社会問題小説・評論板

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愉快なパラフィリア達と不愉快な毎日
日時: 2012/04/06 00:03
名前: flesh (ID: SpLhUj83)

—プロローグ—
 
 
俺には友達がいない。
  家族もいない。
  
    だけど一人じゃない。
  
 人はそれを『友達』と言う。
    『仲間』とも言うそうだ。

  どう見ればあれがそう見えるのか理解しがたいが
    あれでも一応人なんだ。
中身が化け物でも形は人間なんだ。問題は中身だ。 
   

  なんだ。案外簡単な事じゃないか。
そんな悩む事でもない事を真剣に悩んでいた自分はちょっとおかしかったのかもしれない。



    さぁ、今日も楽しく過ごそう不愉快な毎日を   

Re: 愉快なパラフィリア達と不愉快な毎日 ( No.7 )
日時: 2012/05/14 04:07
名前: flesh (ID: P/D0CuiW)


目の前に立っているのは俺のよく知ってる友人の顔だ、毎日顔を合わせている顔がそこにある
だけど何かが違った、声も姿も全て同じなのに
俺に向けられた「誰」という言葉は、あまりにも衝撃的でまったく見ず知らずの人にでも言われた様に感じ取られた
友人はこんな冗談を言う人間ではない。自分が今思った事をそのまま口にしてしまう人間だ。
俺はしばらく呆然として友人を視界から外した
「おい」
友人であって友人でない声に思わず後ずさる
「誰だ勝手に部屋に入ってきて、俺に用でもあんのか?」
言葉が出てこない。口を開こうとしても震えて開かない。
「口がきけないのか?紙にでも書くか?…あ?何か見覚えのある顔してんな」
俺の顔をチラッと見て少し考え込むそぶりを見せると友人は今まで見たことのない不敵な笑みを浮かべ口を開いた

「ガイナー。」

ドクン 心臓が大きく跳ね上がる。
鼓動がドクドクドクと早くなる。呼吸が苦しくなる。
「ガ…イナー?」
震える声で何とか声を絞り出す
「ガイナー。ガイナー?んん?ガイナー?」
友人は何度も何度もガイナーと繰り返した
ガイナーってなんだ?俺はまったく聞き覚えのない言葉と心臓の速さに疑問を持った。
ガイナーの一言を聞くたびひどい頭痛が襲い、何か聞いてはいけない気がして俺は耳をふさぐ
「ガイナーってなんなんだ…やめてくれ。頭が痛い。」
「どうしたんだ?大丈夫か?」
カラカラと笑い声を上げながら友人は俺の肩に手を置いた
「久しぶりだなぁ。会うのは何年ぶりだろう。俺の事覚えてるか?」
そして今度はニコニコと愛想のいい笑みを浮かべ俺の返事を待つ
久しぶり?何年ぶり?覚えてる?何を言ってるんだ。毎日会ってたじゃないか。
「覚えてるに決まってんだろ、おとといも会ったじゃねぇか。昨日も会ったけどお前すぐ寝ただろ」
何とか頭を動かし言葉を返すと友人はきょとんとした顔を見せた
「え?何言ってんだお前。俺達が分かれてからもう10年以上は経ってるぜ?」
「………は?」

それから何分経っただろうか、いや何秒だったのかもしれない。
どっちにしろ俺にとっては2、3時間に思える程長い間ができた
「な…どうゆう事…だよ。だっておとといだって普通に会話したじゃねぇか。本当に覚えてないのかよ。なぁ」
友人はまた少し考えた。眉間にシワを寄せながら。
しばらく考え込んでるとハッとしてベッドから身を乗り出した
「ククク…そうだったそうだった!俺は、あの日…」
何かを言いかけた瞬間友人の部屋に誰か入ってきた
あの女の子だ。
相変わらず手がひどく震えている


Re: 愉快なパラフィリア達と不愉快な毎日 ( No.8 )
日時: 2012/05/14 21:25
名前: flesh (ID: P/D0CuiW)


『—♪—♪——♪ガッ…ガガッ——♪—♪』

今日も最悪な目覚めだ。いや、今日は特別最悪な目覚めかも。
異臭と激しい頭痛で体を起こした瞬間ひどく視界が歪む。
なんなんだ、この臭いは
辺りを見回そうと手を動かした時違和感を覚えた
ぐちゃと卵が潰れたような音
見てみると何か赤い液体がついている
俺は本能的にその液体を手から振り払う
気持ち悪い。なんだこれ。ケチャップ?
考え込んでいると、俺しかいないはずの部屋から誰かの呼吸音が聞こえた
隣の部屋までは壁がとても厚いので聞こえるという可能性はない
よく見るとベッドの下に誰かいる
頭をグイッと動かしてその音の正体を確認するとこの前俺に絵本を読んでくれと頼んできた女の子がぐったり横たわっていた
俺が読んだ覚えもない絵本を昨夜と同じように読んでくれと頼んだあの女の子が頭から血を出してぐったりしていた

俺はまず生きてるのか確認した呼吸音は一応聞こえているが瀕死状態に近い
ほぼ死体に近い生き物を見て意外と冷静な自分を気持ち悪いと思いながらとりあえず頭から流れ続けてる血を拭いた
そういえば俺の手も真っ赤っかだ。
俺がやったのだろうか、女の子の横には読んでと頼まれた絵本が乱暴に置かれている。その角には血がほんの少しついていた

俺なのか。俺なのだろうか。俺が殺した。俺は正常だったはずなのに。俺は奴らと同じになってしまったのだろうか。

「え…あ…っどうしたんだ?これ」
聞き慣れた声がドアの方から聞こえた。
「血…出てるじゃねぇか。何があったんだよ」
俺の部屋で会うのは初めてなはずなのに、前…というか最近会ったような気がする友人が棒立ちのまま女の子と俺を交互に見る。
「…」
その視線に耐えられず友人を視界から外し頭の血を拭き続けた
「…あのさ、医者に診せた方がよくねぇか?」
「…」
返事をしない俺に友人は少し間をおいて「俺が運ぶ」とだけ言い女の子を抱きかかえた

廊下に出ると相変わらず奇人が勢ぞろいで一日一日が過ぎるのを馬鹿みたいに待っている
自分の事で精いっぱいなのか誰も俺達には目もくれない
医務室まで会話を一切交わさず奇声が飛び交う廊下をひたすら歩いた
友人はきっと俺がやったのだと思ってるだろう
実際俺がやったのかもしれない、精神病院に入れられたって事はどこかに異常があるって事だ
俺が自分の意思なく人を殺してしまったのもうなずける
呼吸をするのが、足を規則的に動かすのが急に難しくなった。

『俺は正常だ』

違う、俺は正常なんかじゃない。異常者なんだ。異常者…だったんだ。

心の隅っこにあった『正常』の反対。『異常』
薄々思っていた。俺はやっぱり異常だったんじゃないかと。
友人はまだ黙ったままだ。

Re: 愉快なパラフィリア達と不愉快な毎日 ( No.9 )
日時: 2012/05/21 00:22
名前: flesh (ID: P/D0CuiW)


「大丈夫、血が出ているが命に異常はない。しばらく安静にしとけば問題ない。」

ハキハキとした声でそう告げた医者は口に含んでいた飴を噛み砕きゴミ箱に捨てた
相変わらず意味の分からない事をする医者だ。
俺は隣でそわそわしている友人を見やった
顔が少し安静の色を見せている。医者は少し血の跡が付いている友人の手をチラッと見たがすぐにそらしもう部屋に戻りなさいと告げた

放心状態の友人と共に早足で廊下に出る
気まずい空気が流れる中、さっきまで壁に頭をぶつけていた男がボソッとつぶやいた
「フフフ、女の子を殺っちゃったのかい?この児童虐待者め、狂ってやがる」
友人は一瞬、一瞬だけその輩に近づこうとした
あんな殺気立った目を見たのは初めてだ。口を歪ませ、何か言おうとしたが俺の方を振り返りやめた
俺は何も言えなかった。
こんな時こそ、何か言わなきゃならない気がするのに口から声が出ない
何を言えばいいんだ?変に傷つけてしまったらどうしよう。
そんな事を考えていたらあっという間に友人の部屋の前に着いてしまった
「…わざわざ部屋まで送らなくても良かったのに、今日はまだ昼過ぎだけどもう寝るよ」
疲れ切った顔で部屋に戻る友人の背中はいつもより小さく見えた
せめて、せめて一言だけでも何か言おう
「あ…あのさっ、お前が犯…人じゃないって信じてる…から」
自分の声は少し震えていて友人より落ち着きがなかった事に初めて気づいた
友人はそれを聞くとニヤッと笑った、さっきまでの疲れがどこに行ったのか聞きたくなるほどの不敵な笑みを浮かべる
「俺がやったんだ」
それだけを言うと俺がその言葉を理解する前にドアを閉め
部屋に閉じこもった

…俺がやった?どういう事なんだ
絵本を読めとしつこく頼まれたから?違う
アイツはそこまで衝動をコントロールできない奴じゃないはずだ
本当にやったのか?なんでだ。嘘に決まってるきっと友人も混乱してるんだ
きっとそうだ
胸が急に苦しくなった、でももしかしたら本当にやったのかもしれない
昨日だって様子がおかしかったし
あぁ、お前も異常者だったのか
一番の常識者だと思ってたのに違うのか
怖い、俺も異常者かもしれない。だがそんな事はどうでもいい
友人はいつでも常識を保っていた、だから犯人は別の奴だ
そう信じたいそう信じてもいいだろうか

ドアに耳を当てて友人は寝たのか確認した
鼻をすすったり、咳払いの音が聞こえる
泣いてるのか?
俺はこれ以上何も考えたくないとその場を去った
面倒は御免だ。
そのせいで友人がその後自分の手で首を力の限り引っ掻き回した所を止めに行けなかった

翌日友人は化膿し傷だらけのままの首で洗面所に現れ
急いで包帯を巻いてもらいに行くハメになった

Re: 愉快なパラフィリア達と不愉快な毎日 ( No.10 )
日時: 2012/05/25 00:34
名前: flesh (ID: P/D0CuiW)


その夜俺は自室で今から友人の様子を見に行くか行かないかを悩んだ
夜の友人に会うのが怖い
またあんな性格になってたらどうしよう
二重人格…っていうんだよなああいうの
あの時は女の子が入ってきて俺は逃げるようにして友人の部屋を後にした
そして朝事件が起こった
やっぱり部屋から出て行かない方がよかったんだ、友人と女の子の間に一体何があったんだ。

俺は友人の部屋に行く事にした
精神がかなりヤバい状態なはずだ。そんな時は傍に誰かいた方がいいだろう。
友人にはある癖があった
それは俺と友人が出会った日から治らない困った癖
ストレスを感じると無自覚に首を締め付けたり傷つけたりするいわゆる自虐症
だからまったく無傷なままの首の友人を見た事がない
常に包帯か傷跡があったり髪を切らずその伸びた髪で傷を覆い隠してた時もあった
あらためて今日の友人の様子が特別おかしかった事を思い出し
歩む足を速める

友人の部屋のドアは開けっぱなしで急いで中を確認すると
乱暴に置かれてる布団と枕横に置かれてる絵本と俺が上げた本

部屋の主はどこにもいなかった

不安がどんどん膨れ上がり静まり返った病棟の中を駆け回った
裸足なので特別うるさい音は鳴らない。
チカチカと点滅を繰り返す電球が吊るされた長い廊下にゾンビのような奇声。慣れてるはずなのに、いつもは怖くなんてないのに
今日は何故かホラー映画の主人公の様な気分になった
怖い。怖い。あぁまたあそこにも変な奴がいる。怖い。怖い。
不安と恐怖に胸が押しつぶされそうだ

医務室の横を通り過ぎちょっと行った所に友人はいた
薄暗くて友人がいるのは確かなんだが何をしているのかはよく見えない
座っているようにも見えて立っているようにも見えた
こっちには気が付いてないようだ
俺は近くに駆け寄った
友人はまだ気が付かない
体を上下左右不安定に揺らしている
さっきよりももっと近くに駆け寄った、駆け寄ろうとした
だが途中で急ブレーキをかける

昼友人を冷やかしたあの男が青い顔をして仰向けになっていた、どうやら気絶してるらしい
友人はその男に馬乗りの状態で顔をぐったりとたらしている
ドクン。大きく心臓が跳ねたような気がした
心拍数が速くなったような気がした
俺に気が付いているだろうか
気が付いていないのなら今すぐここから逃げたい
何をしたんだ。何があったんだ。そんなに腹が立ったのか。
あぁ、俺は何も見てないからな。もう行くからな。

スッと音を立てずに後ろ足を引いた
次の瞬間友人はグリンと首を思いっきり上げた。瞳孔は異常な程開いていていつもの眠たそうな顔とはまるっきり別人だ。
体を大きく震わせる俺を横目で確認すると焦る気配もなく立ち上がり男を廊下の端っこに移動させると俺に一言だけ言い放ちその場を駆け足で去って行った

「共犯者のくせに」

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日時: 2013/04/29 12:14
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愉快なパラフィリア達と不愉快な毎日 - 小説カキコ 別館


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