奥へと戻っていく。

 「すまんのう…、二人共。幼い頃は人懐っこい性格じゃったんじゃが、ある事が切っ掛けで今ではあんなに人見知りが激しくなったんじゃ」

 オーキド博士は僕達に謝罪を述べ、苦渋に満ちた表情を浮かべた。
 ―何かあったのかな…と心の中で疑問を覚える。
 だが、

 「ほら、行こうよトウヤ。オーキド博士も悩んでないで…」
 「え、うん」
 「そうじゃな」

 不意に背中を押され、一瞬吃驚する。しかし、その元気で溌剌とした声から僕を押したのはメイである事を理解でき、彼女のその言葉に従って部屋の奥へと向かって行った。

 「こっちじゃよ…」

 オーキド博士の声に促されて、前を歩く彼の後を追っていくと一つの机があり、その上には二つのモンスターボールが置かれていた。

 「やっと、来たの…遅いよお祖父ちゃん…。遅すぎてもうポケモンと図鑑貰ったわよ」

 待ち草臥れたのか…壁際に寄り掛かっていたリーフがオーキド博士を視界に映すと文句を言ってきて、最後には自分の分は貰ったと報告する。

 「早いのう…。トウヤ君、このモンスターボールの中にどんなポケモンが入っているか確認してみるんじゃ。その後に、君にこのポケモンを与えよう」

 そう言って一つのモンスターボールを渡してくる。

 「はい、realize」

 その言葉に頷き、モンスターボールをパッと宙に投げる。すると、蛙の様なポケモンが姿を現した。その体に幾つ物模様がついたポケモンは四足で確りと地面につき、背中に大きな種を背負っていた。

 「このポケモンが僕のポケモン…」
 「始めて見たかも…」

 僕達は始めて見るポケモンに視線が釘付けになる。

 「トウヤ君、このポケモン図鑑を使ってそのポケモンの事を調べて見たまえ…」

 オーキド博士はそんな僕達の様子に笑顔を浮かべる。その表情だけを見るだけで本当に子供とポケモンが接する事を自分の事の様に喜んでくれているのが簡単に理解できた。

 「分かりました」

 ポケモン図鑑でフシギダネのデータを調べていく。

 『フシギダネ、タネポケモン…ウマレタトキカラセナカニショクブツノタネガアッテスコシズツオオキクソダツ』

 すると、ポケモン図鑑から機械音が聞こえてきてフシギダネの説明をしてくれる。

 「この子の種族名、フシギダネって言うんだね。それにしても、その機械凄いね。ポケモンの種族名だけじゃなくて、その特徴まで分かっちゃなんて…」
 「うん、そうだね。そっか、君…フシギダネって言うんだ、宜しくフシギダネ!」
 「ダネダネ!」

 行き成り飛びついて来るフシギダネをキャッチすると、互いに笑顔を浮かべ合い、突然フシギダネが一本の蔓を出してきたため、それを掴んで握手を交わす。

 「何かいいな…」

 メイはその僕達の姿を羨ましそうな表情で見つめてくる。

 「あっちの机に置いてある残りのモンスターボールはもう受け取りに来る子が決まってて渡せんが、こっちならいいぞ。初心者用ポケモンではないが、鍛えれば最後には強力な戦力となりうじゃろう…」

 そんなメイを見かねたオーキド博士が一つのモンスターボールを彼女に差し出してくる。

 「いいんですか…。突然押し寄せて来た私が貰っちゃて…」

  そのオーキド博士の予想外な対応に困惑するメイ。だが、そのスカイブルーの瞳は嬉しさで満ち溢れていた。

 「いいんじゃよ、ほれ出して見なさい」
 「はい! じゃぁ、お願い、出て来て!」

  メイの遠慮していた気持ちを振り払うかのように出す様に促してくるオーキド博士。
 彼女はその言葉に元気一杯に返事を返すとモンスターボールを空中へと力を込めて投げ、視界が眩い光に覆われる。
 その眩い光が消えていくとタツノオトシゴの姿をしたポケモンが現れ、ピョンピョンと跳ねて彼女の元までやって来る。
 そのポケモンはピカチュウと同じ高さで大きくも愛くるしいその瞳に魅惑される。

 「この子が私のポケモン…」

 メイはあどけない笑顔を浮かべるとしゃがんで「おいで」とその小さなポケモンに来る様に促す。
 その子は初めて見る彼女の姿にビクビクするも、その彼女の笑顔に恐怖を失くす。そして、頷いてスポンと彼女の腕の中へと飛び込んでいく。

 「トウヤ、この子の種族名は何て言うの…」

 その小さなポケモンを抱き上げたメイが自分もまたポケモンを得た嬉しさに心を弾ませながら、快調な声で聞いてくる。
 その言葉に従い、ポケモン図鑑で調べていく。

 『タッツー、ドラゴンポケモン…ゼンマイノヨウニマカレタシッポデカラダノバランスヲトル。クチカラスミヲハクコトガアル』

 先程と同じ様にポケモンの説明を詳細まで詳しくしてくれるポケモン図鑑。

 「そっか、あなた…タッツーで言うのね。此れから仲良くして行こうね、タッツー」
 「タツ!」

 その機械音がメイの耳に訴えていくと、彼女はその説明を理解してタッツーを強く抱きしめる。
 タッツーはその彼女の反応が嬉しかったのか、頬を摺り寄せた。

 「うむ、これで皆にポケモンを渡し終える事ができたわい。それじゃあ、リーフ―お前はこれからジム巡りをしてポケモントレーナーとしての腕を磨いて行くんじゃろ。それから、トウヤ…お前達はこのカントー地方を旅するのなら、リーフと同じでジム巡りをしてみてはどうじゃ…? 確かに旅をするだけでも経験になる事は多いが、ジムなどに挑戦する事で更に色んな事が経験できるぞ…」

 そのオーキド博士の言葉を聞いて、ジム巡りをして自分の人生を大きく変えてくれたあの小さなポケモン探しも悪くないと思った。
 嫌、むしろポケモンリーグでの白熱したあのポケモンバトルをテレビ越しに見て、自分も何時かあのバトルフィールドに立ってポケモンバトルをやりたいと考えていた。
 そして、今の僕にはその夢を叶えるチャンスがある。 

 「はい、します…カントー全ジムを制覇して、ポケモンリーグ優勝してやりますよ」
 「トウヤ、頑張ってね。私、応援してるから!」

 力強く頷く僕。メイはその姿に笑顔を浮かべてエールを送ってくれた。
 そんな僕の姿にオーキド博士が満面の笑みを浮かべると、

 「うむ、元気があって宜しい。なら、リーフと一緒に腕試しと言うのはどうじゃ…お互いポケモンリーグ優勝を目指すライバルとして。なんじゃら、一緒に旅をするのもいいかもしれないのう…」

 そう言って来る。
 だが、

 「嫌よ、何で…私がそんな初心者君とバトルしたり、旅しなきゃいけない訳。お祖父ちゃん、私…もう行くから」

 リーフはオーキド博士の誘いを断ると、そそくさとドアの方向へと向かっていく。

 「いいのかのう…、トウヤ君は別の地方からきたんじゃが…」

 オーキド博士はそのリーフの反応を理解しているため、ニッと口元を歪めてわざとらしく発言する。

 「別の地方から…?」

 リーフはその言葉に歩みを止め、僕を凄い剣幕で見つめてくる。

 「えっ!?」

 僕は固まってしまうも、

 「いいわ、やりましょ…ポケモンバトルを。見せて貰うわ、他の地方のトレーナーがどう戦うのか―そのバトルスタイルって奴をね」

 リーフはそんな僕の様子もお構いなしに不適な笑みを浮かべていた。

 side―トウヤ―

 生気に満ち溢れ、輝く程の緑に覆われたオーキド研究所の庭。
 そこで今、ポケモンバトルが行われようとしていた。

 「いいか、互いに繰り出せるポケモンの数は一匹までじゃ。どちらかのポケモンが倒れるまで戦う。いいな…?」
 「ええ、それでいいわ。stand up、ミニリュウ!」
 「それでお願いします。realize、ピカチュウ!」

 僕とリーフはオーキド博士の言葉に頷くとモンスターボールを宙に投げる。

 「ピッカ!」
 「リュウ!」

 すると、眩い光と共に二匹のポケモンが出てきた。

 「へぇー、貴方結構お目にかかれないポケモン持ってるんだ。―ピカチュウか…、だったら特性の静電気に気をつけないとね。ミニリュウ、今回は神速無しで行くわよ。下手に攻撃して麻痺になる訳にもいかないからね!」
 「リュウー!」

 リーフのポケモン―ミニリュウが了解したとばかりに声を上げる。

 「初めてのバトルか…、行けるなピカチュウ」
 「ピィーカチュ!」

 全身に武者震いが走るも、何とか冷静さを保ってピカチュウに問う。
 ピカチュウは両頬の電気袋で静電気をバチバチと鳴らしながら、肯定の声を上げる。
 その瞳には何時もの可愛らしい物と違い、好戦的な物へと変貌していた。
 やる気、十分か…。
 そのピカチュウの表情にニッと笑い、心強いと感じる。
 そして、

 「試合開始!」
 「良し、ピカチュウ! 先手必勝、電光石火」
 「ピッカ!」

 オーキド博士の合図と共にピカチュウが眩い光を身に纏い、一直線にミニリュウへと突っ込んでいく。

 「そんな唯、真向から突っ込んでくるだけじゃ…ダメなのよ、ミニリュウ―竜の怒りで応戦して!」
 「リュウー!」

 リーフは言葉を吐き捨てると右手を払い、ミニリュウに竜の怒りを放つように指示する。すると、ミニリュウが口から青い炎を吐き出す。

 「ピカチュウ、電光石火のままでジャンプ!」
 「ピッカチュ!」

 それに素早くピカチュウにジャンプして回避するように命令し、光を纏ったピカチュウはその指示に従ってジャンプする事で竜の怒りをかわす。

 「え、攻撃技の電光石火を回避行動に使うなんて…!」

 そのピカチュウの行動に驚愕するリーフ。ミニリュウもまた唖然と空を切り裂くように飛ぶピカチュウを見つめていた。

 「ピカチュウ、電気ショック!」
 「ピィーカ、ヂュ―――!」

 相手の隙を見逃さずにピカチュウが両頬の電気袋から電気のエネルギーを放出させ、ミニリュウに放っていく。

 「リュウ―――!?」

 諸に電気ショックを喰らったミニリュウは勢いよく草原の上に倒れこむ。

 「やったな、ピカチュウ!」
 「ピィカッチュ!」

 飛びついてくるピカチュウを抱きしめ、笑顔を浮かべ合い、初めての勝利の嬉しさを噛みしめ合う。

 「ミニリュウ、戦闘不能! 勝者、トウヤ!」
 「ミニリュウ!」

 そんなミニリュウが心配になったのか…駆け寄って、「大丈夫」と声をかけるリーフ。その表情にはバトルで負けた悔しさはなく、不安げな表情を浮かべていた。
 あんな表情もするんだな…。それにポケモンも大切にしてるみたいだし…。
 先程と違う彼女の表情に驚きを覚えながらも、自身のポケモン―ミニリュウがバトルで受けた傷を懸念するかの様に接するその姿に感心する。

 「トウヤ、お疲れ。いい勝負だったね、観戦してた私達まで興奮したよ。ね、タッツー」
 「タッツー!」

 タッツーを両腕に抱えたメイが元気一杯な声で称賛してくれる。

 「うむ、メイの言う通り良い勝負を見せて貰った…。だが、トウヤ―ジムに居るジムリーダーと戦うにはまだまだじゃがな。無論、それはリーフも何じゃが…」

 メイの言葉に云々と頷き、同意するオーキド博士。

 「うん、有難うメイ、タッツー…それにオーキド博士も。じゃあ、オーキド博士…僕達はこれで「待って」―えっ!?」

 ピカチュウを戻し、メイに視線を投げかける。それに気付いたメイが「もう、行くの」と何だか不満そうな表情をするも渋々と頷く。
 そして、オーキド博士に行く事を告げようするも、突然制する様にリーフの声が聞こえてきた。
 何だろう…と思い、僕達はリーフの方に振り返ると、彼女は平静を何とか保とうとしているが両頬は若干赤みを纏っていた。
 スッと右手を差し出してくる。握手を求めてるかの様に…。

 「え…?」

 一瞬、唖然になるも、

 「さっきのバトル、悔しいけど…負けたわ。でも、有難…なんだか次に活かせる、そんな気がするから…」

 彼女はそんな僕の様子をお構いなしに、お礼を言うと頬の赤みを増していく。

 「あ、うん…そっか」

 見てるとこっちも何だか恥ずかしくなり、照れ隠しで帽子を深く被るも握手に応じる。

 「うむ、ポケモンバトルを通じて相手―トレーナーやそのポケモンの事が分かり合うと言うが、まさにこの事じゃな…」

 オーキド博士が自分の言った事に云々と頷いていく。

 「―分かり合える…か。ならさ、一緒に旅しようよ。ね、リーフ。そしたら、友達になれるし、それに旅をするなら人数が多い方が賑やかで楽しいし…ね?」

 タッツーを戻し、そのオーキド博士の言葉にメイは天使のような笑顔を浮かべて口ではとんでもない事を言い出し、「友達」と言うワードを聞いたリーフが「ふぇ…」とどこか可愛さを感じられるも間の抜けた声を上げる。

 「おい、メイ、行き成り何言ってるんだ。リーフにも都合があるだろし、そんな行き成り言われたら。…って、リーフ?」

 僕は突然の事に唖然になるも抗議していき、リーフに賛同を求める。
 まぁ…、人数が多ければ多い程…旅は面白くなるだろうし、リーフとも旅はしてみたいけど…。
 心の中でフッとその事を思うも、行き成り言われたリーフは困惑しているのだろうと考え、自身の中からその思いを取り除く。
 だが、

 「友達、私に…友達…」
 「リーフ!?」

 そのリーフに僕もまた困惑してしまう。

 「ねっ、トウヤ…いいでしょ。そういうわけでしゅっぱぁーつ!!」
 「頑張るんじゃぞー!」

 そして、メイに引きずられる形で僕とリーフはマサラタウンを旅立っていた…。

 ーto be continuedー

第八話『強くなるために』 ( No.8 )
日時: 2023/09/18 14:29
名前: アプー (ID: lQwcEz.G)

 友達なんて要らない…。
 それが両親を亡くした幼い頃の私が胸の中に密かに抱いた思いであり、私自身を傷つけたくない為に下した一つの決断…。
 誰共繋がりを持たない事でもう失う時の痛みを、悲しみを背負わなくて済む…抱え込まなくていい―そう考えていた。
 繋がりを持つのは御祖父ちゃんと大切なポケモン達だけでいい……それでいいと…。
 でも、一人のピカチュウを連れた少年と戦い、元気一杯な少女に誘われる形で一緒に旅に出てしまう。
 その時、私は誘われた事に内心嬉しさを感じるも、心の奥底ではまた失うのではないかと言う不安に次第に覆われていく。
 両親のように死に、兄のように私の前から消えていくのではないのか…と。
 だが、少女に発せられた「一緒に旅をしたら友達になれる」と言う言葉に心を馳せてしまい、そのまさかを考えてしまう様になっていく。
 そして、私はそんな自分に対して嫌気がさしていくのであった…。

 side―リーフ―

 蒼天で広がる青い空…。無窮に広がる広大な自然に囲まれ、清純な空気が周囲を漂った永遠なる緑の街―トキワシティ。
 マサラタウンからメイによって引きずられるような形で連れてこられた私は二人と一緒に一番道路を一日で通過し、今ここ―トキワシティに来ていた。
 そして、バトルで傷ついたポケモン達を回復させる為にポケモンセンターへと向かって歩いていた。

 「ねぇ、リーフ…たしか、ここにジムがあるんだよね…」

 すぐ左横から声が聞こえてきた為、振り向くと小首を傾げたメイが視界に映った。

 「えぇー、まぁあるにはあるんだけど。でも、今はここのジム戦できないのよね…」

 その彼女の疑問に私は小さな頷きで応じ、ジム戦ができないんだと考えると残念な気持ちになる。

 「何でジム戦できないの…?」

 彼女は私のその返答にまだ納得できていないのか、上目使いに不思議そうに尋ねて来る。
 ジムがあるのになぜジム戦ができないんだと言う当り前な反応を見せてくる彼女に苦笑しながら答えていく。

 「いないのよ、ジムリーダーが…。理由は分らないんだけど…。でも、ここ数年は戻ってないのは確かだから…」
 「そうなんだ…」

 「ふうん…」と言う感じで頷くメイ。

 「そんなぁ~」

 そんな彼女とは違い明らかにショックを隠し切れない声が聞こえてきた為、右側に視線を投げる。
 すると、ショックが大きいのか残念そうな表情をしたトウヤが居た。

 「トウヤ……?」
 「ト、トウヤ大丈夫だよ…。何時かジムリーダー戻って来てバトルできると思うよ。ね…、リーフ」
 「そうね…」

 行き成り、激しく落ち込んでしまうトウヤの姿に驚く。
 しかし、トウヤがジム戦などを入院している時にどれだけテレビから観戦して自分もあの場に立ち熱いバトルを繰り広げる事を楽しみにしていたのかを理解していたメイは何とか励まそうと奮闘する。
 だが、それは本人を元気づけるには不十分だったのかそれともジム戦ができない事に対してのショックが余程大きかったのか私達の声が全然届いていないようだった。

 「それって何時なんだよ―――!!」

 そのトウヤの叫び声がトキワシティの中を響き渡っていく。
 私も同じ気持ち何だけどなぁ…。

 side―なし―

 「ほっ…ほっ…、若いのはいいのう…」

 物陰からそのトウヤ達の様子を楽しそうに眺めている一人の老人がいた。

 「これは期待できるわい…。特にあのお団子娘には何か凄い物を持っている様に見える」

 老人はトウヤとリーフ、メイの三人を視界に映すと、三人に向かって何か気になるような瞳で見つめる。

 「試して見ようかのう…」

 手に取った二つのスーパーボールを宙に投げ、二匹のポケモンが出てくる。
 一匹は両手に赤いグローブを嵌めており、二足歩行でその姿はまるで人間その物だった。二匹目はヤシの木に足を生やし、個性豊かな顔が三つ付いていた。

 「では、二匹共頼むぞ」

 何か楽しそうな声を上げる主人に二匹のポケモンは互いに視線をあわせ合い、苦笑する。だが、小さく頷くと三人へと向かっていった。

 side―トウヤ―

 「ハァ…ハァ…、ごめん。叫ぶとかどうかしてた」
 「トウヤ…」
 「いいわよ、気持ちは分るもの」

 二人は呆れたような視線を送ってくる。
 僕はその視線に狼狽えながらも、自分の犯した過ちを悔やむのであった。
 だが、そんな僕達の前に二匹のポケモンが姿を現すと其々の技を駆使して襲い掛かってくる。

 「皆!」
 「えぇ、分ってるわ!」
 「うん!」

 何とか応戦する為に其々のポケモンを次々と繰り出していく。

 「さぁ、見せて貰おうかのう…お前さん達の実力を」

 遠く離れた物陰から一人の老人が僕達の始まろうとしているバトルを不敵な笑みを浮かべながらも、静かに静観するのであった。
 何もないトキワシティの道端で今、激しい戦いが繰り広げられていた。
 敵は二匹―ボクサーのような恰好をしたポケモンとヤシの木の形をしたポケモン。
 僕はリーフ達と別れ、フシギダネと一緒に前者のポケモンとバトルをしていた。
 そのポケモンは恰好だけでなく、そのバトルスタイルや繰り出してくるパンチ技もボクシング選手の物に極度に類似している。

 「何なんだ、このポケモンは…」

 幾ら入院していた時にテレビ越しで様々な公式のバトル大会などを観てきたとしても、そのバトルの舞台に立っていたのはイッシュ地方のポケモンでありカント―地方のポケモンは生まれてから一度も見た事はないと言っても良い程で目前に立つボクサーポケモンについては何も知らなかった…。
 そのため、右手でポケモン図鑑をリュックから取り出し、調べ始める。

 『エビワラー、パンチポケモン…プロボクサーノタマシイガノリウツッテイル。パンチノスピードハシンカンセンヨリモハヤイ』
 「なる程、これは強力な敵だな。―でも…」

 僕は何かに疑問を持ち、相手を見つめる―そう、このエビワラーからは戦意は感じられるも敵意は全く感じられないのだ。
 そんな僕の様子にお構い無しか、エビワラーは右手に電気を纏わせてフシギダネ目掛けて放ってくる。
 そのスピードは恐るべき物だった―嫌、今のフシギダネでは到底回避できない。
 ―なら、防ぐ方法は一つしかない…。

 「蔓の鞭で受け止めるんだ…!」
 「ダーネダー!」

 その指示に了解したとばかりに鳴き声を上げ、背中に背負った大きな種から二本の鞭を繰り出すフシギダネ。
 凄いスピードで放たれてくる右拳のストレートを雁字搦めにして間一髪で受け止めて見せた。受け止められた事に動揺を見せ、隙の出来たエビワラーの左拳も蔓の鞭で封じていく。それに蔓の鞭によって両拳を封じられた事でエビワラーは必殺のパンチ技を封じられてしまう。
 ――チャンスだ。

 「フシギダネ、その状態で止めの体当たりって…えっ!?」
 「ワラ―――!」
 「ダ―ネ!?」

 止めの一撃となる体当たりを指示しようとするが、それはエビワラーの見せた予想外の行動により出来なくなってしまう。
 必殺のパンチ技を封じた事で怖い物は無くなり、勝機はこっちにあると一瞬思った。しかし、エビワラーはまだ諦めていないのか…その瞳にはまだ戦意が宿っていた。
 それを証拠づけるかのように高い雄叫びを上げると同時に蔓の鞭に絡められている両腕を大きく斜め右上に振り払う。
 すると、小さな体躯のフシギダネは抗えないままに上空へと放り投げられた。
 エビワラーはそんな上空に投げ出されたフシギダネの隙だらけな格好に不敵な笑みを一瞬浮かべると右手に赤く煌々と燃え立つ炎を宿し、標的の急所に打ち込む為に飛び込んでいく。

 「あの技って…もしかして…炎のパンチ」

 僕はその技を一度テレビ越しに観ていた為にどういう物かすぐに思い出していく。草タイプのポケモンにとって相性が悪い事も…。
 もし、あんなのをフシギダネが喰らったら…。

 「負ける…」

 心に浮かび上がった単語を言葉にする。
 そして、それは現実の物へと変わっていく。

 「――――ダーネ!?」

 突如、聴覚に聞こえてくるフシギダネの悲鳴じみた鳴き声。
 それは試合の終了の合図にも聞こえた。

 「……フシギダネ」

 僕は弱弱しい声で大切なポケモンの名を言い、上空を見上げると炎のパンチがフシギダネの急所にヒットしている所が視界に、―瞳に映った。

 side―リーフ―

 「ゼニガメ、彼奴に向かって水鉄砲よ!」
 「タッツー、泡!」
 「ゼニー!」
 「タッツー!」

 私達はナッシー(種族名はポケモン図鑑で調べた)に向かって技を放つようにゼニガメ達に指示を送る。

 「ナッシ~」

 だが、ナッシーは三つの顔で余裕そうな表情を浮かべると体の周囲に半透明の球状のバリアを纏う。
 ナッシーを包んだその半透明の球状は二つの技を防いでいった。

 「何、あの技!?」

 困惑するメイ。

 「あの技は守るっ言うのよ。まぁ…、その名のとうりに全ての技を防ぐ事が出来るわ。でも、多用しようとすれば必ず失敗して終わるのが…唯一の弱点かしら…」

 私は初めて見る技に驚くメイに視線を向け、簡単に説明していく。

 「なら、こっちが攻撃の手を休めないでいれば、何時かは倒せるって事だよね」

 その守るの特徴を知り、相手に攻撃させる隙を与えずに守るばかりを使わせようと考えるメイ。
 しかし、私の瞳には煌々と輝くナッシーの姿が映った。

 「そうも出来そうに無いわね。敵もバカじゃないみたいよ…」
 「えっ!?」

 メイも光を帯びたナッシーに驚愕する。
 そして、ナッシーが放とうとしている技がソーラービームだと私はすぐに頭の中に思い浮かぶ。
 それを防ぐ為の対処法も…。 

 「メイ、聞いて。あの技はソーラービーム…。草タイプの中で高い威力を保持してるって言っても良い程の物なの。でも、その分チャージするのに時間がかかる筈、だからその隙をついてゼニガメ達の今最大威力を誇る技を全力で叩きこむ。―いいわね!」
 「うん、わかった。タッツー、濁流!」
 「理解が速くて助かるわ。ゼニガメ、冷凍ビーム!」

 メイが私の説明に納得したのか小さく頷き、タッツーに濁流を繰り出すように命令する。そのメイの理解の速さに感服しながらも、ゼニガメに冷凍ビームを指示する。
 二つの技がナッシーに向かっていった。
 だが、ナッシーの方もチャージが済んだのか吸収した光―ソーラービームを放っていき、三つの技が激突し合う。
 それによって生じた爆風が私達の視界を奪っていった。

 side―なし―

 「ほう…、これはこれは…」

 そのトウヤ達のバトルの様子を物陰から見ていた一人の老人が不敵な笑みを浮かべる。

 「結構、遣るのう…あ奴ら」

 そのトウヤ達の戦い方に興味を持つも、今度は真剣な瞳で見つめる。

 「もしかしたら、あ奴らなら…彼奴を止めてくれるかもしれない…」

 その小さき希望を抱き、老人はトウヤ達の元へと歩みを進めていった。

 side―トウヤ―

 「大丈夫か、フシギダネ」
 「ダ~ネ…」

 僕は先程の戦いで戦闘不能になってしまったフシギダネを抱き抱え、心配する。
 しかし、フシギダネは思ったより大丈夫なのか、安心するように訴えてきた。

 「そうか、わかったよ。―でも…」

 そんなフシギダネの様子に安堵するも、目前で構えているパンチポケモン―エビワラーを視界に捉える。
 先程、フシギダネと戦った筈なのに全然疲れていないみたいで息切れすらしていなかった。代わりにその薄ら笑いをする表情には余裕さえ感じられる。
 その瞳には戦意が宿されていた。
 しかし、一向に敵意だけは感じられなかった。

 「どうしてだろう…?」

 心の中で出来た疑問を言葉にする。
 もし、このエビワラーが野生の場合は必ず敵意を持って襲ってくるだろうが、生憎僕達が戦っているフィールドはこのトキワシティ。
 その為、野生のポケモンが町の中まで来る事は殆ど無に等しい。
 それにエビワラーの生息地を調べてもこのトキワシティの近辺にある一番道路や二番道路などでは無く、全く別の場所を示していた。
 ―ならどこから…。
 その事がまた脳裏に思い浮かんでいた疑問を更に大きくしていく。
 しかし、悩んでいる途中に…、

 「ほっ…ほっ…ほっ…、もう良いエビワラー。ご苦労じゃった、戻って休んでくれ…」
 「あんた…何で行き成り攻撃してきた!」

 突然現れ、何食わぬ顔でエビワラーを戻す老人に一瞬呆気に取られてしまうも、行き成り襲い掛かってきたエビワラーのトレーナーだと知ると一気にピカチュウの入ったモンスターボールを構え、警戒していく。
 モンスターボールの中に入っているピカチュウもやる気十分なのか、モンスターボール越しに見える老人を睨んでいた。

 「ほっ…ほっ…そう熱くなるではないぞ、若人よ」

 老人は敵意向き出しの僕達に怯える事無く、朗らかに笑いながらやんわりと宥めようとしてくる。
 何かを残念がるような物言いになっていった。

 「残念じゃのぅ~、折角修行をつけてやろうと思ったのに…」
 「修行を…」
 「そうじゃ、このわし―ゲンスイがな…」
 「ハッ…、何言ってんだって…ゲンスイ!? ―あんたが…」

 「全く酷いのぅ…」とどこか項垂れながら拗ねたような言い方をするが、その声音からはショックを受けていないのが確認出来た。
 でも、今の僕にはそんな事は全く如何でも良い事であった。
 ゲンスイ―その青年は二十代に行かない内に全世界のジムを―ポケモンリーグを制覇し、ポケモンバトル千連勝を果たした事で全世界に名を馳せた伝説のトレーナーであり、僕の故郷―イッシュ地方でも彼の名を知らない人は一人もいない筈だ。
 まぁ、病院から余り出た事の無い自分が言えるわけがないが、少なくともヒウン総合病院―嫌ヒウンシティに居る住民からは彼の名を聞かなかった事はなかった。
 そして、この人は嘘を言っているのではないかと一瞬怪しいと思うも、あのエビワラーの強さは本物だった―ゲンスイのポケモンと言っても良いくらいに…。
 それにもし、彼に修行をつけて貰えるならどこまでも強く慣れる気がする…。

 「強くなりたいじゃろ…」

 その僕の気持ちを読み取っているかのようにゲンスイが不敵な笑みを浮かべて言ってくる。
 僕はその言葉に頷いた―心の中でどんな辛い修行も耐えて見せると言う決意を抱きながら…。

  ーto be continuedー


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